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【統合失調症+任意入院】レポート・レジュメの作成例【実習】

2022年1月2日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「統合失調症+任意入院」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 統合失調症の患者

  • 任意入院をした

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「統合失調症+任意入院」の患者のレポート・レジュメ作成例

(1)はじめに

今回、臨床実習において作業療法学科学生(以下、OTS)は、〇〇年以来精神科を受診しながら寛解と再燃を繰り返し、〇〇年より約一年半 本院閉鎖病棟に入院している統合失調症の女性を担当し、評価および考察したのでここに報告する。

 

(2)症例紹介

①氏名: 

②性別:女性

③年齢:歳

④生年月日:

⑤住所:  

⑥診断名: 統合失調症

⑦入院形態: 任意入院

⑧通院・入院歴:

〇〇年〇〇月〇〇日より月1回K病院通院

〇〇年〇〇月〇〇日K病院再受診

〇〇年〇〇月〇〇日当院初診、○月まで通院続けその後、K病院に通院継続(〇〇年〇〇月まで)

〇〇年〇〇月〇〇日から当院再通院、〇〇月まで通院続けその後、K病院に通院継続

〇〇年〇〇月〇〇日K病院入院(~〇〇年〇〇月〇〇日まで)

〇〇年〇〇月〇〇日当院入院

⑨家族構成:

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⑩教育歴:

⑪知能指数(田中ビネー式知能検査による):IQ 46,9 

⑫職歴:

⑬婚姻歴:既婚

⑭保険:国民健康保険

⑮障害年金:2級 管理は夫

⑯趣味:カラオケ、編み物

⑰嗜好: ビール(時々)

⑱身長:cm

⑲体重:kg

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(3)臨床像

  • 生活・家族歴

同胞名の第子。出生・発育はとくに問題ない。元来無口でおとなしい性格。歳で結婚、O県にて生活を送る。子どもはおらず、夫と2人暮らし。

 

  • 現病歴

〇〇年〇〇月〇〇日に突然意味不明なことを言う。夫から見てもいつもと違っており何かぼんやりしていることが多く、それと同時に突然家の中のカレンダーを全てはずしてしまう等の奇妙な行動が見られる。その頃K病院精神科初受診し、通院を続けていた。月一回の投薬により状態安定、パートの仕事も行なっている。

〇〇年〇〇月〇〇日阪神大震災が起き、○県にある本人の自宅もかなりの揺れを感じた。この後より状態悪化し、日常生活は何とかこなしているものの不眠などの症状がみられる。K病院を再受診するが状態よくならず、〇〇年〇〇月〇〇日実家に帰郷し、〇〇年〇〇月〇〇日当院初診。その後は状態安定→自宅に帰省→状態悪化→K病院受診→状態落ち着かない場合は実家に帰郷し当院受診を繰り返す。〇〇年〇〇月〇〇日K病院に初入院するが状態良くならなかったため一月程で退院し、実家に帰郷、夫とともに当院受診。通院で薬物療法を行ない一旦状態は軽快したが、薬剤性肝炎を生じ、症状再燃。幻聴に支配された行動が続き、家族も目をはなせなくなったため、〇〇年〇〇月〇〇日初回入院。

〇〇年〇〇月〇〇日 任意入院

〇〇年〇〇月〇〇日 悪性症候群不全型

〇〇年〇〇月〇〇日 横紋筋融解症にて治療

〇〇年〇〇月〇〇日 輸血、導尿本人理解できず22:30より拘束開始

〇〇年〇〇月〇〇日 拘束解除

  • 主病名

統合失調症

  • 合併症

便秘症、不眠症、パーキンソニズム症候群、神経性膀胱

  • 薬剤性肝炎‥‥禁忌薬物インプロメジン・スルピリド

(4)現在の治療

  • 薬物療法

【毎食後】

<リスパダ-ル錠>2mg 3T

適応)統合失調症

作用)抗精神病薬、ドパミンD2・5HT2拮抗薬

副作用)眠気、ふらつき、口渇、倦怠感等

<アキリデン錠>1mg 3T

適応)特発性パーキンソニズム、その他のパーキンソニズム、向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア・アカシジア

作用)抗パーキンソン剤

副作用)口渇、悪心、便秘、下痢、発疹等

<セパゾン>2mg 3T

適応)不安、緊張、抑うつ、強迫、恐怖、睡眠障害時

作用)向精神薬

副作用)眠気、ふらつき、口渇、倦怠感等

 

【眠前】

<レボトミン>50mg 1T

適応)統合失調症、そううつ病における不安・緊張時

作用)精神神経安定剤

副作用)パーキンソン症候群、ジスキネジア、口渇、頭痛、頻脈、不眠、めまい等

<サイレース>2mg 2T

適応)不眠症

作用)睡眠導入剤

副作用)残眠感、眠気、ふらつき、頭重感、だるさ、めまい、頭痛、倦怠感

<プルゼニド>12mg 2T

適応)便秘症

作用)緩下剤

副作用)腹痛、復鳴、悪心・嘔吐等

 

【便秘時】     

<ラキソセリン>10mg 1本

適応)便秘症

作用)緩下剤

副作用)腹痛、復鳴、悪心・嘔吐等

 

処方変更(診察時、眠気強そうな様子のため)

リスパダ―ル2mg 朝4T、夜5T

アキリデン1mg  朝夕2T

セパゾン2mg   朝夕2T

 

  • 入院精神療法

女性の閉鎖病棟入院

 

  • 作業療法

手工芸、音楽療法、カラオケ、病棟レク等に参加

 

(5)他部門からの情報

  • 主治医からの情報

診察は週一回。火曜の午前中。診察時の様子は、以前は幻聴の訴えや内容についての不安を一方的に訴える状況がが続き、会話が出来なかった。現在は落ち着いてDrの問いかけに答えられるようになった。「外泊したい」「外出したい」といった訴えは毎回続いているとのこと。家族状況からみても、弟嫁の受け入れも余りよくないので外泊は難しい様子。夫が遠くに住んでおり、いつでもこられる状況でないことが本人の不安に繋がっているのかもしれない。薬物に対して非常に敏感な体質で、副作用により悪性症候群を起こしやすく、以前は電気ショック療法(無痙攣―麻酔をかけてから行なう)も考えたほどだった。そのため薬物療法をこれ以上強力に出来ない状況。今後はOT活動等を通じて現実感を持たせていく。時間と場所を共有し、話をしながら、徐々に社会性を身につけていってほしいとのこと。

 

  • 担当看護士からの情報

幻聴によりまとまらない行動がある。夜間は浅眠で中途覚醒があり睡眠時間が少ない。○月時点では5h以上睡眠時間をとることが少なかったが、最近は徐々に睡眠時間確保できるようになってきた様子。幻聴に支配された行動がみられ、荷物をまとめてD-ルームにくることも時々ある。そのような場合には、訴えに優しく接してゆく。今後の目標としては、レク、音楽療法、外庭の散歩、外出の計画等で気分転換を図り、不安な精神面の緩和を図る。

 

  • ソーシャルワーカーからの情報

現在の状況から見て、退院は難しい。経済的にも苦しい状況。障害年金は2級であり、6万6千円程度の収入があっているが、現在の入院生活には月11~12万(医療費9~10万・食費24,180円)程度の支払いが必要であり、未納分も多い。

 

(6)OTS評価

  • 外見

体形は小柄で細身。髪の毛は肩に付かないくらいのおかっぱで、白髪を茶色に染髪している。日中の服装はTシャツに上着を羽織り、ジーンズに靴下をはきスリッパという格好。不潔感は感じられない。姿勢は、体幹はやや前屈し、肘や膝が軽度屈曲しており、前傾前屈姿勢。デイルームでの活動時には長時間椅子に座っていると側方に傾きはじめるが、立ち直りは起こらず、傾いたままの状態を維持していることもみられる。歩行時はすり足気味でゆっくり歩く。後方から見ると左右に動揺があり、ちょっとした段差につまずくこともみられる。

  • 表情

普段は無表情で、ぼーっとしている印象を受ける。日中でも眠そうな様子であることも多い。

活動時(ここでは音楽療法時とする)も終始無表情。OTRが笑顔で「~の人は手を挙げてください」とメンバーに問いかけすると、当てはまる場合は手を挙げることをしても楽しそうな表情を見せることはない。活動前後の空き時間には覚醒レベルが低く、目をつぶっていたり、机に伏せたりすることが多く、OTSの声かけにかろうじて反応するような状況のことも多い。

担当当初のOTSとの会話時は、視線は合うが笑顔はほとんど見られず、緊張が伝わる。OTSに深々と頭を下げ「宜しくお願いします」というなど、担当になったOTSに気負いを感じている様子がみられる。OTSに慣れてくると、緊張も下がってきて、徐々にではあるが会話中に笑顔が見られるようになる。坐位での会話時は、いつも膝の上に手をおくか、口元に手を持っていって、静かに反応する。まばたきもゆっくりである。異常体験持には「お母さんが具合の悪かっていいよるけん帰らんば」と涙ながらに訴える場面もあった。

担当看護士からの問いかけには視線を合わせ、笑顔を見せることもある。

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  • 精神症状

・毎日~2日に一度の割合で「退院したい」「主人が迎えにきているから外泊します」「今日診察して2週間分の薬をもらったので、もう帰ってくるなと言われました」「弟の嫁が薬をもらったと言った」等の訴えがある。また、荷物をまとめてナースステーションに持ってくる行動もよく見られる。Nsが「家族から電話があればHさんに伝えます」と対応すると、「電話の音が聞こえました」といって再び戻ってくるような行動もみられた。上記のような訴え時、OTSがまだ退院できないことを説明しても「納得いかない」と答えたり、反応がないことが多い。これらから、幻聴、妄想等の異常体験が多く、現実感がない事が考えられる。

・「なぜここに入院しているのですか?」と尋ねると反応なく首をかしげていたり、上記のように、退院できないことを説明しても納得いかない様子が多いことから、病感・病識欠如と考えられる。

・また、どんな活動時でも無表情であり、感情鈍麻と考えられる。

・活動のない日はほとんどの時間を自室にて過ごし、自室では布団を畳んだままその上に横になっているか、ベッド脇に座り込んで考え事をしているかが多く、横になって睡眠中であることもあり、じっと寝転がっているだけのこともある。病棟の多くの患者が参加するような音楽療法や病棟レクでは、促しによって無表情にあるいは眠たいながらに参加するが、OTSがデイルームで折り紙しましょうかと促しても、出てこなかったり、出て来ても素通りするのみなど。リネン交換時でも、OTSが手を出しすぎると自分ではしなくなる。このような状況から意欲の低下、無為が考えられる。

 

  • 心理・感情面

たびたび「便がゆるい」「便秘です」との訴えがあったり、「胃液が出る」といい、ティッシュにはいた胃液をOTSに見せるなど、少しの不調や異常に敏感に反応するようである。このことから、不安が強いことや、OTSやスタッフに関わりを求めていることが考えられる。不安の原因は、夫が遠くに住んでいていつでも来られる状況ではないことや入院生活が長くなってきていること等が考えられる。

 

  • 身体機能

姿勢は、体幹はやや前屈し、肘や膝が軽度屈曲しており、前傾前屈姿勢を呈している。長時間椅子に座っていると側方に傾きはじめるが、立ち直りは起こらず、傾いたままの状態を維持していることから、姿勢調節に障害があると考えられる。

またリネン交換・清掃中に、OTSに「窓開いてますか?」と尋ねる場面があり、視力低下している様子。症例はめがねを持っているが、かけているのはほとんど見たことがない。

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  • 知的機能

IQは46,9であり、正常より低い。リネン交換時には、布団を布団カバーに入れるのに、縦横反対になったり、布団の端を渡してくれるが、ねじれていることには気付かない。

手工芸活動時は、前回までで和紙のアトリエの作品が完成したため、OTSがサクラアートを導入した。すると、前回で作品が完成したことは覚えておらず、和紙のアトリエの用具を探していた。これまで使っていた用具は覚えている様子。サクラアート中の様子(⑦の<サクラアートでは>参照)からも知的機能は低いと考えられる。

 

  • 行動

ほとんどの時間を自室にて過ごす。デイルームで過ごすのは食事、作業療法活動時のみといった感じである。Nsからの情報では、夕食後テレビを見ながらデイルームで過ごすこともあるとのことだった。自室では布団を畳んだままその上に横になっているか、ベッド脇に座り込んで考え事をしているかが多く、横になって睡眠中であることもあるし、じっと寝転がっているだけのこともある。OTSがデイルームで過ごしていると、たびたび廊下を行き来しており、せっけん箱を持っている時はトイレに行っており、その他は洗濯したりしているためのようである。自室ではベッド上に旅行バックがあったり、旅行バックの荷物をいじっていることも多く、ほとんどの荷物を旅行バックの中にしまってから戸棚に入れているためのようである。時折、「外泊する」等訴えながら、荷物を持ってナースステーションに来る。

<一日の流れ>

5:00頃 起床   (起床しても朝食までほとんどベッド)   

7:40~ 朝食              

11:45~ 昼食              

18:00~ 夕食              

15:00~ おやつ             

20:00頃 入床             

<一週間の流れ>

   AM         PM

月曜 入浴        ――――

火曜 診察        病棟手工芸

水曜 リネン交換・清掃  OTレク

木曜 入浴        ――――

金曜 音楽療法      売店買い物 

※――――はとくに何の活動もしてない日

 

  • 活動への参加状況

<音楽療法では>

毎回最初から最後まで参加する。途中席を立ったりすることはない。療法前に促すと、少し経ってからデイルームに出て来て、前の方の席につくことが多く、療法が始まるまで待っている。これまでの音楽療法でも歌声を聞いたことはなく、口を動かす程度か、歌詞を目で追うぐらいである。療法中は、無表情だが、OTRの呼びかけに手を挙げたりして参加している。「歌は『し』と『く』は歌わないんです」「『し』は死の『し』で『く』は苦しむの『く』だから」と話している。

 

<OTレクでは>

活動には少し意欲がみられる。じゃんけんでは負けていても勝ったように出しなおしたりするなど、見ておくより参加したい様子。持ち物ビンゴゲームでは、自分の持ち物を考えながら最後までほとんど一人で埋めてゆく。「黒い靴」「ビオレ」など具体的に書いている。活動中は真剣に取り組む姿勢がみられ、集中しているが、OTRが「ビンゴゲーム終わります」というと、ばたっと机に伏せるなどの行動もみられる。途中、席を立ったりすることはない。

 

<サクラアートでは>

手順を口頭で説明するが、「ではしてください」といっても全く手が動かず、理解していない様子。同じ工程の作業を、OTSが用意しながらやってもらう。次の作業に移る場合はOTSがやって見せて、その後説明しながら症例にやってもらい、それを続けてもらうといった感じ。同じ工程でも切る対象の形が変わると、また切り方がわからなくなったり、必要な部分とゴミの部分がわからなくなる。そのため、また一からOTSの説明が必要となる。活動に集中し、熱心に取り組んでいるが、出来栄えはあまり良くない。他のものと比べて違っており、明らかに間違っているものがあっても気付かず、質問してくることもない。作業に集中していたため「疲れたでしょ。休憩していいですよ」というと「ふー」といって手を休め、かなり疲れた様子。作業の持続力は低い。切のいいところだったので「続きは今度にしますか?仕上げますか?」と聞くと「やめときます」と答えたため終わりにした。

 

<生け花では>

生け花では、実姉が上手だったと話し、症例もモチベーションが高い。活動中は花の高さ等考えながら、何度も修正を加え、作品に真剣に取り組んでいる。自分の生け花が終わると他患の作品を見て「それ何の花かな?」とOTSに尋ねたり、「色がきれいね」など感想も述べる様子もみられる。自分のが終わり片付けた後も、他患やNsの生け花を見ながら過ごす。終始表情がよい。

 

  • 作業遂行能力

不眠(浅眠、中途覚醒)により夜間十分な睡眠が確保できず、日中の覚醒レベルが低いことや、幻聴等の陽性症状・陰性症状の影響により作業への集中力が低い。また知能指数が低いことで、作業工程の理解も悪い。症例の集中がきれる刺激が入ると、急に疲れた様子になったり、バタッと机に伏せたりすることがあり、作業への持続性は低い。リネン交換・清掃時の様子より、リネンをとりに行く、布団にかぶせる、ほうきではく、ゴミをとり捨てにいくといった、一連の動作の手順は把握しているが、作業遂行能力は低いと考えられる。

 

  • 対人関係

<対Dr>

診察は週一回。診察時の様子は、以前は幻聴の訴えや内容についての不安を一方的に訴える状況がが続き、会話が出来なかった。現在は落ち着いてDrの問いかけに答えられるようになった。「外泊したい」「外出したい」といった訴えは毎回続いているとのこと。

<対Ns>

「久しぶりやね」「朝は見らんかったね」等自発的に声かけしてくる場面もある。

<対OTS>

OTSが自分の担当と知るまでは、OTSが挨拶すると表情よく会釈したり、問いかけに対しても言葉は少ないが反応が返ってくる。オリエンテーション後よりOTSの存在が「ただの学生」から「担当の人」となり、OTSはただいるだけで気負いがするものとなった様子。OTSの顔を見ると「宜しくお願いします」といいながら深々と頭を下げるなどの行動が見られ、表情からも緊張が高いことがうかがえた。短時間の関わりを何度も続け、時間を徐々に増やしていくことで会話も続くようになり、症例から反応も多くなってきた。表情もやわらかくなってきて、OTSへの不信感が下がってきたようである。

<対他患>

他患との関わりはほとんどみられず。トラブルはない。清掃中、ちりとりが症例のうずくまっている後ろにあり、他患が「ちりとりない?」と聞くと、手を後ろに回してちりとりを渡したり、何かを聞かれても頷きや、物を差し出すなど最小限の反応しかしない。

 

  • ADL

食事:食事は粥食である。症例はデイルームの席についてスタッフから配膳されるのを待ち、食べ終わると片付けは自分で行なう。箸を上手に使いながらゆっくり食べる。他患と会話することはなく、無表情にただ食べ物を口に運ぶと言った感じである。おやつに関しては、時間になると列に並ぶこともあるが、他患のようにNsをせかすことはなく、自分のおやつがなかなか出てこなくてもじっと待つ。食べ物への執着は強くない。

整容(整髪、化粧):化粧は行なわない。髪は寝癖がついていることも多いが、トイレ等で洗面所にいったときには整髪している様子。

衛生(洗面、歯磨き):毎朝行なう。洗面、トイレに時間がかかる。トイレに行く時は毎回せっけん箱を持っていき、丁寧に手洗い行なう。

更衣:更衣時は、ベッドの上に座り、頭から足まで全部布団をかぶって行なう。病室の他患も同様にして行なっていると話す。他患は「外から見えるですもんね」と話しており、症例も頷く。そのため普通よりかなり時間がかかる様子。

入浴:毎週月曜と木曜が入浴日になっており、入浴日には入浴する。お風呂場の前で他患ともに列に並ぶなど、はやく入浴したいといった意欲がみられる。

排泄:病棟トイレにて自立。かなり時間がかかる。

睡眠:夜間は浅眠で中途覚醒が多い。5時間以上の睡眠が取れるか取れないかの状況。そのため日中自室で短時間の睡眠を何度かとることが多く、活動中の覚醒レベル低い。

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  • APDL

健康管理(服薬):毎食後と眠前にNsに口に入れてもらう。拒薬はない。

洗濯:病棟洗濯機にて自分で行なう。

掃除:

・リネン交換・清掃(水曜AM)

作業はゆっくりで要領も悪いが、しようとする意欲はある様子。OTSが手を出しすぎると自分ではしなくなる。枕は自分でマクラカバーに入れたが、布団を布団カバーに入れる時は、縦横ぐちゃぐちゃになったりする。OTSが手を出していると、布団の端を渡してくれるが、ねじれていることには気付かない。Nsの話では、いつも介助なしで行なっているとのこと

・病室の掃除(水曜AM)

ほうきを使用し、ベッドの下と自分が使う側の通路のみ掃除する。ベッドの下収納ボックス等ベッドの上に上げるなど、時間をかけながら自分なりに丁寧に行なっている。はく作業は時間がかかる。清掃終了後、OTSが確認したが、隅の方や他患側のベッドの下もまだほこりが目立っていた。

整理整頓:毎朝、自室のベッドの敷布団、掛け布団ともにベッドの足元にたたむ。洋服や日用物品等は戸棚やベッドの下の収納ボックスにいれている。ほとんどの荷物(とくに衣料品)を旅行バックの中にしまってから戸棚に入れている。

買い物:金曜の午後が売店に買いに行く日となっており、おやつ等なくなりそうなときは買いに行く。そんなにお金を使いたがる性格ではないようで、売店に行っても、買いすぎたりするような行動はない。

金銭:日常使用する金銭に関しては病院の事務所で管理しており、買い物時は書類で購入し、事務所で引き落とされる。事務所にお金を入れるのは夫である。時々病棟の公衆電話を利用し夫に電話を掛けており、電話代は病棟のナースステーションで管理している。

 

(7)全体像

本症例は、以来精神科を受診しながら寛解と再燃を繰り返し、約一年半 本院女性閉鎖病棟に入院している統合失調症ある。体形は小柄で細身。髪の毛は肩に付かないくらいで、白髪を茶色に染髪している。服装等の外見から不潔感は感じられない。几帳面な性格で、ゆっくり歩く様子や、人との接し方が礼儀正しいこと、声が小さいことから大人しそうな印象を受ける。他患との関わりはほとんどみられない。他患やスタッフとのトラブルはない。表情は無表情であることが多く、時折笑顔を交えて話をする。一日のほとんどを自室にて過ごし、食事や作業療法活動時などデイルームに出てこなければない時のみでてくる。夜間は浅眠で中途覚醒が多く、5時間以上の睡眠が取れるか取れないかの状況。そのため日中は自室で短時間の睡眠を何度かとっていたり、じっと座ってなにか考え込んでいたりする。精神面では、現在でも幻聴を主とした陽性症状と意欲の低下・感情鈍麻・自閉等の陰性症状が顕著である。幻聴に支配された行動がみられることがあり、時に「外泊する」といいながら旅行用バックに荷物をまとめている。ADL面では介助を受ける必要のある動作はないが、促しが必要なものも多い。

 

(8)問題点

#1 現実感が低い

#2 自発性・意欲の低下

#3 持続力の低下        

#4 動作緩慢であり、時間がかかること

 

(9)目標設定

Sort Goal

#1 OTSとの関係作り

 

Long Goal

#2 促しによって活動に出てこられるようになる

#3 活動に対する意欲、自発性の向上を目指す

#4 身体機能、知的機能の現状維持

 

Final Goal

#5 院内の生活を、リズムよく送る

 

(10)治療プログラム

  • 一週間のスケジュール作り

時間)30分程度

場所)症例の病室

目的)・OTSとの関係作り・活動への動機付け・曜日、日にちを忘れないため

方法)今行なっている活動を入れていき、空いている時間の過ごし方をOTSとともに考えていく。まずは、2人で計画を立て、計画が出来たら、模造紙にマーカー等で書き写し、部屋に張る。

 

  • 押し花

時間)30分程度

場所)症例の病室

目的)・OTSとの関係作り・集中力を高める →陽性症状の軽減を図る    ・達成感を持たせる

方法)はじめはOTSが草花を用意してきて実施する。押し花の方法に慣れてくれば、散歩で草花を採取し滴て実施する。草花を新聞紙にはさみ、本などの重しを乗せ乾燥させ、押し花にする。押し花はたくさん集まれば作品にする。

 

  • 散歩

時間)10~15分程度

場所)院内

目的)・自室にいる時間を減らす・外に出る機会を作る・身体機能の維持・季節感を持たせる           

方法)OTSと二人で外に出て押し花で使う草花を取りに行く。陽性症状が強い時は様子を見る。

 

  • 病棟手工芸(サクラアート)

時間)基本的には週一回、火曜の午後。様子を見て、意欲があり 実施できそうな場合は、活動時以外も実施する

場所)デイルーム

目的)・デイルームに出てくる機会を作る・集中力を高める →陽性症状の軽減を図る    ・達成感を持たせる

方法)はじめは、現在OTSが選んで行なっているサクラアートを継続する。サクラアートでは、OTSが介入しながら症例が出来る工程を実施させ、徐々に手伝う工程を減らしていく。今後は様子を見ながらサクラアートに限らず、他の手工芸も取り入れる。段階付けとして、比較的短時間で完成させられて、工程数の少ないものから、徐々に時間の掛かる作品へと進めていき、症例の様子を観察する。

 

  • 既存のプログラムを実施する

音楽療法、OTレク等

 

(11)考察

本症例は精神科を受診しながら寛解と再燃を繰り返し、約一年半、本院女性閉鎖病棟に入院している統合失調症である。体形は小柄で細身。髪の毛は肩に付かないくらいのおかっぱで、白髪を茶色に染髪している。服装等の外見から不潔感は感じられない。姿勢は、体幹はやや前屈し、肘や膝が軽度屈曲しており、前傾前屈姿勢。デイルームでの活動時には長時間椅子に座っていると側方に傾きはじめるが、立ち直りは起こらず、傾いたままの状態を維持していることもみられる。歩行時はすり足気味でゆっくり歩く。後方から見ると左右に動揺があり、ちょっとした段差につまずくこともみられる。これら姿勢の異常は、薬物の副作用によるパーキンソン症候群と考えられる。

表情は無表情であることがほとんどだが、時折笑顔を交えて受け答えする。人との接し方は礼儀正しく、声が小さいため大人しそうな印象を受ける。他患との交流はほとんどみられず、話し掛けられても反応は少ない。

作業能力は、集中力・持続力が低く、作業工程の理解も悪い。不眠(浅眠、中途覚醒)により夜間十分な睡眠が確保できず、日中の覚醒レベルが低いことや、幻聴等の陽性症状・陰性症状の影響していると考えられる。また知能指数が低いことで、理解力に障害を及ぼしていると考えられる。症例の集中がきれる刺激が入ると、急に疲れた様子になったり、バタッと机に伏せたりすることがみられ、少しの作業によってかなりの疲労を感じるものと考えられる。

精神面では、「退院したい」「主人が迎えにきているから外泊します」等の訴え、荷物をまとめてナースステーションに持ってくるなど、幻聴に支配された行動がある。NsやOTSが対応し、まだ退院できないことを説明しても「納得いかない」と答えたり、反応がないことが多い。これらから、幻聴、妄想等の異常体験が多く、現実感がない事が考えられる。また、活動のない日はほとんどの時間を自室にて過ごし、睡眠中であったり、じっと寝転がっていたりする。病棟の多くの患者が参加するような音楽療法や病棟レクでは、促しによって無表情にあるいは眠たいながらに参加するが、OTSが「デイルームで折り紙しましょうか」など促しても、「やめときます」と反応はよくない。リネン交換時でも、OTSが手を出しすぎると自分ではしなくなる。このような状況から意欲の低下、無為が考えられる。また、たびたび「便がゆるい」「便秘です」との訴えがあったり、「胃液が出る」といい、ティッシュにはいた胃液をOTSに見せるなど、少しの不調や異常に敏感に反応する。このことから、不安が強いことや、OTSやスタッフに関わりを求めていることが考えられる。不安の原因は、夫が遠くに住んでいていつでも来られる状況ではないことや入院生活が長くなってきていること等が考えられる。

これらのことから、OTSでは#1 現実感が低い、#2 自発性・意欲の低下、#3 持続力の低下、#4 動作緩慢であり、時間がかかることを問題点に挙げた。

これに対して、Sort Goalでは、#1OTSとの関係作り、Long Goalでは #2促しによって活動に出てこられるようになる、#3 活動に対する意欲、自発性の向上を目指す、#4 身体機能、知的機能の現状維持、Final Goalでは#5 院内の生活を、リズムよく送ることを目標とした。

そこで、OTSでは①一週間のスケジュール作り②押し花③散歩④病棟手工芸⑤既存のプログラムに一緒に参加するといったプログラムを立案する。

まずでは、①一週間のスケジュール作りでは、#1OTSとの関係作り#3 活動に対する意欲、自発性の向上を目指す、#5 院内の生活を、リズムよく送ることへのアプローチを行なう。スケジュール作りを通じて、活動への動機付けを行い、促されての参加ではなく、自分自身でも毎日活動を把握していく習慣づけを行なおうと考えた。スケジュールを作ることによって、症例の負担が大きくならないよう、参加を強要せず様子を見ながら接していこうと考える。

次に②押し花では、生け花の時の様子より、症例が花に興味があることや、モチベーションが高かったことからこの活動を選んだ。植物を介する事で、OTSとの交流がスムーズになりやすいと考える。この活動では、#1OTSとの関係作り #3 活動に対する意欲、自発性の向上を図る。集中を要する活動を提供し、陽性症状の緩和を図り、また作品作りを行なうことで、達成感を持たせたいと考える。

③散歩では、OTSと共有体験を持ち、#1関係作りを図る。また、自室で過ごす時間を減らし、外に出ることによる#3気分転換や身体機能の維持を図る。症例は異常体験時、「主人がきているので下に降ろして下さい」と訴えることが多く、定期的に外に出る機会を持つことで衝動の軽減を図れればと考える。

④病棟手工芸では、現在行なっているサクラアートを継続して行なう。慣れた活動を継続して行なうことで、症例の生活リズムを維持しようと考える。OTSが介入しながら症例が出来る工程を実施させ、徐々に手伝う工程を減らしていく。現在は工程数が少なく、比較的短時間で完成させられるものを選んで行なっており、段階付けとして徐々に時間の掛かる作品へと進め、症例の様子を比較観察する。実施時間は、既存の水曜の午前のほか、活動のない時にも症例の様子を見ながら促しを行なっていきたい。集中力を要する活動の提供によって陽性症状の軽減を図る。また出来上がった作品に対してOTSのみならず、他患やOTRからの賞賛を受けることで達成感を持たせ、活動に対するモチベーションの向上や自信の向上につなげていこうと考える。今後は様子を見ながらサクラアートに限らず、他の手工芸も取り入れる。

⑤既存のプログラムでは、OTレクなどにOTSとともに参加し、関係作りを行なおうと考える。#2促しによって活動に出てこられるようになる、#3 活動に対する意欲、自発性の向上を目指し、#5 院内の生活を、リズムよく送られるようにアプローチしていく。

以上のプログラムによってOTSとの関係作りを行なうとともに、活動を利用して現実感を高めていこうと考える。また、慣れたプログラムに加え、新しいプログラムを組むことによって、活動時間を増やし、院内生活にリズムを作り、現実感のある生活へ繋げるための援助を行なっていこうと考える。

 

(12)経過

OTSの関わりとそれに対する本症例の変化について3期に分けて報告する。

第1期:現実感が低く、OTSとの関係が未成熟な時期

第2期:OTSとの関係がとれてきた時期かつ活動導入時、持続力が低い時期

第3期:活動を受け入れ始める時期

 

第1期:現実感が低く、OTSとの関係が未成熟な時期

オリエンテーション時は、説明中の婦長から視線をはずさず、OTSの顔を見ようとしない。婦長が担当ということに深く捕らわれなくていいことを話すと「いいですか?」と聞き返すなど、OTSが担当となることへの不安が伺える。OTSが「楽に、楽しく過ごしましょう」と笑顔で声かけすると、ようやくOTSと視線を合わせ、「はい。宜しくお願いします」と深々と頭を下げる。その後もOTSと顔を合わせるたびに深く頭を下げるなど、緊張感が高い様子。担当当初は夜間睡眠が十分の確保できておらず、日中の覚醒レベルがかなり低い状況。そのため、会話が続かず、また現実感が低い時が多い。OTSが訪問し問い掛け等行なうと、反応がないか「はい」など短く答える程度。現実感が低く、OTSの問い掛けに全く関心がないといった感じである。OTSが同室の他患と話をしても全く興味を示さず、干渉しない。一日に何度も荷物を持って詰め所に行き「主人来てませんか?」「外泊の電話があると思うんですけど」などと訴える。当初は、OTSが促すと一旦自室に戻り、自室でゆっくりと話を聞く。「お母さんが具合悪いって言ってるから帰らないと」と涙ながらに訴えるなど、異常体験に支配されていて、切羽詰った感じである。徐々にOTSが身近な存在になってくると、促しても自室の戻るのを拒否したり、OTSの対応に「納得いかない」などと抵抗し、はっきりと自分の気持ちを表すようになる。

 

第2期:OTSとの関係がとれてきた時期かつ活動導入時、持続力が低い時期

投薬変更となって3~4日し、日中の覚醒レベルが高まり始め、その後数日かけて徐々に反応がよくなった時期。OTSが来室すると、笑顔で迎えるようになり、OTSが廊下を通ると窓ガラス叩いて、OTSへアピールするような行動も見られた。会話は、他患挟むと会話が続くといった状況になり、同時に二人でも徐々に会話が続くようになり始める。会話中は、症例の発語が徐々に増え、視線も合うことが多い。話の内容は、まとまりがない。とくに16:00頃の覚醒度が高く、OTSが来室すると、「どうぞー久しぶりですね。来てくれただけで嬉しいです」などと話す。第1期で、OTSが現実感が低い状態の症例の訴えをゆっくりと聞き、対応してきた時期を経て、OTSへの信頼感が高まったものと考えられる。また、サクラアートではOTSが説明してもなかなか理解できず、OTSが隣についてその都度介入しながら実施する。視力が低下していることから細かい文字や線がはっきりと認識できず、ほとんどの工程を実施できない。直線に沿って切る、シールをはがすといった工程のみ実施し、あとはOTSが実施するといった状況。症例はメガネを持っておられるため、使用を促すが、取りに行く様子は見られず、理由を尋ねると言語が不明瞭になるといった状況。OTのメガネや虫眼鏡を促すと、積極的に使用したがるが、大きさが合わない等の理由により結局使用しなかった。活動中は、集中が続かず、途中必ずトイレに立ち、帰ってくると「もう止めてもいいですか?」と尋ねたり、「体調が悪い」と訴える。活動後にも、疲れた表情で「(手工芸)難しい」と話したり、「気分が悪い」などの訴えることが多く、活動が困難であることをOTSにアピールするといった状況。活動中の集中力は高く、現実感を維持しており、症例自身も診察時に「手工芸をしている時は声が聞こえない」と話している。しかし活動後、現実感が低くなり、まとまらない話をすることが多く、活動が終わると同時に集中力が低下することで、活動中の現実感を維持できないといった様子。

 

第3期:活動を受け入れ始める時期

活動中、トイレに行くことがなくなり、またトイレに行っても戻ってくると表情よく「すっきりしたー」などと話し、その後も活動を続けられるようになる。自分で実施できる作業が増え、OTSが隣にいると訴えなく実施できる。この時期より、OTSが介入する時間を徐々に減らし、自分で作業を実施しなければならない環境としていった。当初は、近くにいるスタッフに「~してください」と訴え、OTSが隣にいて実施していたときと比べ、依存することが増える。また活動に対して「難しい」という言葉が多く聞かれるようになり、拒否感がみられた。しかし、いくつか作品を完成させ、達成感を得た様子。活動に慣れてきたこともあり、活動への意欲が高まり始め、自発的に「手工芸は今度いつあるんですか?」と問い掛けるなど、モチベーションの向上がみられる。また、他者への依存心が低下し、自分でしなければならないといった気持ちが見られ始め、自発的に自分のメガネを用意するようになる。これにより、作業能力が高くなり、ほとんどの工程を一人で実施できる。しかし、自分で実施できる作業であっても、スタッフに「ちょっとここをやってください」などと訴える場面が時折見られる。活動には持続して参加でき、最初の集中力はかなり高くなってきているが、時間経過とともに徐々に集中力が低下する。活動後は、徐々に訴えが減り、現実感を維持できるようになってきている。OTSとの関係も徐々に深まり、診察時には「OTSと言葉のキャッチボールをすると、気分が落ち着く」と話している。また「OTSが帰るまでに手工芸を完成させたい」と話すなど、活動への意欲に繋がっており、OT棟手工芸へ自発的に参加する。

 

最終評価

初期評価時より変化が見られたところのみ記載する。

 

(4)現在の治療

①薬物療法 

診察時、眠気強そうな様子のため薬物の減量、昼食後の投薬がなくなる。

リスパダ―ル 毎食後2mg・3T→→ 2mg 朝4T、夜5T

アキリデン  毎食後1mg・3T→→ 1mg 朝夕2T

セパゾン   毎食後2mg・3T→→ 2mg 朝夕2T

 

(5)他部門からの情報

  • 主治医からの情報(カルテより)

診察では、睡眠状況について尋ねると「睡眠は取れすぎるほど取れている」と話す。以前より昼間横になっていることが多いが、行動面ではまとまりがでて来ている。診察時はOT手工芸で作品を見せ、表情和らぐ様子が見られたり、現実感が低い時もあり、不安定な状況。今後の治療方針について、夫との面談を予定している。外泊をしたいとの訴えは毎回続いており、家族と相談するようにと対応している。

 

  • 担当看護士からの情報(カルテより)

夜間では時折、幻聴に支配された行動が見られている。まとまらない言動が見られることもあるが、徐々に減ってきたとのこと。睡眠状況は、1~2時間しか睡眠が取れていないこともあるが(1~2回/週)、きちんと睡眠確保できる時が増えた。以前より昼間横になっている時が増えた。

 

(6)OTS評価

②表情

OTSが訪問すると、笑顔で迎えることが増えた。以前は眠気が強く、話していても目が閉じてくるといった状況が多かったが、最近は「眠いです」と訴えている時でも、OTSが問い掛けすると表情和らいでおり、問い掛けに反応できる。反応は声が大きく、聞き取りやすい。OTSとの会話も続くようになった。

 

③精神症状

時折「主人がきている」などの訴えが見られるが、頻度としては減ってきた。投薬変更となって、3~4日後から、異常体験による訴えがかなり減った。その後、徐々にではあるがまた 幻聴や妄想に支配された言動が見られ出すが、以前のように切羽詰った感じはなくなった。また、活動に対して意欲が見られ始め、活動へのモチベーションが上がってきている。会話時は、まとまらない話が多い。

 

⑦行動

OTSが訪問すると、ベッドに横になっていることもあるが、OTSがこえかけすると容易に目をあけ、表情和らぎ、「寝ながら話すなんて行儀が悪いですね」といいながら起き出す。眠気がある際は「寝ながら話してもいいですか?」と尋ね、寝ながら話していても、そのまま寝てしまう状況は少なく、会話が続けられる。また、旅行バックを持って詰め所に行くという行動も減少した。活動前・活動中にトイレに行く様子は見られるが、以前に比べ回数が減った。とくに活動中はトイレに行かなくなり、持続して活動に取り組めるようになった。

 

⑧活動状況

<サクラアート> セッション10回(OT棟2回・病棟8回)

「手工芸は今度いつあるんですか?」と自発的に問い掛けがみられるなど、活動へのモチベーション向上がみられる。活動時は自分のメガネを用意し、ほとんど一人で実施できる。しかし、自分で実施できる作業であっても、スタッフに「ちょっとここをやってください」などと訴える場面が時折見られる。活動には持続して参加できるが、時間経過とともに徐々に集中力が低下する。

 

<スケジュール作り> セッション2回

第一回目の促しの様子は、

OTS「今日お昼からは何かありますか?」

本症例「介助者の風呂です」

OTS「それじゃあ昼から来ますので、一緒に何かしましょうか」

本症例「何するんですか?」

OTS「私が今日で5週目で丁度半分ぐらいなので、お昼から何もなければ一週間のスケジュールを立てて、これから一緒にどうやって過ごすか考えてみましょうか?」

本症例「はい」

OTSが説明時「何か」と曖昧な発言をしたことで、症例の不安を引き出したものと考えられる。上記のように説明すると、一応承諾してもらえた。OTSが白紙とボールペンを持っていき、病室で実施。一番初めのプログラム実施ということもあり、活動中の表情は困惑気味で、反応は少ない。OTSでは、OTSの質問に対し症例が答え、OTSが書き込むといった状況で進めた。当初はOTSの質問に、テレビ番組を答える。「テレビ番組じゃなくてもいいんですよ。診察とか、入浴とか、そうゆうのでいいんです」と話しながら、回答を否定せず、「スケジュールの下にテレビ番組の名前と時間も入れましょうか」と対応した。AM・PMの活動については、尋ねると適切に答えることもあったが、ほとんどはOTS「何がありましたかね?」本症例「よく覚えてません」OTS「~ですかね?」本症例「あーそうですね」といった感じで進めることが多い。このようにして月~金曜までの、既存のスケジュールを挙げた。次に空いているところに、OTSの立案したプログラムを促していった。空いている所が3~4箇所あり、サクラアートや押し花を促した。症例の負担とならないよう、強制でなく気が向かない時は無理にしなくてもいいということを十分に説明し、どうですか?と話すが、承諾は得られず、本症例「眠くてよく頭が働きません」などと答える。症例にとっては、空いている時間が多く感じられ、そこに何かしらの活動を入れた表を完成させることに、抵抗感があった様子。次のセッション(一週間後)でも状況は変わらず、関心がないといった状況。2回のセッションで、とりあえず既存の活動を埋めたのみで、その後は実施していない。

 

<押し花・散歩> セッション3回

第一回目は「今日外で草花を取ってきたので、一緒に押花を作ってみましょう」といい導入する。活動への興味関心が低い。押し花では、OTSが実施してみせるとじーっと見ているだけで、促せば実施するといった状況。活動中は終始無表情で反応は少ない。途中目をこすって「ねむたい」と話したり、トイレに行くなどの言動が見られることが多く、簡単な工程であることから、もの足りなさを感じている様子。散歩では促せば採取するが、積極性は低い。OTSが外に草花採取に行きましょうと促すと「外に出られるんですか?わぁ嬉しい」という発言が聞かれるなど、外に出られることに対しては喜びが感じられる様子。

 

<既存の活動>

音楽療法では、歌の時の状況は初期評価時と変化は見られない。しかし踊りの際は、周りに習って意欲的に踊っており、またOTSと視線が合うと笑顔が見られる。

病棟手工芸や、散歩、体育館での活動など病棟外の出る際には、トイレに行くなどの準備に時間がかかり、他患を待たせることが多々ある。OTレク・散歩ではいつも一番最後を歩く。他患から遅れて歩いているにも関わらず、松の葉を見つけ立ち止まり「松の葉を組み合わせて引っ張りあいっこするんです。昔よくやっていました」など笑顔で話したり、本症例「(鎖を)またがない方がいいですよね」OTS「なんでですか?」本症例「女だから。女の人は下から通った方がいいと思うんです」などと話し、必ず鎖の下をくぐる様子が見られる。

 

⑨作業遂行能力

投薬変更となり、日中の覚醒レベルが高まったことで、活動に対して集中力・持続力の向上が見られる。サクラアートでは前述のような状況であり、継続して活動を実施したことで作業に慣れ、ほとんどの作業を一人で実施できる。リネン交換では、初期評価時と変わらず、作業が遅く、一緒に実施していると、途中で布団を離すなど手際が悪い。また清掃でも、箒で掃くのが遅く、時間はかかっているが、埃がたくさん残っているなどきれいにはなっていないといった状況。しかし、覚醒度が上がったことで、当初よりは要領よく進むようになった。

 

⑩対人関係

<対OTS>

覚醒度が低く、現実感が低い時には、OTSの問いかけに関心がないといった感じで適切な反応がない。また反応があっても「はい」など言葉少なく、会話は続かない。覚醒度が高い時には、OTSが訪問すると笑顔で迎えたり、「送っていきます」と話すこともある。会話中は問いかけに対する反応が多く、自発的な発語が多い。内容はまとまりがなく、話題がつぎつぎに変わるといった印象。診察時には「OTSと言葉のキャッチボールをすると気分が落ち着く」と話していたり、また「OTSが帰るまでにサクラアートを仕上げたい」と話すなど、関係がとれてきている。

<対他患>

他患との関わりはほとんど見られないが、時折自発的に話しかけたり、話し掛けられると無表情に答える様子が見られる。「歩け運動あるんですかね?」など程度。交流をもつことは出来るが、会話が続くことはない。本症例「〇〇さんが緑色の口紅を持っていて、塗るととてもきれいなピンクになったんですよ。ほら丁度あの人の服みたいな色」と話すなど他患への関心はあるが、本症例「話が下手だからあまり話しません。口が動かなくなるんですよ」と他者との交流について自信なさげな発言が聞かれる。また本症例「〇〇さんとはたまに言い合いになります。でもけんかして個室に入れられるのは嫌だから、いい合いになった時は自分から下がるようにしています」との発言から、トラブルを怖がる気持ちから交流を避けていることが考えられる。〇〇さんからは「夜はいつも荷物持ってうろうろして」と言われている。OTSとの会話時にも話せば話すほどまとまらない発言がきかれている状況等から考えて、他患からも「話しても良くわからない人」と思われていると考えられる。

 

⑪ADL

整容(化粧):時折行なっている。眉を書き、口紅を塗る程度。

睡眠:夜間では 時折1~2時間しか寝ていない状況もみられるが、適切に確保できることが増えた。また、昼間自床に横になる時間が増えた。

 

(14)問題点

#1 現実感が低い

#2 自発性・意欲の低下

#3 持続性が低い

#4 動作緩慢であり、時間がかかる

#5 他者との交流が少ない

 

(15)目標設定

Sort Goal

#1 促しによって活動に出てこられるようになる

 

Long Goal

#2 実施できる作業を自分で実施できるようになる

#3 現実感を高める

#4 他者とスムーズに交流が持てる

#5 身体機能、知的機能の現状維持

 

Final Goal        

#6 院内での生活を リズムよく送る

 

(16)治療プログラム

  • 押し花

時間)20分程度

場所)症例の病室orDルーム

目的)・OTSとの関係作り・達成感を持たせる

方法)現在、押し花を画用紙に貼るところまで進行しており、OTSが額を用意しているため、その額に飾り付けを行い、作品を完成する。

 

  • 散歩

時間)10分程度

場所)院内

目的)・外の刺激に関心を高める・季節感を持つ・外に出る機会を持ち、気分転換を図る・身体機能の維持

方法)OTSと二人で院内を散歩する。状態を見て促し、意欲が見られたときに実施。

 

  • 手工芸(サクラアート)

場所・時間)病棟・・・火曜の午後、1時間

      OT棟・・水曜の午前、1時間

目的)・活動へ集中することにより、現実感を高める。・達成感を持たせる。・持続性を高める。・依存心を低下させる。

方法)OTSは遠い距離から観察するか、側にいても介入しない。「出来ないからして下さい」などの訴えには、すぐに手を出さず、なるべく自分で行なうよう促す。訴えが止まない時は、一度OTSが受け取り これまで実施している部位の訂正を行う程度介入する。作業はほとんど進めず、後は症例のほうで実施するよう促すといった対応を行なう。現在取り組んでいる作品の完成を目指す。

 

  • 貼り絵

時間)月曜の16:00から30分

場所)Dルーム

目的)・課題を通して他者との交流を持つ。・集団の規範や目標に基づいて行動する。・生活にリズムを作る。・活動への持続性を高める。・活動へ集中することにより、現実感を高める。 ・達成感を得る。

方法)クローズドの小グループで実施。人数は3人。OTSが下絵を書き、色をつけておく。

 

  • 既存のプログラムに一緒に参加する

<音楽療法>            

目的)覚醒度を上げる、意欲の向上、ストレスの発散、生活リズムの獲得、気分転換、他患との交流をもつことなど

<室内レク>

目的)覚醒度を上げる、活動性を高める、ストレスの発散、集中力を高める、気分転換、他患との交流をもつ、考える(知的面の維持)など

<カラオケ>

目的)意欲の向上、気分転換、ストレスの発散、自己表現など

 

(17)考察

初期評価時、本症例の問題点として①現実感が低い、②自発性・意欲の低下、③持続力の低下、④動作が緩慢であり時間がかかることと設定し、アプローチしてきた。Final Goalは院内の生活を、リズムよく送ることである。

初期評価時に立案したプログラムについて、これまで④サクラアートを中心に実施し、状態をみて②押し花③散歩を実施、①スケジュール作りについてはセッション2回実施して以来、実施していないといった状況(最終評価 ⑧活動状況参照)。初期評価時には、空いている時間になるべく活動を提供し、暇な時間を減らすことで現実感を高めようと考えていた。しかし実施してみると、OTSとの関係作りが浅いことや、活動への関心が低いということで、症例に活動を強要しているような印象を受けた。そこで、無理に活動を実施せず、まずは症例の意欲が見られる活動を継続して実施することで、問題点に対してアプローチしていこうと考えた。

まず、プログラム導入当初に①スケジュール作りを実施し、自身で活動を把握するようになることで、活動への意識を高めようと考えた。活動は、OTSが白紙とボールペンを持っていき、病室で実施。OTSの質問に対し症例が答え、OTSが書き込むといった状況で進めた。関係が未熟であり、OTSと二人でなにかをするということに慣れていないことから、活動中の症例の表情は困惑気味で、反応も少ない。一日の流れについて尋ねると適切に答えることもあったが、ほとんどはOTS「何がありましたかね?」本症例「よく覚えてません」OTS「~ですかね?」本症例「あーそうですね」といった感じで進めた。既存のスケジュールを挙げた後、OTSが活動の入っていないところにプログラムを促すと、「眠くてよく頭が働きません」などと答える。症例の負担とならないよう、強制でなく気が向かない時は無理にしなくてもいいということを十分に説明し、対応するが、承諾は得られなかった。空いている時間について、OTSは多く感じていたが、症例にとっては、それが普通であり、そこに何かしらの活動を入れようとしているOTSの対応に、抵抗感があったものと考えられる。

②押し花では、OTSが実施してみせるとじーっと見ているだけで、促せば実施するといった状況。活動中は終始無表情で反応は少ない。現在、押し花では、押し花が出来、画用紙に貼り付けたところで、あとはOTSが用意した額に飾りをつけて完成といった状況。当初と変わらず、活動への興味・関心が低く、今後は活動を継続しない方向で考えている。③散歩では促せば採取するが、積極性は低い。OTSが外に草花採取に行きましょうと促すと「外に出られるんですか?わぁ嬉しい」という発言が聞かれるなど、外に出られることに対しては喜びが感じられる様子。活動中は、くちなしの花を見て「あ、くちなし」といいながら寄って行ったり、はじめは意欲が見られなかったがOTS「そろそろ帰りましょうか」と促すと、「これ何?」と草花に関心を見せはじめ、積極的に草花採取し始めるなどの行動が見られた。この行動の変化から、もう少し外にいたいという感情の表れであると考えられ、散歩(外に出られる)という活動に対する症例のモチベーションは比較的高いと考えられる。そのため、今後は、植物採取のための散歩ではなく、外に出ることで外界に対して関心を持ったり、気分転換を図ること、季節感を持つことを目的とし、促してみて意欲が見られたときに、短時間の活動として実施していきたいと考える。①②③とも、第一回目の実施時には「一緒に~をしてみましょうか」といった感じの導入であった。どの活動にしても、症例の意欲や関心が低いという状況であったが、これは、活動に対して動機付けが行なえていないことが影響していると考えられる。なぜ活動を実施するのかその目的をOTSだけでなく、症例にも把握させることで、取り組み方に変化があったものと考えられる。

サクラアートでは、導入初期は活動への持続性が低く、途中必ずトイレに立ち、帰ってくると「もう止めてもいいですか?」と尋ねたり、「体調が悪い」と訴える。活動後にも、疲れた表情で「(手工芸)難しい」と話したり、「気分が悪い」などの訴えることが多く、活動が困難であることをOTSにアピールするといった状況であった。しかし、「手工芸の時には声(幻聴)が聞こえなくなる」という実感を持ち始め、また作品をいくつか完成したり、活動に慣れ 要領をつかんできたことにより、達成感を得、活動に対する意欲が徐々に向上し始める。自発的に「手工芸は今度いつあるんですか?」と問い掛けるなど、活動へのモチベーションが向上しているものと考えられる。活動時の作業能力は、メガネを使用するようになったこと等の影響により、当初と比べかなり上がってきた。しかし、自分で実施できる作業であっても、スタッフに「ちょっとここをやってください」などと訴える場面が見られる。活動中頃から終了頃にかけて、訴えが多くなることより、徐々に集中力・持続力が低下するものと考えられる。導入初期は活動後、現実感が低くなり、切羽詰った様子でまとまらない訴えをすることが多くみられた。活動中の現実感が、活動後は維持できないものと考えられる。継続するなかで、訴えは見られるものの、徐々に切羽詰った感じがなくなっていった。現在は、活動後に訴えがみられない時もある。これは活動に慣れてきたことで、活動中の疲労度が以前より減少したことが影響していると考える。

以上のような経過をたどり、最終評価を実施。

投薬の変更となり、昼食後の服薬がなくなった。これにより、日中の覚醒レベルが高まり、活動への集中力・持続力が見られるようになった。夜間では、時折1~2時間しか寝ていない状況もみられるが、適切に確保できることが増えた。前述のことから、OTSとの会話では以前と比べ疎通性があり、会話が続くようになる。OTSが訪問すると、笑顔で迎えるなどの様子がみられるようになり、会話時の表情も良くなった。診察時には「OTSと言葉のキャッチボールをしていると、気分が落ち着く」と話しているとのこと。「OTSが帰るまでに手工芸を終わらせたい」と自発的に話す様子から、活動や関わりを通してOTSとの関係作りが進んだものと考える。精神症状では、時折まとまらない言動が見られることもあるが、頻度としては減少し、以前のような切羽詰った感じもなくなった。しかし、昼間横になって過ごすことが多く、自発性・意欲が低いものと考えられる。病棟手工芸や、散歩、体育館での活動など病棟外の出る際では、トイレに行くなどの準備に時間がかかり、他患を待たせることが多々ある。OTレク・散歩ではいつも一番最後を歩く。他患から遅れて歩いているにも関わらず、松の葉を見つけ立ち止まり「松の葉を組み合わせて引っ張りあいっこするんです。昔よくやっていました」など笑顔話す。このような状況について、動作緩慢によって、時間がかかることで、活動に遅れたり他患に迷惑をかけるなど、日常生活に問題をきたしているものと考える。また、散歩中には本症例「(鎖を)またがない方がいいですよね」本症例「女だから。女の人は下から通った方がいいと思うんです」などと話し、必ず鎖の下をくぐる様子が見られる。このような発想は、妄想等の精神症状が影響していると考えられる。

他患との関わりはほとんど見られないが、時折自発的に話しかけたり、話し掛けられると無表情に答える程度。交流をもつことは出来るが、会話が続くことはない。「〇〇さんが緑色の口紅を持っていて、塗るととてもきれいなピンクになったんですよ。ほら丁度あの人の服みたいな色」と話すなど他患への関心はあるが、「話が下手だからあまり話しません。口が動かなくなるんですよ」と他者との交流について自身なさげな発言が聞かれる。また「〇〇さんとはたまに言い合いになります。でもけんかして個室に入れられるのは嫌だから、いい合いになった時は自分から下がるようにしています」との発言が聞かれる。このことから、トラブルによって、現在の生活が脅かされること(個室に入れられる)や、精神的ストレスを受けることを怖がるために、他患との交流を避けていることが考えられる。また他患との会話時、〇〇さんから「夜はいつも荷物持ってうろうろして」と言われていたり、〇〇氏との会話時には、症例がまとまらないような反応が返ってきた際、「あ~はいはい」と煙たそうに対応されている場面が見られる。OTSとの会話時にも話せば話すほどまとまらない発言がきかれている状況等から考えて、他患からも「話しても良くわからない人」と思われていると考えられる。そのため、他患から症例へ関わろうとすることが少ないことも、交流の減少に繋がっているものと考えられる。

上記より、症例の現時点での問題点として、#1現実感が低い、#2自発性・意欲の低下、#3活動に対する持続性が低い、#4動作緩慢であり、時間がかかること#5他者との交流が少ない、を問題にあげた。これに対して、OTSでは、Sort Goal#1促しによって活動に出てこられるようになる、Long Goal#2実施できる作業を自分で実施できるようになる、#3現実感を高める、#4身体機能、知的機能の現状維持、Final Goal#5院内での生活を リズムよく送るをそれぞれ目標に設定した。そこで、今後の活動として①押し花、②散歩、③手工芸(サクラアート)、④貼り絵、⑤既存のプログラムを継続して実施しようと考えた。

まず①押し花では、現在、押し花を画用紙に貼るところまで進行しており、OTSが額を用意しているため、その額に飾り付けを行い、作品を完成することを目指す。これによってOTSとの関係作りを進め、また作品の完成による達成感を持たせたいと考える。立案時は、押し花に集中して取り組むことによって、現実感を与えたいと考えていた。しかし、実施してみると、途中目をこすって「ねむたい」と話したり、トイレに立つなどの言動が見られ、集中力や持続力が低かった。これは 活動への興味が低いことや、簡単な工程であることから、もの足りなさを感じているためと考えられる。このような理由から、作品完成後は、活動の継続を考えていない。

②散歩は、前述のように植物採取のためではなく、症例の状態をみて促し、意欲がみられた時に、OTSと二人で院内を散歩する。

③手工芸(サクラアート)では、現在取り組んでいる作品の完成を目指す。サクラアートを継続し、集中力を要する時間を提供することで、現実感を高め、また活動後も現実感を維持する。成功体験を積むことや、作品を完成し賞賛を得ることで、達成感を持たせる。持続性を高める。出来る作業を他者に依存せず、自分で実施させることで、自分ですることを習慣付ける等を図っていこうと考える。今後は、症例の関心の高い活動があると考えられるため、サクラアート以外の手工芸の実施も検討していく。例えば、包み絵では、割合簡単な工程で、見栄えのする作品が出来ることから、高い達成感をもたせることが出来、モチベーションが向上するのではないかと考える。

次に、新しい活動として、④貼り絵を実施することとする。3人のクローズドグループで実施。時間は月曜の16:00から30分で場所はDルームとした。まず グループ活動を取り入れた理由として、OTSとの関係作りが進んできたため、OTSを介しての他患との交流を図り、他患とのコミュニケーションがスムーズになるようにしたいと考えたためである。また、集団の規範や目標(例えば、何時から始まり何時まで行なう・自分勝手な行動をとらない、貼り絵いつまでに完成させる、など)に基づいて行動し、現実感を高めることに繋げたいと考えた。つぎにクローズドであることについて、メンバーを固定することで、安心感を持った交流を促せると考えたためである。課題を通した相互に援助するなどの体験をもたせ、他者への信頼感を高めたいと考える。その他貼り絵という活動によって、生活にリズムを作る、活動への持続性を高める、活動へ集中することにより、現実感を高める、達成感を得ることを図りたいと考える。導入時はOTSが下絵を書き、色つけをするまで用意して実施。その後はメンバーからどんな絵がいいか意見を聞いたり、メンバーに絵を書いてもらう、色を付けてもらうなどOTSの介入範囲を狭めていきたいと考える。その他、⑤既存のプログラムに参加することによって、生活のリズムを整えること等を図る。

以上のプログラムによって、症例の現実感をもって生活する時間を増やし、「今日は何曜日か、何があるのか」などに関心をもつなどFinal Goalへ近づけたい。また、現在はスタッフとしか交流を持つことが出来ないような状況であるので、会話は続かなくても、必要に応じて他患と交流がもてるようになってほしいと考える。

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 病院, レポート・レジュメ, 精神疾患