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【大腿骨転子部骨折+ORIF施行】レポートの作成例【実習】

2022年1月3日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「大腿骨転子部骨折+ORIF施行」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 大腿骨転子部骨折の患者

  • ORIFを施行

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「大腿骨転子部骨折+ORIF施行」の患者のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ.はじめに

今回、右大腿骨転子部骨折によりプレート+ワイヤー術(ORIF)を行なった症例について理学療法評価・治療を行った。評価結果をもとに問題点の抽出、ゴール設定、治療プログラムの立案を行なう機会を得たのでここに報告する。

 

Ⅱ.症例紹介

一般的情報

【性別】女性

【年齢】80歳代

【身長】cm

【体重】㎏

【BMI】16.7

【主訴】右脚が上手く使えませんね。 

【本人HOPE】スタスタ歩けるようになりたい。猫の世話がしたい。

【家族HOPE】ヘルパー利用や長男夫婦が行き来することで在宅で生活させたい。

【NEED】立位・歩行の安定性獲得

【職業】主婦 【趣味】猫の世話

【社会資源】介護保険:要介護3

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医学的情報

【診断名】右大腿骨転子部骨折    

【現病歴】

〇〇年〇〇月〇〇日 老健施設でのショートステイ中に職員と接触して転倒。

〇〇年〇〇月〇〇日 他院にてプレート+ワイヤー術施行

〇〇年〇〇月〇〇日 リハビリ目的で当院に転院。

【既往歴】糖尿病 心臓バイパス術 認知症 右大腿骨頸部骨折(人工骨頭術)

【内服薬】バイアスピリン(抗血小板薬) コロヘルサー(Ca拮抗剤) ゼストロミン(睡眠剤) インスリン

【画像情報】(〇〇年〇〇月〇〇日撮影)

【他部門情報】

Dr.:転倒予防に対してのアプローチも行なって頂きたい。

Ns:W/C管理が出来ず、見守りが必要。DMのコントロールも必要である。危険行動も見られるので、頻回の訪室と声掛けで転倒を防止していく。間食もみられる。

OT:入浴時の浴槽のまたぎ動作の獲得を目標にアプローチしている。

SW:今後についてはヘルパー等の介護サービスを利用し、独居生活を希望。 

 

社会的情報

【家族構成】独居。近隣に長男夫婦が在住。 

【キーパーソン】長男

【入院前の生活】ADLは自立しており、週2回のヘルパー利用(掃除・洗濯)や長男夫婦の援助で生活していた。

【家屋構造】持ち家で2階建て。居室は1階。介護保険にて住宅改修(手すり設置)済み。玄関までの段差1段でスロープはなし。居室からトイレまで段差なし。トイレは洋式。浴室段差あり。浴槽半埋込み式。

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Ⅲ.理学療法評価

(〇〇年〇〇月〇〇日)

全体像

口頭指示は入りやすく、リハビリに対しても協力的である。顔色や皮膚の状態は良好。病識の低下か動作制限に対する不満が聞かれる。

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バイタルサイン

評価前:血圧138/68 脈拍68

評価後:血圧148/68 脈拍68

【考察】

血圧がやや高いものの正常範囲内であり問題はない。評価後も軽度の上昇がみられたがこれも正常範囲内で問題はないと思われる。

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感覚検査

【触覚】

右側下肢に軽度鈍麻が見られる。

NRSで左側を10とすると

右足背 8

右膝窩 9

右大腿前面 8

である。

 

【痛覚】

右側下肢に軽度鈍麻が見られる。

NRSで左側を10とすると

右前腕前面 8

右前腕後面 9

右足背 5

右下腿前面 8

である。

 

【運動覚】

両側ともに足趾において軽度鈍麻がみられるが、特に右側足趾については大きく早い運動も知覚出来ないことがある。足関節については異常が見られなかった。

 

【考察】

右側(患側)の表在感覚・深部感覚ともに軽度鈍麻がみられる。感覚機能の低下は感覚受容器の変性・脱落、末梢神経の伝導障害、中枢伝導路の圧迫・遮断が原因として考えられ、生理的退行も原因の一つとされている。主に右側下肢の感覚が低下していることから受傷による影響が考えられ、末梢神経の伝導障害が原因として考えられる。これらが運動制御や運動学習にどのような陰性的影響を与えているか今後明らかにしていかなくてはならない。特に運動覚において右側足趾の感覚が低下しており立位、歩行時にその状態を知覚出来ていないことが考えられる。

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形態測定(右/左)

単位:㎝

棘果長74/74

転子果長67/68

大腿周径(膝蓋骨直上)30/30

    (‐5㎝)28.5/29.5

    (‐10㎝)32/32

    (‐15㎝)35/35.5

下腿周径(最大膨隆部)26.5/27.0

    (最小部)  18.5/18.5

 

【考察】

形態測定については今回計測した部位について問題となるような左右差は認められなかった。手術や膝関節の可動域制限の影響も背臥位の状態では脚長差としては現れてこない。大腿周径、下腿部の周径も差がなく左右どちらかに優位な筋萎縮は認められない。

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反射検査

膝クローヌス:両側陰性

足クローヌス:両側陰性

 

【考察】

反射検査の結果、異常な左右差や筋緊張の亢進は観察されなかったが、上肢の屈筋に対して右側が左側に比べ筋緊張が軽度亢進していることがわかる。上腕三頭筋反射はともに陰性で姿勢分析のときに屈曲優位の姿勢になっていないか確認する必要があると考えられる。

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筋緊張検査

背臥位で触診にて筋緊張が亢進または低下、筋が短縮している部分を触知した。

筋緊張亢進:両上腕二頭筋(右>左)、右腸腰筋、右内転筋群

筋緊張低下:両上腕三頭筋

筋の短縮:右大腿筋膜張筋、両ハムストリングス(右>左)、両下腿三頭筋(右>左)

 

【考察】

筋緊張についても触知可能な部分とそうでない部分があり、姿勢分析を行なった後予測を立てた上で改めて行なっていきたい。左右差がある部位については一部、反射検査の結果とも一致している。

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ROM測定

  

股関節

屈曲

85p1

115

伸展

-15

 

内転

5

5

外転

20p2

25p2

内旋

15p3

40

外旋

35

30

SLR

60p4

65p4

膝関節

屈曲

110p5

145p5

伸展

-25

-10

足関節

背屈※1

-10

-5

背屈※2

-5

0

底屈

60

60

耐えれない範囲の痛みを10として痛みの程度をNRSで表していただいた。

P1:腸腰筋付近に痛み。右5。

P2:長内転筋の痛み。右7、左5。

P3:膝関節周囲の痛み。右5、左5。

P4:ハムストリングスの痛み。右7、左7。

P5:大腿直筋の痛み。右8、左6。

ほとんどの痛みがそれぞれの筋を伸張したときの伸張痛で、突っ張るような痛みを感じている。

P1に関しては主動作筋付近の収縮時痛であるがMMTによる等尺性収縮では痛みは感じない。

 

【考察】

関節可動域測定において右側(患側)が左側に比べ全体的に可動域が制限されていて、痛みの出る部位も多かった。受傷による筋スパズムの影響も考えられるが、右膝関節の伸展などは制限があるにも関わらず痛みを伴わなかった。最終域感も筋性のものではなく骨性に近いもので関節自体の拘縮も考えられる。SLRの結果から右ハムストリングスの短縮、2つの足関節背屈の違いから右下腿三頭筋の短縮が考えられる。痛みについては述べたようにほとんどが伸張痛で筋緊張の亢進か筋の短縮が原因であると考えられる。痛みが可動域制限の原因となっている部分についてはストレッチやモビライゼーションなどで筋をほぐして伸張性を引き出していく事で可動域の改善が図れると考えられる。股関節の屈曲に関しては右のみの痛みでROM-Tで他動的に動かしたときに痛みを生じ、等尺性収縮時に痛みを感じないことからも骨や関節など非収縮性組織の痛みによるものと考えられる。また右股関節周囲は術創部付近でありその影響も考えられる。

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MMT

 

腸腰筋

3

4

大殿筋

3 

4 

中殿筋

3

3以上

内転筋群

3以上

4

外旋筋群

3

3

内旋筋群

2

3

大腿四頭筋

3

4

ハムストリングス

3以上

3以上

前脛骨筋

4

5

下腿三頭筋

5

5

3以上の表記に関して、ダニエルの徒手筋力検査で行えなかったため、端座位にて測定した。重力には抗する程度の筋力があると思われたため3以上との表記とする。

 

【考察】

MMTにおいていずれの動作に関しても痛みは伴わなかったが、全体的に左側にくらべ右側の筋力が低下している。ほとんどの筋がMMT3レベル以上はあり、日常生活に大きな影響を与えるような筋力低下はないと思われるが、左右差が受傷、手術の影響によるものと、その後の長期臥床によるもの、生理的な退行減少と様々に考えられるので動作や姿勢観察から鑑別していく必要がある。また大腿周径、下腿周径において左右差はなかったものの、全体的に健側に比べ患側の筋力は低下しており、数値上は出ていないが下腿三頭筋の左右差も感じられた。筋委縮はなくそれ以外での筋出力低下の原因を感覚検査の結果と含めて考えていかなければならない。

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荷重検査

Kg

通常荷重

17

22

最大荷重

27

30

【考察】

荷重検査では立位時左側に優位の荷重となっており最大荷重も軽度であるが左側の方が多く体重をかけることが出来るようである。受傷や手術、それによる筋力低下の影響であると考えられるが歩行や立位保持などの動作に影響を与えていないか観察していく。

 

TUG

38秒

42cmの椅子を用いてリハ室内で行なった。歩行・起き上がりはT-cane使用。2回測定してタイムの良い数値を測定値とした。

 

【考察】

TUGでは38秒という結果で、数値上での解釈は歩行障害があるレベルで一人で屋外に出かけることは不可能であるとされる。また転倒のリスクが高いとも判断される。結果についてはこのように標準値と比較して歩行の状態や転倒の危険性を予測するものと、個人の比較でトレーニング効果の判定にも用いられる。今回の受傷の原因は衝突によるものではあるが転倒であり、再受傷を避けるには転倒予防に対する取り組みが必要であると考える。

 

高次脳機能検査

【MMSE】

見当識 5/10

記銘   3/3

計算   4/5

再生   2/3

言語   8/8

構成   1/1

合計   23/30点

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【TMT】

‐A:1分52秒(ミス1回)

‐B:6分39秒(ミス4回)

 

【考察】

見当識において減点があるものの、他の項目についてはほとんど問題はない。検査結果からは認知症の疑いはないものとされる。会話の中でも過去の時間の経過に対しての見当識は低下していると考えられるが、出来事についてはしっかり覚えているようである。

TMTは時間は問題ないが、A/B比やBのミスの多さなどから注意の持続、切り替えに問題があると考えられる。そのため実際のADL動作では車椅子管理や、見守りが必要にも関わらず一人で歩いてしまうなどの問題が見られる。

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SF-8

過去1週間の健康についてアンケートを行なった。

Q1.健康状態は? A良い(3)

Q2.身体を使う活動が身体的な理由でどれくらい妨げられたか? A少し妨げられた(3)

Q3.いつもの仕事が身体的な理由でどれくらい妨げられたか? Aわずかに妨げられた(2)

Q4.体の痛みは? A全然なかった(1)

Q5.元気だったか? A非常に元気だった(1)

Q6.家族友人との付き合いは? A全然妨げられなかった(1)

Q7.心理的な問題で悩まされたか? A全然悩まされなかった(1)

Q8.日常の活動が心理的な問題で妨げられたか? A全然妨げられなかった(1)

【考察】

 SF-8でQOLの評価を行なったが、結果上では日常生活に心理的な影響はほとんど受けておらず、身体機能にも大きな問題はないと感じているようである。結果をそのままにするとケガで入院生活を送っているにも関わらず患者様のQOLはほとんど低下していない。しかし患者様の発言からは入院生活への不満や身体状況、ADL動作への不安感が聞かれるときもあり検査どおりに解釈することは出来ない。QOLの質についてもADL評価と含めて改めて考えていかなければならない。

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姿勢分析

背臥位

頭部・頚部:正中位、肩甲帯:左回旋・前方突出、両肩関節:外転、両肘関節:伸展位、両手関節:中間位、両手指:軽度屈曲、体幹:右側屈、骨盤:左回旋・後傾、両股関節:軽度屈曲(右>左)・右股関節:外旋、両膝関節:屈曲(右>左)、両足関節:底屈(右>左)

【考察】

頭・頚部は正面を向いており胸鎖乳突筋や広頚筋などの筋緊張の左右差はないと考えられる。肩甲帯・骨盤の左回旋、体幹の側屈は、左側の脊柱起立筋や広背筋などの抗重力筋の筋緊張が右側に比べて亢進していることが考えられる。加えて殿筋の筋緊張も左側が高く、支持面としても左側に偏倚しているのではないかと考えられる。右股関節の外旋に伴い、右側の股関節・膝関節が軽度屈曲しているが、股関節の外旋は殿筋など股関節周囲の筋の筋緊張が低下しているためと考えられる。膝関節屈曲は、内転筋、ハムストリングスの筋緊張が亢進もしくは、廃用による筋短縮のためと考えられる。

端座位

頭部:正中位、頚部:伸展、肩甲帯:前方突出(右>左)、両肩関節:正中位、両肘関節:軽度屈曲、両手関節:背屈、両手指:軽度屈曲、体幹:右側屈・後弯、骨盤:後傾・左回旋、両股関節:屈曲・右股関節:外旋、両膝関節:屈曲、両足関節:底屈(右>左)

【考察】

脊柱が後弯しており、骨盤底筋などの働きも弱く骨盤が後傾していると考えられる。背臥位と同様に左側優位の重心となっており、体幹の右側屈、骨盤の左回旋が観察される。背臥位と同様に右股関節が外旋しており、背臥位での姿勢が股関節の外旋拘縮を生じさせ、除重力でも外旋位となっていると考えられる。重心は前額面では体幹の右側屈のため軽度左側に、矢状面では脊柱の後弯から軽度後方に偏倚していると考えられる。しかし前額面、矢状面ともに重心は殿部と足底面で作る支持基底面内にあり座位姿勢は安定している。

立位

頭部:正中位、頚部:伸展、肩甲帯:前方突出(右>左)、両肩関節:正中位、両肘関節:伸展、両手関節:中間位、両手指:軽度屈曲、体幹:右側屈・後弯、骨盤:前傾、両股関節:屈曲(右>左)・右股関節:外旋、両膝関節:屈曲(右>左)、両足関節:底屈(右>左)

【考察】

 背臥位・座位同様に背部の筋緊張に左右差があると考えられ、立位姿勢でも左側優位に活動していると考えられる。腹部の筋活動が得られにくいため骨盤は前傾しており、代償的に上部体幹が固定的に用いられ屈曲位となり、肩甲帯が前方突出していると考えられる。両股関節・膝関節は伸展制限もあり屈曲のままである。座位と同様の理由で立位になっても右側股関節は外旋位である。右下腿三頭筋の短縮のため、右足関節は左足関節に比べて底屈位となり、踵接地が不十分と考えられる。腹部の筋活動が弱いために後方重心であり、また肩甲帯・骨盤周囲の固定が強く、平衡反応や体幹の立ち直り反応が出にくい状態となっていると考えられる。

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動作分析

寝返り(背臥位‐左側臥位)

自立レベル。努力的な様子は観察されない。下肢から運動が始まり、動作中頭部が離床することはない。視線は動作に伴って上方から左へと移動していく。

第1相:背臥位。姿勢は姿勢分析で述べた通りである。

第2相:両肘関節が屈曲する。その後、右股関節・膝関節が屈曲し頚部が左回旋する。支持面は左側頭‐背部‐骨盤帯‐左下肢後面・右踵部となる。

第3相:屈曲していた左肘関節が伸展し接地する。左側の股関節・膝関節も屈曲し、体幹と骨盤が左回旋して右背部‐骨盤にかけて離床する。その後、右前腕も接地する。

第4相:右前腕で床面を押し付け、体幹・骨盤を更に左回旋させる。

第5相:右上肢を屈曲・内転させて運動方向に運び、肩甲帯を左回旋させる。左側頭‐体幹左側面‐左上肢‐左下肢外側面での支持となる。

【考察】

下肢から運動を開始して骨盤と体幹、上部体幹と肩甲帯、上肢と頭部といった順に寝返り方向に回旋している。下肢と骨盤の分離性が乏しく、上部体幹の可動性も少ないため丸太様の動作にも見受けられる。体幹での筋活動はほとんど観察されず、下肢の屈曲・内転と上肢の屈曲・内転で運動を行っているのではないかと考えられる。頭部は持ち上がらず頭を床につけたままであるが、これは腹部の筋活動が乏しいためと考えられる。

起き上がり(背臥位‐長坐位)

自立レベル。回旋の要素はあまり観察されず直線的な運動になっているが、左上肢を優位に用いた動作である。頚部は固定したままで、視線は体幹の屈曲に合わせて上方から前方へ移動してくる。

第1相:背臥位。姿勢は姿勢分析で述べた通りである。

第2相:頚部を屈曲し、頭部・肩甲帯が離床する。

第3相:両肩関節を伸展、両肘関節を屈曲させon elbowでの支持となる。同時に両下肢は股関節・膝関節が屈曲してくる。

第4相:体幹を左側屈し、左上肢に重心を移動する。右肘関節を伸展させ、右側はon handでの支持となる。

第5相:左肘関節を伸展させon handとなり、体幹を正中位に戻してくる。同時に体幹を屈曲させていく。

第6相:両上肢を体側後方に置いてon handでの長坐位保持となる。支持面は両手掌面‐殿部‐両下肢後面‐両踵部である。

【考察】

直線的な動作で回旋の要素が入っていない。回旋に関与する腹斜筋や腹横筋の筋活動は乏しく、腹直筋を優位に活動させて動作を行っていると考えられる。途中に体幹の左側屈が入るが、左側上肢優位の活動となっているためで、腹部の筋活動自体は少ないのではないかと考えられる。

立ち上がり(端座位‐立位)

自立レベルであるが、時折バランスを後方に崩し、座り込む様子が見られる。股関節・膝関節を伸展させる前に体幹を伸展させてしまい、前方への重心移動が不十分となった立ち上がり動作をしている。起き上がりと同様に左側優位の活動が観察される。視線は動作を通して前下方を見つめたままである。

第1相:端座位。姿勢は姿勢分析で述べた通りである。

第2相:両上肢をそれぞれ両下肢の前面で下方に滑らせながら、体幹を屈曲させ、重心を前方に移動させてくる。

第3相:両上肢がそれぞれ下腿中央付近まで移動するまで体幹を屈曲させた後、両肘関節を屈曲し、両手掌面を膝関節に当てる。

第4相:両上肢を押し付けながら両股関節・膝関節を伸展させ、殿部が離床する。左上肢優位に押し付けているようで右殿部が先に離床する。

第5相:両上肢を膝関節の上に置いたまま、両股関節・膝関節を伸展させ、重心を上方に移動させる。

第6相:両股関節・膝関節が伸展した後、両上肢を体側に置く。

第7相:最後に体幹を伸展させ、視線を前方に向ける。

【考察】

重心を前方へ移動した後、身体を上方に引き上げてから重心を後方に戻している。左側のハムストリングスや腰背部の筋を優位に活動させているため、後方重心のままでの立ち上がり動作になっている。そのため前方への重心移動が不十分である場合は後方に転倒すると考えられる。さらに右下肢下腿三頭筋の短縮により右足関節が底屈位で踵が十分に接地できていないため、立位後にも後方重心となっていると考えられる。そのため、何度か動作をやり直す場面が見られているのではないかと考えられる。

歩行

T-cane見守りレベル。左上肢で杖を把持しており3動作揃え形の歩行であるが、2動作のときも観察される。右上肢の運動は観察されず、肩関節軽度外転位、手指まで伸展した状態で固定している。右股関節は常に屈曲・外旋位、右膝関節は屈曲位で、歩幅が小さく遊脚期が短い。体幹は屈曲位のままで、肩甲帯から頚部にかけても固定されているため視線は前下方を向いている。右側(患側)の歩行周期に合わせて観察していく。

 

立脚期

踵接地・足底接地:明確な踵接地が認められず足底全面での接地となっており、踵接地と足底接地の区別が出来ない。上部体幹は屈曲、肩甲帯は前方突出しており、頚部が伸展位で固定され視線は前下方を向いている。左肩関節・肘関節は屈曲してきて杖を前方に接地させ、右肩関節は軽度外転、肘関節は伸展位で固定している。右側股関節・膝関節は屈曲、右側の足趾は背屈している。左側の足底面も全面接地しており膝関節も屈曲している。体幹は正中位であるが、骨盤は右側に側方移動している。

立脚中期:左下肢の足部が離床し、その後左股関節・膝関節を屈曲させ右脚の横を通過する。左脚遊脚期の間、左足底と床からの距離はほとんどなく、左足関節も底屈位である。右股関節・膝関節は屈曲位のままで、右足関節は中間位である。その間、左肩関節・肘関節は屈曲位で前方で杖を把持し、右肩関節は軽度外転、肘関節は伸展位で固定している。上部体幹は屈曲、肩甲帯は前方突出したままで動きはない。頚部が伸展位で固定され視線も前下方に固定されている。右側に偏倚していた骨盤は戻り、体幹とともに正中位となる。

踵離地:左脚は右脚と同様に足底全面で接地する。立脚中期から後期のかけての股関節の伸展はみられず、左股関節、膝関節も伸展せず軽度屈曲位のままである。右側股関節・膝関節が屈曲していき足関節を底屈させ踵が離床する。両上肢に動きはなく、左肩関節・肘関節は屈曲位で前方で杖を把持し、右側は肩関節は軽度外転、肘関節は伸展位で固定している。前額面上で体幹・骨盤ともに正中位で、矢状面上では上部体幹も屈曲、肩甲帯を前方突出させて固定している。

足趾離地:更に右股関節・膝関節を屈曲させ足趾を離床させる。左股関節・膝関節は接地したときのまま軽度屈曲位である。上部体幹は屈曲、肩甲帯は前方突出で動きはなく、頚部が伸展位で固定され視線も前下方に固定されたままである。右脚が離床しても杖は接地させたままで左肩関節・肘関節は屈曲位、右肩関節の伸展運動は見られず肩関節は軽度外転、肘関節は伸展位で固定している。体幹は正中位であるが骨盤が立脚側である左側に側方移動する。

 

遊脚期

加速期:右股関節を屈曲、右足関節を底屈し離床するが、その後足関節は背屈せず、足趾から床面の距離はほとんどなく床面をするように前方に移動させる。左股関節・膝関節は軽度屈曲位である。体幹や骨盤の回旋はなく、上部体幹屈曲位・肩甲帯前方突出位で固定的に用いられている。杖を把持している左側上肢は、体幹の前方移動に伴って肩関節がわずかに伸展する。右肩関節は軽度外転、肘関節は伸展位で固定したままである。

遊脚中期:更に右股関節を屈曲させ右下肢が左下肢の横を通過する。右足関節は背屈せず底屈位のままである。左股関節や膝関節の伸展は見られず軽度屈曲位である。左肩関節・肘関節は屈曲位で前方で杖を把持したままで動きはなく、右肩関節は軽度外転、肘関節は伸展位で固定している。上部体幹は屈曲、肩甲帯は前方突出、頚部が伸展位で固定され視線も前下方に固定されている。左側に偏倚していた骨盤が戻り、体幹とともに正中位である。

減速期:遊脚後期から接地にかけて右股関節は軽度屈曲、膝関節も伸展することなく屈曲位のままで接地していく。支持脚の左股関節・膝関節の伸展もみられず屈曲位のままである。この時期に左上肢で杖を前方に移動させるため、左肩関節・肘関節が屈曲する。右上肢は肩関節軽度外転、肘関節伸展位で固定したままである。骨盤・体幹は下肢の移動に伴い前方、右側に移動してくるが上部体幹は屈曲、肩甲帯は前方突出、頚部が伸展位で固定されたままである。

【考察】

歩行時の問題点として、

#1 足関節の背屈制限

#2 上部体幹・右上肢の固定、体幹の屈曲

#3 股関節・膝関節の伸展制限

が挙げられる。歩行周期中も両側、特に右股関節・膝関節の伸展制限が立脚中期から後期にかけての股関節の伸展を制限し、片脚での支持性が低下している。さらに両側下肢、特に右側への重心移動が困難で小刻みな歩行となり、遊脚期が短くなっていると考えられる。また右足趾離地から加速期の間に下腿三頭筋などの底屈運動による推進力が得られていないことも原因として考えられる。歩行での支持基底面は両下肢足底と杖で作る面となり、臥位、座位に比べ狭くなる。そのため体幹の支持性が求められるため、上部体幹や上肢が固定的に用いられている。体幹の姿勢制御が行なえないことにより、重心移動が不十分となったり、歩幅が狭い、歩隔が広い、蹴り出しがない、肩甲帯から上肢の緊張が高い歩行となっているものと考えられる。安定した歩行を獲得するためには、両股関節、膝関節、足関節の可動域制限の改善、股関節周囲筋の筋力強化を行い、両下肢の支持性向上が必要と考えられる。また腹部の筋活動の促通、平衡反応の獲得による体幹の支持性の向上によりいずれの方向に対しても重心移動がスムーズに行えるようにしていく必要があると考えられる。

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姿勢反射

 

【考察】

座位、立位ともに頚部・体幹の立ち直りは観察されなかった。座位では左側に外乱を加えると体幹、特に背部を固定的に使い、姿勢を保とうとするが、体幹は一直線のまま傾き、頭部が左殿部の上方にくるまで重心移動してきたとき耐えられず倒れてしまう。右側への外乱に対しては抵抗や姿勢反射が全く観察されず、押されるがまま倒れていく。立位においても同様で、左側への外乱に対しては片脚での支持になっても体幹を固定的に保持し、耐えようとするが、右側においては全く抵抗もなく倒れていく。前後方向の外乱について、座位・立位ともに前方へは背部の筋活動を高める事で抵抗し、立位では足関節の底屈も見られるが、保護伸展反応や踏み直りは起きず前方へ倒れていく。しかし後方に対しては全く抵抗することなく倒れていく。

 左側・前方への外乱に対しては筋性の保持を用いてバランスを保とうとする様子が観察されるが、右側・後方に関しては姿勢反射のみではなく、筋による保持すら行なえていない。これは腹部の筋活動が低く、背部で姿勢保持を行なっていることと、静止立位でも左重心で、右脚での支持、右側への重心移動が困難であることが原因ではないかと考えられる。この状態では歩行中などに急な重心移動、方向転換があった際すぐに転倒し、保護的な反応も見られないため再受傷の危険が大きいと考えられる。転倒のリスクをより少なくしていくためには、姿勢保持反応の獲得、右側への重心移動がスムーズに行えるようアプローチし、実用的な歩行の獲得につなげていかなければならないと考えられる。

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FIM

【考察】

 病棟での「しているADL」を評価した。介助が必要な場面はなく、全てのADL動作が修正自立か見守りで行なえている。車椅子や移乗の見守りは機能的な問題だけではなく、ブレーキやフットレストの管理など認知的な問題での動作レベルの設定となっている。自宅復帰後は独居であり、全てのADLが修正自立で行なえるようになる必要があると考えられる。家屋情報とご本人からの話から、ご自宅でのADLを想定してリハビリに反映させ、在宅復帰を目指したい。理学療法では移乗動作時の見守りに対して、立位・歩行の安定性を高める事で、修正自立レベルに向上させていきたい。

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Ⅳ 問題点抽出(ICIDH)

Impairment Level

#1 関節可動域制限(両股関節・膝関節・足関節)

#2 右脚筋力低下(股関節周囲筋)

#3 平衡反応減弱

#4 右側下肢感覚鈍麻

#5 重心左側偏倚

#6 認知面の低下

Disability Level

#7 立位・歩行バランス能力低下

#8 立位・歩行耐久性低下

#9 段差・階段昇降動作能力低下

#10 病棟ADL見守り(入浴・夜間トイレ)

Handicap Level

#11 趣味活動(猫の世話)制限

#12 家事活動困難(掃除・洗濯・調理)

#13 移動範囲の制限(買い物時の外出、家屋内)

Ⅴ ゴール設定

STG(1M)

  • 病棟ADL(入浴・夜間トイレ)修正自立
  • 病棟内歩行T-cane修正自立

LTG(2M)

  • 屋外見守りシルバーカーorT-cane歩行(買い物などをご家族の見守りの下での歩行)
  • 屋内短距離で物を持っての移動(家事動作、趣味活動を想定した運搬歩行)

Ⅵ 理学療法プログラム

  • ROM-ex(15分)

目的:両股関節、膝関節、足関節の可動性を拡大させていくために行なう。歩容やアライメントの改善につなげていく。

方法:背臥位で股関節、膝関節、足関節に対して他動的に運動を加えていく。他動的な伸張に加え、自動介助運動で筋活動を行なわせながらも行なう。

 

  • 筋力強化トレーニング(5‐10分)

目的:体幹・股関節周囲筋の筋力強化を図り、下肢の支持性の向上を目指していく。

大腿四頭筋筋力トレーニング

方法:膝窩部にセラピストの手を入れて、足尖を立てながらセラピストの手を押し付けるように大腿四頭筋の等尺性収縮訓練(OKC)を行う。

股関節内転・外転筋力トレーニング

方法:ボールとセラバンドを用いて座位で両足の間にボールを挟み、セラバンドで巻いて内転、外転運動を行う。

大殿筋筋力増強トレーニング

方法:背臥位で股関節、膝関節を屈曲して足底を検査台に押し付けたまま股関節を伸展し殿部を持ち上げる。

腹部筋力増強トレーニング

方法:肘関節を屈曲させた状態の端座位で、前腕がプラットホームに着くまでゆっくりと側方に倒れてもらい、その状態から上肢を用いずに起き上がる。体幹は出来るだけ伸展した状態で行う。

 

  • タオルギャザー(5分)

目的:足指の把握機能改善によるバランス能力、姿勢制御能力の改善

方法:床に置いたタオルに足底を接地させ、足指でたぐりよせる。

 

  • 重心移動練習・片脚立位(5‐10分)

目的:左右への重心移動を促し、座位・立位バランス、歩行能力の向上を図る。

方法:座位・立位で左右方向への重心移動を、骨盤より徒手的誘導を加えて促していく。片脚立位は前方より補助をした状態で重心移動を誘導しながら片脚での立位保持を行なう。

 

  • ニーリング(5‐10分)

目的:体幹・股関節周囲の安定性の向上、股関節戦略によるバランス保持能力の向上を目指していく。

方法:マット上で膝立ち位になり、前後左右方向に移動していただく。床上動作は見守りから軽介助で行う。

 

  • 歩行練習(10分)

目的:歩行耐久性の獲得、歩容の確認を目的に行なう。

方法:リハ室内、もしくは病棟1FをT-caneで歩いていただく。屋内での安定が見られれば屋外へと歩行距離や時間を徐々に延長していく。近位見守りにて行なう。

 

Ⅶ 考察

本症例は〇〇年〇〇月〇〇日に右大腿骨転子部骨折でプレート+ワイヤー術を施行し、リハビリテーション目的で当院に入院されている80歳代の女性である。本人、ご家族ともに受傷前と同様の生活を望んでおられる。発症前は猫の世話を趣味としており、外出は買い物程度でご自宅にいらっしゃることが多かったということである。今後、患者様のQOLを維持、向上するには趣味である猫の世話や家事活動の再獲得、ADLを自立する事で受傷前に近い生活を再獲得することが大変重要であると考えられる。加えて今回は転倒による2度目の受傷であり、日常生活の中での転倒のリスクを考慮し、再受傷の危険性を少しでも低下させていくことが必要である。そこで今回は転倒の危険性が少なくなるよう、ROM制限や筋力低下、坐位・立位バランスの低下などの機能回復を目標とし、立位、歩行を安定させるために理学療法を行なっていく。

 本症例の問題点として大きく立位、歩行時のバランス能力と耐久性の低下が挙げられる。バランス能力に関して、患側の関節可動域の制限と筋力低下が大きく影響している。可動域について特に右股関節の伸展、膝関節の伸展、足関節の背屈制限が立位保持、歩行能力の低下の原因となっている。また、患側下肢の支持性の低下を代償するため背部や上部体幹の筋を固定的に使っている。それにより筋の感覚器としての作用は低下するため平衡反応も起こりづらい状態になっていると考えられる。反応や反射での平衡維持が困難な場合、バランス保持の中でも過度な体幹の固定など筋の努力的な活動による保持になってしまうことが考えられ、バランス能力の向上を行なっていこうとするなかで平衡反応と筋活動の悪循環が起こっていると考えられる。その結果が立位・歩行時の易疲労性、耐久性の低下にもつながっていると考えられる。また、立位場面では左下肢の荷重が優位になっている。これは右下肢の受傷による影響が大きく、重心移動を右側へ移動していくことが困難なことや、右脚を前にしたステップ肢位での立位保持や、歩行時の右立脚期に影響を与えている。高次脳機能面では、バランス能力低下や患側の筋力低下、可動域制限に対しての自覚はあるものの、動作レベルとしては実際以上に高く考えているようで、病識の低下が疑える。病識の低下は転倒の危険性を高める要因となると考えられる。検査結果からは認知面に問題は少ないと思われるが、日常の会話などで「十分歩ける」や「すぐ退院できる」などつじつまの合わない発言が見られている。安全な立位・歩行を獲得するには動作を繰り返し行い、出来る事と出来ない事をしっかり理解させ、日常生活の中での転倒性を軽減していきたい。

これらの機能的、心理的な問題点に対してアプローチし、バランス能力や耐久性の向上を図る事で立位保持や歩行能力の向上につなげていく。立位・歩行を安定させる事で病棟内ADLを修正自立レベルに引き上げ、その後屋内の応用歩行や屋外での実用的な歩行の獲得を目指していく。この目標を達成する事で家事や趣味活動の制限といったhandicap面の問題を解決していき患者様のQOL向上につなげ、今後転倒リスクの少ない在宅での生活を送れるようになっていければいいと考える。

 

Ⅷ 謝辞

本症例を評価、治療させていただくにあたってご協力いただいた患者様、リハビリテーション科の先生方、各部門の先生方、病棟看護師の方々、病院スタッフの方々に深く感謝致します。

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 整形疾患, 病院, レポート・レジュメ