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【脛骨腓骨開放骨折+脛骨髄内釘固定術】レポートの作成例【実習】

2021年12月29日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「脛骨腓骨開放骨折+脛骨髄内釘固定術」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 脛骨腓骨開放骨折を呈する患者

  • 脛骨髄内釘固定術を施行

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「脛骨腓骨開放骨折+脛骨髄内釘固定術」の患者のレポート・レジュメ作成例

A.はじめに

今回、左脛骨腓骨開放性骨折術後、左脛骨髄内釘固定術を施行した患者の評価をする機会を得たので、以下に報告する。

 

B .症例紹介

【患者氏名】

【性別】

【年齢】

【職業】

【利き手】右

【主訴】手術部と足首がたまに痛くなる

【HOPE】早く普通に歩けるようになり、仕事復帰したい。

【NEED】疼痛軽減、足関節背屈角度増大、股・膝・足関節周囲筋筋力増強

【病名】左脛骨腓骨開放性骨折、左前脛骨筋、下腿三頭筋挫傷

 

C.社会的情報

【家族情報】Key person:妻

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D.医学的所見

【診断名】左脛骨腓骨開放性骨折、左前脛骨筋、下腿三頭筋挫傷

【入院年月日】〇〇年〇〇月〇〇日

【手術日】〇〇年〇〇月〇〇日

 デブリードマン施工一部全層植皮術施工

 左脛骨髄内釘固定術、全層植皮術

【現病歴】

〇〇年〇〇月〇〇日 仕事中トンネル工事現場で左下腿を鉄板と石で挫滅し、A病院入院

〇〇年〇〇月〇〇日 デブリードマン施行一部全層植皮術施行(前脛骨筋表層の断裂、下腿三頭筋内側の一部断裂)(サージロンにて筋成分を縫合)

〇〇年〇〇月〇〇日 リハビリ開始 板付車椅子

〇〇年〇〇月〇〇日 左脛骨髄内釘固定術、全層植皮術

〇〇年〇〇月〇〇日 術後リハビリ再開(passive ROM)膝90゜屈曲・足背屈-10゜

〇〇年〇〇月〇〇日 植皮の血行不良を招くため、一週間安静を要することになる。リハビリ中止

〇〇年〇〇月〇〇日 リハビリ再開 膝・足関節のROMex開始(passive,active)

〇〇年〇〇月〇〇日 両松葉杖自立(N.W.B)下腿浮腫著明

〇〇年〇〇月〇〇日 両松葉杖自立(N.W.B)にて外泊

〇〇年〇〇月〇〇日 膝屈曲140゜、足背屈-5゜

〇〇年〇〇月〇〇日 A病院亜急性期病棟へ転科、転棟

〇〇年〇〇月〇〇日 1/3P.W.B開始

〇〇年〇〇月〇〇日 1/2P.W.B開始 起立台にてStanding ex、ハドマー開始

〇〇年〇〇月〇〇日 F.W.B開始 独歩自立

〇〇年〇〇月〇〇日 当院でのリハビリ希望にて転院となる

【一般情報】

身長:

体重:

血圧:124/66

脈拍数:68/分

ADL:

・移動:自立(歩行の能力低下)

・食事:自立

・排泄:自立

・入浴:自立

・シャワー:自立

・清拭:自立

・衣服着脱:自立(ズボンをはくのは立位では不可)

《コメント》

ADLはすべて自立しているが移動・衣服着脱が困難である。その原因として左足関節の背屈角度が小さいため歩行能力の低下、衣服着脱(立位でのズボン着脱)困難となっている。

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E.理学療法評価

【全体像】

独歩にてリハビリ室に来室。リハビリに対する意欲もあり、性格も温厚である。

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【検査・測定】

<視診・触診>

左下腿前面に2箇所手術創が見られた。(下図赤色部分)

発赤:手術創周囲から足部にかけて多少赤みを帯びている。(下図斜線部)

発熱:手術創周囲から足部にかけて多少熱感あり。(下図斜線部)

腫脹:手術創周囲から足部にかけて多少腫脹あり。(下図斜線部)

 

大腿四頭筋の萎縮

腓腹筋・ひらめ筋の過度な緊張

左距腿関節と距骨下関節のアクセサリームーブメントの可動性が右側に対し左側では低下していた。

 

<疼痛検査>

・部位(下図斜線部)

(1)手術部の痛み(手術部深部)

①発現時

安静時痛:+

運動時痛(歩行時):+

伸張時痛:-

夜間痛:-

②程度

痛みが軽いときは「ズキンズキン」とする程度(我慢できる)

痛みが強いときは歩けなくなる程度

《コメント》

この部位を圧迫してみたがそのときは痛みはなく、背臥位で足部を持ち振動させると痛みが出現した。また、手術部に外反、内反ストレスをかけても痛みが出現した。対象者の主訴として「この部位の痛みは調子のいいときはまったく痛くなく、痛いときは歩けなくなるくらい痛い。安静時痛くなる時もあるが歩いている時痛くなることが多い」と訴えていた。痛みの程度を京都大式VAS検査:Visual analogue scaleで検査しようとしたが、対象者が「どのくらいなのかよくわからない」と訴えたため検査しなかった。

 

(2)距腿関節深部の痛み

①発現時

安静時痛:+

運動時痛(歩行時):+

伸張時痛:-

夜間痛:+

②程度

寝ていると痛みで目が覚める。

《コメント》

この部位に圧迫ストレスをかけてみるが痛みは発生しなかった。また、他動的に底屈、背屈してみても痛みは発生しなかった。この部位の痛みは「痛くないときは痛くなく、痛いときは痛い」と訴えていた。「寝ていると痛くなるときが多くその痛みで目が覚めることがあり、足の位置を変えたり、揉んだりすると痛みが和らぐ」と訴えていた。さらに長時間歩いても痛みが出てくると訴えている。

 

(3)膝窩部の痛み(膝窩部深部)

①発現時

安静時痛:-

運動時痛:-

伸張時痛(足関節背屈時): +

夜間痛:-

②程度

「ピキッ」と痛くなるが、膝を屈伸すると和らぐ。

《コメント》

この部位の痛みは、膝関節伸展位での足関節背屈で出現し、膝関節屈曲位にすると出現しなかった。また起立台に立っているときにも痛みが出現し「膝の関節がピキッと痛くなる」と訴えられ、対象者自身で膝を屈伸させて痛みを和らげていた。背臥位にて外反、内反ストレステスト、McMurrayテストを行ったが痛みは出現しなかった。

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<形態測定>

(単位:cm)

大腿周径

右側

左側

左右差

膝蓋骨上縁0cm

37,5

37,0

-0.5

     5cm

38,8

36,5

-2.3

   10cm

41,7

39,0

-2.7

   15cm

45,7

42,7

-3.0

下腿周径

右側

左側

 

下腿最大部(膝蓋骨下縁より10cm下)

35,5

37,5

+2.0

下腿最小部(外果下端より3cm上)

21,0

22,4

+1.4

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<関節可動域検査>

(単位:゜) (Pain:P)

下肢

active

左右差

passive

左右差

 

 

 左

 

膝関節

      

屈曲(股屈曲位)

145

140

-5

145

145

±0

屈曲(股伸展位)

140

135

-5

145 

145

±0

伸展

-5

-5

-5

-5

足関節

      

背屈(膝伸展位)

10

-5

-15

15

-15

背屈(膝90゜屈曲位)

15

-5

-20

20

-20

底屈

40

35

-5

40

40

±0

足部

      

外返し

15

-15

15

-10

内返し

25

-20

40

15

-25

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<manual muscle test:MMT>

 

膝関節屈曲

膝関節伸展

足関節底屈

足の背屈ならびに内返し

足の内返し

足の背屈を伴う外返し

《コメント》

足部のMMTは左足部の可動域が小さいため動かせる範囲動かしてもらい背臥位にて徒手による抵抗を加えた。足関節底屈は伏臥位、膝伸展し足関節をベッドより出して計測した。この肢位では通常完全な足底屈運動ができて、最大抵抗に負けずに保てたら2+であるが、右と比較した場合筋力には差はなかったため5とした。

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<感覚検査>

触覚・痛覚(末梢神経支配領域:右下肢を10として)

伏在神経領域 0/10(感覚消失)(下図斜線部)

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〈立位アライメント分析〉

両踵をつけて立つことができず、股関節軽度屈曲し立位保持していた。

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〈歩行分析〉
左立脚相

①左heel contact~mid stance

・左下肢股関節屈曲、膝関節伸展、足関節底屈で立脚相に入りheel contactがなく足底全体で接地している。mid stance時に膝屈曲がなく伸展したままである。mid stance時の足関節では足関節背屈困難なため踵が床についていない状態であった。

②左mid stance~toe off

・mid stance~heel off時に足関節背屈がなく左の骨盤を挙上するようにしてheel off~toe offとなっている。このときの股・膝関節は軽度屈曲していた。左の立脚相は短く、歩幅が狭かった。

 

左遊脚相

①骨盤挙上したまま遊脚相へ入り減速期に元に戻る。足関節の動きは遊脚相中ほとんど変化がなく、底屈位に保持されたままだった。

歩行中の足関節の動き(黒:通常の動き、赤:本症例の動き)     

《コメント》

・左脛骨が髄内釘固定されており骨癒合がされていない。そして、末梢骨片が軽度外側に転位している。左腓骨は仮骨が形成され骨癒合がされている。

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【問題点】

Impairmentレベル

#1. 手術創部の疼痛

#2. 距腿関節深部の疼痛

#3. 左膝窩部の伸長時痛

#4.左下腿~足部にかけての炎症

#5.左足関節背屈可動域制限

#6. 左股・膝・足関節周囲筋力低下

#7. 伏在神経領域の感覚消失

 

Disabilityレベル

#8.歩行困難

 

Handicapレベル

#9.職業復帰困難

 

【ゴール設定】

・Short term goal(2W):炎症を抑える

・Long term goal(4W):左足関節背屈可動域増大(-5゜→10゜)、左股・膝・足関節周囲筋力増強(MMT4→5)、歩行能力向上

・Final goal:職業復帰

 

【理学療法プログラム】

#1、2、4に対して

アイスパック

目的:炎症(腫脹)、痛みの軽減

方法:炎症による痛みの出ている左足部と手術部に10分程度あてる。

 

#1,2,3,4,5に対して

渦流浴

目的:炎症(腫脹)、痛みの軽減、関節可動域訓練前の前処置として

方法:35~40℃の間で10分から15分程度、左下腿部を入れ、足関節部を自動的に動かす。

 

超音波

#2、3、5に対して

目的:左足関節部の疼痛軽減、筋の伸張性の増大

方法:1~1,5MHz、1~2W/c㎡の周波数と強度で腓腹筋・ひらめ筋部へあてる。

 

関節可動域訓練

#5に対して

目的:腓腹筋・ひらめ筋による背屈可動域制限改善

方法:腓腹筋・ひらめ筋のストレッチング、距腿関節・距骨下関節のモビライゼーション

 

筋力増強訓練

#6に対して

目的:左股・膝・足関節周囲筋力増強

方法:

①CKCでの筋力増強運動(スクワット)10回×5セット

足関節背屈困難によりスクワット時バランスを崩す危険があるため平行棒内で行わせる。

②重錘(5kg)を用いての筋力増強10回×3セット

1)坐位にて重錘を下腿遠位部につけ膝を屈伸させる。膝を曲げるときはゆっくりと曲げさせるようにし、大腿四頭筋の遠心性収縮を促す。

2)腹臥位にて重錘を下腿遠位部につけ膝を屈伸させる。膝を伸ばすときはゆっくりと伸ばすようにし、ハムストリングスの遠心性収縮を促す。

③セラバンドを用いての足関節背屈運動10回×3セット

坐位にてセラバンドをベッドなどに巻き固定し、足部に巻きつけ足関節の背屈運動を行わせる。

 

【考察】

本症例は左脛骨腓骨開放性骨折、左前脛骨筋、下腿三頭筋挫傷と診断され、デブリードマン施工一部全層植皮術施工、左脛骨髄内釘固定術、全層植皮術を施行された建設会社作業員の男性である。現在、院内移動は独歩にて行っている。

文献によると下腿骨骨折の受傷機転は交通事故による直達外力やスキーなどによる捻転力が働いて起こることが多いとされている。また脛骨は軟部組織の被覆が少ないため開放骨折になりやすい。好発部位は下腿中央および螺旋骨折では脛骨下1/3部に骨折が起こりやすい。転位は斜骨折では屈曲側に三角形の第3骨片を形成する。また、斜骨折と螺旋骨折では、脛骨と腓骨の骨折部の高さが違う。合併症として中下1/3の骨折では、血行障害のため遷延治癒や偽関節になりやすい。足関節の二次性変形性関節症を起こすことがある。治療の観血的療法は、従来より金属プレートを用い固定する方法がよくとられてきている。骨幹部の横骨折ではkuntscherの髄内釘による固定法がある。開放骨折の場合、創外固定法が最近ではよく用いられる¹⁾。本症例も受傷機転は事故による直達外力により近位部での開放骨折で脛骨の固定には髄内釘を用いて固定している。

 本症例患者は建設会社作業員であり、職業復帰に高い機能が必要になると考えられる。患者のニードからも早く職業復帰したいということなので、最終的に職業復帰できるようにアプローチをしていかなければならないと考えた。そのためには、左下肢の疼痛軽減、筋力強化、関節可動域、下腿三頭筋の柔軟性が必要となってくる。現在問題点となっていることは手術創部の疼痛、左足関節部の疼痛、左膝窩部の伸長時痛、左足関節背屈可動域制限、左下肢の筋力低下、伏在領域の感覚消失、左下腿~足部にかけての炎症であり、この原因について以下に報告する。

 今回の問題点の#1にあげた手術創部の疼痛において、背臥位にて足部をつかみ足を持ち上げ振動を加えるようにゆすると痛みを訴えた。手術創部に内・外反方向にストレスを加えても痛みを訴えた。また、X-P所見においても脛骨は骨癒合が完全ではなく、軽度の転位も見られることから、骨折部位にストレスを受け疼痛が生じていると思われる。また、この部位は炎症があるため、安静時痛の原因は炎症によるものと考えられる。

#2にあげた距腿関節深部の疼痛だが左足関節部に骨折部位からきたと思われる炎症が見られ、下腿周径においても左側は右側に比べ1cmほど大きく腫脹が見られたため患者の訴えなどからも炎症による疼痛と考えられる。また、歩行時に痛みだす原因として、距骨は、下腿から垂直に加えられた力を、水平に置かれた足に伝達する要となる骨だが本症例では足関節を底背屈中間位に保持することが困難で、下腿から加えられる力を足に伝達することが困難となり、距腿関節の一箇所に断続的にストレスが加わることにより疼痛が出現していると思われる。

#3にあげた左膝窩部の伸長時痛は膝伸展位で足関節背屈した時に痛みが出現するが、膝屈曲位で背屈すると痛みは出現しなかった。また、起立台に立っているときにも痛みを訴えた。腓腹筋とひらめ筋を触診してみると両筋とも過度に緊張していて硬くなっていた。膝屈曲位で背屈すると痛みが出現しなかったことから二関節筋である腓腹筋が過度に伸張されて痛みが出現しているものと思われる。

次に#4にあげた左下腿~足部にかけての炎症だが骨折という機械的外傷によって生じ、発赤、腫脹、発熱、疼痛という炎症特有の症状出ている。視診によって発赤が確認でき、触診により発熱が確認でき、下腿周径により腫脹の程度が確認できた。また前に述べた#2. 左足関節部の疼痛は骨折部からの炎症によるものも原因の一つと考えた。

次に#5にあげた左足関節背屈可動域制限は足関節背屈時拮抗筋である下腿三頭筋を触診すると過度に緊張していた。また距腿関節と距骨下関節のアクセサリームーブメントでも、右側に対し左側では可動性が低下していた。文献によると関節の不動状態は、局所の循環が障害され、軟部組織の細胞浸潤を招き、線維素の析出、結合織の増殖、関節包や周辺靭帯、筋組織の柔軟性、伸縮性が低下し、徐々に関節腔内の線維性癒着が生じてくる。とされており、八百板は固定10日目より滑膜肥厚、滑液包への細胞浸潤を認めたと報告している²⁾。以上のようなことから本症例も結合織の増殖、関節包や周辺靭帯、筋組織の柔軟性、伸縮性が低下したことにより可動域制限が生じたと考えられる。

次に#6にあげている左股・膝・足関節周囲筋の筋力低下だがMMTにおいて右股・膝・足関節周囲筋にくらべ左股・膝・足関節周囲筋の筋力は全体的に落ちていた。大腿周径測定においても膝蓋骨上縁0cm、5cm、10cm、15cmと測定したが左下肢は右下肢に対して全体的に小さかった。文献によると0cmは膝関節の腫脹の程度を知り、5cm~10cmにおいては内側広筋と外側広筋の大きさを、15cm~20cmの上下は大腿全体の筋群の大きさを知るためとされている³⁾。文献的には膝蓋骨0cmは腫脹による差となっているが、本症候は膝に腫脹は認められないため大腿四頭筋などの膝周囲筋による影響だと思われる。視診、触診においても大腿四頭筋の萎縮は見られた。Muller により最大筋力の20~30%の筋活動があれば筋力は維持され、20%以下では筋力は低下することが報告されている。また、絶対安静の状態で筋収縮を行わなければ、1日に1~1,5%の筋力低下をきたすことが報告されている⁴⁾。また、整形外科疾患における筋力低下の要因として骨・関節・筋疾患とその治療過程における関節の固定や不動、運動低下などの廃用性要因があり、筋力低下には筋萎縮が伴う⁵⁾とされている。本症例も長期の安静期間により左下肢の筋力が低下したと思われる。

これに対する訓練としてCKCでの筋力増強訓練を考えた。この方法は両下肢で支持し、ゆっくりと重心を下げる。左右脚の体重支持量を変化させ、障害側の許可された負荷量に調節する。最初はゆっくりとした速度で開始し屈曲角度を少なく行うが、慣れたら速度や屈曲角度を大きくし変化をつける⁵⁾。CKCの筋力トレーニングの特徴は、多関節荷重連鎖の運動で身体バランスを保ちながら、股・膝・足関節を同時に屈伸させる多筋群連動・多関節連動での協調性運動である。そのほかのトレーニングはOKCによるトレーニングだがOKCの筋力トレーニングの特徴はターゲットとした筋あるいは筋群の随意性最大収縮を引き出すことが可能である点である。⁶⁾

次に#7にあげた伏在神経領域の感覚消失だが触覚・痛覚を検査してもまったく感覚がないことから、解剖学的に伏在神経の走行と受傷部位を考慮すると受傷時に神経が断裂したと考えられる。

これらの問題点により現在歩行が困難となっており、歩行の異常が生じていると思われる。歩行においては左下肢が立脚相に入るときに足関節背屈困難なためheel contactが見られず、足底全体で着いていた。また、mid stance時に膝屈曲がなく伸展したままであった。通常ならmid stance時に膝関節は15゜程度屈曲する。これも足関節背屈困難であることや、大腿四頭筋筋力低下により遠心性収縮が働きにくくなっていることも考えられる。さらにmid stance~heel off時に足関節背屈がなく骨盤を挙上するようにしてheel off~toe offとなっている。この骨盤挙上は足関節背屈困難なための代償的な動きだと推測される。結果的に歩幅が狭くなっていた。文献によると足関節は歩行時に背屈10゜、底屈30゜の可動性が必要とされている²⁾。 また、文献によると歩行時、距骨下関節はheel contact時に約2~3゜内返ししており、heel contact後、踵骨の迅速な外返しが始まりmid stance時まで続き、その時点で約2゜の最大外返し位に到達する。そのとき、距骨下関節は運動方向を逆転させ、内返しを始める。正常では、踵骨が中間位に達するのはheel offのときである。

heel off~toe off間、踵骨の内返しは約6゜になるまで続く。遊脚相では、踵骨は次のheel contactに備えて軽度内返し位に戻るとされている。本症例の足部の内返し外返し角度はいずれも歩行時に必要な可動域に達していない。しかし、内返し、外返し困難であることが歩行にはそれほど影響してないと思われる。やはり、歩行に関して一番の問題点は足関節背屈困難なことだと思われる。

 最後に本症例では子供が二人いるためキーパーソン(妻)の家庭内での負担を考えるうえでも早期の職業復帰が望まれる。特に本症例患者は建設会社作業員であるため全身的な筋力維持・増強も考えなければならない。その方法として自転車エルゴメーターによる持久力増加や、体幹筋の筋力増強を行う。職業的に上肢の力を必要とするので負荷を加えながら筋力を増強していく必要がある。

 

【参考・引用文献】

1)立野勝彦執筆 標準理学療法学・作業療法学専門基礎分野 整形外科学 医学書院 pp110

2)佐々木伸一 他著 関節可動域障害に対する運動療法の基礎 PTジャーナル第38巻第9号 2004年9月 pp717~725

3)吉元洋一・森重康彦・千住秀明編集代表 理学療法評価法 神陵文庫 pp38

4)冬木寛義 松浦清人著 下肢の関節拘縮に対する理学療法 総合リハ27巻7号 1997年7月pp619~624

5)高柳清美他 整形外科疾患における筋力増強の実際 理学療法21巻第3号 2004年3月pp491~497

6)高柳清美他 筋力増強トレーニングのコツ 理学療法19巻4号 2002年4月 pp490~495

 

レポート・レジュメの作成例をもっと教えて欲しい!

今回は、「脛骨腓骨開放骨折+脛骨髄内釘固定術」の患者のレポート・レジュメの作成例を紹介しました。

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 整形疾患, 病院, レポート・レジュメ