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【歯突起骨折による頸髄症】レポート・レジュメの作成例【実習】

2022年1月3日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「歯突起骨折による頸髄症」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 歯突起骨折の患者

  • 頸髄症を呈する

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「歯突起骨折による頸髄症」の患者のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ 基本的情報

【年齢・性別】70歳代 女性 

【身長・体重】cm kg

【診断名】歯突起骨折による頸髄症

【手術法】後頭骨‐頚椎固定術、C1椎弓切除術、ハローベスト固定(保存的療法で後頭骨、C1‐2の固定困難であるため、後頭骨と頚椎を金属と骨移植(腸骨より)によって固定)

【現病歴】

〇〇年〇〇月〇〇日 階段(1段目)より転落。後頸部痛があり、近医の内科受診

〇〇年〇〇月〇〇日 肝硬変症、肝性浮腫 ※経過観察後、上肢に痺れ、上下肢筋力低下より当院受診

〇〇年〇〇月〇〇日 頚髄麻痺、C2骨折、腰痛症

〇〇年〇〇月〇〇日 ハローベスト固定術

〇〇年〇〇月〇〇日 低アルブミン血症

【既往歴】

〇〇年〇〇月〇〇日 虫垂炎

〇〇年〇〇月〇〇日 肝障害

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【生活様式】一人暮らし(2F)

妹の娘(日本在住)・息子(家族とともにオランダ)

1ヶ月妹の実家で暮らした後 都内へ一人暮らし

スーパーや駅は徒歩6分と近い

玄関に段差はないが、室内に階段などあり

浴室は狭くはない

【HOPE】歩行時のふらつきをどうにかしたい

【NEED】歩行安定性向上 歩行能力向上 

【Key Person】妹・妹の娘

【OPE前状況】Gait Stability‐(独歩可能)、筋力低下、上肢痺れ、巧緻動作障害

【OPE後初期理学療法評価】両股関節周囲麻痺、歩行安定性低下、感覚障害(両手指、手背、掌側、膝蓋腱反射++)

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.リスク管理

・神経症状を悪化させる恐れがあるため、頚部可動域テストは行わない⇒頚部の積極的運動は行わない(寝返り、起き上がり、振り向き時などに注意する)

・骨移植部は、通常の骨に比較して脆弱になっているため注意する

・長期固定により、歩行時の足元の注視が困難であるため歩行時の不安定性に注意

・頚部の運動制限によってバランス力低下が示唆される

・体幹の回旋の制限⇒肩関節などの上肢関節に可動域制限を引きおこす可能性がある

・胸郭の運動が制限され、拘束性換気障害が引き起こされる可能性がある

 

.理学療法評価

【主訴】腰が痛い、長く歩くと腰が重くなる

 

【全体像】リハビリに積極的であり、コミュニュケーション良好である。性格も落ち着いていて、自分の状態をしっかりと把握している

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【歩行観察】

全体的に歩行は不安定 左立脚期でバランスを崩すことが時折確認できる

左右の歩幅はそれぞれ小さい

歩行時の上肢振りは消失し、上肢はローガード(肩関節外転30°)である

足元への注意力が乏しい

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【触診】

両腸腰筋短縮・柔軟性低下 ⇒トーマステスト+

両大殿筋・中殿筋柔軟性低下⇒側臥位での触診及びIDストレッチで抵抗感

両広背筋柔軟性低下⇒背部触診及びストレッチにて伸張感

両大腿直筋柔軟性低下⇒膝関節屈曲で伸張感 触診にて筋硬結

両下腿三頭筋柔軟性低下  

腰椎・胸椎モビリティー低下⇒前屈で可動性確認、骨盤前後傾及び股関節伸展で代償

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【MMT】

徒手筋力検査によって以下の筋に筋力低下(MMT4レベル)

左右ハムストリングス

左足趾屈筋群(特に左に筋力低下)

左右中殿筋筋力低下(股関節屈曲によって代償)

体幹前面筋筋力低下(背臥位からの起き上がり観察によって)

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【感覚検査】

上肢 上腕~指尖にかけて表在感覚障害 右:左(10:8)

痺れ 左手掌・手背・手指

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【SLR】神経徴候なし

両ハムストリングに伸張感を訴える

 

【ROM】

股関節伸展 右 10°  左 5°

   外旋 右 25°  左 40°

膝関節屈曲 右 110° 左 110°(大腿直筋緊張)

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.問題点

Impairment level

Disability level

Handicap level

♯1 両ハムストリングス筋力低下

♯2 両中殿筋筋力低下

♯3 右外旋筋筋力低下・ROM

♯4 体幹前面筋筋力低下

♯5 両腸腰筋柔軟性低下

♯6 両大腿四頭筋柔軟性低下

♯7 両下腿三頭筋・広背筋柔軟性低下

♯8 胸椎後彎立位姿勢

♯9 歩行不安定性(独歩)

♯10 長距離歩行で疲労

♯11 基本動作能力低下(起き上がり)

♯12 階段昇降不安定

♯13 一人暮らし

♯14 家事動作不安定

♯15 活動範囲狭小(買い物・外出)

.ゴール設定

ゴール設定

解釈

2W(退院)

・筋力増強(ハムストリングス、体幹前面筋、中殿筋・内外旋筋 )⇒代償動作の出現が軽減し、目的とした筋力に収縮が可能になるまで

・両骨盤周囲筋柔軟性向上(大腿四頭筋・腸腰筋)

・歩行能力向上(歩行安定性;外乱刺激に対する上肢の利用、ステッピング獲得

歩行速度;1m/s⇒横断歩道が安全に横断できる歩行速度)

ハローベストによって固定していた頚椎・上部胸椎および2次的障害によって生じた下部胸椎・腰椎のモビリティーを獲得することは、現在の症例の姿勢パターンを崩すこととなり、更なる歩行・立位不安定性を招く恐れがあるためにアプローチは避ける。歩行安定性には、足底からの床反力を上半身に伝達する骨盤の安定性が重要であると考え、Force Coupleを用いた骨盤の安定性獲得のため、骨盤周囲筋の筋力強化によって歩行能力改善を図る。

.理学療法プログラム

1)軟部組織モビライゼーション及びストレッチ

軟部組織モビライゼーション

目的:筋スパズムがある部位に対する筋スパズム軽減及び改善、循環促進、下肢循環状態促進、リラクセーションを目的とする。適切な筋張力は筋力発揮を誘発するため、筋力トレーニングの前に行うべきである

作用:局所の循環改善がなされることによって筋緊張の改善と筋組織における代謝を促進する。炎症による代謝産物の吸収を促進する

方法:手掌軽擦法―治療者の手掌全体を患者の身体に密着させ、やや軽めの圧を均等に加え皮膚表面を軽く圧しながら摩擦する。

渦巻状強擦法―指先を皮膚に直角にあてて力を加えながら、輪状にあるいは楕円上に周囲から中心部に向かって繰り返し行なう。

双手揉捏法―両手を同時に使って大きな筋あるいは筋群を線維方向に対して平衡に揉捏する。

 

ストレッチ

目的:組織柔軟性の維持・増大、筋短縮防止、リラクセーションを目的とし、筋力発揮のため適切な筋張力を保つ。

部位:触診によって筋組織及び結合組織の伸張性が低下している部位に対して行う

方法:組織の緩みがとれ、ストレスに対して直線的に変化する弾性域を超えた塑性域で柔和な力で保持する。筋や腱組織を伸張する場合には伸長反射を誘発しないように持続的にゆっくり行い、ゴルジ腱器官の興奮をさせIb群線維による共同筋の運動ニューロンを抑制し、拮抗筋の運動ニューロンを興奮させるためには15-30秒とされていることから最低20秒程度の伸張を行う。

 

2)筋力強化トレーニング

目的:股関節内外旋筋、ハムストリングス、腹直筋、中殿筋

部位:同上

 

3)片脚立位トレーニング(平行棒内)

目的:筋力強化及び筋力強化によって得られた筋収縮を片脚立位でも同様に筋収縮が得られるかどうかの評価及びトレーニングを行う  

※内外旋の筋力強化トレーニング(正確には筋力強化;筋肥大は3W~みられるため、筋収縮の方法を指導する)によって、筋出力を高めた上で片脚立位時に骨盤を平行に保つことを可能とし、歩行周期の立脚期における安定性向上を目的とする。

 

4)立位での外転筋力強化

目的:背臥位で行うよりもより歩行に近い状態での筋収縮、片脚立位をとることからバランス能力向上を目的とする

方法:症例では骨盤が過度後傾であるために、やや前傾位にした筋力トレーニングが必要である。そのためには、中殿筋の走行を考えると軽度後傾位での筋収縮が中殿筋の筋収縮が入る。しかし、腰椎・胸椎のモビリティー低下から過渡後傾位から軽度傾位にすることは難しい後傾の程度にもよるが、斜前30°位に外転させることで、軽度後傾位と同様のトレーニングが可能なのではないかと考える。

 

5)荷重トレーニング

目的:片脚立位によるスクワット動作によって、四頭筋及びハムストリングスを含む下肢筋力の協調的筋収縮獲得を目的とする。また、退院に向けた応用歩行の獲得を目指す。

方法:上肢挙上位、荷物を持った状態での歩行、歩行時の跨ぎ動作など

 

6)歩行練習

目的:以上のような筋力強化プログラムによって、骨盤の安定性は図れたかどうか評価し、歩行時に上記の筋収縮が引き起こされている歩容となっているか評価する。

 

.考察

 本症例は、階段から転倒によって歯突起骨折を呈し2次的障害として頚髄症状が出現した70代女性である。〇〇年〇〇月〇〇日に階段より転倒、その後後頸部痛及び上肢の痺れを訴えたため当院を受診したところ「歯突起骨折による頸髄症」と診断された。〇〇年〇〇月〇〇日に保存療法では頚部固定が困難なため、「後頭骨‐頚椎固定術、C1椎弓切除術」を施行に至った。術後初期では、「両股関節周囲麻痺」「歩行安定性低下」「感覚障害」を呈していたため、歩行安定性の向上を目指したプログラムを施行していた。現在、症例は病棟独歩可能、外泊も行っており、退院は2週後に予定されているものの、歩行不安定性を呈し、バランス能力低下も確認できる状態である。

 本症例の特徴として、立位姿勢が全身状態に与える影響が大きいと考えられる。症例の立位姿勢の原因としてハローベスト固定によって頚部可動性の制限が生じていることから2次的障害である胸椎~腰椎の可動性低下を呈したと考えられる。このため、腰仙関節の可動性が失われたため骨盤を中間位に保持することができず、骨盤後傾位を起こした。骨盤後傾となることで、坐骨結節と膝関節との距離が短縮しハムストリングスの短縮及び柔軟性を失った筋は筋張力低下を引き起こすためハムストリングスの筋力低下を引き起こしたと考えられ、評価でも確認されている。一方、大腿前面にある大腿直筋の起始と停止の距離は中間位に比較すると延長される。このため、筋が常時緊張した状態にある仮説がたてられるが、この仮説通りに触診や膝関節屈曲によっても大腿四頭筋の柔軟性低下・筋スパズムを呈していた。

 また、骨盤の後傾位は身体重心(Center Of Gravity以下COG)が大腿後方~膝関節後方~足関節前方に落ちているために、大腿部は後方モーメント・下腿部は前方モーメントが引き起こされる立位姿勢である。これらのことから、人は足圧中心制御と身体重心制御によってCOGを足関節2横指前方へ落とそうとする。このため、大腿部では後方モーメントに対して前方へCOGを移行させる力が働き大腿四頭筋の収縮、及び拮抗筋であるハムストリングスの筋力低下がみられたと考えられる。さらに、骨盤後傾によって腸腰筋の短縮も引き起こされるために、適切な筋力発揮が困難となる状況が継続し、筋力低下を及ぼしたと考えられるだろう。また、足圧中心制御では前方モーメントに抗して、下腿三頭筋の収縮による足関節底屈運動によって前方に偏位したCOGを後方へ移行させようとする力が働いたため、下腿三頭筋緊張が確認できたと予想できる。

上記した立位姿勢が及ぼす通常と異なる筋張力の変化が、本症例の退院後の日常生活を行う上で最も重要となる歩行に不安定性をもたらしている原因のひとつともいえる。症例の退院後の生活を考えると、退院後2ヶ月間は妹の家で生活することから買い物などの外出をしないでよい環境となるかもしれない。しかし、その後都内で一人暮らしをするにおいて、歩行安定性獲得は非常に大きな意味を持ち、外出時の転倒防止や上肢に重いものを持った状態での歩行(買い物・傘)をしなければならない場面も多くあると予想できる。さらに、横断歩道や混雑している状況での歩行など転倒の起因となる因子は都内には多くあるために注意が必要である。これらのことから、退院までの2週間では歩行能力の向上を目標とした理由である。

 これらの目標に対して理学療法アプローチを施行していくが、通常の歩行では腰椎~胸椎にかけての運動が股関節伸展や股関節屈曲を容易にし、下肢推進力の増強に機能するが、本症例では脊椎のモビリティーが乏しい。しかし、症例に対して頚椎、胸椎・腰椎のモビリティーを獲得することは、現在の症例の姿勢パターンを崩すこととなり、更なる歩行・立位不安定性を招く恐れがあるために脊椎へのアプローチは避けるべきだと考える。そのため、歩行安定性には上下肢を連結する中枢部である骨盤安定が重要であると考え、骨盤周囲筋の筋力トレーニングを図ることで歩行時の安定感を得るべきであると考えた。

 症例の筋力低下が著しい筋はハムストリングス、体幹前面筋であり、さらに骨盤と股関節の安定性に強く機能する外旋筋の筋力低下も疑える。外旋に関しては、右関節可動域が十分ではなく、右外旋筋の筋力低下が予想できたため特に右外旋筋のアプローチを行う。しかし、腹直筋・ハムストリングスのみの筋力強化では骨盤後傾の安定性を高めるだけであり、前傾に対する安定性を高めることは出来ない。このため、大腿四頭筋、脊柱起立筋・多裂筋を含む背筋の筋力強化も重要である。この骨盤前面と後面、及びInnerMuscleである外旋筋の筋力強化によって骨盤のStabilityを向上させ、歩行能力の安定に結びつく。 

また、主訴である「歩くと重い」という点から、歩行持久力低下が伺える。頚椎・上部胸椎の可動性低下によって、脊椎の中でも下部に位置する腰椎に過剰なストレスがかけられている可能性も示唆できる。加えて、腰椎のモビリティ低下・過度な骨盤後傾位・骨盤周囲筋柔軟性低下から腰椎の安定性が低下し、脊柱管狭窄症も疑うべきである。これらに対する理学療法アプローチは、体幹前面筋と後面筋によって脊柱の安定化を目指す方法が良いと考える。このため、特別な腰痛症に対して理学療法アプローチを行うのではなく、歩行安定性の向上とともに腰椎の痛みの軽減は図れると予想する。

 

.おわりに(退院を向えて)

 2週間の理学療法プログラムを終えて、初期評価時に比較してMMTレベルでは筋力増強は窺えないものの、現在の症例は歩行時や動作時の安定性は向上していると考えられ、本人も安定性向上を自覚している。また、片脚立位や階段昇降にも安定性がみられたことから左立脚期の安定性の向上が図れたといえるだろう。

さらに、退院に向けて理学療法室で上肢挙上位での歩行、跨ぎ動作、上肢に重鎮(2kg)をもった状態での歩行を行った。これらのことで、日常生活における買い物や洗濯干し、室内・屋外歩行における跨ぎ動作の獲得を目指すこととともに、症例自身に対しても自分は出来るという自信を持ってもらいたいという狙いがあった。これらの応用歩行も理学療法室では転倒の危険性なく行えたため、退院後も生活に大きな影響は与えないだろう。また、自宅での布団からの立ち上がりを想定した床上動作でも転倒の危険はなく、比較的安定した状態で行えていた。

今後の展望として、上記したように日常生活では大きな阻害因子はないだろう。しかし、胸椎や頚椎の運動性を出現させることは痺れを悪化させてしまう危険性を伴うため困難であり、このため腰部のストレスを軽減させる必要があると同時に頚部へのストレスは最小限にすべきである。日常生活で寝るときに、膝下に枕を置くことで腰部の負担を軽減させることや枕の高さを低めに調節するなどの工夫が必要である。また、筋力低下を引き起こさないためにも自宅でのHome Exを行うことも必須であろう。

 

.謝辞

今回の症例報告書作製および症例発表にご指導してくださった先生方、理学療法評価・治療をさせて頂いた患者様、病院関係者皆様に感謝申し上げます。

 

【参考文献】

  1. 細田多穂.「理学療法ハンドブック第3巻改訂第3版 疾患別 理学療法プログラム」共同医書出版社,2005

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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