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【脳梗塞後遺症(数年経過)】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月22日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「脳梗塞後遺症(数年経過)」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 施設に入所中
  • 脳梗塞後遺症(数年経過)

  • 四肢機能障害を呈する

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脳梗塞後遺症(数年経過)のレポート・レジュメ作成例

【一般的情報】

Ⅰ.基礎情報

患者氏名:

年齢:80歳代

性別:女性

 

Ⅱ.医学的情報

診断名:脳梗塞後遺症、C型肝硬変、左水腎症

障害名:四肢機能障害

既往歴:心不全、低カリウム血症、下肢浮腫、便秘症、子宮筋腫

主訴:家に帰りたい

服薬状況:

薬名

効用

副作用

アルダクトンA2T

高血圧症、心性浮腫、肝性浮腫、腎性浮腫など

〈重大〉電解質異常、急性腎不全など

〈その他〉頭痛、眩暈、食欲不振、倦怠感、筋痙攣など

アスパラK3T

カリウム摂取不足、下痢、カリウムの補給など

〈重大〉心臓伝導障害など

〈その他〉胃腸障害、食欲不振、心窩部痛、血管痛など

生化学検査:

項目

検査結果

正常値

項目

検査結果

正常値

比重

pH

蛋白定性

糖定性

ビリルビン

1.008

4.8

(-)

(-)

(-)

1.010~1.030

5.0~7.5

(-)

(-)

(-)

総蛋白

アルブミン

A/G比

GOT

GPT

LDH

ALP

γ-GTP

総ビリルビン

アミラーゼ

5.5

4.1

1.1

39

33

160

312

56

0.5

117

6.7~8.3

4.0~5.0

1.2~2.0

10~40

5~40

230~460

80~260

30以下

0.2~1.0

50~170

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Ⅲ.社会的情報

Keyperson:長男の嫁

職業:

利き手:右

趣味:特になし

嗜好品:特になし

性格:以前は厳しい性格だったが、今はかなり丸くなった(家族談)

主訴:家に帰りたい

受入れ状況:家族は施設を希望

家族の要望:介護の負担が大きいため困難であり、施設を希望している

 

Ⅳ.他部門からの情報

Ns:コミュニケーションには問題がなく、食事も毎日しっかり取れている。オムツを使用しているが、尿意や便意は訴えている。性格は頑固であるが、素直な面もある。依存心が少し強い。家族はあまり面会に来ることがない。

 

【理学療法評価】

1)全体像

リハビリテーション室までは車椅子にて看護師の方に送迎してもらっている。挨拶や声かけにも応じてくださり、コミュニケーションに関しては問題なく、疼痛の有無や疲労などの訴えもできる。リハビリテーションに関しても積極的であり、上肢の筋力増強訓練は自ら行っているが、下肢の筋力増強訓練は、指示や促しが必要である。

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2)精神機能

コミュニケーションに関しては問題なく、疼痛や尿意などの訴えもある。しかし、その日の午後に「昼食に何を食べたか?」など短期記憶に障害が見られることもあり、また、「はい」や「いいえ」で答えられる質問には即答するが、複雑な答えを要する質問には答えられない傾向が見られることもある。

 

3)Brunnstrom Stage

上肢:Ⅳ(肘伸展位での肩関節の外転・屈曲、前腕の回内外が不可能)

下肢:Ⅲ(立位では介助を要しており、分離運動は不可能であり、坐位では踵接地での右足関節の底背屈が不可能)

手指:Ⅳ(横つまみは可能で、離すことも可能だが、全指の完全伸展が不可能)

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4)ROM-T

(単位:度)

 

運動方向

肢位

股関節

屈曲(125)

110 p

105 p

背臥位

 

伸展(15)

10 p

10 p

側臥位

 

外転(45)

45

40

背臥位

 

内転(20)

20

15

背臥位

 

外旋(45)

40

35

背臥位

 

内旋(45)

35

25

背臥位

膝関節

屈曲(130)

130 p

120 p

背臥位

 

伸展(0)

-5

-10

背臥位

足関節

底屈(45)

45

45

背臥位

 

背屈(20)

0

5

背臥位

肩関節

屈曲(180)

140 P

115 P

背臥位

 

外転(180)

110 P

105 P

背臥位

肘関節

屈曲(145)

140

125

背臥位

 

伸展(5)

0

-5

背臥位

前腕

回内(90)

55

60

背臥位

 

回外(90)

55

55

背臥位

掌屈(90)

30 P

45 P

背臥位

 

背屈(70)

50 P

35 P

背臥位

 

橈屈(25)

25 P

25 P

背臥位

 

尺屈(55)

15 P

40 P

背臥位

母指

橈側外転(60)

50

35

背臥位

 

尺側内転(0)

0

0

背臥位

 

掌側外転(90)

60

40

背臥位

 

掌側内転(0)

0

0

背臥位

 

屈曲MP(60)

50

50

右:背臥位、左:坐位

 

伸展MP(10)

10

10

右:背臥位、左:坐位

 

屈曲IP(80)

55

60

右:背臥位、左:坐位

 

伸展IP(10)

10

10

右:背臥位、左:坐位

示指

屈曲MP(90)

90

65

右:背臥位、左:坐位

 

伸展MP(45)

-10

-20

右:背臥位、左:坐位

 

屈曲PIP(100)

85

95

右:背臥位、左:坐位

 

伸展PIP(0)

-10

-15

右:背臥位、左:坐位

 

屈曲DIP(80)

70

40

右:背臥位、左:坐位

 

伸展DIP(0)

-10

-15

右:背臥位、左:坐位

中指

屈曲MP(90)

85

55

右:背臥位、左:坐位

 

伸展MP(45)

-25

-20

背臥位

 

屈曲PIP(100)

95

85

右:背臥位、左:坐位

 

伸展PIP(0)

-20

-20

背臥位

 

屈曲DIP(80)

75

60

右:背臥位、左:坐位

 

伸展DIP(0)

-20

-20

背臥位

環指

屈曲MP(90)

90

50

右:背臥位、左:坐位

 

伸展MP(45)

-30

-20

背臥位

 

屈曲PIP(100)

95

80

右:背臥位、左:坐位

 

伸展PIP(0)

-15

-20

背臥位

 

屈曲DIP(80)

70

45

右:背臥位、左:坐位

 

伸展DIP(0)

-15

-15

背臥位

小指

屈曲MP(90)

80

55

右:背臥位、左:坐位

 

伸展MP(45)

-30

-20

背臥位

 

屈曲PIP(100)

95

90

右:背臥位、左:坐位

 

伸展PIP(0)

-15

-15

背臥位

 

屈曲DIP(80)

70

50

右:背臥位、左:坐位

 

伸展DIP(0)

-10

-10

背臥位

*測定実施の箇所のみ記載
*坐位は車椅子にて計測を実施

 

〈Assessment〉肘関節、膝関節の伸展に制限があり、背臥位や立位においても、常時屈曲位をとっている。また、手指に屈曲拘縮があり、疼痛はないが伸展制限が見られる。

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5)MMT

 

運動方向

肢位

肩甲骨

挙上

4

4

背臥位

肩関節

屈曲

3

3

坐位

 

水平外転

3

3

背臥位

 

水平内転

3

3

背臥位

肘関節

屈曲

3

3

背臥位

 

伸展

3

3

坐位

前腕

回外

3

3

坐位

 

回内

3

3

坐位

手関節

屈曲

3

3

坐位

 

伸展

3

3

坐位

股関節

屈曲

3

2

坐位

 

伸展

2

2

側臥位

 

外転

3

2

背臥位

 

内転

3

2

背臥位

 

外旋

3

3

背臥位

 

内旋

3

3

背臥位

膝関節

屈曲

3

4

背臥位

 

伸展

3

4

背臥位

足関節

背屈

3

2

背臥位

 

底屈

3

2

背臥位

〈Assessment〉全身的な筋力低下が見られる。特に、股関節、膝関節、足関節の伸筋群の筋力は顕著に低下が見られる。本人自身も足に力が入らないと自覚がある。

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6)動作分析

  • 寝返り

上肢を使用して、体幹や下肢を回旋させるなど一部介助により可能である。時には自力で可能なこともある。しかし、上肢に動きのみ頼っている傾向が強く、体軸内回旋が起こらず体幹や下肢が回旋できず、後方に残ってしまい、伸展パターンが見られ、寝返りが困難となっている。

 

  • 起き上がり

一部介助の状態である。側臥位から、下肢や腰部を支持して、下肢をベッドの下へ降ろす介助により、自力で肘関節を伸展しての起き上がり動作が可能とこともある。しかし、安定性や耐久性には欠け、肘の伸展がうまく行えないことが多い。また、自力で下肢をベッドの下に降ろすことは不可能である。

 

  • 坐位保持

ほぼ全介助である。端坐位時に右膝関節は屈曲し、下腿を後方へ過度に引いてしまい、足部は尖足の状態になっている。右足部を床に接地させるが、踵部が浮いてしまい、足底全体での体重支持が不可能な状態である。また、体幹の安定性もなく、前方での支持がなければ、転倒してしまう。状態の良いときには、両上肢での支持にて坐位保持可能となっていることもあるが、確実性はなく常に監視が必要である。

 

  • 移乗

上肢を伸ばし、支持しようとするが、上肢の支持性はなく、坐位同様に右 膝関節は過度に屈曲してしまい、足部は尖足の状態となり、踵部が浮いてしまうため、下肢での支持が不可能な状態である。右下肢での体重支持に欠けており、動作のパターンは理解しているようであるが、実用性はない。

 

  • 立ち上がり

前方への体重移動ができず、両足底部に荷重ができず、介助が必要である。端坐位と同様に右膝関節は屈曲し、下腿を後方へ過度に引いてしまい、足部は尖足の状態になっている。右足部と右膝関節の支持の介助なしでは不可能である。また、体幹の安定性もかけており、上肢の支持がなければ転倒してしまう。

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7)ADLテスト

Barthel Index:合計15点

項目

点数

結果

1.食事

全介助 0

要介助 5

自 立 10

10

準備が必要

2.車椅子からベッド又はその逆の動作

全介助 0

要介助 10

自 立 15

5

ほぼ全介助である

3.整容(洗面、整髪、髭剃り、歯磨き)

全介助 0

要介助 0

自 立 5

0

 

4.トイレ動作

全介助 0

要介助 5

自 立 10

0

昼夜オムツ使用

5.入浴動作

全介助 0

要介助 0

自 立 5

0

 

6.平面歩行

(歩行不能時車椅子駆動)

全介助 0 ・0

要介助10・0

自 立15・5

0

車椅子にて介助

7.階段昇降

全介助 0

要介助 5

自 立 10

0

実施していない

8.更衣動作

全介助 0

要介助 5

自 立 10

0

 

9.排便の管理

全介助 0

要介助 5

自 立 10

0

昼夜オムツ使用

便意の訴えはある

10.排尿の管理

全介助 0

要介助 5

自 立 10

0

昼夜オムツ使用

尿意の訴えはある

 

合計

15

 

 〈Assessment〉食事のみが自立しており、他は介助を要している。しかし、上肢の随意性はあり、巧緻動作が不可能であっても、更衣動作は一部介助レベル、整容動作は、項目によっては自立が可能ではないかと考えられる。

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【問題点】

<Impairment Level>

#1

左片麻痺

#2

下肢筋力の低下

#3

上肢筋力の低下

#4

体幹筋力の低下

#5

右足関節ROM制限

#6

右膝関節ROM制限

#7

手指の屈曲伸展制限

<Activity Limitation Level>

#8

移乗動作困難

#9

立ち上がり困難

#10

ADL機能低下

<Paticipation Restriction Level>

#11

ADLの介護負担が大きい

#12

在宅復帰困難

【ゴール設定】

Short Goal:坐位保持能力向上、ベッド・車椅子でのADL向上

Long Goal:移乗動作の自立、立ち上がり動作の自立、立位保持能力の自立、平行棒内での歩行自立

Final Goal:福祉用具(杖、歩行器など)を使用しての歩行自立、在宅復帰

 

【治療プログラム】

1)筋力低下に対するアプローチ

①股関節周囲筋の筋力増強訓練:膝屈曲位でのブリッジ運動を10回、2セット程度実施することで大殿筋の筋力増強を図る。また、背臥位での下肢の外転、内転の抵抗運動を10回、2セット程度実施することで中殿筋、内転筋群の筋力増強を図る。股関節周囲筋群の筋力増強により、寝返りや起き上がり際の下肢の動作の向上とともに、立ち上がりの際の体重の支持能力の向上を目指す。

 

②上肢の筋力増強訓練:肘関節の屈伸の抵抗運動を10回、2セット程度実施することで上腕二頭筋や上腕三頭筋の筋力増強を図る。上肢の筋力増強により、起き上がりの際の肘伸展能力や、坐位保持における上肢の支持性を向上させ、起き上がりや坐位保持の自立を目指す。

 

2)ROMの制限に対するアプローチ

①四肢のROM訓練:他動運動にて、ゆっくりとした伸張法により痙性を抑制し、ROMの拡大と維持を図る。運動回数は、各々の関節の運動方向に10回程度、1日に2回程度行う。特に、肘関節、膝関節、足関節、手関節、手指は念入りに行う必要がある。

 

②hold relaxの手技を利用したストレッチ:痙縮筋の拮抗筋が、最大収縮後に弛緩することを利用して、痙性の抑制とROMの拡大と維持につなげる。

 

3)移乗動作の自立へのアプローチ

①坐位保持訓練:端坐位での坐位保持能力の自立を目指し、両上肢の支持から片手での支持、支持なしでの坐位を行わせる。ある程度の支持性が可能となれば、坐位で上肢の運動をさせバランスの向上と安定性、耐久性を獲得させる。また、坐位保持訓練を行うことで、体幹や上肢の筋力増強とバランス感覚の向上を図る。

 

②立ち上がり訓練:平行棒内での立ち上がり動作を行い、動作の方法を獲得させる。また、体重の移動の感覚や運動方向、力の入れ具合などを獲得させると同時に、下肢筋力の増強を図る。

 

③移乗動作訓練:具体的な移乗動作(車椅子-ベッド間、ベッド-ポータブルトイレなど)を訓練することにより、効率の良い方法や姿勢、動作方法を獲得させる。

 

4)ADLの向上へのアプローチ

①ADL動作訓練:具体的なADLの動作を行わせる。特に、自立可能と推測される、上半身の更衣動作や、歯磨きや洗顔などの整容動作、書字動作などを訓練することで、介助量の軽減と自立を目指す。

 

【考察】

 本症例は、脳梗塞発症後、その後遺症で四肢の機能障害を呈し、全身的な筋力低下がみられる80歳代の女性である。ADLに関して食事以外は部分介助もしくは全介助を要している。コミュニケーションや意思表示には問題はなく、リハビリテーションにも積極的である。本人は在宅復帰を望んでいるが、家族は施設での生活を希望している。しかし、施設希望の理由が介護の負担が大きいためであるので、ADL動作の向上を図り、介助量の軽減ができれば在宅復帰も可能ではないかと考えられる。

 本症例では坐位保持の安定性、耐久性に欠けており、坐位保持ができないため更衣動作や整容動作にも介助の必要性がでてきている。また、寝返りや起き上がり、立ち上がり、移乗動作も一部介助が必要なため、排泄が自立せず、オムツ使用の状態である。尿意や便意の訴えはあるため、ポータブルトイレへの移乗動作が可能となれば、排泄も一部介助レベルになるのではないかと考えられる。

坐位保持を困難にしている要因としては、体幹の筋力低下、足・膝関節のROM制限が考えられる。しかし、端坐位では、上肢の支持があれば坐位保持は比較的に安定しており、体幹の筋力を向上させ、坐位保持の安定性、耐久性を獲得することで、坐位でのADL動作も可能となると考えられる。また、足部が床に着く状態の坐位では、右膝関節を過度に屈曲させ、右足部が尖足状態となっており、両足部に均等に荷重がかけられていないため、両足部に均等に荷重をかけ、坐位のバランスを獲得させることで、靴の着脱や立ち上がりの動作にもつなげることが可能であると考えられる。

寝返りを困難としている要因は、体幹・下肢の筋力低下と左側の麻痺、そして効率的な動作できないことにあると考えられる。現状は上肢の筋力に依存している傾向が強く、下肢の運びがうまくできず、体軸内回旋がうまくできていない。このため、効率の良い寝返り動作を獲得することで自立が可能になるのではないかと考えられる。

起き上がり動作も寝返りと同様で、下肢をベッドから下ろすと同時に、肘関節の伸展を使用して起き上がる動作ができていないため、上・下肢の筋力増強と同時に、下肢の重みを利用した第1のてこでの起き上がり動作を獲得することで起き上がりが自立すると考えられる。

立ち上がり、移乗動作を困難としている要因は、足・膝関節のROM制限、上・下肢の筋力低下が考えられる。坐位と同様に、右膝関節は過度に屈曲させ、右足部は尖足状態となり、踵部が浮いている状態である。そのため下肢の筋力の増強を図り、両足部に均等に荷重をかけることで体重を支持する能力を獲得させる。また、上肢の筋力を増強させ、移乗動作の際の荷重支持の補助をすることで、移乗動作の自立が可能ではないかと考えられる。

これらの要因に対してアプローチするために、下記のような治療プログラムを立案した。筋力低下に対するアプローチとして、①股関節周囲筋の筋力増強訓練、②上肢の筋力増強訓練により筋力の増強を図り、坐位保持や寝返り、起き上がり、立ち上がり動作の自立や向上を目指す。ROMの制限に対するアプローチとして、①四肢のROM訓練、②hold relaxの手技を利用したストレッチにより、ROMの拡大と維持を図る。移乗動作の自立へのアプローチとして、①坐位保持訓練、②立ち上がり訓練、③移乗動作訓練により、坐位保持能力の自立や立ち上がり動作の獲得を目指し、バランス能力の向上と安定性、耐久性を獲得させ、車椅子-ベッド間、ベッド-ポータブルトイレなどの現実的な移乗動作の獲得を目指す。ADLの向上へのアプローチとして、①ADLの動作訓練により、実際の上半身の更衣動作や、歯磨きや洗顔などの整容動作、書字動作などADLの動作を訓練することで、動作を獲得し、介助量の軽減と自立を目指す。

本症例では、高齢であることや、大きな筋力増強が望めないと考えられることから歩行の自立までは困難と思われる。そのため、車椅子での移動が主となると推測される。寝返りや起き上がり、立ち上がり、移乗などの動作がある程度自立できたならば、車椅子で移動できるような訓練も必要となってくる。現状では、車椅子での坐位保持は自立しており、車椅子上でのADL動作が向上できれば、介助量の負担も軽減されると考えられる。そのためにも、上肢の機能性や手指の高地性を高める訓練も必要となってくるであろう。また、在宅復帰を考慮するならば、車椅子での生活に支障をきたすか否か、家屋調査も含め、家族への指導や提案も随時行っていくことが必要と考えられる。

 

【参考文献】

1)米本 恭三,他:リハビリテーションにおける評価 Ver.2,医歯薬出版(株),2004

2)奈良 勲,他:運動療法学各論,(株)医学書院,2005

3)田崎 義昭,他:ベッドサイドの神経の診かた,(株)南山堂,2004

4)市橋 則明,他:筋力低下の予防,総合リハビリテーション33巻7号,2005

5)土屋 弘吉,他:日常生活活動(動作)第3版,医歯薬出版(株),2005

6)市橋 則明,他:筋力低下に対する運動療法の基礎,PTジャーナル38巻9号,2004

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-脳血管疾患, 書き方, 施設(老健など), レポート・レジュメ