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【脳出血+片麻痺】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月24日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「脳出血+片麻痺」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 脳出血を発症

  • 左片麻痺を呈する

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「脳出血+片麻痺」のレポート・レジュメ作成例

【症例紹介】

1.一般的情報

  • 患者    :
  • 年齢    :〇〇歳代
  • 身長    :cm
  • 体重    :kg
  • 職業    :
  • 利き手   :右
  • 病院での生活:車椅子自走
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2.社会的情報

  • 家族状況  : 2人暮らし
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3.医学的情報

  • 入院日  :〇〇年〇〇月〇〇日
  • 手術日  :〇〇年〇〇月〇〇日
  • 術式   :開頭血腫除去術
  • 診断名  :右被殻出血
  • 障害名  :左片麻痺
  • 主訴   :左の感覚が無いために自由に動けない。介助してもらわなくてはならないため不便
  • ニード  :自宅に帰って家族と共に生活がしたい
  • 現病歴  :〇〇年〇〇月〇〇日夕方より構音障害、左下肢の違和感を自覚し、自宅にて安静にしていた。22時頃夫が様子を見に行くと意識朦朧としていたため、23時救急車を要請した。積雪のため現場まで時間を要し、23時50分救急隊到着時意識レベルJCSⅢ-200血圧165/107mmHg瞳孔不同を認め、左片麻痺を認めた。そのままA病院に入院。その後、リハビリテーションのために当院へ転院となる。
  • 既往歴  :高血圧(4~5年前より)、高脂血症、シェーグレン症候群、両白内障にてOpe
  • 使用薬剤(①~⑤までは定期薬、⑥~⑨までは臨時薬)

①アテレック

【適応】高血圧症

【作用】血管平滑筋細胞膜に存在するDHP結合部位に結合し、電子依存性CaチャンネルからのCa++流入を抑制し、血管平滑筋を弛緩、拡張させることにより降圧作用を発現すると考えられている

【禁忌】妊婦又は妊娠の可能性のある者

 

②ノイロトロピン

【適応】1)腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛 2)皮膚疾患(湿疹・皮膚疹,蕁麻疹)に伴うそう痒 3)アレルギー性鼻炎 4)スモン(SMON)後遺症状の冷感・痛み・異常知覚

【作用】動物実験により鎮痛作用が認められ、アミノピリン、モルヒネ、ペンタジン、塩酸リドカイン等の併用により鎮痛作用の増強等が認められる。動物実験により自発運動及び探索行動の抑制等の鎮静作用が認められる。in vitroによるヒスタミン遊離及び喘息の呼吸数及び呼吸流量の減少を抑制する

【禁忌】本剤に過敏症の既往歴のある者

 

③チオスター

【適応】高脂血症

【作用】肝でのコレステロールの異化と排泄を促進。更に、リポタンパクリパーゼ及びLCAT活性を高め、リポタンパク代謝、すなわち超低比重リポタンパク(VLDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)代謝を改善する

 

④エチゾラム

【適応】1)神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害 2)うつ病における不安・緊張・睡眠障害 3)心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害 4)精神分裂病における睡眠障害 5)頸椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張

【作用】抗不安作用、鎮静・催眠作用、筋緊張寛解作用、抗うつ作用、心身安定化作用がある

【禁忌】1)急性狭隅角緑内障(抗コリン作用により悪化) 2)重症筋無力症(筋弛緩作用により悪化)

 

⑤マイスリー

【適応】不眠症

【禁忌】1)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある者 2)重篤な肝障害のある者 3)重症筋無力症 4)急性狭隅角緑内障の者

 

⑥ディオバン

【適応】高血圧

【禁忌】1)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある者 2)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

 

⑦ロキソプロフェン

【適応】1)以下の疾患並びに症状の消炎・鎮痛:慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群 2)手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎 3)以下の疾患の解熱・鎮痛:急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

【作用】鎮痛・抗炎症作用を有する。特に鎮痛作用が強力である。作用機序は経口投与されたとき、胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管より吸収され、その後速やかにプロスタグランジン生合成抑制作用の強い活性代謝物に変換されて作用する

【禁忌】1)消化性潰瘍(PG生合成抑制により、胃の血流量が減少し悪化) 2)重篤な血液の異常(血小板機能障害を起こし悪化) 3)重篤な肝障害(副作用として報告、悪化) 4)重篤な腎障害(急性腎不全、ネフローゼ症候群等を発現) 5)重篤な心機能不全(腎のPG生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため悪化) 6)本剤の成分に過敏症 7)アスピリン喘息(NSAIDs等による喘息発作の誘発)又は既往歴(アスピリン喘息発作を誘発) 8)妊娠末期の婦人 

 

⑧センノサイド

【適応】便秘症

【作用】大腸で腸内細菌の作用でレインアンスロンを生成し、大腸の蠕動運動を亢進する。

【禁忌】1)本剤又はセンノシド製剤に過敏症の既往歴 2)急性腹症の疑い、痙攣性便秘(腹痛等増悪) 3)重症硬結便 4)電解質失調(特に低K血症)には大量投与回避(電解質喪失し悪化) 〔原則禁忌〕妊婦又は妊娠の可能性

 

⑨マグミット

  【適応】1)次の疾患における制酸作用と症状の改善:胃十二指腸潰瘍、胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む) 2)便秘症 3)尿路シュウ酸カルシウム結石の発生予防

 

4.他部門からの情報

Drより:今現在は脈、血圧、体温には問題はないが、薬によって血圧コントロールを行っているため、訓練での注意点として高血圧に注意する。

 

Nsより:病棟での余暇時間はレクレーションなどで字の練習を行ったり、記憶の訓練としてご飯の内容をメモしたりしている。入院当初は夜、眠れないことがあったが、今はよく眠れている。以前は尿失禁があったが今は排尿管理が出来ている。以前に比べて左側の注意力も上がってきている。

 

OTより:訓練内容としては上肢の促通、バランス訓練、USNへのアプローチ、ADL訓練である。目標としては左上肢の管理(肩の安定)とADL(トイレなどの自立)の向上としている。

 

STより:ごく軽度の構音障害があり、顔面神経麻痺により口唇の動きが少し悪い。ほぼコミュニケーションに問題なし。発話明瞭度は①。理解面にて知的低下、記憶力低下、作話がみられる。右半球損傷による脱抑制的であるが、入院当初よりは減ってきている。 訓練内容としては簡単な発声練習、記憶へのアプローチをメインに行っている。目標としては言語面も高次脳面も含めてコミュニケーションがよくなることとしている。

 

【理学療法評価】

(評価期間〇〇年〇〇月〇〇日〜〇〇年〇〇月〇〇日)

 

1.全体像

 車椅子でリハビリテーションスタッフが一部介助しながら右手・右足(非麻痺側)で自走にてリハ室に来室する。体型は小柄でやや肥満型である。リハビリには毎日きており積極的で検査・測定に対しても協力的である。日中は車椅子上で過ごしていることが多い。コミュニケーションはほぼ問題ない。スタッフが話しかけるとよく話し、笑顔で対応する。他人を気遣う発言も聞かれる。

 

1)HDS-R

29/30点

減点項目…野菜の名前:言語の流暢さ

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2)バイタルサイン

血圧:130/86 mmHg

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2.高次脳機能障害

半側空間失認(+):線分抹消テストを行う。左側のものを見落とす。

動作維持困難(-):閉眼…持続 舌を出す…持続

観念運動失行(-):指示によりバイバイやジャンケンのチョキ、敬礼をしてもらった。

          バイバイ…可能

          ジャンケンのチョキ…可能

          敬礼…可能

手指失認(-):対象者の右の示指で対象者の左の環指を触るように指示した。

        対象者の示指―対象者の環指…可能

        対象者の示指―検者の環指…可能

身体部位失認(-):対象者の右手で対象者の左肩を触るように指示した。また、左目も触るように指示した。

          右手―左肩…可能

          右手―左目…可能

手指失行(-):模倣(手指でキツネをつくる)…可能

失読・失書(-):指示文(住所と名前)を読んでから、その指示文について対象者に答えてもらう。…可能

構成失行(-):積み木を使い検者と同じように対象者に積むように指示した。…可能

物体・色彩失認(-):ぬり絵(リンゴ、バナナ)を指示した。…可能

 

<コメント>

病棟からリハ室に下りてくる際にエレベーターの方向が分からないことがある。また、エレベーターを下りてからリハ室までは2回左に曲がる。しかし、1回だけ左に曲がって2回目を曲がらずに直進し、そのまま別の部屋に入ってしまいそうになるときもある。そのほかの高次脳機能は問題ないと考える。

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3.神経学的評価

1)Brunnstrom stage

上肢・下肢・手指すべてstageⅡ

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2)感覚検査

表在感覚:非麻痺側を10とすると麻痺側はどれくらいかで検査する

 

検査部位

触覚

頭部・頚部

10

1

体幹

10

2

上腕

10

2

前腕

10

1

手部

10

3

大腿

10

1

下腿

10

2

足部

10

1

足底

10

2

痛覚

頭部・頚部

10

3

体幹

10

2

上腕

10

3

前腕

10

3

手部

10

2

大腿

10

2

下腿

10

3

足部

10

3

足底

10

2

深部感覚:数値は5回中何回反応したかを表す。位置覚は検者が関節を屈伸させたときに答えてもらった。運動覚は手指・足趾を上下に動かし、方向を答えてもらった。

 

検査部位

位置覚

手関節

5

0

肘関節

5

2

肩関節

5

2

股関節

5

3

膝関節

5

3

足関節

5

1

運動覚

母指

5

0

示指

5

0

中指

5

0

環指

5

1

小指

5

0

母趾

5

0

示趾

5

0

中趾

5

0

環趾

5

1

小趾

5

0

〈コメント〉

 麻痺側の表在感覚は重度鈍麻している。触覚と痛覚の反応では痛覚の反応のほうがよく分かるようであった。

 麻痺側の深部感覚は位置覚で中等度、運動覚で重度鈍麻していた。しかし、位置覚において股関節と膝関節の反応が他の関節に比べるとよかった。運動覚はどの指をどのように動かしているかは分からないが、じわじわとした感覚で触られている感じは分かると答えていた。

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3)反射テスト

病的反射

ホフマン

トレムナー

ワルテンベルグ

バビンスキー

チャドック

クローヌス

〈コメント〉

 左側の腱反射亢進、病的反射出現から錐体路障害が考えられる。

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4)筋トーヌス

アシュワース・スケール使用。

安静背臥位にて

検査部位

右ステージ

左ステージ

上肢

体幹

下肢

端坐位にて

検査部位

右ステージ

左ステージ

上肢

体幹

下肢

0:筋緊張の増加なし

1:動作時に引っかかるような感じのわずかな筋緊張の増加を認める

〈コメント〉

 安静肢位から抗重力位になるとわずかに筋緊張が見られた。また端坐位にて非麻痺側に力を入れるとよりいっそう麻痺側に筋緊張が亢進してきた。

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4.身体機能評価

1)四肢長・四肢周径(単位cm)

四肢長

左右差

上肢長

63.8

63

0.8

上腕長

25

25

 

前腕長

23

22

1

SMD(棘果長)

83

83

 

TMD(転子果長)

68

68

 

大腿長

35

34

1

下腿長

33

34

1

四肢周径

   

上腕(肘屈曲位)

28.6

27.4

1.2

  (肘伸展位)

26.6

25

1.6

前腕(最大部)

25

23.4

1.6

  (最小部)

15

16.2

1.2

大腿 膝蓋骨上縁

36.7

37

0.3

   5cm

41

38.8

1.3

   10cm

49.8

42.4

7.4

下腿 (最大部)

37

37

 

   (最小部)

20

20

 

〈コメント〉

 左上下肢に周径の低下がみられ、廃用性による筋萎縮が考えられる。

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2)GMT

部位

運動方向

肢位

肩甲帯

挙上

 

肩関節

屈曲

 

伸展

坐位

外転

 

外旋

坐位

内旋

 

水平内転

 

水平外転

坐位

肩甲骨面挙上

 

肘関節

屈曲

 

伸展

坐位

前腕

回内

 

回外

 

手関節

掌屈

 

背屈

 

頭頚部

屈曲

 

伸展

坐位

回旋

 

体幹

屈曲

 

伸展

不可

腹臥位不可

回旋

 

骨盤挙上

 

股関節

屈曲

 

伸展

不可

腹臥位不可

外転

 

内転

 

外旋

 

内旋

 

膝関節

屈曲

坐位

伸展

 

足関節

底屈

不可

立位保持不可

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3)ROM-T

(単位:°)PはPain

【上肢】

検査部位

運動方向

参考角度

肩関節

屈曲

180

180

135P

伸展

50

50

35

外転

180

180

65P

内転

0

0

0

肘関節

屈曲

150

145

140

伸展

0

5

0

前腕

回内

100

90

 

回外

90

90

 
【下肢】

検査部位

運動方向

参考角度

股関節

屈曲

125

125

125

伸展

15

15

15

外転

40

45

30

内転

15

20

15

外旋

45

45

 

内旋

45

45

 

膝関節

屈曲

130

130

140

伸展

0

0

0

足関節

底屈

40

45

 

背屈

15

20

 
【頚部・体幹】

検査部位

運動方向

参考角度

頚部

屈曲

40

60

 

伸展

35

50

 

回旋

45

60

50

側屈

40

50

40

体幹

屈曲

40

45

 

伸展

15

30

 

回旋

40

40

45

側屈

45

50

25

〈コメント〉

  肩関節外転・外旋において痛みによる制限がある。痛みの種類は伸張痛である。カルテの記載には肩手症候群があり、肩手症候群は自律神経系の異常によるとされ、肩・肘・手関節の疼痛、運動制限、浮腫などの症候をいう。このことから痛みは肩手症候群の影響によるものと考える。また、体幹左側屈への制限は自動運動にて側屈する際に左の殿部感覚があまりないため恐怖心があり、可動域低下につながった。

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4)疼痛

安静時痛(±):肩関節

夜間痛 (-)

他動痛 (+):肩関節  VASにて8/10 ピリピリした痛み

 

〈コメント〉

安静時痛は朝起きた際にときどき痛みがあり、また日中に三角巾を外していると痛みが出てくるときがある。安静時痛の痛みは他動時痛と同様である。

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5)バランステスト
坐位

・静的バランス:静的バランスの状態では比較的安定した状態である。しかし、体重が非麻痺側殿部に偏りがちである。

・動的バランス:プラットホーム上で骨盤部を前後左右方向にゆっくりと傾ける。また、少しずつ急な外乱を加えてみた。

前方向への外乱:非麻痺側に重心が移動してきて、前方への転倒を防ごうとする。

後方向への外乱:ゆっくりの外乱の場合は軽度から高度までどの強さでも体幹を屈曲し下肢にてバランスを保とうとする。また、急な外乱を加えると非麻痺側を後ろに出し保護伸展反応が現れる。

右方向への外乱:ゆっくりと外乱を与えていくと、首の立ち直り反応、体幹の立ち直り反応ともに出現する。また、急な外乱を加えると体幹の右側に非麻痺側を出し、すぐに保護伸展反応が現れる。

左方向への外乱:中等度までの外乱までは首の立ち直り反応はわずかに出現し、体幹の立ち直り反応も見られる。しかし、高度な外乱を加えるとバランスをとることは出来ず、倒れそうになる。急な外乱を加えると、左上肢は麻痺しているため保護伸展反応も見られず、そのまま左側に倒れそうになる。しかし、非麻痺側で検者の腕をつかみ危険察知をすることが出来た。

 

〈コメント〉

体幹筋の筋緊張低下や半側空間失認の影響もあり、非麻痺側での体重支持の傾向が強くなっていると考える。

動的バランスでは、左上下肢の随意性低下もあるため、上肢の保護伸展反応が出現せず、そのまま転倒しそうになると考える。また右方向への外乱時に比べ、左方向への外乱時の際に立ち直り反応が弱いのは、麻痺側の体幹筋の麻痺や足底や殿部からの感覚刺激が鈍麻していることから減弱、遅延していると考える。

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5.姿勢分析

1)背臥位

頚部は非麻痺側へ軽度屈曲。弛緩性による麻痺側の肩甲帯後退。股関節伸展外旋、足関節底屈。

 

〈コメント〉

左上肢の感覚は重度鈍麻していることから、体幹による巻き込みを防止するために胸部付近において右上肢にて手首を把持している。これにより非麻痺側の肩甲帯は軽度前方突出している。

 

2)端坐位

 頚部は左へ側屈、軽度前屈。脊柱は後彎、骨盤は後傾しているため軽度の円背となっている。左上肢は肩甲帯が下制、肩関節中間位、肘関節屈曲、前腕回外、手関節軽度屈曲、手指軽度屈曲。左下肢は股関節屈曲外旋、膝関節屈曲、足関節は軽度内反し、下垂している。また、左上肢を左大腿部上に置き、右上肢にて手首を把持している状態。右下肢は股関節屈曲、軽度外旋、膝関節屈曲。

 

 〈コメント〉

左の殿部から下腿にかけて感覚が重度鈍麻のため右側を主体に荷重している。

 

3)立位

 体幹は完全伸展しておらず軽度屈曲位であり、右へ側屈状態である。頚部は左へ側屈、軽度後屈。左上肢は三角巾にて保持。左股関節、膝関節は完全伸展できず軽度屈曲位、足関節は外反。

 

 〈コメント〉

麻痺側での支持力が低下していることから、荷重が非麻痺側に偏っている。右下肢はしっかりと踏ん張っている。

 

6.動作分析

1)寝返り(プラットホーム上で非麻痺側へ寝返る)

自立 平均時間3~4秒(背臥位から側臥位)

①右上肢で左上肢を体幹の上に乗せ、右下肢を左下肢の下に滑り込ませる。

②右下肢にて左下肢を持ち上げ頚部、体幹、股関節を少し屈曲させながら非麻痺側に寝返り側臥位にまでもってくる。

 

2)起き上がり(プラットホーム上で非麻痺側へ起き上がり)

自立 平均8~9秒(背臥位から側臥位)

①右上肢で左上肢を体幹の上に乗せ、右下肢を左下肢の下に滑り込ませる。右下肢にて左下肢を持ち上げ頚部、体幹、股関節を少し屈曲すると同時に両下肢をプラットホーム上から下ろす。

(側臥位から端座位)

②右殿部を支点として、下肢をプラットホーム上から下ろし、左方向へ体幹を起こしてくる。そのとき右肩関節伸展外旋、肘関節屈曲にてon elbowの状態となる。

③on elbowになり右上肢を少しずつ体幹に近づける。頚部は左側屈前屈、体幹左側屈前屈。右股関節屈曲、膝関節屈曲外旋、足関節背屈。左股関節屈曲、膝関節伸展、足関節内反。そして体幹を垂直に起こし、on handsになる。on handsより、さらに体幹を垂直方向に起こし、端坐位の状態になって、体幹のバランスが落ち着いたら、非麻痺側下肢を麻痺側下肢からはずす。

 

3)立ち上がり:(プラットホーム上で端坐位から左長下肢装具装着で立ち上がり、左上肢三角巾にて固定)

(端坐位から殿部離床)

①体幹を大きく前傾して重心を前方に移す。そのとき頚部軽度屈曲、右肩関節肘関節屈曲、前腕回内、手関節は大腿部の上にて軽度尺屈背屈、右股関節膝関節屈曲、足関節軽度背屈。左股関節屈曲外旋、膝関節屈曲、足関節背屈。右上肢で大腿部を押し上げ、さらに上前方に頭部体幹を移動し殿部をプラットホーム上から浮かす。

(殿部離床から立位)

②頚部軽度後屈、体幹屈曲、右肩関節肘関節軽度屈曲、前腕回内、手関節背屈、股関節膝関節屈曲、足関節背屈、左股関節屈曲外旋、膝関節屈曲、足関節背屈の状態から少しずつ伸展していく。伸展していくにつれて左股関節の外旋角度は大きくなる。殿部が浮いたら両下肢に力を入れるが左下肢は体重を十分に支持できていない。そのため右下肢に体重をかけながら非麻痺側上方へ伸び上がるように立ち上がる。頚部左側屈、体幹右側屈、股関節膝関節は完全伸展が出来ておらず、体幹が軽度前屈位で終了する。

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7.歩行分析

1)歩行条件
  • 場所:リハビリテーション室の平面床
  • 補装具:左長下肢装具(スペックス継手)
  • 歩行レベル:腋窩介助レベル
  • 動作方法:3点動作の前型歩行(右杖→左足→右足)
  • 10m歩行:1分16秒
  • 連続歩行距離:46m
2)全体像

歩行周期を通して頚部は前屈状態で視線が床面を向く。麻痺側下肢の振り出しは骨盤後傾となり、非麻痺側への重心の移動と体幹伸展で代償し、軽度のぶん回し歩行をする。麻痺側の立脚時間は短く、両脚支持期は延長している。また、体幹は常に非麻痺側に側屈している。

 

3)分析
麻痺側 立脚期

H.C…体幹が伸展、右に回旋、骨板後傾、股関節屈曲内転内旋、膝関節伸展。杖は体の右前方。重心は支持基底面中心よりやや後方にある。

F.F…頚部軽度後屈、体幹軽度伸展、骨盤軽度後傾、股関節膝関節屈曲にて靴の外側から接地していく。杖は体の右横。重心は後方から中心へと近づく。

M.S…体幹軽度屈曲、骨盤中間位、股関節膝関節伸展、非麻痺側下肢と体幹後方にある杖に体重を乗せているため頭部と体幹が後方へ残る。そのために重心は麻痺側に移動しておらず、体幹の後方に位置している。

H.O…体幹右側屈屈曲、骨盤前傾、股関節軽度伸展、膝関節屈曲。杖は後方。前方に振り出された非麻痺側下肢に重心を持っていくため股関節は軽度外旋してくる。

T.O…体幹屈曲、骨盤前傾、股関節外転外旋、膝関節屈曲。杖は右前方。重心は杖と非麻痺側に移動している。H.OとT.Oが同時期に起こる場合もある。

遊脚中期…左骨盤引き上げ、股関節外転外旋、膝関節軽度屈曲。体幹と骨盤で下肢を分廻しすることによって股関節外転外旋から内転内旋へと動かし前方へ振り出す。

 

非麻痺側 立脚期

H.C~F.FとM.Sがほぼ同時期に起きている。体幹伸展、骨盤後傾、股関節軽度屈曲、膝関節伸展、足関節中間位。杖は右後方。重心は非麻痺側に移動してくる。

H.O…麻痺側がF.FになったときにH.Oが始まる。体幹伸展、骨盤後傾、股関節伸展、膝関節軽度屈曲、足関節軽度背屈。杖は体の右横。重心はまだ杖と非麻痺側にある。

T.O…体幹屈曲、骨盤前傾、股関節軽度屈曲、膝関節屈曲、足関節軽度底屈。杖は右横。重心は杖と麻痺側の間に位置する。このとき足部で床を蹴りだすことによって素早く次のF.F、M.Sまで下肢を持っていく。

遊脚中期…体幹屈曲、骨盤前傾、股関節膝関節屈曲、足関節中間位。杖はやや右後方。重心は杖と麻痺側の間より杖のほうに移動する。

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8.ADL評価

1)Barthel index

項目

得点

摘要

食事

10

自立、自助具などの装着可。標準的時間内に食べ終える

車椅子からベッドへの移乗

10

軽度の部分介助または監視を要す

整容

部分介助または全介助

トイレ動作

部分介助。体を支える、衣服・後始末に介助を要する

入浴

部分介助または全介助

歩行

歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能

階段昇降

不能

着替え

部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える

排便コントロール

10

失禁なし。浣腸、座薬の取り扱いも可能

排尿コントロール

10

失禁なし。採尿器の取り扱いも可能

合計

55

 
2)FIM

評価項目

得点

具体例

セルフケア

食事

7

配膳以外介助なし

整容

5

タオルほかを持ってきてもらえれば、歯磨き、手洗い、顔拭きは自立

清拭

4

上下肢はすべて洗える、背中とお尻を洗ってもらう

更衣・上半身

6

時間がかかる、または安全性の考慮が必要だが介助者は必要ない

更衣・下半身

2

1/4出来ている

トイレ動作

2

つかまり立ち可能だがズボンの上げ下ろし介助、拭くことは出来る

排泄コントロール

排尿管理

7

投薬なしに自尿で、失禁なく暮らしている

排便管理

7

失禁・失敗なく、排便への投薬は行われていない

移乗

ベッド・椅子・車椅子

4

ふらつかないための介助が必要である

トイレ

4

介助者が触れるくらいで立ち上がり、服を下ろしてもらうと座れる

浴槽・シャワー

4

浴槽の出入りの際に片足を介助してもらう

移動

歩行・車椅子

6

車椅子で片手片足を用いて50m動かせ、回転も出来る

階段

1

車椅子でエレベーターのみにて自立

コミュニケーション

理解

7

集団会話や退院計画に関する情報を理解できる

表出

7

すべての共通の話題について友人と会話している

社会的認知

社会的交流

7

治療スタッフに非常に協力的

問題解決

7

自分の金銭管理ができる

記憶

7

手帳を使っているが、典型的な1日の流れは手帳を見ずに言える

合計

 

94

 
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3)車椅子操作

右手・右足にてほぼ自立

右足をフットプレートから下ろし、右フットプレートを右手にて上げる。右足でフットプレートを上げることもある。左の靴下を右手で持ち上げ、フットプレートから左足を下ろすと、右手にてフットプレートを上げる。このときは、体幹は前傾した状態での動作となっている。

左フットプレートを右手または右足で下ろし、左の靴下を右手で持ち上げ、左のフットプレートに乗せる。ときどき、フットプレートに足背が引っかかり手間取ることもある。また、左足を乗せることを忘れてしまうこともある。右のフットプレートを右足で下ろしそのまま右足を乗せる。

ブレーキをはずすことは理解しており、右ブレーキは右手ではずす。左ブレーキも右手ではずす。ブレーキ操作を忘れることがあり、特に左のブレーキ操作を行わないことがある。口頭指示により促すと左右とも可能。

 

4)車椅子駆動

右手・右足にてほぼ自立

右のハンドリムを把持し、右足を十分に床に接地して蹴りながらゆっくりではあるが、上手に車椅子を漕いで進んでいる。ときどき、左半側空間失認の影響で右斜めの方向へ進んで行くことや、左に曲がることを忘れるときがある。

 

5)車椅子・ベッド間の移乗

一部介助

車椅子の右側にベッドがくるように車椅子をつけ、右手で車椅子のブレーキを左右両方かけて、右足をフットプレートから下ろし、右フットプレートを右手にて上げる。右足でフットプレートを上げることもある。左の靴下を右手で持ち上げ、フットプレートから左足を下ろすと、右手にてフットプレートを上げる。そして、体幹を前屈しながら右手をベッドにつき、殿部を車椅子から浮かせながら右足を中心に右側に回転しながら殿部をベッドに下ろしていく。

 

9.問題点

Impairmentレベル

♯1.左上下肢の随意性低下

♯2.左上下肢・体幹部の筋緊張低下

♯3.左下肢支持性の低下

♯4.非麻痺側の筋力不足

♯5.体幹筋力低下

♯6.左上下肢の感覚障害

♯7.半側空間失認

♯8.バランス反応低下

 

Disabilityレベル

♯9.起き上がり動作困難(♯1.2.4.5.6.7)

♯10.移乗動作困難(♯1.2.3.4.6.7.8)

♯11.歩行能力低下(♯1.2.3.4.6.7.8)

 

Handicapレベル

♯12.活動範囲の狭小化(車椅子での入院生活であり、移乗、移動に監視が必要)

♯13.家庭復帰困難(歩行能力低下による自宅内移動困難)

♯14.社会参加困難(家庭復帰困難に起因する地域社会への参加制限)

 

10.ゴール設定

短期ゴール:麻痺側下肢支持性の向上による立位保持能力の向上、排尿、排便時の安定した着脱動作の獲得、車椅子からベッド・ベッドから車椅子への移乗動作の自立

長期ゴール:短下肢装具と1本杖による監視歩行、手すりを持っての階段昇降

 

11.治療プログラム

・関節可動域運動

・筋力維持・増強訓練

・神経筋再教育運動

・プラットホーム上からの起立訓練

・移乗動作訓練(ベッド⇔車椅子)

・ADL練習(トイレ移乗、下半身の更衣動作)

 

12.考察

本症例は、右被殻出血後遺症による左片麻痺を呈した。〇〇年〇〇月〇〇日意識障害とともに発症。A病院に救急搬送され、即日開頭血腫除去術が施行された。約10日後リハビリテーション目的にてB病院へ転院となった。PTS評価時はリハビリテーション開始より約1ヵ月半経過していた。既往歴としては、高血圧、高脂血症がある。被殻出血とは、高血圧性脳出血の代表的病型として位置づけられている。最も頻度が高く、約40%前後とされる。患者の平均年齢は55~60歳で、性別では男性に多い傾向がある。被殻出血は頭蓋内圧亢進症状と局所症状からなる。出血源はレンズ核線状体動脈外側枝であり、血腫量やその広がりによって神経学的所見が異なる。被殻出血でみられる臨床症状は、意識障害、片麻痺、半身感覚障害、中枢性顔面神経麻痺、同名半盲、半側空間失認、失語症、病変へ向かう共同偏視などがある。意識障害は血腫の大きさ、脳室穿破に関連するといわれている。運動、感覚障害は内包、半盲は視放線の障害に起因する。運動麻痺は下肢よりも上肢、近位部より遠位部のほうが強い。構音障害がみられることもある。感覚障害は視床出血に比較して軽症である。通常は対光反射や眼球運動は保たれる。半側空間失認、構成障害や失語症などの高次脳機能障害の出現も少なくない。出血に伴う合併症として脳ヘルニア、水頭症、痙攣などがあげられる。脳ヘルニアは大出血により生じ、脳幹を圧迫することで生命予後を左右する。脳室穿破した血腫によってMonro孔、第三脳室、中脳水道などの閉塞、狭搾が生じると水頭症をきたすとある。

本症例の症状として発症時は意識障害、左片麻痺、左半側空間失認が認められていた。B病院入院時の身体機能面としてはBrunnstrom stageが上肢・下肢・手指の全てでⅠであり、高度の左半側空間失認があり、意識レベルJCSでⅠ-2、意欲低下もみられていた。基本動作は全介助であった。PTS評価時の身体機能面としてはBrunnstrom stageが上肢・下肢・手指の全てでⅡ、高次脳機能検査によって左の半側空間失認が認められた。基本動作能力は寝返り、起き上がりは自立。移乗、立ち上がり、歩行は一部介助レベルである。また、ADLではトイレでの一部介助、入浴での全介助である。現在の本人の主訴は、左の感覚が無いために自由に動けない、介助してもらわなければならないため不便ということであった。またNeedは、自宅に帰って家族とともに生活がしたい、自宅にて杖で歩行がしたいということであった。入院前の生活は夫と二人で牧場を経営しており朝早くから夜遅くまで力仕事をしていた。予後予測として道免は運動麻痺の回復の自然経過は、発症からの時間に強く依存し、時間が経過するほど回復の可能性は著しく低下するとしている。通常、回復は発症後2ヶ月までにみられるが、発症後4~5ヶ月での機能の回復は少なく、6ヶ月以降の回復はほとんど期待できないとされると報告している。二木は上下肢の麻痺それぞれについて、発症時にBrunnstrom stageがⅣ以上であれば、最終的にほとんど完全回復し、入院後2週間の時点でBrunnstrom stageがⅣまで回復していれば、8割の患者は完全回復に至ると報告している。以上のように、発症後早期に随意運動がみられなければ、良好な回復レベルに到達することは困難であることがわかる。しかし、神田は脳卒中の機能予後やADLに及ぼす加齢の影響は大きいとしている。特に長期予後は年齢によって左右される。現在の本症例の回復度はBrunnstrom stageが上肢・下肢・手指の全てⅡであるが、下肢については当初の弛緩性麻痺の状態からは、筋緊張の向上、臥位レベルにて重力除去位での下肢屈伸運動が可能、動作能力としては坐位保持全介助レベルから自立レベル、近監視での立位保持が可能などの向上がみられており、コミュニケーション良好、リハビリテーションへの前向きな姿勢や意欲であり、中年であることから、今後さらに機能回復、基本動作能力の向上、さらにADLの向上が期待できると考える。本人のニードである自宅内杖歩行について現状では長下肢装具使用での介助歩行レベルであるが、回復度合い、年齢、本人の動機づけが良いことから、長期目標として自宅内杖歩行という設定は妥当であると考える。そのため、現在の能力を向上させ、歩行能力向上のための立位保持の安定性向上や移乗動作の能力を高めながら、歩行に対するアプローチを継続的に行っていくことが重要であると考えた。評価の結果から左上下肢の随意性低下、左上下肢・体幹部の筋緊張低下、左上下肢の感覚障害、半側空間失認、バランス反応低下などが挙げられた。これらがベッド・車椅子間の移乗動作困難、歩行能力低下の障害因子になっていると考える。

本症例に対する治療プログラムとして、(1)非麻痺側下肢の筋力強化、(2)麻痺側下肢および体幹の抗重力屈伸活動の促通、(3)麻痺側下肢の筋力強化、(4)骨盤のコントロールや動的バランスの学習のために特に立ち上がりを行う。動作の遂行にあたって筋力や体力は最も重要な因子であり、その低下は異常パターンの大きな因子である。廃用性筋萎縮は必ず起こるものであり、最小限にとどめる努力が必要である。しかも非麻痺側だけが筋萎縮を起こすのではなく、麻痺側はそれ以上に筋力低下を起こす。また、体幹や骨盤などの中枢部の固定がうまく行えないと、本来みられない部分で過剰な活動や異常なパターンがみられることが多いので、中枢部の筋活動に注目していく。特に股関節の固定に注目すべきであると報告がある。本症例においては①機能回復訓練として筋力維持・増強訓練、神経筋再教育運動、関節可動域運動を行う。麻痺側での筋収縮がほとんど行われていない状態なので、ブリッジングや膝屈曲位での骨盤回旋運動での運動を行っていくことで筋収縮を促していく。また、タッピングも加えて筋再教育による作動筋の更なる筋収縮を促していく。また、骨盤周囲筋や抗重力筋の筋収縮を促すことで、姿勢保持の安定性も向上してくると考える。関節可動域の維持・改善のため関節可動域運動を行う。②動作能力向上のための訓練として、プラットホーム上からの起立訓練、移乗動作訓練、歩行訓練を行う。起立訓練を行うことで、左下肢のバランス能力向上による支持性を高め、左下肢の筋収縮を促せ、同時に右下肢の筋力の維持・向上につながると考える。また、鏡を正面に置くことで視覚からの重心の位置を確認しながら行う。これらの訓練から麻痺側の随意性の向上、筋力増強により車椅子・ベッド間の移乗動作の自立が可能になると考える。歩行訓練は非麻痺側上下肢に依存しないように麻痺側への荷重を促しながら行う。また直線をまたぎ、線を踏まないように歩行することによって左右へのブレのない足底接地を促す。麻痺側の過度な振り出しによる体幹伸展、重心が後方に残ることに注意する。

本症例の退院後の生活環境については家族(夫)との二人暮らしの予定である。住居に関しては現在新築中でありスロープ、手すりの取り付けを現在検討中である。仕事は牧場の仕事ということもあり、力仕事であるため難しいと考える。また、本人・家族の要望として自宅復帰後2階までの移動が出来るようにリハビリテーションをしてほしいということもある。しかしながら、まずは平地での歩行能力向上を重点に、今後、階段昇降までの訓練も取り入れていきたいと考える。

 

【引用・参考文献】

田崎義昭 他著:ベッドサイドの神経の診かた 南山堂、2002

土屋弘吉:日常生活活動(動作)-評価と訓練の実際- 医歯薬出版、2004

武富由雄 他著:理学療法技術ガイド 文光堂、2005

星永剛:筋力増強運動の基本 PTジャーナル38(5)、2004

米本恭三 他著:リハビリテーションにおける評価Ver.2 医歯薬出版株式会社、2004

吉本洋一 他著:理学療法評価法 神陵文庫、2000

千野直一 他著:脳卒中のリハビリテーション 金原出版株式会社、2001

吉尾雅春 他著:脳損傷の理学療法 三輪書店、2000

その他:学校で使用したプリント

JOURNAL OF CLINICAL REHABIRITATION Vol.13 No.4 2004

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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