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【脳梗塞後遺症+変形性頚椎症】レポート・レジュメの作成例【実習】

2022年1月1日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「脳梗塞後遺症+変形性頚椎症」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 交通事故により+変形性頚椎症を呈する患者

  • 既往歴に脳梗塞あり

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「脳梗塞後遺症+変形性頚椎症」の患者のレポート・レジュメ作成例

A.はじめに

交通事故により変形性頚椎症を呈した患者に対して評価をする機会を得たので、以下に報告する。

 

B.症例紹介

【患者氏名】

【性別】

【生年月日】(60歳代)

【主訴】腰が痛い

【患者のニード】仕事がしたい

【趣味】将棋

【障害名】右片麻痺、失語症

【保険の種類】国保・介護保険

 

C.医学的所見

【診断名】脳梗塞後遺症、変形性頚椎症、頚椎捻挫、右肋骨骨折

【現病歴】〇〇年〇〇月〇〇日、脳梗塞を発症。A病院に2ヶ月間入院、その後リハビリテーション(以下、リハビリと略)目的にてB病院へ転院。約2年間の入院生活後、退院し自宅へ。〇〇年〇〇月〇〇日、交通事故により本院へ入院。〇〇年〇〇月〇〇日、退院し外来通院。

【既往歴】

〇〇年〇〇月〇〇日、脳梗塞

〇〇年〇〇月〇〇日、変形性頚椎症、頚椎捻挫、右肋骨骨折

【一般情報】

身長:㎝

体重:kg

BMI:22.4

脈拍数:87回/分

血圧:142/98mmHg

性格:穏和

食事:良好

睡眠:良好

排尿:問題なし

排便:問題なし

精神状態:安定

障害老人日常生活自立度(寝たきり度):A1

認知症性老人日常生活自立度:Ⅱ

 

【他部門からの情報】

Dr:本院からの薬の処方は無い。合併症である変形性頚椎症に関しては軟部組織によるものであり日常生活・リハビリ訓練時においての制限等は特に無い。また、右肋骨骨折においてもレントゲン上問題無し。

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D.社会的情報

【家族状況】キーパーソン:妻。 妻・三女・四女と共に暮らしている。対象者の家系は高血圧系疾患の既往が多い。(妻への情報収集にて)

【家屋状況】一戸建て、対象者は主に1階の自室で過ごす。家屋内、手すり設置され、段差除かれている。(妻への情報収集にて) 

【入院前生活】自宅内(自室)での生活が主であり、外出する機会・頻度も少なかった。

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E.理学療法評価

PTS評価開始:〇〇年〇〇月〇〇日

評価場所:リハビリ室にて実施

 

【全体像】

 リハビリ室には独歩(監視レベル)にて来室。性格はとても穏やかで、リハビリに対しても積極的に自ら進んで行われる。失語症により、発語困難であるがこちらの話しを理解できる能力があり、検査も大変協力的である。体格はよく、がっしりしている。

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【検査・測定】

<バイタルチェック>

脈拍:87回/分   血圧:142/98mmHg  

~アセスメント~

日本高血圧学会によると、正常血圧は<130/<85、軽症高血圧は140~159/90~99、中等度高血圧は160~179/100~109、重症高血圧は≧180/≧110とある。また神経系疾患に対するリスク管理として、潮見らによるとか「理学療法の中止基準は①収縮期血圧30mmHg以上の上昇または20mmHg以上の低下が認められた場合。②脈拍(安静時)は50~90回/分、120拍/分以上の頻脈や脈拍の30%以上の増加で中止する。危険な不整脈がないことを確認する。」とある¹⁾。これらにより、本症例においてはリハビリ実施前後に脈拍・血圧測定を行い、リスク管理を図る必要があると考える。

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<認知症>

 改訂長谷川式簡易知能検査(HDS-R)式➜15点/30点

・不正解であった項目のみ記載

日時の“年”→懸命に思い出すも時間要す為、打ち切る

計算問題→懸命に考えるも不正解(10~20の差あり)

数字の逆唱→3桁は成功したが、4桁は暫く考え“わからん”と返答

3つの言葉の想起→全く反応せず

5つの物品記銘→5つ中4つ返答

言葉の流暢さ→6つの名称を返答

~アセスメント~

本検査においては、中等度認知症の疑いありと考えられる。本症例の場合は失語症の影響が大きく本検査においてもこれらの影響が返答の際に窺えた。リハビリ時においては、セラピスト側からの質問等に対する返答に時に、それらの返答状況・返答内容を十分考慮し対応する必要があると考える。

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<高次脳機能検査>

►失語:自発語は非流暢、復唱・話し言葉の理解・読解・音読・自発書字・書き取りは可能なことから超皮質性運動失語と考えられる。

►失行:肢節運動失行・観念失行・観念運動失行・構成失行・着衣失行・手指失行、認めず。

►失認:物体認知障害・身体認知障害・空間認知障害、認めず。日常生活(以下、ADLと略)上、目立ったADL阻害因子は無いと考える。

►動作維持困難:認めず。(目を閉じる、舌を出す、ともに10秒以上可能)

►注意力障害:認めず。(数字を復唱してもらう課題において、3桁以下は障害ありと判断し実施した結果、5桁まで可能。)

~アセスメント~

失語の古典論的立場から失語図式(Wernicke-Lichtheim 1884)が作られている。それらによると、本症例は「概念中枢とブローカ中枢の間の切断により、自発言語は減少するが、復唱は保たれる」とする超皮質性運動失語と考えられる。特殊なものや重症なものを除いた大多数の失語症患者のADLはコミュニケーション関係以外のものは思いのほか良好で、ADLの独立を獲得することが多いとされている。

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<Brunnstrom stage>

上肢:(右)stage(Ⅲ~Ⅳの移行期)

下肢:(右)stage(Ⅲ~Ⅳの移行期)

手指:(右)stage(Ⅲ~Ⅳの移行期)

~アセスメント~

右上肢においては、「肘伸展位での肩屈曲90゜」は可能。「肘屈曲90゜での回内外」は不可。「腰の後に手を持っていく」は腰の体側までしかいかない。以上によりstageⅢと判断した。

右下肢においては、坐位で膝を90゜以上屈曲して,足を床に着けるまでは可能だが、後方へすべらすのは出来ない。「坐位で踵接地での足背屈」は不可。以上によりstageⅢと判断した。

右手指においては、「対向つまみ」は可能。「随意的指伸展に続く円中または球握り」は不完全。「全可動域の全指伸展」は不可。以上によりstageⅣと判断した。

本症例は、発症後数十年経過されており、麻痺の回復は難しいと思われ機能的な回復は望めないと思われるがADLの維持・向上はリハビリにより可能であると考える。

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<反射検査>

腱反射

正常反射(腹壁反射)

一側のみしか見られない

上腕二頭筋

++

病的反射

判定

上腕三頭筋

++

ホフマン

陽性

膝蓋腱

+++

++

トレムナー

陽性

アキレス腱

+++

++

ワルテンベルグ

陽性

クローヌス

バビンスキー

陽性

膝クローヌス

陰性

陰性

チャドック

陽性

足クローヌス

陰性

陰性

オッペンハイム

陽性

~アセスメント~

病的反射は錘体路障害の重要な徴候であり、これは腱反射の亢進・病的反射の出現をいうとされている。よって、本症例も錘体路障害が示唆される。今後、治療や訓練の際に亢進部位を刺激しないように注意する必要があると考える。

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<感覚検査>
表在感覚

※非麻痺側を10として麻痺側を検査した。

検査部位

触覚

痛覚

 

顔面

 

8

10

8

10

上肢

上腕部

8

10

8

10

前腕部

8

10

8

10

手部

8

10

8

10

下肢

大腿部

8

10

8

10

下腿部

8

10

8

10

足部

8

10

8

10

深部感覚

►位置覚:上・下肢正常

►運動覚:上肢3/5正解、下肢正常

~アセスメント~

感覚障害は運動障害とならんで、神経疾患の重要な症候である。運動障害は、客観的に確認できる現象であるが、感覚障害は常に患者の主観によって表現されるので、なかなかとらえにくい症候であるとされている。本症例においては、表在感覚に関しては、触れている・刺激している、こと・部位も特定可能。その他もほぼ正常に近くADL上問題となるレベルではないと考える。

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<筋トーヌス>

※判断基準

強度亢進:+++ 中等度亢進:++ 軽度亢進:+ 低下:- 

静的

※右上下肢において

 

背臥位

座位

上肢

肩関節

外転時 ++

外転時 ++  

肘関節

屈伸時 +

屈伸時 ++ 

前腕

回内時 -

回外時 ++

回内時 - 

回外時 ++

手関節

掌屈時 - 

背屈時 ++ 

掌屈時 -

背屈時 ++

下肢

股関節

屈伸時 + 

内転時 + 

外転時 ++ 

屈伸時 ++ 

内転時 ++ 

外転時 +++  

膝関節

屈伸時 +

屈伸時 ++ 

足関節

底屈時 + 

背屈時 ++ 

底屈時 +

背屈時 ++ 

動的

上下肢とも中等度亢進

~アセスメント~

骨格筋はたえず緊張した状態にあるが、運動障害では種々な筋緊張の変化を示す。本症例においても急激な受動運動に際して抵抗を示し運動の初めは抵抗が大であるが、あるところまで動かすと急に抵抗が減じる「折りたたみナイフ現象」がみられる。これら痙縮は錘体路障害によって出現するものとされており本症例も錘体路障害によるものと考える。

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<疼痛検査>

部位:腰部・右肋骨部

・腰部 

安静時や夜間には痛みは生じないが、運動時(体幹後屈時)に痛みが生じる。

ⅤAS 7/10

 

・右肋骨部

安静時・運動時・夜間にジワーっとした鈍い痛みが生じる。

特に右側屈・右回旋時に痛みが生じる。 ⅤAS 9/10

~アセスメント~

腰痛を訴えるも日常生活動作上を観察する中では誘痛原因・誘痛動作は見られない。本症例は約〇〇年以上前に脳梗塞を発症し現在に至る。姿勢分析の項で述べるが本症例は右回旋位の姿勢であり、これらの姿勢が長年続いたことが脊椎への負担となり発生した痛みと考える。今後さらに持続・増悪も考えられるためリハビリ時おいては移乗時・運動姿勢など脊椎への負担を考慮した関わり、運動療法・物理療法が重要だと考える。

右肋骨部の痛みに関しては、右肋骨骨折からくる痛みと考えられるもDrからの情報によると肋骨骨折においてはレントゲン上問題は無いとのことである。

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<脳神経テスト>

嗅神経

嗅覚

異常疑い(失語症の影響を考慮し、物品名称を記入したカードを指差し返答さす方法をとるも不正解)

視神経

視力

正常

視野

正常

動眼神経

滑車神経

外転神経

眼瞼下垂

右有り。左無し。

眼球異常

無し

斜視

無し

瞳孔異常

無し

眼振

無し

眼球運動

正常

三叉神経

顔面の感覚

正常

咀嚼筋・咬筋・側頭筋の左右差

有り。(奥歯を噛締めた際、開口した際に非麻痺側側に偏位。)

顔面神経

顔つきの左右差

有り。(非麻痺側側に口角が偏位。)

額のしわ寄せ、閉眼

麻痺側寄らない。非麻痺側寄る。

歯のむき出し、口をへの字

できない

舌前2/3の味覚

正常

ベル現象

無し

聴神経

聴力

正常

耳鳴り

無し

舌咽神経

迷走神経

カーテン徴候

無し

嚥下反射

正常

副神経

僧帽筋のMMT

問題なし

胸鎖乳突筋のMMT

問題なし

舌下神経

舌の萎縮・偏位

有り。麻痺側に偏位。

~アセスメント~

 中枢神経疾患は脳神経の障害を伴うことが多く、理学療法を進めるに当たっては、その障害を十分考慮した上で治療を進める必要がある。本症例においては軽度の顔面神経麻痺・舌下神経麻痺も見受けられる。また、本症例においては失語症の影響を忘れてはならないと考える。嗅神経検査時をはじめ失語症の影響を感じる場面が幾度かみられた。

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<四肢周径・四肢長>

単位:cm

四肢長

 

左右差

上肢長

52.5

52.5

無し

上腕長

27.5

27.5

無し

前腕長

25

25

無し

下肢長(棘果長)

81.5

82

1

下肢長(転子果長)

80

80

無し

大腿長

40

40.5

0.5

下腿長

40

39.5

0.5

四肢周径

 

左右差

上腕(肘屈曲位)

27.5

28.5

1

上腕(肘伸展位)

26.5

26.5

無し

前腕(最大部)

23.5

24.5

1

前腕(最小部)

15

15.5

0.5

膝蓋骨上縁

34

35.5

1.5

膝蓋骨上縁5㎝

35

36

1

10㎝

36

38

2

15㎝

38.5

40.5

2

下腿(最大部)

30

32

1

下腿(最小部)

19

19

無し

~アセスメント~

 リハビリ医学の分野で廃用症候群の述語を提唱したHirschberg (1964)は廃用症候群の症状として、骨格筋の萎縮・関節拘縮・起立性低血圧などを挙げている²⁾。本症例の周径における左右差は廃用症候群におけるものと考えられる。

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<関節可動域検査>

単位:度、P:疼痛、測定不可:× 

非麻痺側である左側は目立った関節可動域障害ないため、今回は麻痺側である右側のみを測定した。

上肢

備考

(測定肢位)

下肢

備考

(測定肢位)

active

passive

active

passive

肩関節屈曲

160

165 P

背臥位

股関節屈曲

×

120

背臥位

伸展

5

30

座位

伸展

×

15

腹臥位

外転

×

110

背臥位

外転

×

20

背臥位

外旋

35

60

座位

内転

×

15

背臥位

内旋

45

50

座位

外旋

×

35

背臥位

水平屈曲

70

75

座位

内旋

×

20

背臥位

水平伸展

×

×

座位

膝関節屈曲

×

150

背臥位

肘関節屈曲  

×

130

座位

伸展

-5

0

背臥位

伸展

5

0

座位

足関節背屈

×

20

背臥位

前腕回内   

×

90

座位底屈

×

40

背臥位

回外

×

65

座位

頭頚部

 

手関節掌屈

×

60

背臥位

背屈

×

60

背臥位

前屈

30

40

座位

体幹

 

後屈

15

25

座位

右回旋

40

45

座位

前屈

15

25

座位

左回旋

50

55

座位

後屈

5

10

座位

右側屈

10

15

座位

右回旋

15

15

座位

左側屈

5

10

座位

左回旋

15

20

座位

 

右側屈

5

10

座位

左側屈

10

15

座位

~アセスメント~

 上肢においては肩関節外転・水平屈曲で制限がみられた。これは廃用性の関節拘縮によるものと考えられる。これらの関節においてはADL上、更衣動作に影響を及ぼすものだが更衣場面を見ると、長年の病床生活での自身の動作会得で行われている。

 下肢においては股関節外転制限がみられた。これらは歩行時・起立時などの転倒要因になりえることが考えられる。

 体幹においては合併症である右肋骨骨折によるものと考えられる回旋・側屈制限がみられた。

 頚部においても合併症である変形性頚椎症によるものと考えられる制限がみられた。体幹も含め測定時の痛みの訴えはなかった。

 上記に述べたように関節可動域は可動域拡大が可能な関節は可動域拡大を図り、残りの関節は拘縮・変形を生じさせないように可動域訓練を行い、維持させていく必要があると考える。

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<筋力検査>

MMTは各々の筋の分離運動が可能な場合に用いるため、今回は非麻痺側である左側をMMTで実施。麻痺側である右側をGMT・握力とで実施した。

Ⅰ.徒手筋力検査

上肢

 

備考

下肢

 

備考

肩関節

屈曲

伸展

外転

内旋

外旋

5

5

5

5

5

 

股関節

屈曲

伸展

外転

内転

外旋

内旋

5

4

5

5

4

5

 

肘関節

屈曲

伸展

回内

回外

5

4

5

5

 

膝関節

屈曲

伸展

5

5

 

手関節

掌屈

背屈

5

5

 

足関節

背屈

底展

5

2+

背臥位にて実施

頭頚部

  

備考

体幹

  

備考

頭頚部

前屈

5

 

体幹

屈曲

5

 

後屈

5

 

伸展

5

 
Ⅱ.粗大筋力検査・握力
 

上肢

下肢

頚部

体幹

握力 (㎏)

屈筋

5

5

5

5

 

19.7

25.8

伸筋

5

5

5

5

  

~アセスメント~

 非麻痺側においては、ほとんど問題ないと考える。麻痺側でも同様に筋力は比較的保たれている。

 筋力に関しては、現時点の筋力の維持が重要になってくると考える。それは、筋力低下を来たすことで立位・座位バランスの低下、現在の独歩も難しくなってくる。それらがADL能力低下へと繋がり、今日の生活様式の変化が示唆されるためである。

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<姿勢分析>
静的

背臥位:体幹は正中位、頭部はやや右回旋。両上肢においては、体側に位置し両肘関節軽度屈曲、前腕回内し、手部は体側で手掌は床面に向いている。麻痺により麻痺側手関節軽度掌屈が左右の相違点となる。両下肢においては非麻痺側の左股関節が麻痺側よりも軽度外旋している。足関節においては底屈拘縮が麻痺側足関節にみられるため非麻痺側に比べ底屈している。

 

端座位:右片麻痺により左殿部の体重支持傾向がみられ、重心がやや非麻痺側側にかかっておりバランスをとるため左肩挙上・体幹右回旋位をとっている。上肢においては、非麻痺側は肩・肘関節軽度屈曲し前腕回内で手掌は大腿面上にある。麻痺側は肩・肘関節軽度屈曲し前腕回内で手掌は大腿面上にあるが、手部の位置がかわるため非麻痺側で麻痺側手関節部を把持し大腿面上に調節す。下肢においては、非麻痺側は股関節屈曲・軽度外転・軽度外旋し膝関節屈曲で足関節外転位。麻痺側は股関節屈曲・軽度外旋・膝屈曲(非麻痺側より屈曲角は大きい)足関節軽度内返しをとる。非麻痺側足部は麻痺側足部より半足分後方に位置する。座位バランスは自力にて維持可能。

 

立位:重心は非麻痺側側にある。頚部は軽度麻痺側に側屈。体幹は右回旋をとり矢状面において非麻痺側が麻痺側よりも前方に位置する。上肢においては、非麻痺側は自然に垂らした状態。麻痺側では肩関節内旋・肘関節軽度屈曲・前腕回内・手指掌屈。下肢においては、非麻痺側の股関節軽度屈曲・外転・外旋し、膝関節軽度屈曲、足関節軽度外転位をとり麻痺側よりも半足分前方に足部が位置する。麻痺側は膝関節軽度屈曲、足関節軽度外転。両下肢は肩幅程度にひらいている。立位バランスは自力にて維持可能。

 

~アセスメント~

芳澤らによると「片麻痺患者の座位では、Daviesのいう pusherなど特殊な場合を除くと、非麻痺側主体に荷重していることが多い。このように、静的な状態で荷重の偏りや姿勢の特徴を観察することが出来る」とある³⁾。本症例においても重心は非麻痺側にあり体幹は右回旋している。また、「多くの片麻痺患者では立位での姿勢保持・バランスには体幹機能に加えて股関節周囲さらには足部・足指でのバランス戦略が重要になる。また、基底面が小さく重心が高いぶん座位で確認された体幹の特徴がより顕著に現れると考えられる」とある。本症例においても体幹は右回旋をとり矢状面において非麻痺側が麻痺側よりも前方に位置し、非麻痺側の股関節軽度屈曲・外転・外旋し、膝関節軽度屈曲、足関節軽度外転位をとり麻痺側よりも半足分前方に足部が位置させ姿勢保持戦略がなされていると考える。

<バランス検査>
座位バランス

足底を床から離した状態で前後・左右方向に他動的な外乱を加え、その反応をみる。

+:反応あり  -:反応なし

 

頚部・体幹の立ち直り反応

頚部・体幹の平衡反応

保護伸展反応

前方への外乱

後方への外乱

左側への外乱

右側への外乱

立位バランス

座位時同様に頚部・体幹の立ち直り反応・平衡反応とも認める。バランスは保たれている。

重心は非麻痺側である左側にあるため、左側への外乱に比べ右側への外乱時には体幹筋群・脊柱起立筋群・腹筋群が強力に働きバランスを保っている。

 

片脚直立検査

►条件:平行棒内で固視点を設定し、石蹴り姿勢の単脚直立で挙上側の接床がおこなわれた時点で終了とする判定基準で実施。

►平均値:麻痺側、開眼・閉眼1秒未満  非麻痺側、開眼36秒 閉眼2秒

 

1回目

2回目

3回目

麻痺側(開眼)

   (閉眼)

1秒未満

1秒未満

1秒未満

1秒未満

1秒未満

1秒未満

非麻痺側(開眼)

    (閉眼)

25秒

1秒

54秒

2秒

30秒

3秒

ホップ反射

麻痺側においては全て出現せず。非麻痺側においては前後左右の刺激に対して出現。

 

足背反射

麻痺側においては出現せず。非麻痺側においては出現。

~アセスメント~

 本検査では、本症例の歩行時・起立時・座位時において自立していることの裏付けとなったと考える。しかし、リハビリ場面・ADL場面において支持基底面が狭小化する際などはバランスを崩す危険性が当然高くなるため注意が必要になってくると考える。

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<動作分析>

■ 寝返り:背臥位→非麻痺側側への側臥位 (自立レベル)

頚部軽度屈曲、非麻痺側肩関節外転しベットサイドを把持し体幹を引きつけながら上肢先行パターンをとる。その際、下肢は非麻痺側股関節・膝関節屈曲、麻痺側股関節・膝関節軽度屈曲させ、骨盤帯左回旋し、両下肢同時に屈曲位のまま倒して寝返る。

 

■ 起き上がり→ベット上座位

※背臥位より非麻痺側側への起き上がり。

(第1相) 背臥位 → on- elbow (自立レベル)

頚部軽度屈曲し非麻痺側側肩関節外転させながら頚部非麻痺側に回旋し、下肢においては非麻痺側股関節軽度屈曲・外旋、非麻痺側膝関節軽度屈曲さす。非麻痺側前腕回内させベットサイドを非麻痺側手部にて把持し体幹を引き寄せながら非麻痺側へ回旋。その際、両下肢は浮いた状態となり支持基底面は非麻痺側上肢前腕部(on- elbow)が支持面となる。

(第2相)  on- elbow → ベッド上座位 (自立レベル)

第1相での骨盤帯が主に接した状態で、非麻痺側肘関節屈曲し体幹を非麻痺側に回旋するにつれて骨盤帯も非麻痺側へ回旋する。両下肢がベットサイドより下りると同時期にon- elbow→on -handへと移り、重心は非麻痺側側にある座位となる。

 

■ 立ち上がり

(第1相) 座位→体幹前傾 (監視レベル)

重心は非麻痺側にある。非麻痺側の手部は座面で支持し頚部軽度屈曲、体幹軽度前屈・左回旋、非麻痺側肘関節軽度屈曲。両股関節・両膝関節屈曲位。矢状面では体幹・重心とも非麻痺側に寄っている。

(第2相) 体幹前傾→立位 (監視レベル)

非麻痺側肘関節伸展しながら股関節・膝関節伸展と同時進行で体幹左回旋、  頚部・体幹伸展し、非麻痺側に重心をのせた立位となる。

~アセスメント~

 芳澤らによると「起き上がりに限らず、種々のパターンを外部環境や内部環境に適応するよう駆使できるのが健常であり、パターンの選択肢が少なく、定型的なパターンに陥りやすいことが片麻痺患者の特徴といえる。片麻痺の起き上がりでは、麻痺側肩・骨盤が引けてしまう場合がある。その結果、挙上された下肢の重みにより運よく起き上がれたり、逆に背臥位に戻ってしまうこともある。」とある³⁾。本症例も同様の場面が幾度かみられた。本分析での動作は全て自力レベルである。長年の病床生活により自己でのパターンで行われている。現時点、パターンの変更・改善を行うと混乱を招き負担になり兼ねない。非麻痺側への負担は大きいと思われるが、日頃のADL上でも行われている現パターンを変更させずに維持できる筋力維持訓練等のリハビリが必要と考える。

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<歩行分析>

・10m歩行

速度:22.8(m/min)   歩幅:30(cm)〔両側平均〕  歩行時間:32(秒)

・歩行率:76(steps/min)

・(独歩):リハビリ室にて段差のない平坦な床面にて実施。

歩行中は進行方向に向かって軽度右回旋しており、軽度分回し歩行となる。歩幅は肩幅に若干届かない程度。視線は足元から1m程度のところにある。骨盤の回旋においては、右回旋に比べ左回旋が乏しい。非麻痺側上肢は麻痺側上肢に比べ肩関節内旋・肘関節屈曲している。

・立脚期

Heel Contact:麻痺側足関節背屈みられず、踵接地無く全足底部接地(外側)で内反を伴う。

Foot Flat:非麻痺側股関節軽度屈曲し体幹は軽度右回旋の軽度前屈位をとる。

Mid Stance:麻痺側においては非麻痺側に比べ短く、膝関節軽度屈曲位である。

Heel Off・Toe Off:非麻痺側においては軽度の踵離地みられるも、ほぼ足底全体離床傾向。

・遊脚期:非麻痺側においては、遊脚相が長く立脚相は短い。体幹は軽度右回旋しており、軽度分回し歩行がみられる。

・6分間歩行テスト

距離:130m  Borg(原型)スケール:13(ややきつい) 

 

歩行前

歩行中

歩行後

脈拍

80

100

呼吸

20

21

血圧

134/96

130/90

Spo2

97

94

97

・障害物歩行(階段歩行等)

自立してはいるが不安定性みられるために近位監視が必要。

~アセスメント~

 山本らによると、「健常者では踵接地時に足関節背屈筋群が作用して下腿を前傾させるとともに、股関節伸展筋群の活動によって体幹の直立を保ちながら体重心を前上方に移動していく。しかし、片麻痺患者ではこの時期の足関節背屈筋、股関節伸展筋ともに関節モーメントを発生していないために体重心の上昇が得られず麻痺側に体重をかけられないことと一致している。」とある⁴⁾。本症例においても同様に片麻痺歩行に共通した麻痺側随意運動困難により股関節屈曲制限にて骨盤引き挙げ軽度分回し歩行となる遊脚期の特徴がみられる。また、立脚期においては、麻痺側足関節背屈みられず、踵接地なく全足底部接地(外側)で内反を伴うことから、立脚時不安定で転倒の危険性が増すことから現時点では歩行監視~自立レベルであることが考えられる。また10m歩行においては30秒以内が実用歩行の目安されている。また、耐久性においては500m以上連続歩行が実用歩行の目安とされている。

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<ADL評価>

 ■ FIM 103点

項目

得点

コメント

セルフケア

 

食事

6

麻痺側口腔内に時折食物残渣がある。

麻痺側口角より汁物などの水分が垂れる。

整容

6

髭剃り時に剃り残しがある。

入浴

6

 

更衣(上半身)

5

自立しているが時間を要し、伸縮性のないもの・ボタン式など衣類により難あり。

更衣(下半身)

5

自立しているが時間を要し、伸縮性のないもの・ファスナー・ボタン式など衣類により難あり。

トイレ動作

6

自立しているが時間を要す。特別訴えなし。

排泄管理

 

排尿

7

問題なし

排便

6

毎日下剤服用。

移乗

 

ベッド、椅子、車椅子

6

自立しているが時間を要す。手すり・ベット柵がないと不便。

トイレ

6

自立しているが時間を要す。手すりがないと不便。

風呂、シャワー

6

自立しているが時間を要す。手すりがないと不便。

移動

 

歩行、車椅子

5

自立しているが時間を要し監視が必要。

階段

5

自立しているが時間を要し監視が必要で、手すりの有無が影響する。

コミュニケーション

 

理解

6

ほとんど問題なし

表出

3

失語症により難を要す

社会的認知

 

社会的交流

5

失語症により難しい場面あり

問題解決

7

問題なし

記憶

7

問題なし

  • 本症例の一日のタイムスケジュール

午前 6時に起床      午後 13時に帰宅後に昼食

   8時に朝食         食後~TVを見て過ごす

   9時半に外出準備      18時に夕食

   10時過ぎ来院        20時に入浴

                 22時に就寝

~アセスメント~

 在宅生活ということもあり、時間を要すがほぼ自立している。失語症により難を要す場面があると考える。

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【問題点】

Impairmentレベル

#1 右上下肢、随意運動困難   

#2 失語症 

#3 腰痛

#4 麻痺側ROM制限     

#5 麻痺側筋緊張亢進

 

Disabilityレベル 

#6  ADL能力低下(#1~5)

#7 歩行・起立時の不安定 (#1・4・5)

#8 歩行耐久性の低下

 

Handicapレベル

#9 活動範囲の狭小化  

#10 社会参加困難

 

【ゴール設定】

STG(2週間):起立・歩行遠位監視レベル、坂道・段差などの応用歩行能力の自立、腰痛の軽減

LTG(4週間):起立・歩行完全自立、歩行耐久性の向上

FG :デイケア・ヘルパー等を利用した、外出を通じて社会との結びつきを維持し、生き甲斐をもった地域での生活

 

【理学療法プログラム】

  • 温熱療法(ホットパック)

目的:ストレッチ前に関節周囲筋群を伸張させやすくするため。

方法:麻痺側肩関節(肩関節周囲)・股関節(右外側部)あてる。➜20分間

 

  • 関節可動域運動

目的:麻痺側関節拘縮の予防。

方法:

1)自動・他動運動による関節可動域訓練。伸張訓練による筋のストレッチ。

2)滑車による上肢の関節可動域訓練。➜10分間

3)自転車エルゴメーターによる下肢の関節可動域訓練。➜15分間

 

  • 筋力増強運動

目的:筋力低下により立位・座位バランスの低下、現在の独歩も難しくなってくる。それらがADL能力低下へと繋がるため。

方法:

1)背臥位で股関節・膝関節屈曲し殿部上げ。腰痛を考慮しセラピストが負荷をかける。➜10回を1セット

上記と同じ屈膝臥位で左右に骨盤を回旋。腰痛を考慮しセラピストが負荷をかける。➜10回1セット

2)滑車による体幹・上肢の筋力増強。➜10分間

3)自転車エルゴメーターによる下肢の筋力増強(歩行耐久性向上)。➜15分間

 

  • 物理療法SSP

目的:腰部の鎮痛のため

方法:10分間

 

【考察】

 本症例は、〇〇年〇〇月〇〇日、脳梗塞を発症。その後リハビリ目的にて転院後、約2年間の入院生活を経て退院し在宅生活を送られていたが、〇〇年〇〇月〇〇日、交通事故により本院へ入院。現在は退院されリハビリ目的で本院に通院されている。右片麻痺・失語症を伴う脳梗塞後遺症の60歳代の方である。本症例はリハビリに対しても積極的で毎日通院されている。在宅においては二階建ての一戸建てに住まわれ本症例は主に1階の自室で過ごしている。

 本症例は在宅生活者でありADLはほぼ自立している。脳梗塞発症後〇〇年近く経過しており、麻痺の回復は難しいと思われ機能的な回復は望めないと思われるが現在の身体能力の維持・強いては向上は、リハビリにより可能であると考える。本症例は年齢的にも、まだ若く今後も本症状のなかで生活していかなければならない。そのような社会的生活の質の確保・向上を考え関わっていくことが重要になってくると考えた。 

本症例は、高血圧があるためリスク管理が必要となってくる。日本高血圧学会によると、正常血圧は<130/<85、軽症高血圧は140~159/90~99、中等度高血圧は160~179/100~109、重症高血圧は≧180/≧110とある。本症例は軽症高血圧に当て嵌まると思われる。また神経系疾患に対するリスク管理として、潮見ら¹⁾によると理学療法の中止基準は①収縮期血圧30mmHg以上の上昇または20mmHg以上の低下が認められた場合。②脈拍(安静時)は50~90回/分、120拍/分以上の頻脈や脈拍の30%以上の増加で中止する。危険な不整脈がないことを確認する。これらにより、本症例においてはリハビリ実施前後に脈拍・血圧測定を行い、リスク管理を図る必要があると考える。また、コミュニケーション面においては失語症に対しても、リハビリ時などセラピスト側からの質問等に対する本症例の返答時の表情・身振り手振りなどの返答状況・返答内容を十分考慮し理解的態度で対応することがセラピストと本症例との信頼関係を構築していく上で必要になってくると考える。

訓練動作(体位)においては、本症例は不安定な状態であると筋緊張は強く亢進した状態となる。リハビリ時においても、通路の障害物を極力なくす(障害物の無い通路を通る)・人混みは避ける・立位での床からの物を拾う動作などは注意が必要な動作・状況と考える。これら同様に腰痛の訴えに対しても、脳梗塞を発症し〇〇年近く経つ本症例は右回旋位で重心は非麻痺側にある姿勢であり、これらの姿勢が長年続いたことやこれまでの生活スタイルの影響からか脊椎への負担となり発生した痛みと考えられる。だが・今後さらに持続・増悪することも考えられるため、これらにおいても移乗時・運動姿勢など脊椎への負担を考慮し、リハビリ場面においては滑車施行時の姿勢・自転車エルゴメーター実施時などの安楽な良い姿勢など、ADL場面を通じては床からの物の持ち上げ時は腰椎部の可動性と筋力をより必要とし、腰痛の発生を促しやすい。出来るだけ上半身の直立姿勢を維持し、背筋を主体とし体幹筋をうまく使える方法を指導するなど動作・肢位などにも配慮が必要になってくると考える。また可動域制限においてはADLがほぼ自立し在宅生活を送っている本症例において関節可動域は可動域拡大が可能な関節は可動域拡大を図り、残りの関節は拘縮・変形を生じさせないように可動域訓練を行い、維持させていく必要がある。

筋力においても筋力低下を来たすことで立位・座位バランスの低下、現在の独歩も難しくなってくる。それらがADL能力低下へと繋がり、今日の生活様式の変化が示唆される。日常生活における動作は全て自力レベルであり、長年の病床生活により自己でのパターンで行われているのが現状である。木山らによると「脳血管障害患者においてADL能力に影響を与える因子の一つとして「年齢」が挙げられ、起居・移動・排泄・食事動作と年齢の関係について高齢であるほどADLが低下する傾向がみられた。この理由として、高齢になるとともに増加する老化現象、例えば全身的な体力や筋力の低下、中枢神経の回復の限界などが挙げられる」とある⁵⁾。本症例も日頃のADL上でも行われている現パターンを出来るだけ変更させずに今日の在宅生活を維持・向上できるよう関節可動域訓練・筋力訓練を進めていくことが必要になってくると考える。

以上により、今回、本症例の問題点としてImpairmentレベルでは右上下肢、随意運動困難・失語症・腰痛・麻痺側ROM制限・麻痺側筋緊張亢進を挙げ、DisabilityレベルではADL能力低下・歩行および起立時の不安定、Handicapレベルでは活動範囲の狭小化・社会参加困難を挙げた。

このような問題点を踏まえて、STGとして起立・歩行遠位監視レベル、坂道・段差などの応用歩行能力の自立、腰痛の軽減。LTGとして起立・歩行完全自立・歩行耐久性の向上。FG としてデイケア・ヘルパー等を利用した、外出を通じて社会との結びつきを維持し、生き甲斐をもった地域での生活。以上の問題点を考慮し治療を進めていくことが必要と考える。

これらに対する理学療法プログラムとして、①ストレッチ前に関節周囲筋群を伸張させることを目的とした温熱療法(ホットパック)。②麻痺側関節拘縮の予防を目的とした関節可動域運動。③筋力低下により立位・座位バランスの低下、現在の独歩も難しくなってくる。それらがADL能力低下へと繋がることへの防止の目的で筋力増強運動。④腰部の鎮痛の目的で物理療法SSPを考えた。

 

【参考文献】

1)田崎義昭 他著:ベッドサイドの神経の診かた.南山堂.p67~130. 2004.

2)松澤正:理学療法評価学.金原出版.p216~222.2004.

3)千住秀明 他編:理学療法評価法.神陵文庫.p68~113.2000.

4)福井圀彦 著:脳卒中・その他の片麻痺 第2版.医歯薬出版.p57~122.2005.

5)米本恭三 他編:リハビリテーションにおける評価Ⅴer.2.医歯薬出版.p20~22.2004.

6)嶋田智明 他編:関節可動障害―その評価と理学療法・作業療法.メディカルプレス.P12~179.2004.                      

7)江藤文夫 他.高次脳機能障害のリハビリテーション 別冊.p38~43.1995.

 

【引用文献】

  1. 理学療法科学 20(1) 2005 神経系疾患に対するリスク管理 p75~79.
  2. PTジャーナル 24(1) 1990 脳卒中と廃用症候群 p4~7
  3. PTジャーナル 32(4) 1998 片麻痺患者の動作分析 p253~263
  4. 理学療法科学 17(1) 2001 脳血管障害の歩行分析 p3~10
  5. 理学療法科学 13(1) 1998 脳血管障害患者においてADL能力に影響を与える因子 p3~10

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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