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【肺気腫の患者】レポート・レジュメの作成例【実習】

2022年1月1日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「肺気腫」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 肺気腫を呈する患者

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「肺気腫」の患者のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ,一般的情報

◆氏名:氏

◆性別:男性

◆生年月日:〇〇年〇〇月〇〇日

◆年齢:70歳代

◆職業:無職

◆家族構成: Key person=妻 2人暮らし

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◆住居:平家(家の前は坂。ベッド。洋式トイレ)

◆活動範囲:家の周りのみ

◆趣味:家庭菜園・猟

◆視力:良好

◆聴力:良好

◆義歯:下の歯のみ義歯

◆本人の要望:<初期>息ぎれを無くしたい <最終>どんな時でも息ぎれが無いようにしたい

 

Ⅱ,医学的情報

◆診断名:肺気腫、呼吸不全、心室性期外収縮、前立腺肥大

◆現病歴:8年前から坂道を登る時、息苦しさが起こるようになった。X線写真で異常有と言われた。経年的に歩行時の息苦しさが悪化し、昨年から平地を歩く時でも息苦しく感じるようになった。痰の回数は20~30回/日。体重はあまり変わらない。不眠(睡眠薬使用)。草むしりや浴槽に入ると苦しいが、大便・着替えでは息苦しくない。〇〇年〇〇月〇〇日リハ目的で当院入院

◆既往歴:慢性肺気腫、不整脈、両眼白内障Ope

◆喫煙歴:タバコ20~30本/日

◆飲酒歴:無し

◆X-P所見:*画像添付推奨

両肺過膨張(横隔膜平低化)。両下葉に数個の小さいブラが認められる。心肥大が認められる。

◆内服薬: 

ヘルベッサー(塩酸ジルチアゼム)

【適応】1)狭心症,異型狭心症 2)本態性高血圧症(軽症~中等症)

【副作用】〈重大〉1)完全房室ブロック,高度徐脈(初期症状:徐脈,めまい,ふらつき等) 2)うっ血性心不全3)皮膚粘膜眼症候群,中毒性表皮壊死症(Lyell症候群),紅皮症(剥脱性皮膚炎)等〈その他〉1)循環器(徐脈,房室ブロック,顔面潮紅,めまい,洞停止,洞房ブロック,動悸,胸痛,浮腫等)2)精神神経(パーキンソン様症状,倦怠感,頭痛,頭重感,こむらがえり,脱力感等) 3)肝臓(黄疸,肝腫大,GOT・GTP上昇等) 4)過敏症(発疹,そう痒,光線過敏症,多形性紅斑様皮疹,蕁麻疹等) 5)消化器(胃部不快感,便秘,腹痛,胸やけ,食欲不振,嘔気,軟便,下痢,口渇等)6)血液(血小板減少,白血球減少) 7)口腔(歯肉肥厚) 8)その他(女性化乳房) 

 

シグマート

【適応】狭心症

【副作用】1)循環器(動悸,面紅潮,全身倦怠感,気分不良,胸痛,下肢のむくみ,のぼせ感等)2)精神神経(頭痛,めまい,耳鳴,不眠,眠気,舌のしびれ,肩こり等)3)過敏症(発疹等) 4)消化器(口内炎,悪心,嘔吐,食欲不振,下痢,便秘,胃のもたれ,胃部不快感,胃痛,腹痛,腹部膨満感,口角炎,口渇等)5)肝臓(ビリルビン・GOT・GPT・Al-Pの上昇等)6)血液(血小板減少)7)その他(頸部痛,複視) 

 

シベノール

【適応】[内] 以下の状態で他の抗不整脈薬が使用できないか,又は無効の場合:頻脈性不整脈 [注] 頻脈性不整脈

【副作用】 [内]〈重大〉1)催不整脈作用2)心不全3)低血糖4)重篤な肝障害5)顆粒球減少,白血球減少,貧血,血小板減少〈その他〉1)循環器(PQ・QTcの延長,QRS幅延長,房室ブロック,脚ブロック,徐脈,血圧低下,洞結節機能低下,動悸等) 2)肝臓(GOT・GPT・Al-P等の上昇) 3)泌尿器(尿閉,排尿困難等の排尿障害) 4)腎臓(BUN上昇,クレアチニン上昇)5)眼(霧視,光視症等の視調節障害) 6)過敏症(紅斑,発疹,そう痒感等の過敏症状) 7)精神神経系(頭痛・頭重,めまい・ふらつき,立ちくらみ,眠気,振戦,幻覚等)8)消化器(口渇,食欲不振,便秘,悪心・嘔吐,腹痛・腹部不快感,口内炎等)9)その他(脱力感,倦怠感,胸部圧迫感,冷汗,息切れ,関節痛,鼻乾燥,インポテンス等) [注]〈重大〉1)催不整脈作用2)心不全3)重篤な肝障害〈その他〉1)循環器(PQ・QTcの延長・QRS幅延長,房室ブロック,脚ブロック,徐脈,血圧低下,動悸等) 2)代謝〔低血糖症状(意識障害,錯乱等)〕3)肝臓(GOT・GPT等の上昇) 4)血液(白血球減少,血小板減少)5)泌尿器(尿閉,排尿困難等の排尿障害)6)腎臓(BUN上昇,クレアチニン上昇)7)眼(霧視等の視調節障害)8)消化器(口渇,悪心,腹痛等)9)精神神経(頭痛,めまい,発汗等)10)その他(ほてり,下肢冷寒,血管痛,胸痛等) 

 

ハルシオン

【特徴】血中濃度半減期が最も短いベンゾジアゼピン系睡眠薬

【適応】1)不眠症 2)麻酔前投薬

【副作用】〈重大〉1)薬物依存,離脱症状2)精神症状3)呼吸抑制:(呼吸抑制,呼吸機能が高度に低下している患者:炭酸ガスナルコーシス)4)一過性前向性健忘〈その他〉1)精神神経2)肝臓(GOT・GPT・γ-GTP・Al-Pの上昇)3)消化器(口渇,食欲不振,悪心・嘔吐,下痢,腹痛,心窩部不快感,便秘)4)循環器(血圧上昇,動悸,胸部圧迫感,血圧降下)5)過敏症6)骨格筋(倦怠感,脱力感等の筋緊張低下症状)7)その他(味覚変化,皮下出血,尿失禁,便失禁,尿閉) 

 

◆リハ開始日:〇〇年〇〇月〇〇日 PTS担当

◆血圧:130/70mmHg

◆ツベルクリン反応:不明

◆血ガス:

〇〇年〇〇月〇〇日 pH:7.4  PaO:80torr PaCO2:40torr HCO3:24mEq/l

〇〇年〇〇月〇〇日 pH:7.41 PaO:84torr PaCO2:36torr HCO3:23mEq/l

 

Ⅲ,他部門よりの情報

◆Nrsからの情報:特記すべき事項なし

◆Drからの情報 :不整脈があるので、運動時など注意が必要

◆栄養士からの情報:軽度肥満なので間食をせず体重を落とすように

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Ⅳ,理学療法評価・Ⅴ,問題点・Ⅵ,ゴール

初期評価最終評価

◆全体像:独歩にて軽快に来室。日焼けし体格もよく活動的な感じで朗らかな印象。モチベーションも高く訓練にも積極的で検査測定にも協力的である。

 

―全体的理学所見―

◆全身状態:体格よく腹部が出て軽度肥満気味。

◆脈拍:60回/分(安静坐位時)

◆Fletcher-Hugh-Jonesの息ぎれ分類:Ⅲ

◆皮膚状態:浮腫や皮膚の萎縮などは見受けら

れない。

◆口唇:酸素飽和度の低下を示すようなチアノ

ーゼは見受けられない。

◆頸部:右胸鎖乳突筋・右斜角筋の筋肥大が見

受けられる。

◆四肢:関節の可動性に制限はなく、浮腫・筋の萎縮・筋緊張は見受けられない。

 

―胸部理学所見―

<視診>

◆胸部皮膚所見:皮膚の状況より皮膚の萎縮や

肋骨筋の萎縮等は見受けられない。

◆胸郭と脊柱の形状:ややビヤ樽肺を示す。脊

柱(頚胸椎移行部)に左凸側弯が見受けら

れる。

◆胸郭の柔軟性:低下

◆呼吸数:22回/分(安静臥位時)

◆呼吸と胸郭の運動:胸腹式呼吸の混合型。

◆呼吸補助筋の活動:吸気時に胸鎖乳突筋・斜角筋の活動がみられ右に肥大が認められる。

◆咳及び痰:喀痰の為に咳を自発的に行うことが出来る。夕方から夜にかけて多く出るが全体的に少量である。色はやや黄色く、粘性がある。

<触診>

◆呼吸パターン(横隔膜呼吸の熟達度)

臥位:グレードⅢ(斜角筋と横隔膜が同時に収縮)――胸腹式混合呼吸

坐位:グレードⅢ(斜角筋と横隔膜が同時に収縮)――胸腹式混合呼吸

立位:グレードⅡ~Ⅲ(斜角筋が収縮してから横隔膜が収縮。または、斜角筋と横隔膜が同時に収縮)――胸式呼吸優位~胸腹式混合呼吸

 歩行:グレードⅠ(斜角筋のみ収縮)――胸式呼吸

<聴診>

◆呼吸音・副雑音:呼気時に左右下葉に低音性連続性ラ音を確認できる。

 

―検査・測定―

◆形態測定:

身長:      体重:   

BMI:24.2           肥満度:10.2%

◆胸郭拡張差:単位:cm

 

最大呼気時

最大吸気時

拡張差

腋窩

91.5

92.8

1.3

剣状突起

88.8

90.7

1.9

第10肋骨

82.0

83.5

1.5

◆肺機能検査:

VC:2.17 L         %VC:70.5%

FVC:1.49 L  %FVC:48.4%

FEV1.0:0.76 L FEV1.0%:51.0%

%FEV1.0:30.8%

MVV:35.52 L/m  %MVV:45.7%

◆呼吸筋力:

最大吸気筋(MIP):82.5cmH2O

最大呼気筋(MEP):47.5 cmH2O

◆握力:

左:30.1kg 右:35.6kg

◆大腿四頭筋筋力(KINCOM):ピークトルク

左:109Nm     右:109Nm

◆運動機能評価(歩行能力テスト):

6Minutes Walking Distance(6MD)

[マイペース] 呼吸法・酸素吸入無し      

歩行距離:300m

 

開始時

終了時

脈拍数

65bpm

78bpm

SpO2

95%

96%

Borgスケール(胸部)

3

4

Borgスケール(下肢)

0

7

[速歩] 呼吸法・酸素吸入無し

               歩行距離:398m

 

開始時

終了時

脈拍数

66bpm

59bpm

SpO2

95%

95%

Borgスケール(胸部)

3

5

Borgスケール(下肢)

3

3

◆心肺運動負荷試験(トレッドミル):

[中止理由]  呼吸困難感、下肢疲労

[負荷中止時] %HRmax:65.7%

       VE/MVV:1.16

[運動時]  VO2/w :16.18(ml/kg/min)

      VE/VO2:40.0(安静時70.0)

Borgスケール(胸部):2(開始前)→ 7(終了後)

Borgスケール(下肢):2(開始前)→ 9(終了後)

Stage経過:

 

HR

SpO2

安静時

63

97

64

95

68

94

71

93

75

91

77

92

87

90

94

89

◆ADL-Test

千住式ADL評価法:86/100点

 

Ⅴ,問題点

Impairment Level

# 1:労作時呼吸困難感

# 2:胸腹式呼吸パターン

# 3:胸郭の柔軟性低下

# 4:呼吸筋力低下

# 5:心室性期外収縮

# 6:(高強度負荷運動時)低酸素血症

Disability Level

# 7:歩行能力低下(特に階段・坂道歩行に自覚的呼吸困難感を訴える)(#1,2,3,4,5,6)

# 8:運動耐容能の低下 (#1,2,3,4,5,6)

# 9:入浴(浴槽)動作困難 (#1,2,3,4,5,6)

Handicap Level

#10:生活範囲の狭小化 (#1,2,3,4,5,6,7,8)

#11:QOLの低下(#1,2,3,4,5,6,7,8)

 

Ⅵ,ゴール

STG(4w):呼吸法(横隔膜・口すぼめ呼吸)の確立(臥位・坐位・立位・歩行時ともに確立)、胸郭の柔軟性の改善、運動耐容能の改善、呼吸筋筋力増強

LTG(8w):呼吸法(横隔膜・口すぼめ呼吸)の確立(ADL時)、全身持久力の向上、入浴(浴槽)動作能力獲得

FG:生活範囲の拡大、QOLの向上

◆全体像:初期評価時と変わらず。

 

―全体的理学所見―

◆全身状態:体格よく腹部が出て軽度肥満気味。

◆脈拍:64回/分(安静坐位時)

◆Fletcher-Hugh-Jonesの息ぎれ分類:Ⅲ

◆皮膚状態:変化無し

◆口唇:変化無し

◆頸部:変化無し

◆四肢:変化無し

 

―胸部理学所見―

<視診>

◆胸部皮膚所見:変化無し

◆胸郭と脊柱の形状:変化無し

◆胸郭の柔軟性:低下

◆呼吸数:20回/分(安静臥位時)

◆呼吸と胸郭の運動:変化無し

◆呼吸補助筋の活動:変化無し

◆咳及び痰:変化無し

<触診>

◆呼吸パターン(横隔膜呼吸の熟達度)

臥位:グレードⅢ~Ⅳ(斜角筋と横隔膜が同時、または斜角筋が遅れて収縮)―――胸腹式混合呼吸

坐位:グレードⅢ~Ⅳ(斜角筋と横隔膜が同時、または斜角筋が遅れて収縮)―――胸腹式混合呼吸

立位:グレードⅢ(斜角筋と同時に横隔膜が収縮)――胸腹式混合呼吸

歩行:グレードⅢ(斜角筋と同時に横隔膜が収縮)――胸腹式混合呼吸

<聴診>

◆呼吸音・副雑音:呼気時に左右下葉に低音性連続性ラ音を確認できる。

 

―検査・測定―

◆形態測定:

身長:     体重:

BMI:24.3           肥満度:10.5%

◆胸郭拡張差:単位:cm

 

最大呼気時

最大吸気時

拡張差

腋窩

90.2

92.2

2.0

剣状突起

88.5

90.8

2.3

第10肋骨

82.6

83.4

1.3

◆肺機能検査:

VC:2.20 L         %VC:71.4%

FVC:1.54L   %FVC:50.0%

FEV1.0:0.75L FEV1.0%:48.7%

%FEV1.0:30.4%

MVV:33.04L/m  %MVV:42.5%

◆呼吸筋力:

最大吸気筋(MIP):87.5cmH2O

最大呼気筋(MEP):54.0 cmH2O

◆握力:

左:32.4kg 右:36.2kg

◆大腿四頭筋筋力(KINCOM):ピークトルク

左:113Nm     右:106Nm

◆運動機能評価(歩行能力テスト):

6Minutes Walking Distance(6MD)

[マイペース] 呼吸法・酸素吸入無し      

歩行距離:329m

 

開始時

終了時

脈拍数

64bpm

78bpm

SpO2

97%

96%

Borgスケール(胸部)

2

3

Borgスケール(下肢)

4

7

[速歩] 呼吸法・酸素吸入無し

              歩行距離:400m

 

開始時

終了時

脈拍数

47bpm

84bpm

SpO2

98%

96%

Borgスケール(胸部)

3

4

Borgスケール(下肢)

4

7

◆心肺運動負荷試験(トレッドミル):

[中止理由]  呼吸困難感

[負荷中止時] %HRmax:62.9%

       VE/MVV:0.98

[運動時]  VO2/w :13.86(ml/kg/min)

      VE/VO2:36.6(安静時60.6)

Borgスケール(胸部):3(開始前)→ 7(終了後)

Borgスケール(下肢):2(開始前)→ 4(終了後)

Stage経過:

 

HR

SpO2

安静時

64

95

71

95

76

94

81

92

79

91

85

91

90

92

◆ADL-Test

千住式ADL評価法:91/100点

 

Ⅴ,問題点

Impairment Level

# 1:労作時呼吸困難感

# 2:胸腹式呼吸パターン

# 3:胸郭の柔軟性低下

# 4:呼吸筋力低下

# 5:心室性期外収縮

Disability Level

# 6:歩行能力低下(特に階段・坂道歩行に自覚的呼吸困難感を訴える)(#1,2,3,4,5)

# 7:運動耐容能の低下 (#1,2,3,4,5)

# 8:入浴(浴槽)動作困難 (#1,2,3,4,5)

Handicap Level

#9:生活範囲の狭小化 (#1,2,3,4,5,6,7)

#10:QOLの低下(#1,2,3,4,5,6,7)

 

Ⅵ,ゴール

LTG(8w):呼吸法(横隔膜・口すぼめ呼吸) の確立(ADL時に確立)、胸郭の柔軟性の改善、運動耐容能の改善、呼吸筋筋力増強、全身持久力の向上、入浴(浴槽)動作能力獲得

FG:生活範囲の拡大、QOLの向上

Ⅶ,治療プログラム

1.横隔膜・口すぼめ呼吸1)

目的:横隔膜呼吸および口すぼめ呼吸を習得することにより呼吸困難を回避し呼吸パターン(胸腹式呼吸)を改善する。

方法:[背臥位]股・膝関節軽度屈曲位。患者の利き手を腹部に他方を上胸部にのせ、その上にPTSの手を同様に重ねる。口すぼめ呼吸で呼気と吸気時の手の動きに意識を集中させる。手の動きを感じ取れれば吸気時に腹部を持ち上げるように指示する。この時PTSは、呼気の終わりに徒手による振動や横隔膜の急速伸張を与え筋の収縮を促進する。

[坐位] 患者の利き手を腹部に他方を上胸部にのせ、その上にPTSの手を同様に重ねる。口

すぼめ呼吸で呼気と吸気時の手の動きに意識を集中させる。手の動きを感じ取れれば吸気時に腹部を持ち上げるように指示する。

[歩行時]歩行訓練の際に4歩で口すぼめを行い、2歩で横隔膜呼吸により吸気を行うように指導する。(困難なようであれば、口すぼめにより呼気を長くするように指導する)

注意:PTSは斜角筋を触診しながら斜角筋の収縮のないことを確認しながら行う。

 

2.筋力増強訓練

目的:横隔膜の筋力増強を図ることにより横隔膜呼吸の効果を最大限に引出し、腹部周囲筋の筋力増強により呼気を有効に行えるようにすることで、1回換気能力の向上を目指す。上肢筋の筋力増強により、上肢運動中の換気需要の低下・息ぎれの改善・運動耐用能の増加、QOLの改善2を目指す。

方法:[横隔膜]臥位での横隔膜呼吸が出来るようになってから、重錘(0.5~3.0kg)を腹部に乗せ、無理なく10回腹部を膨らますことのできる重さを決定し、漸次増減させ筋力増強を図る。

   [腹部周囲筋]背臥位にて両膝を立て頚部を屈曲し、臍を覗き込むように腹筋を行う。

   [上肢筋]①大胸筋:背臥位にて重錘を両手に持ち肩関節90度外転位より持ち上げ上方まで持ち上げる。

②三角筋前部線維:背臥位にて重錘を持ち体側より肩屈曲180度まで行う。

③三角筋中部線維:坐位にて重錘を両手に持ち肘伸展位にて体側より肩関節90度まで外転させる。

④三角筋前部線維・上腕二頭筋・上腕三頭筋:坐位にて重錘を持ち、肩屈曲90度肘屈曲90度より肘を伸展しながら肩屈曲180度まで行う。各20回。

注意:筋力増強訓練時に呼吸困難感を示す場合および心拍数・SpO2の値に注意する。全ての運動において横隔膜呼吸・口すぼめ呼吸を行う.

 

3.呼吸体操1)

目的:全身状態の改善、全身の筋緊張の緩和、胸郭運動の改善、呼吸パターンの改善。

方法:集団訓練により横隔膜呼吸と口すぼめ呼吸を用いて、呼気を通じて運動を行う。

注意:動作をすべて呼気時に行い、運動と運動の間に十分な時間をとり息切れ感を防ぎ、SpO2の低下を回避する。

 

4.胸郭モビライゼーション

目的:胸郭の可動性改善。

方法:[肋骨捻転法]呼気で捻転し吸気は呼吸運動を制限しない。これを下部肋骨から上部肋骨へ左右両胸郭に行う。PTSは患者の肋間を1~2つ分離して手を置き、呼気時に肋骨を1本ずつ捻るように動かし肋間に剪断力を加え、内外肋間筋のストレッチと肋椎関節の可動性を増大させる。

 

5.トレッドミル

目的:運動耐容能・持久力向上。下肢筋力増強。

方法:3km/h  2.0%傾斜(StageⅥ) 20分(余力があれば時間を長くする)

 

6.ストレッチ

目的:呼吸補助筋のリラクゼーション・柔軟性。下腿三頭筋等下肢筋の歩行訓練での筋疲労の回復

方法:[大胸筋]両肩外転130度、肘屈曲90度にて両手でタオルを把持し、後頭部より後にタオルがくるように胸を張りながら肩外転角度を70度くらいまで下げる。

   [下腿三頭筋]ストレッチボードに15度、5~10分立つ。

注意:伸張すべき所がきちんと伸張されてるか意識しながら行う。大胸筋に関しては、動作中は呼気にて行う。

 

7.筋力増強訓練

目的:股関節屈筋を強化することで、歩行時の下肢疲労感を取り除く。

方法:背臥位にて足関節に1Kgの重錘を巻き運動する膝は伸展・足関節背屈にて股関節を屈曲する。この時対側の下肢は膝屈曲位で行う。各20回

 

8.平地歩行訓練

目的:家庭復帰に向け、実際の歩行距離を伸ばすとともに、下肢筋力増強により歩行による下肢疲労感を取り除く。

方法:庭園・リハ室内など距離を確認できる所を、マイペースで歩き少しずつ距離を伸ばす。

 

Ⅷ.考察

 本症例は、8年前より坂道を登るとき息苦しさが起こるようになり肺気腫、呼吸不全となった70歳代男性である。

初期評価時において、肺機能検査で%肺活量(70.5%)・1秒率(51.0%)であったことから混合性の呼吸機能障害を起こしているものと考えた。また%1秒量(30.8%)より最重症の肺気腫であることが分かる3。これは最終評価時においても、%肺活量(71.4%)・1秒率(48.7%)・%1秒量(30.4%)と変化は見られなかった。

本症例の最大の問題点は、労作時呼吸困難感である。これは、ADL-Testからも分かるように入浴時・歩行時(特に坂道・階段)において、また草むしり時等に起こっている。Fletcher-Hugh-Jonesの息ぎれ分類はⅢである。初期評価時の横隔膜呼吸の熟達度は胸腹式混合呼吸パターンまたは胸式呼吸のみの呼吸パターンをとっていた。一般的にCOPD患者は呼吸運動に消費される呼吸筋の酸素消費量が健常人の約10倍と高く、これが呼吸困難の一因となっている1)と言われることから、改善の為に横隔膜呼吸・口すぼめ呼吸訓練を積極的に行った結果、臥位・坐位では腹式呼吸優位パターンとなり、立位・歩行においても斜角筋・横隔膜同時収縮の胸腹式呼吸パターンへと改善した。これは、症例の歩行・階段・坂道にて息ぎれが軽減したとの自覚症状からも効果があったと考える。

また本症例は初期評価時において、通常の呼吸が口呼吸となっており、呼吸は鼻で吸気を行うことで鼻毛で空気中の埃を除去し、温度・湿度を肺胞気(温度38℃、湿度100%)に近くすることができ、肺胞気の負担が小さくなると言われていることから4吸気を鼻で行うように指導した。これにより最終評価時において、意識下(特に横隔膜呼吸・口すぼめ呼吸時)では鼻呼吸を行うことが出来るようになった。

初期評価時において、呼吸筋力低下が見られことから換気機能・息ぎれ・運動能力の改善1)を目的に、横隔膜・腹筋・上肢筋の筋力増強訓練を行った。この結果、最終評価時の呼吸筋力検査において改善が見られたが、肺機能検査での換気機能・運動能力の改善は見られなかった。

本症例は初期評価時においてX-P所見より横隔膜の平低化がみられた。横隔膜の運動が十分に行われるためには横隔膜が上方に位置している必要があり、これを可能にするのが腹筋の収縮による腹圧の上昇である4)と言われている。このことから、横隔膜の動きを助けるとともに、呼気能力を高めるために腹筋の筋力増強を行った。最終評価時においてX-Pは取り直していないため、横隔膜の状態は確認できないが、腹式呼吸のグレードからも横隔膜の運動は改善していると考える。またCOPD患者は上肢の運動で呼吸困難に陥りやすいといわれていることから5)、呼吸困難防止目的に上肢筋力強化訓練を行った。これらにより、入院当初トレッドミル歩行訓練中に上肢下垂位歩行は困難であったが、最終評価時では30分歩行でも上肢下垂位の通常歩行が可能となったことからも、効果があったと考える。

胸郭は初期評価時においてビヤ樽状を呈しており胸郭の可動性が低下していた。これにより換気運動が制限され、運動時に1回換気量の制限など呼吸筋に負担をかけ疲労しやすくなるため、柔軟性を高めることで換気運動に要する負担や患者の息ぎれ(呼吸困難感)軽減目的で胸郭モビライゼーションを行った。最終評価時においても胸郭はビヤ樽状を呈しているが、胸郭の可動性は胸郭拡張差において若干ではあるが、改善が見られた。

これらに加え、腹式呼吸法の強化・呼気筋の筋力強化・胸郭の可動性増大・頸部のリラクゼーション・上下肢の筋力増強を目的に呼吸体操を集団訓練で1日2回行ったことも、これらの改善が見られたことに大きく関与していると考える。

大腿四頭筋筋力検査においては標準並みの筋力が認められたが、6MD時において下肢の疲労感が強く、入院前は息ぎれによりほとんど歩行は行っていなかったとのことから、下肢筋力(持久力)低下があると考えた。これに対しトレッドミルでの歩行訓練を行うことで、下肢筋持久力の増強ならびに呼吸循環系の機能を高めることが出来るといわれており5)、また日常生活・趣味の猟において歩行は必要不可欠であることから、実用性の高い歩行を行うことで下肢筋持久力増強を図り、歩行能力低下・運動耐容能低下を改善しようと考えた。この結果、最終評価時において6MDの歩行距離に若干伸びがみられた以外、改善は見られなかった。

これらを改善することで,生活範囲の狭小化も解消でき趣味である猟に出かけることが出来るようになればQOLも向上すると考える.しかし,本症例は心室性期外収縮があり,また高強度負荷運動時には低酸素血症を呈することから,運動時の無理な負荷や体調等には十分に留意し,運動前にはウォーミングアップを取り入れるように指導してリスク管理を行っていく.

 

Ⅸ,参考・引用文献

1)千住 秀明:呼吸リハビリテーション入門.新陵文庫.1999

2)宮川 哲夫 他:理学療法MOOK4呼吸理学療法.1999

3)北村 諭 他:COPD診断と治療の為のガイドライン.メディカルレビュー社.1999

4)溝呂木 忠:理学療法ハンドブック第3巻.協同医書出版.2000

5)千住 秀明 他:理学療法技術ガイド.文光堂.2000

6)泉 孝英:呼吸器病レジデント・マニュアル第2版.医学書院.1995

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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