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【変形性膝関節症+保存療法】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月25日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「変形性膝関節症+保存療法」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 変形性膝関節症の患者

  • 保存療法
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「変形性膝関節症+保存療法」の患者のレポート・レジュメ作成例

〔Ⅰ〕一般的情報

1、患者氏名:

2、生年月日:70歳代

3、性別:

4、住所:

5、職業:無職

6、主訴:膝が痛くて歩けない

7、デマンド:いろいろなところに行きたい

8、ニード:実用的な歩行(耐久性、安定性)の獲得

9、趣味:花植え

10、診断名:両側変形性膝関節症

11、介護保険:現在認定中

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〔Ⅱ〕社会的情報

1、家族状況:キーパーソン:娘

2、家庭状況:息子は仕事で夜遅く帰宅する。孫娘がときどき手伝いにくる。

3、家屋構造:平屋で玄関に2段の段差があり、炊事場が1段下がっている。トイレは洋式で右側に立ててすりが1本ついている。風呂は和式浴槽(据え置き式)であり、シャワーはない。寝具は布団である。

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〔Ⅲ〕医学的情報

1、入院日:〇〇年〇〇月〇〇日

2、診断名:両側変形性膝関節症

3、現病歴: 

半年前から幻暈あり。最近足に力が入らなくなってきていた。入院前日から歩きにくい感じがあった。入院日7時半に起床し、トイレに行こうとしたが布団に足が絡まり転倒。娘の話では、朝から電話したがつながらないため昼過ぎに行くと動けずに寝込んでいた。疼痛、吐気なし。右下肢筋力低下あり。上肢左右差ほとんどない。呂律がまわりにくい感じがあるが、この状態は以前からだと本人・娘ともに言う。外来受診しCT撮影するが明らかな梗塞は不明であった。検査・加療のため入院となるがMRI所見より異常なし。

4、既往歴:C型肝炎、高血圧、骨粗鬆症、逆流性食道炎、滑脱ヘルニア、肥満、右内頸動脈狭窄疑、虚血性心臓病、右肺門部結節、急性胃腸炎、心不全

5、合併症:長期臥床による廃用症候群

6、薬剤状況

薬剤名

適応

作用

副作用

①ディオバン

高血圧

降血圧薬

 

②レンデム

不眠症、麻酔前投薬

GABAを介して視床下部や大脳辺縁系を抑制する。

呼吸障害、依存症、不隠、興奮、ふらつき、頭重感、頭痛、肝臓障害、軽度の脈拍数増加、消火器障害、過敏症、だるさ、倦怠感、下肢痙攣、発熱、尿失禁

③シキコール

肝臓障害

  

④アズクレニンS

胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍における自覚症状及び他覚所見の改善

防御因子増強の面から治療効果を期待

悪心、嘔吐、便秘、胃部不快感

⑤コンスタン

 

精神安定剤

筋弛緩作用

⑥ロキソフェン

 

鎮痛薬

 

7、レントゲン所見

大腿脛骨角度(FTA)〔立位正常=約176°~178°〕右180°・左175°   

大腿脛骨関節(FTJ)→両側の脛骨内側上顆に骨棘形成あり。

内側関節裂隙→左4mm、右2mm(臥位での撮影)

<コメント>

変形性膝関節症の経過をX線像のgradeと初期・中期・末期に分類する(表1・2)。本症例ではグレード2、中期であるといえる。

(表1)変形性膝関節症のgrade

Grade

X線所見(荷重X線正面像による)

0

正常

1

骨硬化像または骨棘

2

関節裂隙の狭小化(3mm未満)

3

関節裂隙の閉鎖または亜脱臼

4

荷重面の磨耗または欠損(5mm未満)

5

荷重面の磨耗または欠損(5mm以上)

(表2)変形性膝関節症の経過

初期

骨棘・骨硬化像が認められるのみで荷重X線正面像で関節裂隙の狭小化のない時期(grade 1)

中期

関節裂隙の狭小化または閉鎖の認められる時期(grade 2および3)

末期

主に脛骨荷重面に摩耗または欠損の認められる時期(grade 4および5)

8、他部門からの情報

Dr:骨棘が関節包を刺激しているようであれば、疼痛を発生させているかもしれない。活動範囲の広くない高齢者の場合は手術よりも保存療法が望ましい。大腿四頭筋の筋力トレーニングが大事となる。通常Mikulicz線(大腿骨頭と足関節中央を結ぶ線)上に膝関節の中央があるが、外側をとおっている。しかし、変形と障害度は比例しない。

Ns:腰痛の訴えあり。入院前から睡眠薬を多量に服用していたため、眠剤を減らすことも今回の入院の目的である。ADLは食事、排泄、入浴、更衣と自立している。薬剤は一日分ケースに入れて渡しており、服薬も自立している。患者間の問題もなく、安定した入院生活を送っている。

OT:安全で安心した在宅生活を送れるように、炊事や掃除など、より実践的な訓練を行っている。

 

〔Ⅳ〕理学療法検査・測定

1、一般情報 

①身長・体重・BMI:(肥満1度)

②血圧 :130/70(安静時) 

③脈拍 :72/分

④睡眠 :入院前からかなりの量の睡眠薬を服用しており、あまり良好ではない。夜間トイレに3回程度行くのであまり寝た気がしないとのこと。

⑤食欲 :通常通りで問題ない

⑥PTS(Physical Therapist Studentの略、以下PTSと表記):担当日〇〇年〇〇月〇〇日

⑦入院前の自立度:障害老人の日常生活自立度(寝たきり度) ランクA2

⑧認知症なし

⑨入院前の生活状況:

息子は朝5時半には出勤し、帰宅は23時過ぎのため、ほとんどひとりの状態。娘が近所に住んでおり、自宅に通っていたが仕事もしているので忙しい。買い物はタクシーで孫娘と週一回行っていた。通院は一人でタクシーに乗って行く。家事は全て自分で行っていた。炊事は、1升炊きのガス釜を使っていた。食卓に運ぶまで1段の段差があるため、その釜を一端段の上に置き、段差を上がり、釜を持って食卓に運ぶ。洗濯物は自宅外のガードレールに干していた。入浴はあまり好まず浴槽にはつからない。2週間程入らなくても平気であり、家族に指摘されて入浴を行っていた。

⑪第一印象:穏やかで外交的な印象を受ける。

⑬全体像:職員ともにこやかに話をする。PTSへの検査には大変協力的であるが、いやとはいえない性格のようである。努力家で訓練へのモチベーションも高い。

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2、検査測定

1)形態測定
四肢長 *単位=cm  
  

下肢長 SMD

上前腸骨棘~内果

68.0

68.5

 

上前腸骨棘~膝裂隙

33.5

33.5

 

膝裂隙~内顆

34.5

35.0

下肢長 TMD

大転子~外果

67.0

67.5

大腿長

大転子~膝裂隙

33.0

33.0

下腿長

膝裂隙~外果

34.0

34.5

<アセスメント>                          

右膝関節の伸展制限があるため膝関節後面にタオルを敷いて膝関節軽度屈曲位で膝蓋骨を正面にした肢位にて測定を行う。SMD、TMDともに右下肢が0.5cm短縮しており、大腿部では短縮は見られないことから、股関節疾患はないと考える。

 

四肢周径 *単位=cm 
  

左右差(右を基準)

大腿周径

膝蓋骨中心部

35.2

34.5

-0.7

 

膝蓋骨上縁

37.3

37.5

+0.2

 

膝蓋骨上縁から5cm

38.7

39.8

+1.2

 

膝蓋骨上縁から10cm

40.6

42.5

+1.9

 

膝蓋骨上縁から15cm

46.0

47.0

+1.0

下腿周径

最大部

29.8

29.8

 0

 

最小部

18.7

18.5

-0.2

<アセスメント>

膝蓋骨中心部では右のほうが大きかったことから右膝関節部に腫張があると考えられる。膝蓋骨上縁から5cmは右の方が小さい。この部位での周径は、内側広筋が測定できることから、右の内側広筋の萎縮が考えられる。膝蓋骨上縁から10cmでも右の方が小さい。ここでは外側広筋が測定できることから、右の筋萎縮が考えられる。膝蓋骨上縁から15cmでは大腿の筋全体の測定ができることから、全体的に右の大腿の筋が萎縮により細くなっていると考えられる。下腿遠位部は両側むくみがあり、右側が0.2cm大きかった。

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2)関節可動域検査(単位 ゜)

P:pain  (  ):active

  

参考角度

肢位

肩関節

屈曲

175

180

180

背臥位

 

外転

175

180

180

背臥位

 

内旋(※)

70

50

背臥位

 

外旋(※)

85

90

70

背臥位

股関節

屈曲

120

125

135

背臥位

 

伸展

20

15

20

側臥位

 

外転

35

45

35

背臥位

 

内転

10

20

20

背臥位

 

外旋

35

45

35

背臥位

 

内旋

45

45

50

背臥位

膝関節

屈曲

140(130)P

130

145(125)P

背臥位

 

伸展

-10(-20)

0

0(-10)

背臥位

足関節

底屈

30

45

40

背臥位

 

背屈

10

20

10

背臥位

足部

外がえし

15

20

背臥位

 

内がえし

35

30

25

背臥位

※セカンドポジション(肩関節90°外転)で測定。

<アセスメント>

膝関節は右側に伸展制限があり、屈曲拘縮を起こしている。膝関節のextension lagがみられる。

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3)MMT
 

運動方向

肢位

肩関節

屈曲

坐位

 

外転

坐位

肘関節

屈曲

坐位

体幹

屈曲

背臥位

股関節

屈曲

坐位

 

伸展

側臥位(※1)

 

外転

側臥位

 

内転

側臥位

 

外旋

坐位

 

内旋         

坐位

膝関節

屈曲

側臥位(※1)

 

伸展

坐位

足関節

背屈

坐位

 

底屈

坐位(※2)

<アセスメント>

(※1)腹臥位がとれないため、側臥位で検査を行う

(※2)腹臥位がとれないため、坐位で検査を行う

膝関節伸展と肩関節屈曲・外転時に筋力低下が見られる。他は全体的に問題ないが、股関節屈曲・外転と膝関節伸展、肩関節屈曲と肘関節屈曲では左右の筋力の差が見られ、右のほうが弱い。全体的に股関節伸筋よりも屈筋のほうが弱く、外転筋よりも内転筋のほうが弱い傾向にあった。

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4)感覚検査
①触覚
  

触覚

手背

前腕前面

前腕後面

足背

下腿前面

膝内側

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

4/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

位置覚

5/5

5/5

5/5

5/5

運動覚

手指

足趾

4/5

4/5

3/5

3/5

<アセスメント>

感覚は触覚、位置覚ともに正常、運動覚は正常~軽度鈍麻である。運動覚が若干鈍麻であるのは、老化による感覚低下ということも考えられる。変形性膝関節症では、固有受容器感覚が低下していることも考えられるが、本症例の場合その可能性は低いと考える。

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5)腱反射
深部腱反射
 

上腕二頭筋

+

上腕三頭筋

腕橈骨筋

++

++

膝蓋腱

±

±

アキレス腱

<アセスメント>

入院当初は右上肢の挙上が出来ず、右下肢の麻痺があるような状態であったため、麻痺の可能性があるか確認するために行った。左右の差はほとんど見られなかったため、正常と考えられる。

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6)痛みテスト
 

右(部位)

左(部位)

静止時

2(膝内側)

1(膝内側)

荷重時

2(大腿骨内側上顆)

他動運動時(端坐位で膝関節屈伸時)

2(関節裂隙内外側)

自動運動時(端坐位で膝関節屈伸時)

2(関節裂隙内側)

着座時

1(膝内側)

1(膝内側)

※0:痛みが全くなく、とても幸せである。

 1:わずかに痛みがある

 2:もう少し痛い

 3:もっと痛い

 4:とても痛い

 5:これ以上考えられないほど強い痛み 

<コメント>

同一肢位後の荷重時、膝関節内側部に一瞬のズキッとした痛みが発生するが、気にならない程度ですぐに疼痛は消失する。

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7)膝関節動揺テスト

内側ストレステストで右膝関節に動揺あり。他に異常はなし。膝蓋骨の動きは右側の上下の動きのみ少なく、左右の動きや左の膝蓋骨の動きに問題はなかった。

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8)立ち直り反応
坐位バランス

左右に外力を加えると体幹→頭部の順に立ち直り反応が出現。左右の差はない。前後方向では、後ろに外力を加えると、頭部の立ち直り反応が出現した。前方に外力を加えても立ち直り反応は出現しない。

 

立位バランス

 左右に外力を加えると体幹→頭部の順に立ち直り反応が出現。より大きい刺激を加えると対側の肩関節が軽度外転し、保護伸展反応が出現した。右の保護伸展反応の方が大きく出現した。前後方向では、後方に外力を加えると足部の背屈が起こった。前方に外力を加えると体幹の屈曲が起こった。

<アセスメント>

重心が支持基底面を外れる手前で立ち直り反応が出現する。重心が支持基底面を超えると上肢の保護伸展反応が出現する。全体的に体幹の右側屈が目立つ歩行を行っているが、それでもバランスを崩さないのは立ち直り反応が十分にあるからではないかと考えた。

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9)10m歩行
 

時間(秒)

歩数(step)

歩幅(m)

速度(m/秒)

速い歩行

15.0

37.0

0.27

0.67

通常の歩行

18.0

36.0

0.28

0.56

遅い歩行

20.0

39.0

0.26

0.50

平均

17.7

37.3

0.27

0.58

<アセスメント>

70歳代の家庭内での歩行速度は0.22~0.58m/秒、歩幅は0.4~0.8mとの報告がある。これと比較すると、速度は変わらないのに対し、歩幅は小さい。このことから、歩数が多く歩幅の狭い歩行を行っており、エネルギー消費の多い歩行を行っていると考えられる。また、歩行者用の信号では1.0m/秒の速さで歩く必要があると言われており、横断歩道を時間内に渡ることは難しい。

 

10)歩行の耐久性

1分20秒(約40m)連続で歩行できた。歩行開始から2分15秒経過後(約55m)、確認できる程度の息切れと疼痛(2程度)が発生し、中断。しかし休憩するとすぐに疼痛は消失した。脈拍は歩行前後の変化はない(72/分)。血圧は歩行前140/80、歩行後138/76。50m以上歩行できていることから、移動のみを考えると近所内の移動は可能であると考えることが出来る。

 

11)アライメント
臥位

膝関節の内反は左よりも右で著しい。股関節が外旋しており、右側の外旋角度が大きい。外反母趾が観察され、右足関節は底屈位をとる。膝蓋骨は右の方がやや低いところに位置する。

 

坐位自立レベル・実用性あり

股関節を開き支持基底面を広く取り、手掌をベッドについて座る。

骨盤は後傾し、体幹は前傾している。

 

立位自立レベル・実用性あり

・矢状面

顎を引き、肩甲帯は前方突出・挙上しており、体幹前傾、骨盤後傾、股関節軽度屈曲、膝関節、足関節軽度背屈である。通常、矢状面での重心線は、耳垂-肩峰-大転子-膝蓋骨後面-外果の後方を通るが、症例の場合、重心線は外果の前方に落ちる。両膝関節屈曲しており、特に右膝関節の屈曲が顕著である。

・前額面

右膝関節の内反変形が目立ち、大腿脛骨角度(FTA)〔立位正常=176°~178°〕は右180°・左175°である。両足偏平足で足底面内側が完全に床面と接地する。肩甲帯、骨盤ともに右に傾斜しており、重心線は右側に位置する。

 

<アセスメント>

右下肢の内反変形が強い。右膝は常に屈曲している状態で、内側に体重がかかっており、右側に重心が位置している。骨盤後傾位で膝関節が屈曲しているため、重心が後方になるのを体幹前傾と股関節屈曲によりバランスをとっている。肩甲帯に力の入った立位をとる。また、両足部の扁平足、内側縦アーチと横アーチが減少している。

 

12)動作分析
寝返り自立レベル・実用性あり

右側に寝返る時、左下肢を屈曲し、左立膝位になったら左足底部でベッドを蹴り、その反動で側臥位になるという下肢先行型の寝返りである。

 

起き上がり自立レベル・実用性あり

右側からの起き上がり

手すり使用の場合・・・右上肢は90°屈曲位で側臥位の状態から右手でベッド柵を掴み、引く動作で重心を右肘にのせていき、on elbowの状態になる。右手はベッド柵を握ったまま前腕に体重を移動させていき、体幹屈曲、左回旋を行いながらそのまま右手掌に体重を乗せてベッド柵を押して上体を起こす。同時に股関節・膝関節を屈曲しながら下肢をベッドから下ろし、端坐位になる。

手すり未使用の場合・・・体重を右肘にのせ前腕をつきon elbowの状態になった後、肘関節を伸展させながら体幹屈曲、左回旋を行いながらon handになる。下肢は、上体の起き上がりとともに股関節を屈曲しながら下肢をベッドから下ろす。右手掌を体幹に近づけながら上体を起こし、端坐位になる。

 

立ち上がり

・端坐位から立位の場合・・・自立レベル、実用性あり

ベッドからの場合:ベッドに手掌を置き、体幹を屈曲し重心を前方に移動した後、ベッドを手掌で押しながら殿部を持ち上げ体幹をさらに前傾し立ち上がる。支持基底面は、殿部と足底面と手掌を囲んだ面から足底面へと移動していき、足底面に重心が乗るように移動させる。頭部の軌道は屈曲相では下降、前進相で水平に前方移動し、伸展相で上昇している。起床後など長時間同一肢位をとっていた後に立ち上がると、両膝(特に右内側)に疼痛が発生する。

座面が狭い椅子の場合:両手掌を十分に座面に接地できない。そのため手掌で椅子を押す力が十分に発揮できず、殿部が挙上できずに体幹前傾角度が少なくなるため困難となる。両大腿部に両手掌を置く場合:動作自体可能ではあるが、殿部挙上後、体幹を伸展していくのに努力を要する。

 

・床からの立ち上がりの場合・・・要介助レベル、実用性なし

長坐位から、重心が左に位置する横座りになるために両膝蓋骨を左に倒しながら両股関節・膝関節を屈曲していく。このとき左の手掌は床面に接地しており体重をしっかり受けている。右上肢を台に乗せ、右手掌で台を押す力を利用して立ち上がろうとしても、左手掌にある体重を右に移動することが出来ず右上肢の力を利用することは難しい。そのため殿部を持ち上げることが出来ず、身動きの取れない状態となり、動作は終了する。

 

移乗動作自立レベル・実用性あり

肘置きに手掌を置いた後、重心を前方移動しながら殿部を持ち上げる。立ち上がり、下肢が伸展したら殿部を車椅子に向け、座る。

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歩行・監視レベル

体幹の右側屈を行いながら歩行している。両上肢とも手指は伸展し、肩甲帯と上肢に力が入っており非効率的な歩行を行っている。全体的に下肢の屈伸運動が少なく骨盤の回旋運動や上下運動が小さい。足部は内反しており(特に右側)、床面から十分に上がっていない。

右立脚期の場合、踵接地と足底接地がほぼ同時におこなわれており、足底の外側面に体重がかかっている。このとき体幹は右側に側方移動していく。立脚中期では膝関節の側方動揺が観察される。踵離地、足指離地時に見られる下肢の蹴り出しがみられず、推進力が小さい。また体幹前傾のために右下肢が振り出すことが難しく、体幹を右側方から正中位に戻す反動で、右下肢の振り出しを行い前進しているのだと考える。

左立脚期の場合も同様、踵接地がなく足底全体で接地している。体幹を正中位に戻しながら立脚中期になる。右肩関節・肘関節を屈曲伸展しながら上肢を振り出し、この推進力とともに体幹を右側屈しながら、踵離地、足指離地を経て遊脚期へと移行する。遊脚相では股関節と膝関節の屈伸運動が不十分であるため、前足部が床面から十分に上がらず足趾を上げて歩行している。

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歩行分析
【実習】歩行分析のポイント!【図付き評価シートダウンロード可】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「歩行分析」です。 歩行分析は、歩行自立を目指すためなど、特に理学療法の業界ではとても大事な評価項目 ...

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階段昇降・監視レベル

訓練室の階段では右手で右手すりを持ち2足1段で昇降する。

昇段時には、右手で右手すりを把持し、左下肢を一段上にあげた後、右上肢で体幹を上方に引き寄せ、体重を左下肢に乗せながら1段上り、右下肢を床面から離し、左下肢と同じ段にのせる。このとき右下肢の屈曲が少ないため、右足尖部が床面にすれてしまうことがあるが、11cm・18cmの段差とものぼることは可能である。

 降段時は右手で右手すりを身体の前方で把持し体幹をやや前傾して、右下肢を一段下ろした後、左下肢を下ろす。11cmの段差では右足底部が床面に接地してから左下肢を一段降ろしているが、18cmの段差では右足部の踵が床面に接地する前に左下肢を下ろし始めるので不安定になる。

 

13)ADL
①Barthel Index

90点/100点

1.食事 10点 /10点

2.車椅子とベッド間の移乗 15点 /15点

3.整容 5点 /5点

4.トイレ動作 10点 /10点

5.入浴動作 0点 /5点・・・監視が必要

6.平面歩行  15点 /15点 

7.階段昇降  5点 /10点 ・・・監視が必要

8.更衣動作 10点 /10点

9.排便の管理 10点 /10点

10.排尿の管理 10点 /10点

 

②FIM

得点 116点/126点

・セルフケア

食事→7点  

整容→7点  

清拭→4点…背中を洗うことが出来ない。

更衣・上半身→7点  

更衣・下半身→7点  

トイレ動作→7点  

・排泄コントロール

排尿管理→7点  

排便管理→7点  

・移乗

ベッド・椅子・車椅子→7点  

トイレ→5点…ふらつきによる転倒防止の為、監視にて行う。

浴槽・シャワー→4点…浴槽出入り時に手を添える程度の介助が必要。

・移動

歩行・車椅子→2点…居室からトイレ(4m程度)のみ歩行での移動を行う。その他は車椅子で要介助。  

階段→1点…院内ではエレベータを使用

・コミュニケーション

理解→7点  

表出→7点  

・社会的認知

社会的交流→7点  

問題解決→7点   

記憶→7点

<アセスメント>

出来るADLは入浴動作と階段昇降のみ監視レベルで他は自立している。しているADLより全体的に病棟での生活は自立と考えて良く、入浴と移動のみ減点である。洗体・洗髪動作において、洗体の背中のみ要介助で他は自立。院内の浴槽は階段式で2段の段差があるため出入りが難しく、介助を要す。院内生活のため歩行移動は監視、車椅子移動では要介助である。

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〔Ⅴ〕問題点

Impairment

#1 右膝関節内反変形

#2 ROM制限(膝関節伸展、右肩関節内旋)

#3 疼痛(右膝関節の荷重時痛)

#4 筋力低下(膝関節伸展、肩関節外転・屈曲)

#5 肥満

 

Disability

#6 歩行能力低下(安定性、耐久性)・・・#1、#2、#3、#4、#5

#7 ADL能力低下(入浴)・・・#2、#4

 

Handicap

#8 家庭復帰困難・・・#6、#7

 

〔Ⅵ〕ゴール設定

Short Term Goal 

  • 下肢筋力の維持・増強
  • 歩行の耐久性向上
  • 膝関節の疼痛緩和
  • 上肢筋力増強

Long Term Goal 

  • 歩行能力改善(安定性、耐久性)
  • 最終ゴール
  • 家庭復帰

 

〔Ⅶ〕プログラム       

1.物理療法

極超短波療法(マイクロウェーブ)を行い、温熱効果による鎮痛効果・血流改善・筋の柔軟・リラクセーション効果により疼痛の緩和を目的とする。

 

2、筋力維持増強運動

①大腿四頭筋セッティング

背臥位あるいは長坐位で膝蓋骨を中枢側に引き寄せるように膝伸展する。筋を最大収縮させ、その際の筋収縮および筋弛緩時間は6秒間とする。運動回数は1セット20回を1日3セット行う。

②SLR運動

膝伸展したまま下肢を床から15~30㎝程度挙上し保持する。運動回数は1セット20回を1日3セット行う。SLR運動では当初負荷をかけない状態から開始し、筋力の改善に伴い1~2㎏の負荷を加えて行う。筋の持久力を強化するためには、筋肉が疲労するところまで反復練習すること基本とし、SLR運動の運動回数の基準を50RMとする岡西の方法がある。

③股関節内転筋の筋力維持

臥位で大腿骨遠位部に抵抗をかけ、1動作に2~3秒かける。最初は軽い抵抗で10回、次に最大筋力を出させるので強い抵抗で10回、これらを1セットとし、1日1セット行う。

④ホリゾンタルレッグプレスでCKC運動

10RMを基準とし、3セット行う。1セットごとに2~4分休む。1週ごとに10RMを測定し、次第に増やしていく。

例)10RMの10%の負荷で10回収縮

  10RMの20%の負荷で10回収縮

  10RMの30%の負荷で10回収縮

  10RMの40%の負荷で10回収縮

  10RMの50%の負荷で10回収縮

3、歩行訓練

 最初は設定運動強度を0.4とし、Karvonenの式より目標心拍数103/分の範囲内で行う。あるいは、膝関節の疼痛が発生しない程度、息切れが出始める程度、ボルグスケール原型13レベル(自覚的運動強度でややきつい)以下で運動を続ける。

 

4、応用動作訓練

右膝に負担のかからない階段昇降の指導を行う。二足一段型で右手すりを用い、昇段は左下肢から、降段は右下肢から先に行う。

 

〔Ⅷ〕考察

 本症例は両側変形性膝関節症により歩行困難を来たした。穏やかな性格で職員に笑顔で会話をし、患者間の関係も良好である。検査にも協力的である。退院後の在宅生活は日中のほとんどをひとりで過ごすことに不安を抱えており、自立しなければという思いが強い。そのため訓練へのモチベーションは高く積極的に訓練を行っている。本症例はX線所見に見られたように脛骨内側に骨棘が認められ、右膝の内反変形を呈している。FTAは右180°、左175°でありGradeは2(中期)である。本症例の場合、変形性膝関節症の進行度は中期であり、疼痛は少量の鎮痛剤投薬で治まるため、観血的治療で疼痛を除去する必要は少なく、治療は保存療法で行っている。

本症例は、院内生活はほぼ自立しているが、退院後の在宅生活に不安に感じている。入院前の生活は、自宅にほとんどひとりの状態であり、家事動作全般を自分で行っていた。買い物はタクシーに乗って孫娘と週一回行く。炊事は、1升炊きのガス釜を使っていた。食卓に運ぶまで1段の段差があるため、その釜を一端段の上に置き、段差を上がり、釜を持って食卓に運ぶ。洗濯物は自宅外のガードレールに干していた。入浴はあまり好まず浴槽にはつからない。2週間程入らなくても平気であり、家族に指摘されて入浴を行っていた。また、シャワーがないため、入浴動作自体も難しかった。  

この入院前の在宅生活を送ることを制限している動作として「荷物を持って移動する」「段差の昇降」「屋外で歩行する」「入浴動作」があげられる。

「荷物を持って歩行する」ことを制限している因子は、「歩行の不安定」「歩行の耐久性の低下」「上肢の筋力低下」が考えられる。

「歩行の不安定」の原因として歩容が関係すると考えられる。本症例は、骨盤の回旋運動や上下運動が小さく、膝関節の伸展制限があるために全体的に下肢の屈伸運動が少ない。したがって右立脚期に体幹を右側屈しながら歩行を行う。右立脚中期では、足底の外側面に体重がかかっており膝関節の側方動揺が観察される。このとき右膝関節内側に疼痛が発生する。これを避けるために体幹の右側屈を行っているのだと考えられる。加えて、脚長差があり右下肢が0.5cm短いことも、若干の影響を及ぼしていると考える。つまり、「膝関節の伸展制限」「右膝関節の側方動揺」と「右膝関節の荷重時痛」「膝関節の内反変形」「右下肢長の短縮」が体幹の右側屈を行いながらの歩行の原因となっており、この歩容が歩行を不安定にしているのだと考えられる。右膝関節の荷重時痛の原因となるものに、肥満、関節裂隙の狭小化、内反膝によるFTAの拡大が上げられる。本症例はBMI25.5と肥満Ⅰ度であり、膝関節にかかる負担が大きい。内反膝も膝関節内側に体重が常にかかる原因となる。脛骨内側にある骨棘が関節包を刺激しているために発生していることも考えられるが、疼痛が重度でないことや少量の痛み止めで疼痛が軽減していることから、骨棘が疼痛に与える影響は少ないと考えられる。加えて、本症例は、ふらふらする、視界がぼやける、睡眠が浅いなどといった不快感を訴えることが時々あり、入院日にもそのような状況のために転倒したのではないかと想像できる。この症状が発生する因子として考えられるのは、多量の睡眠薬の服用によるもので、この影響で歩行が不安定になっていたとも考えられる。本症例は、今回の入院では眠剤の服薬を減らすことも入院目的の一つに上げられている。

「歩行の耐久性の低下」として考えられる原因として、「歩行時のエネルギー消費量の増大」「荷重時痛の発生」が考えられる。「歩行時のエネルギー消費量の増大」となる原因でも、歩容が関係していると考えられる。下肢の屈伸運動で前進するのではなく、体幹を右に側方移動しながらの歩行は、身体全体の動きを使って前進することになり、非効率である。また、肩甲帯前方突出・挙上、上肢の屈伸運動、手指が伸展していることからも分かるように肩甲帯と上肢が緊張しており、全体的に力の入った歩行を行っている。同年代の高齢者と比較して、歩幅が小さく歩数が多いことからもエネルギー消費量が増大していることが考えられる。そして、もう一つの原因だと考えられる「荷重時痛の発生」が長時間の歩行を困難にしている。但し、疼痛は荷重時の一瞬で軽度であることから、膝への荷重に不安を感じて少しの疼痛でも気になり、連続した歩行をやめてしまうのではないかと考えることも出来る。

物を持ち上げる際に問題となる「上肢の筋力低下」においては、肩関節屈曲・外転時に低下が見られた。院内でのADL動作の範囲内では問題には上がらないが、自宅復帰後、重い荷物を持ち上げるときに問題点に上がると考えられる。以上これらの原因により、荷物を持って歩行することを制限しているのではないかと考える。

 「段差の昇降」で、家屋構造上問題となる場所は2段の段差がある玄関と1段の段差がある炊事場である。これらの段差は訓練室の階段程度(高さ11cm~18cm)とのことであり、本症例は、訓練室の階段昇降では右手で右手すりを持ち2足1段で昇降できることから、手すりをつけ、右膝に負担をかけない動作を指導することでこの段差は昇降できると考えられる。

「屋外で歩行する」ことを制限する因子として、「歩行の不安定」「歩行の耐久性の低下」が考えられる。屋外では、床面は平らではなく不安定になる上に、歩行のみに集中できない様々な外部刺激がある。歩行が不安定では、外部からの様々な刺激に応対できない。歩行速度が遅いのも屋外歩行の制限因子になると考えられるが、本症例の入院前の生活から、横断歩道を渡る機会は少なく、歩行速度の遅さが及ぼす制限は少ないことから、今回の問題点には上げなかった。

最後に、「入浴が困難」である原因として、「歩行の不安定」、「浴室の構造」と「肩関節の可動域制限」が考えられる。浴室は床面がぬれており滑りやすく、通常の移動より危険を伴う。そのためより安定した歩行が必要となってくる。また、本症例の浴室の構造は、和式浴槽(埋込み式)のため浴槽への出入りが困難である。しかし、入院前から浴槽にはつかっていなかったこともあり、浴槽の出入りは今回の問題点には上がらない。問題となるのは、シャワーがなく、浴槽からお湯をくんで洗体を行う動作である。この動作には、上肢の筋力と可動域が関係してくる。しかし病院での入浴ではシャワーを使って自立していることから、シャワーを取り付けることで解決できると考えられる。洗体動作においては手指の巧緻動作と、頭部先端から足先までのリーチ動作が必要である。本症例は、巧緻動作は可能であるが、背中を洗う行為は、右肩関節内旋の可動域制限があるために困難を要す。しかし長いタオルを使って動作の指導を行うことにより可能となるのではないかと考える。

そこで、短期目標として「膝関節の疼痛緩和」「下肢筋力の維持・増強」「歩行の耐久性向上」「上肢筋力の筋力増強」、長期目標として「歩行能力の改善(安定性、耐久性)」とし、ゴール設定を立てた。これに対する治療プログラムを以下に述べる。

「膝関節の疼痛緩和」に対しては、温熱療法を施行する。表層部ではなく深部に痛みがあることからホットパックよりも極超短波療法が望ましいと考える。

「下肢筋力の維持・増強」では、股関節屈筋・内転筋と膝関節伸筋を中心に訓練を行う。膝関節に対する筋力増強運動の意義は膝関節の歩行時の安定性を得ることである。なかでも、大腿四頭筋の強化が主体となる。市橋らによると、膝を中心とした整形外科疾患などにおいては、内側広筋が筋萎縮を起こしやすく、回復しにくいとされている。大腿四頭筋の他にも股関節外転筋では大腿筋膜張筋が、内転では鵞足を通じて、伸展筋ではハムストリングスや鵞足を通じて膝関節の補強を行っている。具体的な訓練方法は、大腿四頭筋セッティングとSLR運動を行い、大腿四頭筋の強化を図る。SLR運動では15~30cmの挙上で大腿直筋と内側広筋の筋活動が高くなることから15~30cmの挙上を行う。また、大腿四頭筋は踵接地時に遠心性収縮を行って働いていることから、CKC運動で大腿四頭筋の遠心性収縮を行いながら、筋力増強運動を行う。この運動は膝関節に負担がかかるので、膝関節の疼痛が軽減してから行う。

「歩行の耐久性向上」では、歩行訓練を行う。この訓練は有酸素運動であるため、同時に肥満の予防・体重減少にも効果的である。

歩行訓練は、最初はKarvonenの式より算出した目標心拍数の範囲内で、膝関節の疼痛が発生しない程度、息切れが出始めない程度まで運動を続ける。あるいは自覚的運動強度でややきつい(ボルグスケール原型で13)レベル以下で運動を続ける。ボルグスケール13は、概ねAT(無酸素性作業閾値)の運動強度に相当するとされており、ATを超えない範囲で有酸素運動を行うことが全身持久力を上げ、歩行の耐久性を向上できると考えられる。

並行して階段昇降といった応用動作訓練も行い、右膝に負担のかからないように段差の昇降ができるような動作を習得させ、自宅での生活に対応できるようにする。

以上これらのアプローチを行い、長期目標である安定性と耐久性のある歩行が行えるようになったら、退院後の在宅生活を行える自信がつき、在宅生活の不安の解消につながるだろう。

反省点として、今回の問題点には上げなかった「床からの立ち上がり」についてもアプローチが行えるように分析が必要だった。この動作は転倒した場合に起き上がる動作として必要となる。今回行った立ち上がり動作では、重心が前方移動できるような位置に台を置いていなかったことも動作が出来なかった要因として考えられる。本症例の今後の課題として、安心して在宅生活を送れるために床からの立ち上がり動作に対してもアプローチしていきたい。

本症例の最終ゴールである家庭復帰についてだが、その他の家庭内の本人の役割は、炊事や洗濯など、主婦としての仕事を行う必要があるとのことで、それらを含めた多くの動作には、安定してなお耐久性のある歩行が必要である。リスク管理も考慮して、十分な練習を行い、それらを獲得してから家庭復帰する事が望ましいと考える。復帰後は、日中は一人の生活ということもあり、活動性の低下を招かないように出来るだけ外出する機会を作ることが望まれる。本症例は介護保険認定中であるので、調査結果に応じて、住宅改修や在宅サービスなどを利用し、不安のない在宅生活を送っていけるよう支援して行きたい。

 

〔Ⅸ〕終わりに

 今回、変形性膝関節症の患者様を担当させていただき、整形疾患の評価の考え方と、整形疾患の問題だけで片付けることのできない難しさを勉強させていただく事ができました。評価実習指導者の先生及びスタッフの方々に深く感謝いたします。ありがとうございました。

 

〔Ⅹ〕参考文献

  1. 市橋則明、三宅裕子・他:スポーツ外傷後の大腿四頭筋筋萎縮の一考察―MRIによる検討―.PTジャーナル28(3)
  2. 小牧隼人・他:下肢伸展挙上と大腿四頭筋セッティングにおける内側広筋斜頭筋活動の比較.理学療法学第31巻第5号.2004.291~295頁
  3. 山崎勉:整形外科理学療法の技術と理論.メジカルビュー社.2000.84~114頁.
  4. 富士武史:整形外科疾患の理学療法.金原出版株式会社.2005.185~190頁
  5. 木村彰男:リハビリテーションプロトコール―整形外科疾患へのアプローチ―.メディカル・サイエンス・インターナショナル.1999.336~351頁
  6. 腰野富久:膝診療マニュアル.医歯薬出版株式会社.1992.177~198頁
  7. 諸根彬也:今日の診療10.医学書院.2000
  8. 細田多穂(編):変形性骨関節症 理学療法ハンドブック.共同医書.2001.686~721頁
  9. 水島裕(編):今日の治療薬―解説と便覧―南江堂.2001.200~222頁
  10. 石川斎(編):理学療法技術ガイド.文光堂.944~952頁
  11. 千住秀明(監):運動療法Ⅰ第2版.神稜文庫.2005.130~134頁、205~210頁
  12. 山元総勝(編):運動療法Ⅱ.神稜文庫.1999.169~172頁

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 整形疾患, 病院, レポート・レジュメ