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【大腿骨頭壊死+THA施行】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月28日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「大腿骨頭壊死+THA施行」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 大腿骨頭壊死の患者

  • THAを施行
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「大腿骨頭壊死+THAを施行」の患者のレポート・レジュメ作成例

1.一般患者情報

氏名:

性別:女性

生年月日:

年齢:70歳代

 

2.社会的情報

趣味:農業(庭の手入れ)

利き手:右

職歴:老人ホームで働いていた。現在は隠居

家族関係:5人家族(下記に示す)

キーパーソン:長男の嫁(40歳代)長女の経営している肉屋にパートで16時頃まで働いている。この為、昼食準備・洗濯・掃除は患者本人が行ない、昼間は不在で介護力としては考えにくい。

要望:家に帰って孫たちの世話をしてやらないといけない。庭に花を植えて、友達にやりたい。

性格:明るく、話し好き、気分の変動大きい、心配症、神経質

退院後の方針:長男宅に同居

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家屋状況:患者、カルテより情報を聴取。郊外に一戸建て。家屋での最大の段差は、約20cm。廊下と部屋の段差は約5㎝。廊下の幅は約80㎝~100㎝で手摺りはなし。階段は蹴上げ約20㎝、踏みしろ約30㎝で10段で手摺りは片手すり(上る時右手摺り)。寝室では布団を使用。トイレは洋式。4.5畳の部屋はドアで他は襖。2階のベランダ(雨の日に洗濯を干す)には四方に手摺りあり。風呂には手摺りなし。

 

3.医学的情報

診断名:左大腿骨頭壊死(〇〇年〇〇月〇〇日初診)

    左THA術後(〇〇年〇〇月〇〇日手術)

    左肩肩板断裂(〇〇年〇〇月〇〇日診断)

障害名:歩行障害、ADL障害、関節可動域制限、筋力低下

主訴:手術の傷の所が痛い(初期評価時)

   右肩が痛い、早く退院したい(最終評価時)

現病歴(発病歴):数年前から左股関節に疼痛あり。A病院を外来で受診する。受診の結果、大腿骨頭壊死と診断される。その結果、当院へ〇〇年〇〇月〇〇日手術目的で入院する。〇〇年〇〇月〇〇日THA手術を行う。〇〇年〇〇月〇〇日にPTS担当となる。

合併症:右変形性膝関節症

X-ray:*図の添付推奨

入院後の経過:

〇〇年〇〇月〇〇日 入院

〇〇年〇〇月〇〇日 術前評価、理学療法スタート

〇〇年〇〇月〇〇日 手術

〇〇年〇〇月〇〇日 術後理学療法スタート

〇〇年〇〇月〇〇日 端座位、移乗

〇〇年〇〇月〇〇日 歩行訓練

〇〇年〇〇月〇〇日 PWB1/3    

〇〇年〇〇月〇〇日 PWB1/2

〇〇年〇〇月〇〇日 PWB2/3

〇〇年〇〇月〇〇日 FWB

〇〇年〇〇月〇〇日 歩行器

〇〇年〇〇月〇〇日 T-cane

 

理学療法情報:

 THAの術前トレーニングとして、トランスファー訓練、車椅子駆動訓練を行う。肺塞栓予防として、足趾の屈伸運動・足関節の低背屈運動・腹式呼吸、気道確保として咳ばらいを指導する。筋力に対する訓練は、Quadセッテング・患側に荷重をかけない立ち上がり訓練を行う。

右膝変形性関節症に対する治療として、膝に対する関節可動域訓練(下肢を中心に行う)。

浮腫に対する治療として、両下肢にメドマ-を行う。

 

服用薬:

  • ロルフェナミン

適応:下熱剤作用、鎮痛作用

副作用:発疹、かゆみ、腹痛、胃部不快感

  • ムコスタ

適応:胃炎、胃潰瘍

副作用:便秘、発疹、胃腸症状

  • フロモックス

適応:抗生物質

副作用:過敏症状では、肝機能障害、血液障害

  • フェロミア

適応:造血作用

副作用:吐き気、食欲不振、腹痛、便秘

  • ボレー液

適応:抗真菌薬

副作用:刺激作用、かゆみ、発赤、炎症

  • アルツ(関節内注射液)

適応:肩関節周囲炎、変形性膝関節症

副作用:蕁麻疹、疼痛、水腫、発赤

  • ハルシオン

適応:催眠鎮静作用

副作用:ふらつき、倦怠感、運動反射機能減退、盲瘻状態、健忘、耳鳴、動悸

  • キシロカイン(筋肉注射液)

適応:局所麻酔剤

副作用:ショック、浮腫、脈拍異常、眠気、不安、興奮

  • デキサート(筋肉注射液)

適応:副腎皮質ホルモン(抗炎症剤)

副作用:うつ状態、下痢、悪心、胃痛

 

4.他部門からの情報

・主治医から:〇〇年〇〇月〇〇日

本症例のゴールは一本杖歩行、リスクは筋力低下による再転倒、治療方針はクリパスのとおりである。手術は、後側方進入(Gibson変法)であり、屈曲・内転・内旋が禁忌肢位である。右足関節の腫張についてであるが、老人性の特発的な浮腫又は、右変形性膝関節症の為か、断定できない為、経過観察中であるが、足関節に対する影響はないそうである。浮腫は、術前から見られ、術後臥床時軽減、理学療法開始後出現した。 

・主治医から:〇〇年〇〇月〇〇日

患者からの左肩痛の訴えの為診察の結果、加齢による肩板断裂と確定する。以前より、疼痛のない肩板断裂であった可能性もあるが、手術後点滴の時に肩を自分で勝手に固定していた為に誘発された可能性がある。患者は心配症の為、病状については伝えない。

 

・看護師から:〇〇年〇〇月〇〇日

日常の病室の生活においては、同室者とのコミュニケーションは良好で温和に過ごしており、日記を書く習慣があるようである。自室におけるSLRなどのリハビリは、看護師の促しにより行うだけで積極的とはいえない。しかし、車椅子に乗ることを好むようで、安静度が守れず、自己判断で車椅子に乗ったり、歩いたり自分勝手な面が見られる。ADLについては、食事はベッド上端座位で自立、更衣は下半身(ズボン)は要介助、整容は自立、入浴は清拭、排便は昼間は介助者監視での病棟トイレ使用、夜間は病室にてポータブルを使用している。

・看護師から:〇〇年〇〇月〇〇日

ADLについては、食事はベッド上端座位で自立、更衣は自立、整容は自立、入浴は浴室への移動はシャワーチェア-で介助者による移動の介助要し、体幹前面は自ら洗えるが後面は介助者に洗ってもらう、更衣は自立、排便は夜間においても病室にてポータブルを○月○日より使用していない。初期時より、更衣ではズボンの着脱が可能になり自立し、入浴では介助が必要ながらも改善が見られる。肩の痛みに関しては、アルツを2回行なった。確定診断については、知らない。

・看護師から:〇〇年〇〇月〇〇日

服薬に関しては、現在はハルシオンのみである。ADLについては、介助が必要なのは、入浴のみである。シャワーチェア-で入室し、体幹前面は自分で洗体し、後面のみ介助者に洗ってもらう状態。病室変更については、夜の失禁の事を同室者から看護師に対して発言があり精神的にストレスとなり、うつ状態を助長したと考えられる。そのため○月○日変更となる。その結果、リハビリに対して意欲が向上したと考えられる。

・看護師から:〇〇年〇〇月〇〇日

術後のストッキングについては、基本的には術後1ヶ月ではずしてよいが、本症例の場合足背の浮腫が見られた場合のみ装着する。

 

5.理学療法評価

初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日)最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

1.全体像

 体格は、中肉中背である。訓練には、笑顔で意欲的行なっている。来室時、明るく冗談を言っていたかと思うと、突然手術、今後の不安について話すなど、気分の変動も大きく感じられる。評価に対して開始時は協力的であるが、途中から「終わりですか」など発言が多くなり、集中力は持続しない。

1.全体像

 体格は、中肉中背である。訓練では、筋力増強訓練を除いては、大変真面目に取り組んでいる。しかし、日常生活で病室の転棟などのいやな事があったり、入浴・面会などがある場合など、その事柄が気になって訓練に来室しても集中できなかったり、訓練を休む事が見られる。

2.検査・測定

 

1).関節可動域テスト(ROM-T):単位°

運動方向(参考可動域)

上肢

肩関節 屈曲(180)

175/N

170/N

伸展(50)

45/45

45/45

外転(180)

N/N

170/N

内転(0)

N/N

N/N

外旋(90)

50/70

N/N

内旋(70)

60/N

60/N

肘関節 屈曲(145)

N/N

140/140

    伸展(5)

0/N

0/N

前腕 回内(90)

N/N

N/N

   回外(90)

N/N

N/N

手関節 掌屈(90)

80/N

N/N

背屈(70)

50/N

60/N

橈屈(25)

N/N

20/N

尺屈(55)

50/50

45/45

下肢

股関節 屈曲(125)

75/110

60/80

伸展(15)

5/10

外転(45)

20/25

15/20

内転(20)

10/10

5/10

外旋(45)

40/60

5/15

内旋(45)

20/40

20/20

膝関節 屈曲(130)

N/N

N/N

伸展(0)

-10/-5

-5/N

足関節 底屈(45)

40/N

40/N

背屈(20)

10/N

15/N

体幹

 

頚部 前屈(60)

55

 

後屈(50)

45

 

右回旋(60)

N

 

左回旋(60)

50

 

右側屈(50)

N

 

左側屈(50)

40

 

胸腰部 前屈(45)

40

 

後屈(30)

10P

 

右回旋(40)

30

 

左回旋(40)

30

 

右側屈(50)

30

 

左側屈(50)

30

 

●「自動/他動」の測定方法で表示

●正常な場合は「N」、「P」は疼痛を示す

●「※」手術創部を下にした左側臥位不可能な為測定不可

●左肩関節測定時、骨と骨が当る感覚あるが痛みは訴えない

●主治医から肩板断裂の確定診断が出たが、X-rayはなし。創部がある為左側臥位が取れず、右股関節伸展測定不可

●頚部・体幹は全て自動で行う

1).関節可動域テスト(ROM-T):単位°

運動方向(参考可動域)

上肢

肩関節 屈曲(180)

150/175

140/155

伸展(50)

45/45

45/45

外転(180)

155/175

140/155P

内転(0)

N/N

N/N

外旋(90)

N/N

N/N

内旋(70)

60/N

60/N

肘関節 屈曲(145)

135/N

140/N

伸展(5)

0/N

0/N

前腕 回内(90)

N/N

N/N

回外(90)

N/N

N/N

手関節 掌屈(90)

80/N

80/N

背屈(70)

50/N

N/N

橈屈(25)

20/N

15/N

尺屈(55)

45/N

N/N

下肢

股関節 屈曲(125)

85/110

80/90

SLR

60/70

50/60

伸展(15)

5/10

5/10

外転(45)

20/25

15/20

内転(20)

10/20

10/15

外旋(45)

35/40

20/25P

内旋(45)

35/40

20/25P

膝関節 屈曲(130)

N/N

N/N

伸展(0)

-10/-5

-5/N

足関節(膝関節伸展位)底屈

15/20

10/15

(膝関節伸展位)背屈

35/40

35/40

足関節(膝関節屈曲位)底屈

N/N

N/N

(膝関節屈曲位)背屈

N/N

N/N

●「自動/他動」の測定方法で表示

●正常な場合は「N」、「P」は疼痛を示す

●左肩外転時には、肩峰周囲に痛みを訴える

●股関節外旋時には、大腿遠位外側面に、股関節内旋時には大腿遠位外側面に痛みを訴える

3).徒手筋力テスト(MMT):

運動

頚部

頭部屈曲

3

体幹

屈曲

2

上肢

肩甲骨外転と上方回旋

5

5

肩関節屈曲(前方挙上)

5

5

肩関節伸展(後方挙上)

5

5

肩関節外転

5

4P

肩関節外旋

5

5

肩関節内旋

5

5

肘関節屈曲

5

5

肘関節伸展

5

5

下肢

股関節屈曲

5

4

股関節外転

4

3

股関節内転

3

3

股関節外旋

4

3

股関節内旋

5

膝関節屈曲

4

3

膝関節伸展

4

3

足関節底屈

5

5

足関節背屈

5

5

●股関節外転・内転は、背臥位にて行う。

●膝屈曲は、座位にて行う。

●肩関節外旋・内旋は、背臥位にて肩関節90度外転位で行う。

●「P」は疼痛を示す

●6月11日、右側臥位等張性の収縮で左外転筋力を測定の結果3。その後、背臥位にて左右の比較の結果、右外転筋は4と判断。

●「※」は禁忌肢位の為測定せず

3).徒手筋力テスト(MMT):

運動

頚部

頭部屈曲

3

体幹

屈曲

2

上肢

肩甲骨外転と上方回旋

肩関節屈曲(前方挙上)

4

3P

肩関節伸展(後方挙上)

肩関節外転

肩関節外旋

肩関節内旋

肘関節屈曲

5

5

肘関節伸展

5

5

下肢

股関節屈曲

4

4

股関節伸展

4

3

股関節伸展(大殿筋のみ)

3

3

股関節外転

4

3

股関節内転

3

3

股関節外旋

3

3P

股関節内旋

4

3

膝関節屈曲

4

3

膝関節伸展

3

3

足関節底屈

5

4

足関節背屈

5

5

●上肢は等尺性、下肢は等張性で測定を行う。

●「※」は、外泊の為測定していない。

●股関節外転・内転は、右側臥位等張性の収縮で左外転筋力を測定し、その後、背臥位にて左右の比較の結果、判断。

●膝屈曲は、座位にて行う。

4).形態測定:

項目

測定値

備考

伸長

cm

カルテより

体重

kg

車椅子にて測定

BMI

 

体重(kg)÷身長(m) 

標準値は22

標準体重

kg

22×身長(m)²

4).形態測定:

項目

測定値

備考

伸長

cm

カルテより

体重

kg

車椅子にて測定

BMI

 

体重(kg)÷身長(m)

標準値は22

標準体重

kg

22×身長(m)²

四肢長:単位cm

 

下肢長:SMD(上前腸骨棘~内果)

78

78.5

:TMD(大転子~外果)

72

73.5

背臥位にて測定

四肢長:単位cm

 

下肢長:SMD(上前腸骨棘~内果)

  

:TMD(大転子~外果)

  

背臥位にて測定

四肢周径:単位cm

 

上腕周径

伸展位上腕最大周径

26

25

屈曲位上腕最大周径

27

26

前腕周径

最大前腕周径

21.5

21

最小前腕周径

15.5

15.5

大腿周径

膝蓋骨上縁より0cm

33

32.5

    5cm

34

33.5

             10cm

37

37.5

               15cm

41.5

43.5

             20cm

42.5

44.5

下腿周径

最大下腿周径

30

30

最小下腿周径

20

19.5

背臥位にて測定

四肢周径:単位cm

 

上腕周径

伸展位上腕最大周径

  

屈曲位上腕最大周径

  

前腕周径

最大前腕周径

  

最小前腕周径

  

大腿周径

膝蓋骨上縁より0cm

33

32.5

   5cm

34

33.5

             10cm

37

37.5

             15cm

41.5

43.5

             20cm

42.5

44.5

下腿周径

最大下腿周径

30

30

最小下腿周径

20

19.5

背臥位にて測定

5).ADL評価:

Barthel index:60点/100点

項目

得点

備考

食事

10

 

車椅子からのベッドの移乗

10

監視、誘導を要する

整容

5

 

トイレ動作

5

介助者による監視要する

入浴

0

 

歩行

5

車椅子駆動

階段昇降

0

 

着替え

5

 

排便コントロール

10

 

排尿コントロール

10

 

病棟ADL:

●食事:配膳された物をベッドで端座位にて食事をしており自立レベル

●整容:洗面所にて洗面・歯磨きを行ない、整髪など病室にて行なっており、自立レベル 

●入浴:浴室への移動はシャワーチェア-で介助者による移動の介助要する  体幹前面は自ら洗えるが後面は介助者に洗ってもらう

●更衣:上半身は自立リベルであるが、ズボンは履く時に介助必要

●排泄:昼間は病棟トイレを使用し、夜間は病室にてポータブルを使用

5).ADL評価:

Barthel index:80点/100点

項目

得点

備考

食事

10

 

車椅子からのベッドの移乗

15

 

整容

5

 

トイレ動作

10

 

入浴

0

 

歩行

10

歩行器使用

階段昇降

0

 

着替え

10

 

排便コントロール

10

 

排尿コントロール

10

 

病棟ADL:

●入浴:浴室への移動はシャワーチェア-で介助者による移動の介助要する。 幹前面は自ら洗えるが後面は介助者に洗ってもらう

●その他は、自立レベル

6).長谷川式簡易知能スケール:

28/30点

減点項目:

3つの言葉の想起

電車の時、乗り物とヒントをあたえる

5つの物品記憶

鍵、煙草、ペン、硬貨、メジャーのうち、メジャーが思い出せない

6).長谷川式簡易知能スケール:

会話から痴呆症状見られず、必要なし

※CPよりSDS(うつ状態テスト)を入手するも施行の出来ず

7).反射テスト:

深部腱反射:-消失、±軽度減弱、+正常、++亢進、+++著明な亢進

*図の添付を推奨

 

背臥位にて、上腕二頭筋腱反射、上腕三頭筋腱反射、腕橈骨筋反射、膝蓋腱反射、アキレス腱反射を測定

7).反射テスト:

状態に変化なく必要なし

病的反射:+陽性、±疑わしい、-陰性

 

クローヌス

手指屈筋反射

ホフマン

トレムナー

ワルテンベルク

足底筋反射

バビンスキ-反射

背臥位にて測定

 

8).感覚テスト:

表在知覚:ストキネットを下腿までめくり施行

触覚:感覚鈍麻のあるところのみ記載

神経支配領域

腓腹神経域

8/10

腓骨神経域

6/10

内側足底神経域

5/10

外側足底神経域

7/10

8).感覚テスト:

表在知覚:ストキネットを下腿までめくり施行

触覚:

神経支配領域

腓腹神経域

10/10

腓骨神経域

10/10

内側足底神経域

10/10

外側足底神経域

10/10

痛覚:

神経支配領域

腓腹神経域

5/10

腓骨神経域

7/10

内側足底神経域

5/10

外側足底神経域

7/10

運動覚:異常のあるところのみ記載。

左第2趾  4/5

痛覚:

神経支配領域

腓腹神経域

10/10

腓骨神経域

10/10

内側足底神経域

10/10

外側足底神経域

10/10

運動覚:異常なし

左第2趾  5/5

9).疼痛評価:

-疼痛なし、±疑わしい、+疼痛あり

部位:手術の創部

種類:安静時 ±

運動時 +

夜間痛 -

圧痛  +

VAS:4.5cm

 

疼痛評価:

-疼痛なし、±疑わしい、+疼痛あり

部位:左肩前面

種類:安静時 -

運動時 +

夜間痛 -

圧痛  +

※痛みの為、前日夜間、看護婦に湿布をもらって貼る

9).疼痛評価:

-疼痛なし、±疑わしい、+疼痛あり

部位:手術の創部

種類:安静時 -

運動時 -

夜間痛 -

圧痛  ±

VAS:4.1cm

 

疼痛評価:

-疼痛なし、±疑わしい、+疼痛あり

部位:左肩前面

種類:安静時 -

運動時 +

夜間痛 -

圧痛  -

   VAS:2.2㎝

10).創部の触診:

熱感 +

10).創部の触診:

熱感 -

11).創部の観察:主治医回診の際観察

発赤、腫張なし

 

12).クリニカルパス:

術後7日    端座位

術後10日   歩行訓練、PWB1/3

術後14日   PWB1/2

術後21日   PWB2/3

術後28日   FWB

 

13).姿勢分析・動作分析:

 

(1)端座位:

自立レベル。

頚を前方へ突き出し、体幹は円背している。両手掌でベッドの端を把持し、体幹は軽度右側屈位、骨盤は左上がりの傾斜をしている。膝関節・足関節は左下肢が前方に位置する。

(1)端座位:

自立レベル。

(2)起き上がり(背臥位→端座位、端坐位→背臥位):

軽等度介助レベル。

背臥位→端座位では、背臥位→右側臥位、右側臥位→端座位の動作に分けられる。

背臥位→右側臥位の動作は、介助者の誘導により両膝を屈曲させる。右下肢に力を入れ左股関節が内転しないように指示をあたえる。誘導を行なわないと左肩甲帯が後退するため、介助者が、介助者の方を左手掌で把持する方向に口頭で誘導する。骨盤と体幹が体軸内回旋を起こさないように回旋を誘導し、右側臥位を取る。

右側臥位→端座位の動作は、介助者の指示により左手掌でベッド端を把持して、肘の伸展力と右肘をベッドにつき支持する力で、体幹を左回旋させながら起き上がり右とする。同時に、屈曲位の膝を伸展させながら、下肢の重さを利用して端座位となる。下肢を伸展させる時に、介助が必要である。

端坐位→背臥位では、両手で体幹を支え、ベッド中央へ膝がベッド上に上がるまでいざる。その後枕の方向へ、頭部を方向転換する。両手掌で体幹を支持しながら、背臥位となる。この時、支持面は両手掌、両前腕、両肘、上腕と移動する。表情は終始堅い。

(2)起き上がり(背臥位→端座位、端坐位→背臥位):

自立レベル。

(3)移乗(車椅子→プラットホーム、プラットホーム→車椅子):

監視レベル。

車椅子→プラットホームでは、まずフットプレートを右足でたてる。次に、両上肢でアームレストを把持し、殿部を坐面の前方に移動させる。右手掌でプラットホームを、左手掌でアームレストを把持し、患側を前方に屈曲させた状態で、右片脚でたちあがり、右足を回転の軸として殿部を回旋させる。その後、左手掌で左アームレストから右アームレストへ持ち替え、プラットホームに垂直に位置し、端座位となる。

プラットホーム→車椅子では、逆に行う。

口頭での、誘導は必要であり、座面で殿部を前方に移動させること、アームレストの持ち替えなどは、特に必要である

(3)移乗(車椅子→プラットホーム、プラットホーム→車椅子):

自立レベル。

(4)平行棒内立位:

自立レベル。

体幹を右に側屈しているが、肩の高さは左右同じ。重心は右側に位置し、左足底を軽く床面に接地する程度に浮かし体重を支持している。左肩関節の外転が大きく、平行棒を支持する肘の屈曲は、右の方が大きい。

 

(5)平行棒内歩行(1/3PWB):

軽度介助レベル。

3点歩行揃え形で歩行する。介助者が、口頭で右手を前方に出すことを支持するも行なえない為、介助者による介助が必要。

右立脚期は、手掌を前方で平行棒支持、頚部を前方に屈曲、体幹を後方に伸展し、股関節は中間位のまま、左下肢を振り出す。膝関節は直角に近く、足関節は底屈し、遊脚中期は床面に足先が接触しそうな様子で経過し、踵接地し立脚期を迎える。また、左肩の体幹の側屈による肩の上下動が見られる。

左立脚期は、両手掌、左足底で支持し、右下肢を振り出す。このとき、足関節軽度底屈位である。遊脚中期は、股関節屈曲、膝関節屈曲、足関節屈曲で経過する。

膝関節軽度屈曲のまま立脚期を迎えるため、踵接地がなく足底接地から始まる。

 
 

(6)歩行器歩行:

自立レベル。

歩行器に寄りかかるように円背姿勢で、肘で体重を支持する。

右立脚期は、膝関節屈曲位の足底接地から始まり、膝屈曲位のまま立脚中期、踵接地、つま先離地を迎える。

左立脚期は、膝関節屈曲位の足底接地から始まり、膝屈曲位のまま立脚中期、踵接地、つま先離地を迎える。足底接地期の股関節屈曲、膝関節屈曲は右に比べて大きく、踵離地期の股関節伸展も大きい。

右遊脚期は、膝関節の最大屈曲は小さく、振り出しも左に比べると小さい。

左遊脚期は、膝関節の最大屈曲は大くき、振り出しも右に比べると大きい。

 

(7)杖(T-cane)歩行:

遠位監視レベル。

腸脛靭帯でロックした、伸展パターンの歩行を行う。特に体幹は、胸を突き出すようにし、肩部が頚部より後方に位置する姿勢より歩行が始まる。

右立脚期は、足底接地から始まり、膝屈曲位のまま踵離地を迎える。指先離地の時の股関節伸展は小さい。体幹は、右に屈曲している。

左立脚期は、足底接地から始まり、膝屈曲位のまま踵離地を迎える。体幹を前傾させ杖と支持し、体幹の直下を右下肢通加させる。

右遊脚期は、股関節屈曲し、体幹直下を通過させる。

左遊脚期は、体幹を右に側屈し股関節は屈曲しないで、体幹を後傾して振り出す。

5.問題点

初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日)最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

1.Impairment Level

#1.筋力低下

頚部筋、体幹筋、下肢筋(左股関節屈曲、左膝屈曲、左股関節外転、左股関節外旋)

#2.関節可動域制限

左足関節背屈

#3.筋の短縮

左腓腹筋

#4.歩行動作の協調性の低下

#5.疼痛(手術の創部)

 

2.Disability Level

#6.歩行動作困難

筋力低下

頚部筋、体幹筋、下肢筋(左股関節屈曲、左膝屈曲、左股関節外転、左股左股関節外旋)

関節可動域制限

左足関節背屈

筋緊張

左腓腹筋

歩行動作の協調性の低下

浮腫

疼痛

 

3.Handicap Level

#7.院内の日常生活動作の制限

家庭での家事動作が出来ないこと

1.Impairment Level

#1.筋の短縮

腸肋筋、最長筋、下腿三頭筋、大腿直筋、ハムストリングス 、腸腰筋

#2.関節可動域制限

体幹前屈、体幹側屈、体幹回旋、左股関節屈曲

#3.筋力低下

体幹筋、上肢筋、下肢筋

#4.左肩痛

 

2.Disability Level

#5.歩行動作困難

筋の短縮

関節可動域制限

筋力低下

#6.左上肢の動作困難

左肩痛

 

3.Handicap Level

#7.家庭復帰困難

家庭での家事動作が出来ないこと

独歩で屋外歩行が出来ないこと

杖歩行時・つたい歩き時など左上肢が使えないこと

6.ゴール設定

初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日)最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

1.短期ゴール(1W):一本杖歩行の獲得

2.長期ゴール(4W):院内自立

1.短期ゴール(1W):一本杖歩行の向上、歩容の改善

2.最終ゴール:家庭復帰(家事動作の自立、歩行の自立)

7.治療プログラム

初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日)最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

1.関節可動域訓練:

下肢の可動域の改善を目的

特に背屈制限のある両足関節、屈曲拘縮の強い右膝関節を中心的に可動域の改善を目的。背臥位にて、毎日両下肢に対して施行

1.左下肢伸長訓練:

①腸肋筋・最長筋伸長

手の位置と運動:体幹は左回旋位、左肩は外旋・最大屈曲位、肘関節は屈曲位、両下肢は最大屈曲位で開始し、治療者は左側に位置し、腹部に両膝を押し付け固定する。右手で右肩関節を固定し、左手は右体幹下部に置く。両下肢を屈曲しながら右体幹を伸張する。

②ハムストリングス伸長

手の位置と運動:遠位の一側でアキレス肩部を持つ。反対側で膝前面を支持する。

③大腿直筋伸長

手の位置と運動:患者は腹臥位で、股関節中間位で、膝を屈曲位。一側で殿部を固定し、反対側で膝を屈曲し、筋緊張を感じるまで膝を屈曲する。膝屈曲に制限(約90°)がある為、それを超える場合は大腿遠位部を把持し、股関節を伸展する。

④下腿三頭筋伸長

手の位置と運動:遠位の一側で踵骨を摑み、足底に前腕を当てる。反対側で下腿遠位端を固定する。前腕で足底部を押し上げながら、踵骨を引く。膝関節伸展位で、腓腹筋の伸長となる。また、屈曲位でヒラメ筋の伸長、関節包内の伸長となる為、両方行う。

⑤腸腰筋伸長

手の位置と運動:遠位の上肢で下腿、近位の上肢で大腿の遠位端を把持する。近位の下肢で患者の殿部を固定する。膝関節伸展位のまま、股関節を伸展させる。左のみ行う。

目的:筋の伸長

拮抗筋からの抑制(Ⅰa抑制)に対し通常の興奮のみでは、抑制は見られないが、伸長が強ければおこる抑制(Ⅰb抑制)であり、受容器は腱紡錘で、強い反射収縮が起こり、筋が断裂することを防いでいる。1Ⅰb抑制により筋の抵抗が弱まり、筋の伸張性が拡大する時間行う。(2)

方法:10秒~20秒(2)

2.筋力増強訓練:

①左下肢SLR:

股関節屈筋の強化、下肢筋の筋力増強により歩行の安定を目的

また、足関節を背屈することで、特に大腿四頭筋の強化も同時に目指す

背臥位で、股関節屈曲約30°

10秒間保持3セットから開始

②外転筋に抵抗運動で、等尺性収縮による筋力増強:

外転筋の強化により歩行の安定を目的

10秒間保持3セットから開始

③両膝関節伸展抵抗運動

大腿四頭筋筋力増強、正常歩行に獲得を目的

徒手による抵抗を加え、最大筋力の30%で、翌日疲労の残らない程度

10回2セットから開始

⑤ブリッジ

歩行時の体幹の安定を目的

自重を利用し、翌日疲労の残らない程度

10回2セットから開始

⑥腹筋

歩行時の体幹の安定を目的

自重を利用し、翌日疲労の残らない程度

10回2セットから開始

顔を腹部に向けるように支持する

2.  関節可動域訓練:

①股間節・膝関節関節可動域の改善

方法:背臥位にて、一側の手掌で膝窩を把持し、反対側で踵部を支持する。股関節を屈曲しながら、大腿直筋の緊張をとり、膝関節を屈曲する。膝窩を把持した手掌は、大腿の外側へ移動し、最大屈曲をする。

②体幹屈曲

方法:両膝を持ち上げ、患者の胸郭へ両膝をつける。股関節の屈曲により脊柱を屈曲し、骨盤を後傾する。

③体幹回旋

方法:両膝立て背臥位で、左手で、患者の胸郭を固定する。右手を膝の外側に置き、骨盤が治療台から出るくらいまで患者の膝を外側に押す。

目的:関節関節可動域の改善

 

3.筋力増強訓練

①殿部挙上

目的:歩行時の体幹の安定、殿筋の強化

方法:背臥位で、踵部にタオルなどで支え下肢挙上位をとり、殿部を挙上する

膝屈曲位で行うと大腿四頭筋の筋力により殿部を挙上する。また膝関節への負担の軽減からこの肢位で行う

10回2セットから開始

翌日の疲労を確認の上回数を変更

②腹筋

目的:歩行時の体幹の安定、歩容の改善

方法:背臥位で膝関節90°屈曲位の股関節屈曲位で行う

両手掌は、大腿前面に置き膝蓋骨の方向へ指先を伸ばすように、息をはきながら行う

10回2セットから開始

翌日の疲労を確認の上回数を変更

③抵抗運動による等張性外転筋運動:外転筋の筋力増強

目的:歩行時の膝折れ防止、歩行動作の改善

方法:背臥位で膝関節90°屈曲位で、徒手による抵抗を加え、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/2~2/3で行う(3)(4)

10回2セット

翌日の疲労を確認の上回数を変更

④抵抗運動による等張性内転筋運動:内転筋の筋力増強

目的:歩行時踵接地時の安定、歩行動作の改善

方法:背臥位で膝関節90°屈曲位で、徒手による抵抗を加え、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/2~2/3で行う(3)(4)

10回2セット

翌日の疲労を確認の上回数を変更

⑤抵抗運動による等張性膝屈曲筋運動:

目的:歩行動作の改善

方法:腹臥位で膝関節90°屈曲位で、徒手による抵抗を加え、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/2~2/3で行う(3)(4)

10回2セット

翌日の疲労を確認の上回数を変更

⑥抵抗運動による等張性膝伸展筋運動:

目的:歩行動作の改善

方法:座位で膝関節90°屈曲位で、徒手による抵抗を加え、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/2~2/3で行う(3)(4)

10回2セット

翌日の疲労を確認の上回数を変更

 

4.筋再教育:

①腹直筋の再教育を行う為、三角ブロックまたは徒手による介助で体幹屈曲を介助する

②座位または立位で肩関節90°屈曲上肢伸展位で、股関節・膝関節90°屈曲の片脚立位を取る。

目的:体幹屈曲筋の再教育

③座位または立位で一側手掌で、反対側膝外側を触れる動作を、リズム良く繰り返す。

目的:体幹回旋筋の再教育

 

5.歩行訓練:

目的:正常歩行・重心移動の改善・持久力の向上

方法:T-cane→屋外歩行へと徐々に進めていく

現在、1周50mの訓練室内を5~6周歩行可能な為、250~300mから始め、徐々に増やしていく

翌日の疲労を確認の上距離を変更

8.治療経過

 

9.考察

本症例は、数年前から左股関節に疼痛あり、大腿骨頭壊死と診断され、今回手術目的で(THA)入院した70歳代の女性である。

術前は長男の家に同居しており、息子夫婦・孫の世話を行なっていた。入院後の発言、性格的な事も考えると、家族の世話をする事が好きであり、生き甲斐であるとも考えられる。

 

1.問題点について

初期の段階においては、家庭復帰に必要な能力として、歩行能力、階段昇降能力、立ち上がり能力があり、問題点として、Disabilityは、歩行能力の低下、ADL能力低下(床からの立ち上がり、入浴)があり、そのImpairmentに内筋力低下、関節可動域制限、筋の短縮、歩行動作の協調性の低下を挙げていた。

 筋力低下については、頚部屈曲、体幹屈曲、股関節屈曲、外転、膝関節屈曲、伸展について弱化が見られた。その為、腹筋、ブリッジ、左下肢SLR、外転筋等尺性収縮による筋力増強、大腿四頭筋の抵抗運動による筋力増強を行なった。

腹筋は、腹筋の筋力増強による、歩行時の体幹の安定を目的に行なった。しかし、最終評価におけるMMTにおいては、筋力増強の効果は認められない。この原因として、考えられることは、筋の収縮を得ていなかった事である。本症例は、座位・立位をとらることからもMMTにおいて3レベル以上の筋力はあると考えられる。しかし、筋力増強の際、正しい筋収縮の方向・方法を導いていなかったと考えられる。

ブリッジは、殿筋・背筋の筋力増強による、歩行時の体幹の安定を目的に行なった。しかし、最終評価におけるMMTにおいては、初期評価時MMTの測定を行なっていない為、筋力増強があったかどうかはっきりとは言えない。

左下肢SLRは、股関節屈筋の強化、下肢筋の筋力増強により歩行の安定を目的に行なったが、最終評価におけるMMTにおいては、筋力増強の効果は認められない。この原因として、考えられることは、筋力増強訓練時に足部の内外旋などの代償運動で行なった事が考えられる。

外転筋の抵抗運動で、等尺性収縮による筋力増強運動は、強化により歩行の安定を目的に行なった。しかし、最終評価におけるMMTにおいては、筋力増強の効果は認められない。この原因として、考えられることは、股関節の外旋運動などの代償運動で行なった事が考えられる。

大腿四頭筋の筋力増強を目的に両膝関節伸展抵抗運動を初期の段階から取り入れた。その結果、左においては筋力増強の効果が見られたが、右においては見られなかった。この原因として、考えられることは、座位で行う際、体幹の前後屈の代償運動で行なった事が考えられる。

 起き上がり動作、歩行動作などは改善している事から考えると、筋力増強訓練の方法が正しくなかった事も考えられるが、初期の評価が正しくなかった事も考えられる。

 関節可動域制限、筋の短縮については、股関節屈曲、足関節の背屈に改善が見られる。初期の段階では、平行棒内歩行時に左足関節底屈位であった為、左足関節の背屈のみ問題点としたが、現段階においては歩行に関して大きな影響を与える因子ではなかったと考えられる。これは、体幹の後傾における代償動作であったと考えられる。しかし、訓練時評価を行ってみると、膝伸展位での足関節背屈において右が左より底屈が大きかった。この事から、腓腹筋を伸張しその後、評価してみるとほぼ同じ背屈角度となった為、左足関節の背屈制限は下腿三頭筋の短縮であったと考えられる。

股関節屈曲に於ても、訓練前の評価より伸張訓練後の屈曲角が大きくなる事から、同じように、考えられる。

 歩行動作の協調性の低下に関しては、杖歩行においては改善が見られなかった。左遊脚期に体幹を側屈して、振り出すことを体幹・骨盤の回旋がない為であると分析した点に間違えがあったからである。その為、腸脛靭帯のロックにきずく事が出来なかった事は、反省すべき点である。

 その他、ADL評価においては、Barrhel indexでは、移乗・歩行・着替えにおいて改善が見られ80点になっている。

 四肢周径においては、左下肢においては手術後の熱感も消失し、腫張が軽減したと考えられるが、右下肢においてはMMTの結果からも筋力低下とも考えられる。

 

2.訓練について

 本症例の訓練内容については、大きく伸張訓練、関節可動域訓練、筋力増強訓練、筋再教育、歩行訓練の5つから構成される。訓練の順序としては、伸張訓練で筋の緊張・短縮を取り除いた後、関節可動域訓練、筋力増強訓練と進める事が、運動の阻害因子も少なくなり、効果的であると考えられる。また、筋力増強訓練については、体幹屈筋に限り筋再教育を行なった後、行うように考えた。これは、MMT測定では、体幹屈曲は2であるのに、立位や歩行が可能な事から、実際のところ、3以上あるとから筋の使い方が上手く行なえていないと判断したからである。

 伸張訓練は、体幹に対する訓練・股関節に対する訓練に分けられる。

体幹に対する訓練は、①腸肋筋・最長筋伸長を行う。本症例は、歩行時腸脛靭帯で体幹をロックした歩行を行う為、伸展パターンである事が考えられる。しかし、ベッドサイドで端座位を取った際も、体幹を伸展して座る様子が伺える。この現象は、体幹屈曲筋の弱化も考えられるかもしれないが、腸肋筋・最長筋などの短縮によりこの姿勢が楽であるとも考えられる。その為、腸肋筋・最長筋伸長は必要であると考える。

股関節に対する訓練は、②ハムストリングス伸長を行う。これは、屈曲の制限因子となる可能性がある為である。

膝関節に対する訓練は、②ハムストリングス伸長④下腿三頭筋伸長を行う。伸展制限がある為、歩行時に於ても足底接地から始まる歩行になっている為、伸展制限の改善の為にも必要であると考える。

③大腿直筋伸長⑤腸腰筋伸長に関しては、歩行訓練による左下肢への負担の大きい為筋緊張が高い為、左のみ行う。

方法は、Ⅰb抑制を利用する。拮抗筋からの抑制(Ⅰa抑制)に対し通常の興奮のみでは、抑制は見られないが、伸長が強ければおこる抑制(Ⅰb抑制)であり、受容器は腱紡錘で、強い反射収縮が起こり、筋が断裂することを防いでいる。Ⅰb抑制により筋の抵抗が弱まり、筋の伸張性が拡大する時間10秒~20秒行う。

 関節可動域訓練は、伸張訓練を行なった後、関節自体に対する訓練で、より可動域の改善のために行う。①股間節・膝関節②体幹屈曲③体幹回旋を行う。②体幹屈曲③体幹回旋は、歩行時腸脛靭帯で体幹をロックした歩行を行う歩行時の歩容の改善の為にも重要であると考えられる。

 筋力増強訓練は、①殿部挙上②腹筋③抵抗運動による等張性外転筋運動④抵抗運動による等張性内転筋運動⑤抵抗運動による等張性膝屈曲筋運動⑥抵抗運動による等張性膝伸展筋運動を考えた。

①殿部挙上においては、以前は膝屈曲位で行っていたが、大腿四頭筋の筋力により殿部を挙上する様子が伺えたこと、膝関節への負担の軽減からこの肢位で行うように変更した。

②腹筋は、以前は効果がMMTの測定よりないと判断した為、筋再教育を取り入れて、行うこととした。

③抵抗運動による等張性外転筋運動④抵抗運動による等張性内転筋運動は、踵接地時に動揺が見られた事、MMTの測定結果から必要であると考えた。

⑤抵抗運動による等張性膝屈曲筋運動⑥抵抗運動による等張性膝伸展筋運動は、歩行時に膝の伸展による踵接地等が見られない事、MMTの測定結果から必要であると考えた。

③から⑥に関しては、文献より筋力増強が目的の為には、最大筋力の1/2~2/3で行とあることより強度を考え決定した。

上肢の筋力増強についてであるが、MMT測定結果後の判断になるが、左肩は肩板断裂がある為、疼痛もあり積極的に肩関節周辺を訓練するべきでは、ないて考える。痛みが、出ない程度に上腕の筋の訓練は必要であるとも考えられる。一方、右上肢は杖の保持など利き腕である事からも、弱い筋がある場合、積極的な訓練を考える必要がある。

筋再教育については、②③については、体幹筋の使い方を覚えることにより歩容の改善をはかる為に取り入れることを考えた。

歩行訓練については、現在、1周50mの訓練室内を5~6周歩行可能な為、250~300mから始め、徐々に増やしていく事を考えた。リハ室内でのT-caneから屋外歩行へと実用的な歩行を徐々に取り入れていきたいと考える。

左肩の疼痛については、高齢者の肩板断裂で、文献より局所の安静と消炎鎮痛剤による炎症の安静化をはかる事が多く、運動療法を勧める事が炎症を増悪させる8とある事より、特に肩周辺の訓練を痛みがある場合、取り入れる必要性はないと考えた。

 

3.ゴールについて

本症例の最終ゴールは、家庭に於ての家事動作の自立、歩行の自立である。現在の歩行の状態では不安定な為、杖歩行も遠位監視レベルであり、歩行における自立も難しく、家事動作は不可能であると考えられる。世話好きな性格であることを考慮すると、家庭に帰った場合、以前行なっていた家事などは、全て行うのではないかと考えられる。

本人の情報収集より、2階に上がって洗濯物を干すことも以前はしていたようだが、左肩のことを考えると片手で支持しての、荷物を運ぶ動作なども不可能であると考えられるが、行う危険性は十分ある。そのうえ、再転倒のリスクなどを考えると、全ての家事動作は1階で行なえる事が、リスクが少ないと考えられる。また、キーパーソンである長男の嫁は、パートに出ており昼間の看護力としては考えにくい。このようなことと、本人の要望を考え合わすと、昼間一人で家にいるのは危険である為、デイサービスなどの利用を考え、家族が家に居る時間帯に家事を行うようにする事が良いのではないだろうかと考える。

 

10.参考文献

  1. 真島英信:生理学改訂第18版:文光堂:1986
  2. 鈴木重行:IDストレッチング:三輪書店:1999
  3. 理学療法7巻4号: 1990年7月:pp239-247
  4. 理学療法学24巻3号: 1997年:pp201-204
  5. 中村隆一 齋藤宏:基礎運動学第5版:医歯薬出版:2000
  6. 千住秀明 他:運動療法Ⅰ:神稜文庫:1999
  7. 石井斎 武富由雄:図解理学療法技術ガイド第2版:文光堂:2001
  8. 寺山和雄 辻陽雄:標準整形外科学第7版:医学書院:1999

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疾患名
特徴
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脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 病院, 整形疾患, レポート・レジュメ