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【大腿骨頚部骨折+うつ病】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月29日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「大腿骨頚部骨折+うつ病」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 大腿骨頚部骨折を呈する患者

  • 既往歴にうつ病あり

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「大腿骨頚部骨折+うつ病」の患者のレポート・レジュメ作成例

A.基本的個人情報

【患者氏名】

【年齢】60歳代

【身長 ・ 体重】身長:㎝ 体重:㎏

【主訴】歩けるようになりたい(カルテより)

【ニード】起き上がり動作の自立

【嗜好】タバコ(-) アルコール(-)

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B.医学的情報

【診断名】左大腿骨頸部内側骨折

【入院年月日】〇〇年〇〇月〇〇日

【手術様式】左人工骨頭置換術

【手術日】〇〇年〇〇月〇〇日

【現病歴】

〇〇年〇〇月〇〇日より、うつ状態が見られるようになる。そのため〇〇年〇〇月頃、A病院受診(年内に4~5回受診)。〇〇月に入ると、重度の異常言動、異常行動が見られるようになり、このため〇〇年〇〇月〇〇日、B病院受診。検査の際、手首にリストカット創発見(同日朝に行為があったよう)。家族も気付いていなかった。このため同日入院(医療保護)。

入院中、薬の効果もあまりなく、除々に体を動かせなくなってくる等あり、〇〇年〇〇月〇〇日当院に相談のため来院。主治医に相談して改めて受診していただくよう伝え、〇〇年〇〇月〇〇日当院初診。入院予約となったため〇〇年〇〇月〇〇日B病院を退院し自宅療養となられていた。しかし自宅でも体を動かせず、身の周りのことはできなくなる一方で、睡眠もとれていない。また食べ物を噛む力が弱くなっていて、おかゆとうどんで対応していたとのこと。

〇〇年〇〇月〇〇日当院入院(任意)。入院中、〇〇年〇〇月〇〇日転倒される。その後痛みを訴えられるようになり、左大腿骨頸部骨折であることがわかった。このためOPEの目的にて、〇〇年〇〇月〇〇日C病院入院。OPE施行後、リハビリ開始。しかし、集団でのリハビリであるためか、不安がますことがあり、〇〇年〇〇月〇〇日当院入院(任意)。入院中にお腹の痛みを訴えられるようになり専門的治療のため、HC病院入院され、〇〇年〇〇月〇〇日当院入院となる。

 

【既往歴】

昔から頭痛を頻繁に訴えていた(しかし、非ピリン系の薬では湿疹がでる)。 〇〇年より、落ち込んで「何もしてないのにドロボーと言われると言ったり、人目を気にするようになった。また眠れないこともある。手足の震え。

【家族歴】家族構成は夫と四人の子供が居る。同居状況として、夫の母親と息子娘と五人で暮らしている。キーパーソンは夫である。

【服薬状態】1)カマグ(酸化マグネシウム) 2)ポステリザン軟膏(大腸菌死菌製剤) 3)5%ブドウ糖 4)フェジンIA

【他部門からの情報】

Dr.:現在はうつ状態がよくなっているのでリハが施行できる。うつ病があるので、励ましてはいけない。転倒へのリスク管理を徹底する。術後の固定性はよい。肺炎は再発の可能性があるので要注意。禁忌肢位には十分気をつける。パーキンソン症状はほとんど見られない。循環障害はない。

Nr.:リハビリ目的で精神科から当病棟へ移動。三ヶ月前までは誤嚥性肺炎を繰り返していた。うつ病の薬は現在も服薬中であり、励まさないようにする。異常行動はないが不眠がある。病棟でのトランスファーは自立している。更衣動作では、下半身の着替えだけが困難である。

MSW:特になし。

【X線所見】*画像添付推奨

 

C.心身機能情報

【バイタルサイン】

血圧:98/58mmHg

脈拍数:P86/分

体温:36℃

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D.環境情報

【家族からの情報】同居の家族は受け入れに協力的であるが、段差が多いので、段差があっても大丈夫な状態で帰って来てほしい。2階建てだが、1階に本症例の部屋がある。5人で暮らしている。

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E.理学療法評価

1.【全体像】

◆第一印象:車椅子でリハ室まで来られて挨拶をすると返事を下さった。とても優しそうな感じにみえたが声に元気がなく、表情をあまり表に出さない感じにみうけられた。

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2.【認知症・意識障害の検査】

◆HDS-R検査:認知症の疑いなし。

◆JCSについては、第一印象と問診で判断できたため省略した。

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3.【形態測定】

項目

  

左右差

(四肢長)

測定点

   

SMD

上前腸骨棘~内果

78cm

77cm

-1cm

TMD

大転子~外果

70cm

69cm

-1cm

大腿長

大転子~外側上顆

34cm

33cm

-1cm

下腿長

外側上顆~外果

36cm

36cm

0cm

 

大腿周径

膝蓋骨上縁+0cm

31.5cm

32cm

+0.5cm

膝蓋骨上縁+5cm

33cm

32cm

-1cm

膝蓋骨上縁+10cm

36.5cm

35cm

-1.5cm

膝蓋骨上縁+15cm

38cm

38cm

0cm

膝蓋骨上縁+20cm

39cm

38cm

-1cm

下腿周径

最大

28cm

27cm

-1cm

最小

18cm

18cm

0cm

*左右差は右と比較した数値である。

<アセスメント>

 形態測定において、大腿周径では膝蓋骨から5㎝の部位では関節の腫脹の度合いを、10㎝の部位で内・外側広筋の大きさを、また15㎝の部位では大腿全体の筋群の大きさをみるとされている。

全体的に下肢の周径に左右差がみられる。まず、SMDとTMDを見てみると、両方ともに1㎝の差がある。この原因として、本症例は人工骨頭置換術を施行しており、骨頭が臼蓋に押し付けられている可能性がある。また、骨盤の挙上や下制で左右差があるとも考えられる。骨盤挙上筋である腰方形筋や内腹斜筋、外腹斜筋の短縮によって、骨盤が挙上位に固定されてしまっていることも考えられる。その状態で歩行をしていれば病的歩行につながってしまう。

次に周径の左右差であるが、第一に、右下肢が患側であれば、浮腫・腫脹が考えられるが、健側であるというのと循環障害がないことからその可能性は低い。

 第二に考えられるのは、患側である左下肢の筋萎縮である。長期臥床による廃用性筋萎縮が考えられる。患側である左下肢の筋体積の減少が十分に考えられ、長期臥床によって左下肢の筋体積が減少したと考えるのが妥当であると考える。

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4.【感覚検査】

1)≪表在感覚≫

◆触覚

・大腿前面後面、下腿前面後面、足部前面後面 問題なし

・検査方法として、患者様に健側の感覚を「10」と認識してもらい同じ強さで患側の感覚が、健側の「10」に対してどれぐらいの感覚かを答えてもらう。

 

◆痛覚

・大腿前面後面、下腿前面後面、足部前面後面 問題なし

・検査方法は、触覚と同じように施行した。

 

2)≪深部感覚≫

◆位置覚:患者様に答えてもらうやり方で施行した

肩関節 5 / 5    股関節  5 / 5

肘関節 5 / 5   膝関節  5 / 5

手関節   5 / 5    足関節  5 / 5

手PIP関節  5 / 5     手DIP関節   5 / 5

母趾MTP関節   5 / 5

 

◆運動覚:患者様に動かしてもらうやり方で施行した

肩関節 5 / 5    股関節  5 / 5            

肘関節  5 / 5    膝関節   5 / 5

手関節 5 / 5    足関節 5 / 5

手PIP関節  5 / 5    手DIP関節 5 / 5

母趾MTP関節  5 / 5

*位置覚・運動覚  異常なし

<アセスメント>

 今回は全ての項目において異常はなかったが、表在感覚(触覚・痛覚)に問題があるとすれば、知覚神経の上行性ニューロンに表在感覚の刺激が伝導されずに視床や中心後回(大脳皮質体性感覚野)まで伝達されないことになる。頸部骨折により、末梢神経に損傷が起きれば、デルマトームでの感覚が脊髄の各髄節へと伝わらずに、「脱失(消失)」「鈍麻」「過敏」となる。その結果、痛みを認識できずにその部位に二次的障害を来たしたり、感覚がないことで褥瘡を生じやすくなったりする。

 また、深部感覚は小脳に送られるが、深部感覚に問題があるとすれば、肢節運動失行を生じる。

 これらの感覚に障害があるとすれば、上肢を例にすると粗大な運動自体は可能であるが、熟練した手指の動きや道具の使用が著しく障害され、肢節運動失行を生じる。また、行為の「構え」の障害、すなわち運動遂行前に適切な肢位をとるという予測的な準備状態の設定が困難となる。

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5.【疼痛の評価】

部位:左下腿前面

発症状況:運動時痛(歩行訓練時)

痛みの性質:つっぱったような痛み(本人より)

痛みの期間:歩行時のみの痛み

◆VISUAL ANALOG SCALE:5/10

 

部位:左足部

発症状況:運動時痛(歩行訓練時)

痛みの性質:つっぱったような痛み(本人より)

痛みの期間:歩行時のみの痛み

◆VISUAL ANALOG SCALE:5/10

<アセスメント>

 本症例において、運動時のみの疼痛が本人より確認することができた。歩行時、術側である左下肢に体重が荷重された時のみに痛みを訴える。

 原因として第一に、安静臥床や車椅子の日常生活で下肢の筋力が低下していると考え、その結果、歩行時に体重が左下肢に荷重するとその体重を支持できるだけの筋力が左下肢に無く、負荷が直接骨にかかることによって骨からの痛みが生じていると考える。大腿骨頸部骨折の場合は安静臥床によって骨粗鬆症との関連があるというのもこの原因に関連すると考える。

 第二に本症例は、足部が尖足位であるため十分に術側である左下肢に体重を荷重することができない。尖足位の原因を考えてみると、足関節底屈筋である下腿三頭筋に短縮が生じたと考える。長期臥床により下肢の二関節筋である腓腹筋に短縮が生じたと考えられ、抗重力下での運動によって生じる下肢の二関節筋への自然な伸張が臥床中には加わらないことや、健側に比べ安静固定という原因が重なったために下腿三頭筋に短縮を生じ尖足位になったと考えられる。この状態で術側である左下肢に体重を荷重しているために足部を構成する骨、特に楔状骨、舟状骨、距骨、立方骨に直接負荷がかかったために疼痛を生じたと考える。普通であれば踵から接地することによって、荷重が分散されるが尖足から着くために分散されずに痛みがでたと考える。

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6.【ROM-T】

   

passive

active

部位名

運動方向

参考可動域

股関節

屈曲

125°

110°

110゜(P)

95゜

90゜

伸展

15゜

0゜

-5゜

-10゜

-20゜

外転

45°

30°

20°

20゜

20゜

内転

20°

15°

10°

5゜

10゜

外旋

45°

35°

45°

20゜

10゜

内旋

45°

35°

30°

5゜

10゜

膝関節

屈曲

130°

130°

135°

130゜

135゜

伸展

0°

-10゜

-15゜

-15゜

-25゜

足関節

底屈

45°

45°

50°

55゜

50゜

背屈

20°

0゜

-15゜

0゜

-15゜

足部

外返し

20°

20°

20°

10゜

10゜

内返し

30°

10°

10°

5゜

5゜

外転

10°

10゜

10゜

5゜

5゜

内転

20°

20゜

20゜

15゜

10゜

<アセスメント>

ROM-Tではpassiveとactiveを施行した。本症例は大腿骨頸部骨折内側骨折で人工骨頭置換術を施行しており、ROM-Tにより、股関節、膝関節の伸展制限、足関節に背屈制限がみられる。

股関節、膝関節の伸展制限を考えてみると、第一に安静臥床による筋の短縮と考える。一部、痛みの評価でも述べているが、長期臥床に伴う廃用症候群の1つとして頻発する。下肢の二関節筋には短縮が生じやすいとされ、これは抗重力下での運動によって生じる下肢の二関節筋への自然な伸張が臥床中には加わらないことで、臥床による廃用に伴ってハムストリングが下肢の筋の中で最も短縮しやすいことや、腸腰筋もこれらの条件下で短縮しやすいことから股関節屈曲筋である腸腰筋、膝関節屈曲筋であるハムストリングに短縮が生じたと考えられる。足関節の背屈制限に関しては痛みの評価で述べてあるのでここでは省略する。

◆可動域制限の原因◆

①股関節屈曲のpassive左には痛みがでたが人工骨頭置換術では過屈曲は禁忌肢位なので痛みがでたと考える。activeでの右股関節はハムストリングと大殿筋の短縮が触診できたのでこれが原因だと考える。activeでの左はハムストリングと大殿筋の短縮によるもので痛みが出る可動域までは動かせない。

②股関節の伸展制限は、筋と骨盤との関係で伸展しないことも考えられるし、脊柱起立筋(特に最長筋)の影響もある。

③両股関節の伸展制限は、膝関節自体は動きを確認できたので主に触診の結果、ハムストリングの短縮と考える。

④左足関節の背屈制限は上記載。

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7.【MMT-T】

運動

上   肢

肩甲骨外転と上方回旋

肩甲骨挙上

肩関節屈曲

肩関節伸展

肩関節肩甲骨面挙上

肩関節外転

肩関節水平外転

肩関節水平内転

肘関節屈曲

肘関節伸展

前腕回外

前腕回内

手関節掌屈

手関節背屈

下   肢

股関節屈曲

股関節屈曲外転外旋

股関節伸展

股関節外転

股関節屈曲位での外転

股関節内転

股関節外旋

股関節内旋

膝関節伸展

膝関節屈曲

足部内返し

足部外返し

足関節背屈

足関節底屈

体   幹

体幹屈曲

体幹回旋

 

◆握力:右 6.5kg  左 6.7kg (車椅子座位で計測)

◆体重:44.6kg  荷重の左右差:右 29.6kg  左 15kg

 <アセスメント>

 本症例はMMTの結果より体幹筋と下肢筋の筋力低下がみられる。本症例は車椅子での生活をしており、下肢の筋を使うのはトランスファーとリハビリの時だけである。車椅子の生活により体幹・下肢筋を使わないので、筋線維が減少し筋力が低下していると考えられる。

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8.【ADL-TEST】

◆Barthel Indexを用いてADL能力を評価した。

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9.【平衡機能検査】

*支持基底面を以下BOSと記載

1)≪座位バランス≫

静的バランス

閉眼、開眼ともに問題なし

◆動的バランス(外乱は患者の前方より骨盤に与えた)

右:頚の立ち直り反応あり(BOS内) 左:頚の立ち直り反応あり(BOS内)

右:体幹に対する立ち直り反応あり(BOS内) 左:体幹に対する立ち直り反応あり(BOS内)

右:保護伸展反応あり(BOS外) 左:保護伸展反応あり(BOS外)

前:保護伸展反応あり(BOS外) 後:保護伸展反応あり(BOS外)

 

2)≪立位バランス≫

◆静的バランス

5秒可能(立位まで介助してでの測定)

 

3)≪片足立ちテスト≫

◆開眼時

右脚:3秒可能  左脚:不可能

 <アセスメント>

座位での立ち直り反応、保護伸展反応に問題はなかった。本症例は既往歴にパーキンソン症状があるため、仮に問題があったと考えてみると、反応が出なかったというのは平衡障害が考えられる。姿勢を正常に保持しようとしてもできなくなってしまう。姿勢を保持できなくなってしまうということは、歩行につなげることも困難になってしまうし、座位バランスさえも獲得しにくくなってしまう。そうなると、予測的に反応することも出来ないと考えるので、常に介助が必要となってしまうし、日常生活の活動レベルも下がってしまう。しかし、本症例の患者の反応はしっかりとでているので、問題ないと判断できる。

 立位バランスは介助で立位まで持っていき重心を整えた状態で手を離して測定した。両上肢でバランスをとりながらの立位であり、体幹の動揺がみられる。主要姿勢筋群である頚部筋、脊柱起立筋、大腿二頭筋、ヒラメ筋の筋力低下が考えられる。また、股関節伸展制限、膝関節伸展制限、足関節背屈制限があるため、矢状面での重心線が崩れており立位に支障が生じる。

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10.【筋トーヌス検査】

1)≪背臥位≫    

特に筋緊張の異常は見られなかった。

2)≪座位≫

背部左右の触診により、左背部の筋に筋緊張の軽度亢進がみられた。背部の筋として広背筋、最長筋、腸肋筋、棘筋、腰方形筋の亢進が考えられ、触診部位より最長筋、広背筋と考える。

3)≪立位≫    

背部左右の触診により、左背部の筋に筋緊張の中等度亢進がみられた。背部の筋として広背筋、最長筋、腸肋筋、棘筋、腰方形筋の亢進が考えられ、触診部位より最長筋、広背筋と考える。

両下肢は屈曲位をとる。健側である右下肢に荷重の比率が大きいためと考えられる、右下肢の大腿四頭筋、ハムストリングスの筋緊張の軽度亢進がみられた。

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11.【姿勢分析】

はじめに、基本矢状面と基本前額面でみる立位での重心線を記載する。

<基本矢状面でみる立位での重心線>

①耳垂 ②肩峰 ③大転子(大腿骨骨頭のやや後方・股関節後方) ④膝関節前部(膝関節中心の前方)⑤外果やや前方(外果やや前方)

<基本前額面でみる立位での重心線>

①後頭隆起 ②椎骨棘突起 ③殿列 ④膝関節内側中心(両膝関節内顆間の中心) ⑤両内果間中心

1)≪座位(見守り)≫

【前額面(前方)】

 頚部は正中位で、右肩甲骨が軽度下制、左肩甲骨は軽度挙上し、両股関節は軽度内旋・内転して、両膝関節は正中位であり、右足部は軽度外転して、左足部は正中位である。重心線は健側である右側に偏位している。

【前額面(後方)】

頚部は正中位で、右肩甲骨が軽度下制、左肩甲骨が軽度挙上し、両骨盤は水平位である。重心線は健側である右側に軽度位置している。

【矢状面(右側)】

 仙骨支持である。頚部は軽度屈曲し、右肩甲骨は軽度前方突出し、右肘関節は軽度屈曲位である。骨盤は仙骨支持ということもあり、中等度後傾し、右股関節は約90゜屈曲し、右膝関節も約90゜屈曲して、右足関節は軽度底屈位である。

【矢状面(左側)】

 仙骨支持である。頚部は軽度屈曲し、左肩甲骨は軽度前方突出し、左肘関節は軽度屈曲位である。骨盤は仙骨支持ということもあり、中等度後傾し、左股関節は約90゜屈曲し、左膝関節も約90゜屈曲して、足関節は軽度底屈位である。

【水平面】

 頚部は正中位であり、右肩甲骨は軽度前方突出し、左肩甲骨は軽度後退している。

<アセスメント>

 座位においてはアライメントの大きなずれはないが、右肩甲骨が下制している原因としては、右の骨盤帯で体重支持をすることで左骨盤にかかる体重負荷を軽減させ、右骨盤帯に体重をかける結果、右肩甲骨が下制していると考える。このことは体重測定の左右差からも判断できる。

 

2)≪立位(介助)

【前額面(前方)】

 頚部は正中位であり、視線はやや下方である。右肩甲骨が軽度下制、左肩甲骨は軽度挙上し、肘関節は正中位で、骨盤は左側が軽度下制、右側は軽度挙上し、両股関節は軽度内転・内旋し、膝関節は軽度外反膝であり、右足関節は軽度外転して左足関節は正中位である。重心線は健側である右側に軽度位置している。

【前額面(後方)】

 頚部は正中位であり、右肩甲骨が軽度下制、左肩甲骨は軽度挙上し、肘関節は正中位で、骨盤は左側が軽度下制、右側が軽度挙上して重心線は健側である右側に軽度位置している。

【矢状面(右側)】

 頚部は軽度屈曲し、右肩肘関節は軽度屈曲し、体幹は軽度前傾し、右股関節は軽度屈曲し、膝関節は軽度屈曲し、足関節は軽度背屈位である。

【矢状面(左側)】

 頚部は軽度屈曲し、左肩肘関節は軽度屈曲し、体幹は軽度前傾し、左股関節は軽度屈曲し、膝関節は右よりも屈曲角度が大きい軽度屈曲位で、足関節は軽度底屈位である。

<アセスメント>

 術側である左下肢に体重をかけないように立位をとっている。膝関節の伸展制限があることや足関節の背屈制限があることで、体幹が後方へと倒れやすくなっているのが特徴的である。立位をとれる時間が短く術側をかばうように立っているために姿勢も重心線も崩れる結果となってしまう。

 

12.【動作分析】

1)≪起き上がり(見守り):背臥位より端座位へ≫

【開始姿勢:背臥位】

 頚部は正中位で、両肩関節は水平位であり両肘関節は伸展位で上肢に偏位はない。右股関節は右に軽度外転・外旋し、右膝関節は軽度屈曲し軽度内反膝であり、右足部は外転している。

 頚部・体幹・両股関節・両膝関節が同時に軽度屈曲し、それに少し遅れるようにして、両肘関節が屈曲しながら両肩関節も伸展していき、前腕支持になるまでもっていく。前腕全体の支持に進むにつれて、頚部・体幹・両股関節・両膝関節の屈曲角も大きくなり、両足部が宙に浮いた状態になる。この時、右肩甲骨が後退して体幹は軽度右側支持で骨盤は全面支持に近いが軽度右側の支持となっている。

 左上肢は前腕支持で固定したまま、右肩関節屈曲しながら肘関節を伸展し、それと同時に手関節も背屈して、頚部・体幹を屈曲、・左回旋を同時に行い、右肘関節を最大伸展位までもってくる。右上肢が最大伸展位に進むにつれて体幹が前傾し、足部がベッドに接地する。

 右肘関節を最大伸展位までもってくると、左肩関節を屈曲しながら、左肘関節を伸展して手関節も背屈していく。左肘関節が最大伸展位に近づくにつれて重心を体幹の左側に移動し、右肘関節を伸展位のまま右肩関節を水平内転して、体幹を左に回旋し右手部を左手部の橈側に並べるようにもってきて、踵骨・仙骨・両手支持になる。

 体幹を右に側屈する反動で両上肢で移動し、両股関節を屈曲し骨盤を軸にして、左回旋を行ないながら両股関節を伸展し、両膝関節を伸展していく。この時、右上肢をベッドの上にもってきて端座位になる。

 

2)≪立ち上がり(一部介助):端座位より立位へ≫

【開始肢位:端座位】

【第1相】端座位から体幹前傾まで

 体幹を前傾しながら両肩関節の伸展と両肘関節の屈曲も同時に行い、また両股関節の屈曲も同時に行い、重心を殿部から足部へと移す。

【第2相】第1相より殿部離床と体幹前傾まで

 さらに体幹を前傾しながら両股関節をさらに屈曲し、両肩関節の伸展、両肘関節を伸展しながら前腕を回内していき、上肢でバランスをとりながら殿部を離床し、体重を足部へと移す。この際、下肢は股関節は約90゜屈曲位・軽度内転・内旋位、膝関節約90゜屈曲位、軽度外反膝で、左足部は外転し、右足部は正中位である。

【第3相】第2相より股・膝関節、体幹伸展し立位へ

 頚部は軽度屈曲し、両股膝関節を伸展しながら、体幹を前傾したまま両股膝関節を伸展していき、頭部軽度屈曲、両肩関節中等度屈曲、両肘関節軽度屈曲、前腕回内位、体幹は両股関節中等度屈曲により前傾し、両膝関節は中等度屈曲位の肢位で立位となる。

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3)≪歩行(介助):歩行器(四輪型歩行器)

 歩行分析は素足で行い、術側である左上下肢に着目して分析を行った。歩行分析において、以下heel contactはHC、foot flatはFF、mid stanceはMS、heel offはHO、toe offはTOと略す。

【開始肢位】

 歩行開始肢位は、頚部は正中位、軽度屈曲位で、両肩関節は約50゜外転位、軽度屈曲位、両肘関節軽度屈曲位、両前腕約90゜回内位で歩行器の上に前腕を置いて上肢を固定し体幹の安定を図っている。体幹は軽度前傾し、両股関節軽度屈曲、軽度内転・内旋位で、両膝関節軽度屈曲位、軽度外反膝で、足部は右足関節は軽度外転位、左足関節は正中位である。

 本症例の歩行分析において、上肢は歩行器に固定していているため分析には入れていない。

【立脚期(患側・左脚)】

 HCはなく、まず足指接地があり全面足底接地となる。足指接地の時には、股関節軽度屈曲位で膝関節軽度屈曲位である。全面足底接地と立脚中期がほとんど同じであり、股膝関節が軽度屈曲位、膝関節が軽度屈曲位であるため体幹が前傾している。HOはなく、HOとTOが同時に起こる。股関節の伸展制限があるために、股関節が伸展する前に足底全面離地が起こり、常時股膝関節が軽度屈曲位のままである。重心線は健側である右側に位置しており、荷重は右側の方が強い。健側である右脚に比べると立脚期が短い。

【立脚期(健側・右脚)】

HCはなく、HCとFFが同時に起こる足底全面接地である。患側と同じ歩行周期をみることができ、患側に比べて立脚期は長い。

【遊脚相(患側・左脚)】

 HOはなく、HOとTOが同時に起こる足底全面離地であり、足底全面離地での時には股膝関節軽度屈曲位のままであり、そのまま遊脚相に移行する。体幹は歩行器に支持されており、体幹前傾で膝関節を屈曲位のまま、股関節を屈曲していき、足関節を軽度底屈位にしながら、加速期、遊脚中期、減速期へと移行していく。膝関節は完全伸展位になることはなく立脚期の前面足底接地へと移行する。

【遊脚相(健側・右脚)】

 HOはなく、HOとTOが同時に起こる足底全面離地であり、左下肢の足関節を軽度底屈位にするという点以外は動作に変化はない。

<アセスメント>

 本症例の歩行の特徴として両股関節伸展制限、両膝関節伸展制限、両足関節背屈制限がある。その特徴は術側である左下肢に顕著にみられる。また、長期臥床が原因で筋力低下や筋の萎縮、短縮があると考えられ1歩行周期に必要な筋活動も欠如していると考えられる。本症例の患側下肢の歩行周期を健常人の正常歩行と比較して分析していく。

 まず、HCでの正常歩行は股関節25゜屈曲、膝関節屈伸なし、足関節底背屈なしである。しかし、本症例はHCがなく、膝関節軽度屈曲位で足指接地があり前面足底接地となる。足指接地の時には、股関節軽度屈曲位で膝関節軽度屈曲位である。この時点で正常であれば最大働く筋であるハムストリングが活動していないことになる。そのことによりその結果、歩行器のみの安定性となり下肢での減速性と安定性が欠如してしまう結果となってしまう。

 次に、FFでの正常歩行は股関節20゜屈曲、膝関節20゜屈曲、足関節10~15゜底屈位である。本症例はFFはあるが、FFの時点ですでにMSに移行していると考えられる。そのためFFで最大に働く筋である前脛骨筋、大腿四頭筋が正常に活動しないために膝の安定性の欠如が生じる。

 第三に、MSでの正常歩行は股関節屈伸なし、膝関節15゜屈曲、足関節2~3゜背屈位である。本症例はMSでの股関節が屈曲しており、股膝関節屈曲位、足関節背屈位であるために、下肢全体の筋を活動させてしまうことになり正常歩行以上の筋力を必要としてしまうと考えられる。そのため、上肢に必要以上の筋力を活動させてしまうために上肢支持にたよってしまう結果となる。

 第四に、HOでは股関節20゜伸展、膝関節2゜屈曲、足関節15゜背屈位である。本症例はHOがなくHOとTOが同時に起こる全面足底離地である。股関節は屈曲しており、膝関節も正常歩行以上に屈曲しているため、正常歩行で最大に働く筋である下腿三頭筋、大腿四頭筋が正常に活動しないために歩行の推進力、強い蹴りだし力が欠如してしまう。

 最後に、TOでは股関節10゜伸展、膝関節40゜屈曲、足関節15~20゜底屈位である。本症例は全面足底離地であるためにTOがない。股関節は屈曲しているため、TOで最大に働く筋である下腿三頭筋、股内転筋が正常に活動していない。そのため、蹴りだし力、推進力に加え、骨盤の安定性が欠如してしまう。

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【問題点】

<Impairment level>

#1:股関節伸展制限

#2:膝関節の伸展制限

#3:左足関節背屈制限

#4:立位バランス能力低下

#5:座位支持性能力低下

#6:下肢筋力低下

#7:体幹アライメントの異常

#8:筋トーヌスの異常

#9:歩行時の左下腿前面・足部の疼痛

#10:下肢周径の左右差

 

<Disabirity level>

#11:片足立ち不能

#12:入浴動作能力低下

#13:更衣動作能力低下

#14:歩行自立能力低下

#15:階段昇降能力低下

 

<Handicap level>

#16:活動範囲の狭小化

#17:自宅復帰困難

 

【ゴール設定】

短期ゴール(3w):立位自立、屋内での歩行器歩行自立

長期ゴール(8w):屋内での杖歩行自立、屋内での杖歩行でのADL動作自立

最終ゴール:屋内独歩自立、家庭内生活の自立

 

【治療プログラム】

①物理療法

目的:手術部位に疼痛がある場合

方法:ホットパックによる疼痛緩和。

 

②関節可動域運動

目的:筋の伸張を目的としての運動。また靴、靴下着脱などのADL上必要とされる股関節屈曲、外転、外旋の改善を目標に行う。

方法:疼痛の状態に合わせて除々に拡大を目指す。

 

③短縮筋へのストレッチング

目的:筋の短縮の改善

方法:筋の走行に沿ったストレッチング、またはダイレクトストレッチングを行う。

 

④輪投げを用いたリーチ訓練

目的:バランス・腹筋群の強化

方法:輪を触ってもらうように指示してあらゆる方向に動かして触ってもらう。

 

⑤筋力増強運動

目的:歩行自立を目指すため 

方法:セラバンドを使用し、筋収縮を認知させる程度から開始し股関節周囲筋強化を徹底していく。

 

⑥基本動作訓練

目的:体幹筋の維持のためにとADLの獲得のために行う。床上立ち座り動作の獲得

方法:マットを引いてその上で立ち座り動作を行う。

 

⑦歩行器操作訓練

目的:歩行獲得

方法:転倒防止のために歩行器より始める。最初は患者に疲れがでない程度から始めて除々に距離を進めていく。

 

⑧歩行訓練

目的:歩行獲得

方法:平行棒→歩行器→ロフストランド杖→1本杖歩行の順で行う。

 

⑨屋外歩行訓練

目的:家庭復帰をめざして独歩の獲得をめざす。

方法:障害物の無いような場所から始めていく。転倒した時のことを考えて芝生などの上から始める。

 

⑩階段昇降訓練

目的:段差を乗り越えられる能力を獲得させる。

方法:訓練用階段での階段昇降をおこなう。

 

【考察】

 本症例は左大腿骨頸部内側骨折であり、人工骨頭置換術を施行している。60歳代の女性で、X線所見より、Gardenのstage分類でstageⅣだと考えられる。本症例はうつ状態があり、決して励まさないことが医師からの注意事項としてあげられている。また肺炎を術後3度にわたり患っており長期臥床を余儀なくされた状態である。大腿骨頸部内側骨折は、骨粗鬆症を有する高齢者に多く、①関節内骨折なので、骨折部に外骨膜がないため骨膜性化骨が形成されず、また滑液が骨折部に流入して骨癒合が障害される。②大腿骨骨頭部への血行は、主として頚部側の内側大腿回旋動脈から供給されているので、骨折によりこの血行が絶たれると骨頭側は阻血状態となるので骨折治癒能は頚部側のみとなる。③骨折線は垂直方向に走りやすいので、両骨片間に剪断力が作用する。したがって骨片は離開して骨癒合が阻害される。④高齢者に多発するので、骨再生能力が低下している。などの理由から最も治癒し難い骨折として有名であり、治療法としては、外側骨折とことなり主に人工骨頭置換術を行う。

 本症例においてのゴール設定とその理由として、短期ゴール(3w)は立位自立、屋内での歩行器での歩行自立をあげた。現在、立位は介助が必要であり、歩行は歩行器により可能だが見守りが必要である。まず、最初に立位を自立させることによって歩行につなげていかなければならない。立位は歩行につなげる一つ前の段階であり、立位での自立をさせ、重心のアライメントをしっかりと患者に認識させなければならないと考える。また、歩行器での歩行自立は歩行の獲得をめざすために上肢の筋力での歩行の獲得につなげていくことによって下肢の動作獲得につなげていかなければならないと考える。長期ゴール(8w)では、屋内での杖歩行自立、屋内での杖歩行でのADL動作自立をあげた。家庭復帰をめざすためには歩行獲得を目指し、杖での自立を目指す。現在、病棟内でのBarthel Indexでの減点項目は入浴動作、階段昇降、更衣動作である。杖歩行を獲得した後これらの減点項目での自立を目指して家庭復帰までもっていきたいと考える。最終ゴールは屋内独歩自立、家庭内生活の自立である。Case-Aの家族の受け入れ状態は良いが、歩行自立の獲得を望んでいるため最終ゴールは歩行自立をあげた。

 まず、短期ゴールの阻害因子となっているのが荷重量からも分かるように術側である左下肢に体重をかけないように立位をとっていることが考えられる。膝関節の伸展制限があることや足関節の背屈制限があることで、体幹が後方へと倒れやすくなっているのが特徴的である。立位をとれる時間が短く術側をかばうように立っているために姿勢も重心線も崩れる結果となってしまう。

次に、運動時のみの疼痛が本人より確認することができた。歩行時、術側である左下肢に体重が荷重された時のみに痛みを訴える。

 原因として第一に、安静臥床や車椅子の日常生活で下肢の筋力が低下していると考え、その結果、歩行時に体重が左下肢に荷重するとその体重を支持できるだけの筋力が左下肢に無く、負荷が直接骨にかかることによって骨からの痛みが生じていると考える。大腿骨頸部骨折の場合は安静臥床によって骨粗鬆症との関連があるというのもこの原因に関連すると考える。

 第二に本症例は、足部が尖足位であるため十分に術側である左下肢に体重を荷重することができない。尖足位の原因を考えてみると、足関節底屈筋である下腿三頭筋に短縮が生じたと考える。長期臥床により下肢の二関節筋である腓腹筋に短縮が生じたと考えられ、抗重力下での運動によって生じる下肢の二関節筋への自然な伸張が臥床中には加わらないことや、健側に比べ安静固定という原因が重なったために下腿三頭筋に短縮を生じ尖足位になったと考えられる。この状態で術側である左下肢に体重を荷重しているために足部を構成する骨、特に楔状骨、舟状骨、距骨、立方骨に直接負荷がかかったために疼痛を生じたと考える。普通であれば踵から接地することによって、荷重が分散されるが尖足から着くために分散されずに痛みがでたと考える。これらの原因を取り除くことによって、短期ゴールまで持っていかなければならない。

 長期ゴールの阻害因子となっているのは、形態測定において、全体的に下肢の周径に左右差がみられる。まず、SMDとTMDを見てみると、両方ともに1㎝の差がある。この原因として、本症例は人工骨頭置換術を施行しており、骨頭が臼蓋に押し付けられている可能性がある。また、骨盤の挙上や下制で左右差があるとも考えられる。骨盤挙上筋である腰方形筋や内腹斜筋、外腹斜筋の短縮によって、骨盤が挙上位に固定されてしまっていることも考えられる。その状態で歩行をしていれば病的歩行につながってしまう。

 第二に考えられるのは、患側である左下肢の筋萎縮である。長期臥床による廃用性筋萎縮が考えられる。患側である左下肢の筋体積の減少が十分に考えられ、長期臥床によって左下肢の筋体積が減少したと考える。また、短期ゴールで述べた痛みの理由もある。

次に、ROM-Tにより、股関節、膝関節の伸展制限、足関節に背屈制限がみられる。股関節、膝関節の伸展制限を考えてみると、第一に安静臥床による筋の短縮と考える。一部、痛みの評価でも述べているが、長期臥床に伴う廃用症候群の1つとして頻発する。下肢の二関節筋には短縮が生じやすいとされ、これは抗重力下での運動によって生じる下肢の二関節筋への自然な伸張が臥床中には加わらないことで、臥床による廃用に伴ってハムストリングが下肢の筋の中で最も短縮しやすいことや、腸腰筋もこれらの条件下で短縮しやすいことから股関節屈曲筋である腸腰筋、膝関節屈曲筋であるハムストリングに短縮が生じたと考えられる。足関節の背屈制限に関しては下腿三頭筋の短縮が考えられる。また、MMTでの下肢筋力低下は下肢の支持性低下にも繋がる。これらの阻害因子を取り除き長期ゴールにつなげていきたいと考える。

最終ゴールでは、これまでの問題点をしっかりと改善していくことで家庭内での自立につなげていきたい。しかし、杖を使わなくなるということは、それだけ支持基底面が狭くなるということでもありバランス能力も必要となるために転倒予防に対しての十分な指導が必要となってくる。

以上のことから理学療法治療プログラム立案し、アプローチを行いたい。アプローチとして、ROM訓練は脱臼肢位を考慮した愛護的な他動的ROM訓練から開始する。特に靴・靴下着脱などのADL上必要とされる股関節屈曲、外転、外旋の改善を目標に、疼痛の状態に合わせて除々に拡大を目指す。この時に腸腰筋、ハムストリングス、下腿三頭筋の筋の走行に沿ってストレッチングを行い、短縮をとってあげる必要がある。筋力増強訓練は床上での外転運動や股関節屈曲伸展運動などを自動介助にて施行したり、セラバンドを使用して筋収縮を認知させる程度から開始し、疼痛の状態に合わせて負荷量を増加させていく。術側荷重位で筋収縮タイミングを認識させる訓練などを取り入れ、歩行時に必要となる股関節周囲筋強化を徹底していく。歩行訓練では、疼痛の許す範囲の荷重量から歩行訓練を開始する。平行棒内歩行から始め、術側への荷重可能量、筋力を評価しながらロフストランド杖歩行、さらに1本杖歩行へと進めていく。本症例は股関節周囲筋がMMT3なので歩行の順番は気をつける必要があると考える。ADL動作である寝返り動作、起き上がり動作、床上立ち座り動作、靴と靴下着脱動作を疼痛の状況に合わせて脱臼防止動作指導を中心として行う。その後、自宅復帰へ向けての段差越えなどの能力獲得を目指して階段昇降訓練を行う。

 文献によると高齢者は、体勢を整えるような上半身の動きが即座にとれないため、外乱に対し動揺を増幅させてしまう。そのため股関節の内・外転の関節可動域が少なく、効果的な予防動作が行えず体勢を立て直すことができない。このことが原因で大転子部に強い衝撃が加わり、大腿骨頚部骨折を引き起こす。また一方で、転倒予防に対する意識が高まれば転倒の発症は減少するとの報告もある。

 医学的なリスク管理が十分機能しない状況における無計画で一貫性のない予防のための運動指導や理学療法は、参加あるいは対象となる人の一時的な身体活動量の増加を招くものと考えられるが、その半面、むしろ転倒のリスクが指数関数的に増加することを忘れてはならない。そのため、各個人の身体特性や生活環境に応じた転倒予防対策が医学的管理というプラットホーム上で安全かつ効果的に継続できるような、そしてまた、一人ひとりが自分の身体を知ることができるようなシステムが、転倒・骨折予防の対策として理想的であると考える。

 

【参考・引用文献】

  1. 葛山智宏・他:変形性股関節症の理学療法Update.理学療法21巻4号.2004.
  2. 山田浩二・他:大腿骨頸部骨折に対する加速的アプローチ.理学療法21巻5号.2004.
  3. 山嵜勉:整形外科理学療法の理論と技術.株式会社メジカルビュー社.2000.
  4. 富士武史・他:整形外科疾患の理学療法.金原出版株式会社.2005.

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 整形疾患, 病院, レポート・レジュメ, 精神疾患