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【(薬剤性)パーキンソン病】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月25日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「(薬剤性)パーキンソン病」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 薬剤性パーキンソン病の患者

  • 家庭復帰を目標
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「(薬剤性)パーキンソン病」の患者のレポート・レジュメ作成例

A.はじめに

今回、(薬剤性)パーキンソン病を呈する患者に対して評価をする機会を得たので、以下に報告する。

 

B.症例紹介

【氏名】氏

【年齢】 

【利き手】右手

【主訴】左足にあまり力が入らなく、腫れているように感じる。目がチカチカして涙が出る。

【ニード】トイレに一人で行きたい。杖歩行が出来るようになりたい。自宅に帰りたい。

【趣味】特になし(テレビはサスペンスが好き)

【病前性格】陽気で明るく活発であった。

【病後性格】一時(2年前)攻撃的な口調になったが現在は穏やかである。

【病名】薬物性パーキンソン病

【障害名】高コレステロール血症・胃潰瘍・末梢神経障害・不眠症・便秘症・HT・HT性心臓病・嚥下障害・構音障害・高次脳機能障害

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C.社会的情報

【家族構造】持ち家。段差が多く、トイレ・浴槽・廊下に手すり設置済み。非介護用ベッド使用。 

【家族の要望】自宅へ帰したい。

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D.医学的所見

【入院年月日】〇〇年〇〇月○○日

【現病歴】

〇〇年〇〇月○○日~デイケア(火・金)利用開始。A病院外来にてフォロー中の患者様。

〇〇年〇〇月○○日3回程転倒とのこと。そのためリハビリ目的で入院。(以前は杖歩行も出来ていたが現在は車椅子)

【既往歴】〇〇年〇〇月○○日 子宮筋腫

【日常生活自立度】B1レベル

病室では寝て過ごされている。天気のいい日は日光浴をされている。患者様自身で車椅子に移乗され、排泄、食事はベッドから離れて行われている。起き上がりに介助が必要である。

【リスク】歩行障害に伴う転倒

【薬剤状況】 

薬剤名

作用

副作用

プラバメイト5

血液中のコレステロールを減らす

手足の脱力感、筋肉痛,横紋筋融解症

  

ミオパシー,肝障害,血小板減少

  

末梢神経障害,過敏症状,発疹,下痢

ノルバスク

血圧を下げる

顔のほてり,動悸,頭痛,歯肉肥厚

  

注:グレープジュースを一緒に飲まない

  

肝機能障害,黄疸,血小板減少,

  

白血球減少,房室ブロック

プロピレス

血圧を下げる

間質性肺炎,血管浮腫,失神,意識消失

  

急性腎不全,高K血症,肝機能障害

  

黄疸,無顆粒球症,横紋筋融解症

バイアスピリン

血栓が出来るのを防ぐ

出血しやすくなる

センナリド

下剤

腹痛,悪心,嘔吐,発疹,低K血症

  

腹鳴

メトローム

寝つきを良くする

連用により薬物依存,呼吸抑制

  

肝機能障害,精神症状,意識障害

  

一過性前向性健忘、ふらつき,眠気、頭重

  

頭痛,不快感,めまい,蛋白尿,BUN上昇

  

白血球減少,赤血球減少,口中の苦味

  

口渇,嘔気,発疹

プロレナール

腰部脊柱管狭窄症に伴う自覚症状および歩行能力の改善

血小板減少,発疹,下痢,悪心,腹痛,

  

肝機能異常,潮紅,心悸亢進,腹部不快感

  

食欲不振,胸やけ,頭痛,ほてり,めまい

メチクール

ビタミンB12末梢神経炎の症状改善

過敏症,食欲不振,悪心,嘔吐,下痢,

  

注射部位の疼痛,頭痛,発熱感

カモファー

急性胃炎、慢性胃炎の症状の改善

ショック,アナフィラキシー様症状,

  

汎血球減少,無顆粒球症,再生不良性貧血

  

浴血性貧血,皮膚粘膜眠症候群,過敏症

  

白血球減少,便秘,下痢,徐脈肝障害

  

全身倦怠,可逆性の錯乱状態,意識障害

  

頭痛、女性化乳房,顔面浮腫

ネオドパストン

パーキンソン症候群

胃腸症状,不安,興奮,妄想

 

筋緊張,運動減少

 

エブランチル

排尿障害を改善し尿の出を改善

立ちくらみ,めまい,動悸,頭痛,眠気

  

胸部不快感,頻脈,嘔気,口渇

【他部門からの情報】

Dr:パーキンソン病、薬剤性パーキンソン病の疑いもある患者様だが、1年もたっているのでおそらく、パーキンソン病と判断してよい。神経因性膀胱の治療も行っているため、現在は、パーキンソン病の薬は中止している。夫は痩せ型で患者を起こしきれなく転倒の危険性もあるため入院した。

リスク管理:現在の血圧は安定しているが180/100に場合は治療は中止。薬の副作用のためふらつきには注意が必要。

 

Ns:トイレ動作(移動、衣服の上げ下ろし、処理)見守りであり、車椅子操作は直線の15mくらいは自分で動かせるが、狭く込み合ったところは操作できない。入浴はチェアー椅子にて全介助、自分で出来ないことはないが、時間がかかり、あまり時間をかけると疲れてしまうので全介助で行っている。排尿回数が少ない為、食事のときに水分を取らせるため、2杯配っているがあまり飲みたがらない。

 

OT:現在は、肩の疼痛軽減を主に行われ、バランス訓練、立ち上がり訓練、輪投げを使った回旋訓練を行っている。

 

ST:運動低下性構音障害。飲み込みは経過観察中で咀嚼が遅く食べ物が左側に残る。構音や咀嚼も頸部周辺筋群が関わるので頸部の回旋・側屈を行っている。なぜこの訓練を行っているのか疑問に思われているようで、あまりSTの訓練が好きではないようだ。

 

MSW:退院後の介助者は夫の為トランスファーや入浴介助には無理がある。入浴に関しては入浴介護になるが、患者様が他人から入浴介助されるのをあまり好まれていない。今後のポイントは自宅に帰られてからのコミュニケーションの問題がある。(夫は難聴で患者様は小声)夜、トイレに行きたくても声が聞こえなく、一人で行って転倒の危険度が高まる。

 

E.理学療法評価

【全体像】

車椅子介助によりリハ室に来室される。第一印象はやさしく朗らかな印象で評価にも協力的であり、対応もしっかりされている。しかし動作に関しては全体的に緩慢である。

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【パーキンソン症状】

Hoehn-Yahr重症度分類・・・ステージ3

方向変換の不安定など体のバランス障害が見られ、日常生活動作障害もかなり進み、歩行中も突進現象が出現している。

生活障害度・・・Ⅱ度

車椅子駆動、入浴、排泄など日常生活において部分介助を要する。

固縮:腕木信号現象、頭落下試験陽性。

無動:小字症がみられる。動作緩慢である。眼球の動きがスムーズでない。

安静時振戦:見られない。

姿勢反応障害:前屈姿勢、歩幅が狭い、すくみ足、体軸内回旋の減少がみられる。

表情:仮面様顔貌

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【血圧・脈拍】

収縮期血圧:106~130mmHg

拡張期血圧: 60~ 76mmHg

脈拍   : 64~ 80

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【握力】

右:10kg   左:6kg

 

【周径】

単位:cm

 

上腕伸展位最大

29

29

0

上腕屈曲位最大

31

31

0

前腕最大

25.5

26

0.5

前腕最小

16.5

16.5

0

膝蓋骨0cm

41

39

2

   5cm

40.5

39

1.5

   10cm

44

42.5

1.5

   15cm

46

44.5

1.5

   20cm

49

47

2

下腿最大

32.5

34.5

2

下腿最小

21.5

22

0.5

上肢に関して、右差はみられないが下肢は右に比べて左の方が小さい。

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【ROM】

関節名

角度

頸部回旋

60

50

40

頸部側屈

50

20

10

頸部屈曲

60

35

 

頸部伸展

50

10

 

胸腰部回旋

40

20

35

肩関節屈曲(背)

180

145p

165

外転(背)

180

110p

125

内転(背)

75

15

15

外旋(背)

90

80

85

内旋(背)

70

65

60

肘関節屈曲(背)

145

135

135

前腕回内(背)

90

90

90

回外(背)

90

85

90

手関節掌屈(背)

90

65

80

背屈(背)

90

55

50

橈屈(背)

25

15

15

尺屈(背)

55

40

40

股関節屈曲(背)

125

100

90

外転(背)

45

35

40

内転(背)

20

10

10

外旋(背)

45

30

30

内旋(背)

45

30

25

膝伸展(背)

0

0

0

屈曲(背)

130

130

140

足関節底屈(背)

45

50

60

背屈(背)

20

0

0

内がえし

30

0

0

外がえし

20

25

25

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【MMT】

筋名

肩甲骨面挙上(座)

5

5

肩関節屈曲(座)

4P

4

外転(座)

4P

4

水平内転(背)

5

5

肘関節屈曲(座)

5

5

手関節背屈(座)

3

3

掌屈(座)

3

3

股関節屈曲(座)

3

3

膝伸展(座)

5

5

足関節底屈(背)

2+

2+

背屈(背)

5

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【感覚検査】

  

痛覚

手掌

5/5

5/5

 

手背

5/5

5/5

 

足背

5/5

5/5

 

足底

4/5

5/5

触覚

手掌

5/5

5/5

 

手背

5/5

5/5

 

足背

5/5

5/5

 

足底

3/5

5/5

位置覚

母指

5/5

5/5

 

示指

5/5

5/5

 

母趾

5/5

5/5

右の上肢・下肢、左の上肢の触覚・痛覚・位置覚ともに正常だが、左の下肢の足底部(外側部)の触覚と痛覚が軽度鈍麻している。

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【反射検査】

腕木信号現象・頭落下試験陽性により固縮ありと考えられる。また眉間反射陽性のため仮面様顔貌と考えられる。

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【認知症評価】

改訂長谷川式簡易知能評価スケール・・・26点/30点

減点項目:

⑦の先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみて下さい。→3つともヒントを与えて正解 :-3

⑧これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言って下さい。→4つ正解 :-1

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【高次脳機能検査】

半側空間無視 :問題なし

構成失行   :問題なし

物体失認   :問題なし

地誌的記憶障害:問題なし

失算     :問題なし

観念運動失行 :問題なし

手指(構成)失行:問題なし

身体部位失認 :問題なし

左右弁別障害 :問題なし

手指失認   :問題なし

音読     :問題なし

検査は問題なし。しかし、動作時の空間的認知に問題がある。

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【バランス評価】

静的バランス

静的バランスでは床面から足底を上げた状態では支え無しでは14秒、支えありでは1分以上保持可能、床面に足底接地状態では支え無し、9秒、支えありでは、1分以上保持可能。(日内変動により支えがあっても後ろに倒れていくこともある。患者様のコメントとして午前中はあまり調子が良くないとのこと)

 

動的バランス
座位バランス

立ち直り反応を確認しようと、側方に傾けたが、頚・体幹ともに立ち直り反応は右側では見られ、保護伸展反応も出現した。しかし左側へ傾けた場合は頚・体幹の立ち直り反応は不十分であり、保護伸展反応も出現しない。

 

立位バランス

立位時前方方向への外乱に関してもステップ反応はでず、立位時側方はステップ反応が出る前に、恐怖から外乱を加えている私の手を握られ、ステップまでは行かなかった。しかし、歩行時に当然止まるように指示されると立ち直り反応がみられた。

 

四つ這い位によるバランステスト

左上肢と右下肢を上げてもらったが、上肢はあがり、下肢はわずかに上げることが出来たが、保持することはできない。下肢を上げようとすると、前方へ倒れてきてバランスを保つことができなかった。逆に左上肢と右下肢を上げるように指示したが、力が入らず、上下肢ともに上げることが出来なかった。

*日々の評価の中で座位バランスが取れているときと、ずっと後方へ倒れてしまうときなど、日内変動があり、訓練後も調子が悪く、学習がされていないこともある。

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【筋トーヌス】

 

手関節掌屈

軽度歯車様固縮

固縮なし

背屈

歯車様固縮

歯車様固縮

前腕回外

軽度歯車様固縮

固縮なし

内外

軽度歯車様固縮

固縮なし

肘関節屈曲

軽度歯車様固縮

軽度歯車様固縮

伸展

固縮なし

固縮なし

肩関節屈曲

固縮なし

固縮なし

伸展

固縮なし

固縮なし

膝関節屈曲

鉛管様固縮

鉛管様固縮

伸展

鉛管様固縮

鉛管様固縮

股関節屈曲

固縮なし

鉛管様固縮

伸展

歯車様固縮

固縮なし

足関節背屈

軽度歯車様固縮

軽度歯車様固縮

底屈

軽度歯車様固縮

軽度歯車様固縮

膝関節の固縮が強く、動作開始が遅延している。フットレストに足を乗せるときなど、なかなか曲がらない。

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【FIM】

セルフケア

A:食事

5

エプロンをつけてもらう

 

B:整容

7

 
 

C:入浴

1

時間がかかるため全箇所全介助

 

D:更衣(上半身)

4

自分でかぶれるが手伝って直してもらう

 

E:更衣(下半身)

1

全介助

 

F:トイレ動作

6

手すりを使用

排泄コントロール

G:排尿

5

尿を捨ててもらっている

 

H:排便

6

便軟化剤を使用

移乗

I:ベッド

5

監視

 

J:トイレ

5

手すりを使用し監視してもらう

 

K:風呂・シャワー

4

シャワー椅子、移乗時おさえてもらう

移動

L:歩行・車椅子

2

車椅子15mは自走、方向変換など介助

 

M:階段

1

できない

コミュニケーション

N:理解

7

 
 

O:表出

7

 

社会的認知

P:社会的交流

7

 
 

Q:問題解決

7

 
 

R:記憶

7

 

合計

 

87

 

【Barthel index】

45点/100点

詳細:①食事:10点

   ②車椅子からベッドへの移乗:10点

   ③整容5点

   ④トイレ動作:5点

   ⑤入浴:0点

   ⑥歩行:0点

   ⑦階段昇降:0点

   ⑧着替え:0点

   ⑨排便コントロール:10点

   ⑩排尿コントロール:10点

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【動作分析】

起き上がり動作(自立)

パーキンソン病の特徴的な動作緩慢で体軸内回旋が乏しい。

下肢先行型。右側への起き上がり。まず右下肢をベッドサイドへ移動する。左上肢で手すりにつかまるために体幹の回旋が始まるが左下肢の動きが起こらないため体幹を回旋させようとしても回旋できない。左下肢をベッドサイドへ移動させながら、左上肢で手すりを引くことで体幹を側臥位に持っていくが、回旋は乏しい。一本の棒が転がるようである。側臥位からの起き上がりは頸部屈曲動作がおきないon‐elbowにもって行くまでに力を要する。右上肢on‐elbowになると左上肢を伸展させ、右上肢on‐handになり、少しずつ右上肢を体幹に近づけて起き上がる。

 

立ち上がり動作(平行棒内自立)

下肢の固縮によりスムーズに立つことは出来ないが平行棒を握り立ち上がることができる。立ち上がり動作では、椅子に深く座った位置から立ち上がるため、立ち上がりに力が必要。体幹の前屈動作も少なく、膝より前に頭部が出ない状態で立ち上がる。足部の引きもなく、膝関節90度のまま立ち上がる。椅子に浅く座り、体幹を前方に屈曲させ殿部が浮いた位で立ち上がるように指示したらスムーズに立ち上がりができるが短期記憶障害のため、何度か行っていると最初の動作になる。

 

食事動作(自立)

箸使用で自立している。車椅子座位での食事の為、アームレスト上に肘を乗せて食事を取られる。食物を口に運ぶ際は体幹が車椅子の背もたれにもたれたまま、体幹前方移動が見られず、上肢を口に運ぶ動作であり、肘がアームレストから離れない為思うように食べ物が口に入らない。開口も食べ物をとった位置から口までの中間位で開口し始める。咀嚼動作は右で行われ、左に食べ物が残ることが多い。お盆の一番奥に置かれたものを取る際にも体幹の前屈動作は起こらず、上肢を伸ばして取ろうとする。上肢だけでは届かない場合に体幹の屈曲がわずかにみられる。全体の食事時間は15分ほどで、食事時間に時間がかかることはない。お茶を飲まれるは、頸部の伸展動作が起こらず、頸部前方突出のまま前腕の回内動作でお茶を飲まれる。食事中だんだんと左方向に回旋し左側方に傾いて行く。

 

歯みがき動作

磨くときの上下左右の動作が小さい。口をゆすがれるときも体幹の前方移動が少なく、口の圧力で水を捨てられる。

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【歩行分析】

歩き初めはスムーズですくみ足も見られないが、すり足気味で歩幅が狭く、踵接地期は足底全接地に近いheel contactである(右下肢)。遊脚相への蹴り出しも少なく、遊脚相の振りも小さい。また、左下肢は爪先からの接地が見られる。膝関節double knee actionが起こらない。平行棒内での歩行の歩き始めは歩幅も大きく速度も速いが、徐々に歩幅が小さく、すくみ足になっている。手を引いて歩いた際も、歩調がゆっくりだと、歩幅も小さくすくみがちだが、早く歩くとその速さについてきて、歩幅も大きく、歩行するが、突進現象が出現する。腕の振りも肘関節屈曲位で肩関節伸展位までの振りは見られない。

 

方向変換(平行棒内)

平行棒内で前方方向から後方方向へ転換の際完全に足先が行く方向を向いていないまま反対側を出すため、下肢がクロスした状態になっていた。また車椅子に座られる際の方向転換も車椅子よりかなり手前で方向変換され、そのまま座られようとし、目測を誤られている。頸部屈曲制限があるため、足元が見えず見える範囲内での感覚で行動されるため、早くから方向変換が始まると考える。認知機能の問題あり。2m手前から変換しようと構える為すくみ足なども出現する。

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F:問題点

Impairment(機能障害)レベル

#1 体軸内回旋の減少

#2 筋力低下(股関節)

#3 パーキンソニズム(すくに足、突進現象、小刻み歩行、動作緩慢(重心移動の緩慢)、筋の固縮)

#4 関節可動域制限(足関節背屈、頸部屈曲・伸展・回旋・側屈制限)

#5 両手同時動作能力障害

#6 眼球運動障害

#7 言語障害(小声)

#8 短期記憶の障害

#9 目測不良

#10 空間認知障害

#11 疼痛

#12 易疲労性

 

Activity Limitation(活動制限)レベル

#13 バランス能力低下

#14 起居動作能力の低下

・寝返り動作

・起き上がり動作

・立ち上がり動作

#15 歩行能力低下

#16 方向変換動作能力低下

#17 車椅子操作困難

#18 コミュニケーション能力低下

 

Participation Restriction(参加制約)レベル

#19 介助無しでは外出できない

#20 声が小さい

 

Environmental Factor(環境因子)

#21 自宅の段差が多い

 

Personal Factor(個人因子)

#22 夫が難聴の為声が聞こえない

#23 介護者の介護力低下

#24 声が小さい

#25 一人でトイレに行けない

 

G.ゴール設定

短期目標:起き上がりから立ち上がり動作の獲得(4W)

長期目標:家庭復帰(2M)

 

H.治療プログラム

1.バイタルチェック 

 

2.神経筋再教育

目的:感覚系と運動系を活性化させる。

方法:足関節底面全体を刺激し、足趾の関節を動かし、足関節を動かす。

 

3.平衡機能訓練, 体重移動訓練

目的:立ち直り反応及び平衡反応を促通する。動作の安定性の獲得を目指す,転倒予防。

方法:腰掛け坐位で、骨盤の前傾・後傾を繰り返し行い、骨盤後傾位を自分で前傾できるように訓練し、姿勢を正す。骨盤前傾位で、前後左右に体重を移動させる。肩の立ち直り反応が出るように、側方に体幹を傾かせ肩を上方に上げる訓練を繰り返し行い学習させる。

 

4.姿勢矯正訓練

目的:パーキンソニズムに特有の屈曲姿勢を改善する。

方法:棒体操など

 

5.体軸内回旋運動

目的:体軸内回旋の減少を改善。

方法:側臥位になり、上側骨盤をやや後方へ引いた位置から下部体幹の回旋による半臥位から側臥位までの運動を促す。座位にて、左右両隣に輪投げを用意し、左側の輪投げから右側の輪投げに回旋を使って、入れてもらう。その際、左側の輪投げは右手で取ってもらい、右側に入れる際は左手でいれてもらう。背臥位にて、両膝を曲げ、左右にゆっくりひねる。

 

6.歩行訓練

目的:歩行能力の維持、改善。歩容、歩行パターンの改善。歩行効率をあげる。

方法:平行棒内で大腿を高く上げて歩いてもらう。その時、横で声掛けを行い、リズムをとって行う。また、床の目標物をまたぐようにし、歩幅を大きくする。体幹を伸展し、前を向くという歩容の指導も行う。

 

7.関節可動域訓練、伸張訓練

目的:固縮による筋短縮及び可動域制限の改善。四肢・体幹の可動性を図る。

方法:背臥位で両膝を立てる。両膝を側方に倒す。このとき、十分に伸張できるように肩関節と膝関節を軽く押さえる。背臥位にて治療台の端に殿部がきて、下肢を治療台から出す。片方の下肢をPTの肩にかけ、もう一方は治療台から下垂させる。下垂している下肢を押すようにして腸腰筋を伸張する。(下垂した膝は最初伸展位で腸腰筋を伸張し次いで膝を屈曲して伸張する)

 

8.物理療法

目的:筋のリラクゼーション。精神的リラックス作用。疼痛軽減

 

9.筋力増強訓練

目的:固縮や無動に伴う筋力低下の改善。

方法:時電車エルゴメーター。背臥位で両膝を屈曲位にし、殿部を持ち上げる。

 

10.パーキンソン体操

 

I.統合と解釈

本症例はパーキンソン病を呈する症例であり、息子さんが小字症に気付かれ、受診され病態が発見された。人間の動作時に力の均等を保つ為には、体を動かそうとするドパミン作動性の経路と抑えようとするGABA作動性の経路があり、バランスを保っている。ドパミンが産生される黒質に変性・障害が起きることにより、ドパミン作動性経路の働きが弱くなり、その反対のGABA作動性の抑えようとする働きが強くなりパーキンソン病特有の安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害が出現する、神経変性疾患である。

本症例の病態としては、固縮・無動・姿勢反応障害は見られるが、振戦に関してはみられない。パーキンソン病に特有な動作の特徴である、運動速度の遅さ、反応時間の遅延、運動開始時間の遅延、運動パターンの変換時間の遅延などがあるが、本症例に関しては全ての動作時に見られ、体軸内回旋の減少に伴い、起き上がり時に時間を要し、側臥位になるために手すりをつかむまでに時間がかかっている。特に左下肢の動作が遅い。病棟での体操などをみても、指の体操などで、両側同時動作を行うと、左側が遅れているのを観察することが出来る。周径は左側が右側に比べて小さい。しかし、MMTでは左右差はみられない。1日でも午前中は出来なかったことが午後から見違えるように、出来るようになるなど、日内変動がみられる。しかし、前日午後から行って調子が良くても、次の日の午後からも調子が良いとは限らない。日内変動がみられる。

歩行に関してもパーキンソン病特有の症状が見られる。前傾姿勢(おじぎ姿勢)で、股関節・膝関節は屈曲し、骨盤の回旋も減少し、歩幅も小さい。上肢は肘で屈曲し、腕全体の振り(肩甲骨の動きも少ない)が小さい。すり足歩行に関しては現在のところはっきりとした兆候はない。歩き初めはスムーズですくみ足も見られないが、すり足気味で歩幅が狭く、踵接地期は足底全接地に近いheel contactであるがこれが見られるのは右足のみで、左足は爪先接地になっている。遊脚相への蹴り出しも少なく、遊脚相の振りも小さい。膝関節double knee actionが起こらない。突進現象に関しては、変更棒内では見られないが、平衡棒外でテンポ良く行っていると顕著に出現する。しかし、すくみ足現象が出現し、急に歩けなくなるようなことはない。歩行途中に止まるように指示されるとともに立ち直り反応が出現し、止まることのできるときと、2~3歩前進して止まるときと、まちまちである。段差に関しては、本症例では、下肢筋力低下やバランスの不安定のため、階段昇降は全介助を要する。方向変換に関しても完全に向きを変える前から歩行開始し転倒の危険性があり、歩行終了し車椅子に座るときも目測をあやまり、手前で座ろうとするため、転倒の危険性が高い。これは、空間認知からによるものと考えられ、また、足元が見えていないこともあり、目測を誤っていると思われる。

一般的にパーキンソン病の立ち直り反応が出にくい特徴的な症状としては、山口ら1)によると通常静止位を維持しようと、自動的姿勢反応が起こるが、外乱に対して体性感覚入力はこの反射に十分貢献し、視覚入力利用による姿勢反射としては外界の動きにゆっくりと眼球視線を追随させる視運動性反射が働く。また前庭入力情報に関与する反応時間は非常に早く、前庭入力情報のみでは極めて困難でほとんど倒れてしまう。このことからパーキンソン病患者も外乱の大きさに反応を変化させていること、反応時間もcontrolと大差はないが姿勢調整に必要な十分な大きな運動出力を一定時間内に素早く出せないために、立ち直り反応が出にくいとしている。本症例に関しても頚・体幹とも立ち直り反応が不十分であり、立ち直り反応が出現する前に上記の症状が出現していると考えられる。

高次脳機能障害に関しては特に問題はないが、高次脳機能検査で、本症例特有の症状が出現した。文章を読ませた際、次の段落に行くところをスムーズに読むことが出来ない。これは無動による眼球運動の緩慢と考えられる。この眼球運動の緩慢は歩行時にも出現した。歩行中に歩行方向とは違う方向を見ただけで、視線を送った方に体が傾き、歩行方向に修正をしようとしても修正が効かず、ふらつきや、突進現象が出現し、転倒の危険性が高くなる。起き上がり動作では、頚部の屈曲が起こらないため、側臥位から側方に起き上がる。人の体は側屈方向へはおよそ50度しか側屈できないため、起き上がりの際に、側臥位より前方に体幹を回旋することで容易に起き上がることができる。このことから、本症例にも頚部の屈曲と側臥位より前方への体幹回旋を促し、起き上がりをスムーズに誘導する。立ち上がりに関しても体幹の前屈があまり見られず、深く腰掛けたままの位置から立ち上がろうとするため、後重心になり、大腿部に力を要し、立ち上がりにくくなっている。座位を浅くすることと体幹前屈を促すなど、寝返り、起き上がり、立ち上がり動作では大きな重心移動を伴う動作を行い、キャリアオーバーとして残っていないため何度も繰り返し誘導して動作を記憶させていくことが大切であると考える。固縮によって一見筋力が低下しているように見えるが、筋がいつも脱力することが出来ずまた、リラックスすることが出来ない状態のためスムーズな動きができていないと思われる。また、上記のことから、疲労がたまりやすく、易疲労性の症状が出ると考えられる。

 

<引用文献>

1)山口明:パーキンソン病のリハビリテーション.JOURNAL OFLINICALREHABILITATION11:1116-1121,2002

2)加倉井周一,清水夏繪:神経・筋疾患のマネージメント‐難病患者のリハビリテーション,(株)医学書院,1997,pp106-107

3)東島俊一:パーキンソン病がわかる本,(株)法研,2002,pp34-36

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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