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【延髄の脳梗塞+片麻痺】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月22日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「延髄の脳梗塞+片麻痺」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 延髄の脳梗塞

  • 右片麻痺を呈する

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延髄の脳梗塞+片麻痺のレポート・レジュメ作成例

【はじめに】

 今回,脳梗塞で延髄内側病変をもった患者様を担当させて頂いた.○月下旬の退院より通院することを考慮し,そのために必要と思われる評価,問題点の抽出,ゴール設定,考察をしたのでここに報告する.

 

【症例紹介】

1.一般的情報

年齢・性別・職業:60歳代,男性,無職

利き手:右

身長・体重・BMI:

診断名:脳梗塞(ラクナ梗塞)

障害名:右片麻痺

主訴:右上下肢のしびれ,めまい

発症(受傷)年月日:〇〇年〇〇月〇〇日

リハ開始年月日:〇〇年〇〇月〇〇日(ICUにてベッドサイド)

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2.医学的情報

既往歴:〇〇代から糖尿病.心筋梗塞でA病院にてバイパスope.アレルギーなし.

薬物情報:<現在使用>ネルビス,プレタール,マイスリー,マグラックス

①ネルビス:<作用>インスリン非依存型糖尿病の糖の分解促進.<副作用>低血糖,ふらつき,眠気 など

②プレタール:<作用>血小板の凝集能を抑制し,血栓,塞栓を治療し,血流を改善.<副作用>脳出血,出血傾向,頭痛,易疲労感,過敏症 など

③マイスリー<作用>不眠症の睡眠導入機構に作用.<副作用>ふらつき,めまい感,発熱,けいれん など

④マグラックス:<作用>腸管に機械的刺激を与え排便を容易にする.<副作用>下痢

現病歴:〇〇年〇〇月〇〇日,深夜から急に右下肢脱力感により歩行困難.トイレに行くにも這って行った.朝起きた時にめまいがあり嘔吐数回あり.右下肢脱力感もあり歩けず寝て様子を見ていた.めまいに伴う嘔気,嘔吐持続のため救急要請.

生活歴:<喫煙>なし <アルコール>なし

家族歴:脳血管疾患(父親が脳梗塞),3人兄弟でみな糖尿病.

MRI所見:拡散強調画像の延髄上部のレベルである.延髄の左側に高信号が認められる.椎骨脳底動脈から前脊髄動脈より穿通枝で延髄内側に血管栄養されており,穿通枝の梗塞と考えられる.そのため延髄に核のある舌咽,迷走,副,舌下神経に問題が生じ,また深部感覚,運動麻痺も呈することが予測される.

*画像添付推奨

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入院時Dr.検査所見:

<バイタル>脈拍 87回/分,血圧 199/85mmHg,体温 36.7℃

<神経学的所見>対光反射・眼球運動正常,眼振(-),顔面感覚左右差(-),しびれ(-),額のしわ寄せ正常,聴力正常,軟口蓋挙上正常,舌の挺出・運動正常

<感覚>右上下肢にしびれ(+)

<筋力>Bare(右上肢+),Mingazzini(-),右下肢MMT4

 

生化学検査所見:

〇〇年〇〇月〇〇日

①Cl(クロール):95L 基準値:98~110<原因>代謝性・内分泌性疾患 など

②赤血球:417L 基準値:427~570<原因>鉄欠乏性貧血 など

 

〇〇年〇〇月〇〇日

①HbA1c:6.9H 基準値:4.3~5.8<原因>糖尿病,腎不全 など

②LDL‐cho:67L 基準値:70~139<原因>動脈硬化症(虚血性心疾患,脳梗塞),糖尿病 など

③HDL‐cho:93H 基準値:40~77<原因>薬物投与 など

 

〇〇年〇〇月〇〇日

①クレアチニン:0.56L 基準値:0.61~1.04<原因>筋肉量の減少,肝障害が疑われる.

②CRP:1.35H 基準値:0.30以下<原因>心筋梗塞,血管炎 など

③血糖:164H 基準値:60~109<原因>糖尿病,肥満,脳腫瘍の一部 など

④Ht(ヘマトクリット):38.6L 基準値:38.9~51.8<症状>動悸,息切れ,頭痛 など

 

他部門情報:

Dr.:血管梗塞部位としては,微細なため画像上確認は困難.合併症を考慮した理学療法の施行.○○月下旬までにリハを継続し,その後退院.目標としては家族・本人が自宅復帰に向け満足したものが得られるまでとしている.心機能や糖尿病を合併しているためリハではバイタルサイン(血圧)や負荷量に考慮し施行.

 

Ns.:病棟内(リハ以外)は車いすフリーの状況.病棟内を車椅子での移動.トイレ動作は自立.更衣は上下ともに軽介助.入浴は介助にて可能.洗髪などに関しては自立.集中治療室にて褥創が発生し,〇〇年〇〇月〇〇日にて殿部表皮剥離.現在は改善.

 

PT:〇〇日より集中治療室にてリハ開始.〇〇月〇〇日に理学療法室にてリハ開始.起き上がり,座位は監視レベル可能.トランスファーは一部介助.歩行は平行棒内にて可能.

 

OT:〇〇年〇〇月〇〇日,B.R.S上肢Ⅴ,手指Ⅳ.書字に関してはペンを用いて波線を書くなど可能である.更衣動作は自立にて麻痺のため右側から開始するようにと指導している.しかし,あくまでもやりやすい方法とのことから右側からを指導しており,左側からでも可能.失行,半側空間無視に関してはないと思われる.目標としては上肢の円滑な物品動作の獲得としている.

 

ST:軽度注意障害.日常生活に影響は少ないと考えられる.言語は弛緩性構音障害で徐々に発話の明瞭度低下していく.時々わからない語があるレベル.嚥下面には問題なし.お粥は本人の希望であるがお粥でなくても嚥下には問題ないと考えられる.現在は舌・構音のトレーニング,ゆっくり話す,パソコンの練習.経過としては今後回復の余地あり.

 

3.基礎・社会的情報

本人のニード:補助具などを使用なしでのトイレ動作自立

本人のhope:独歩での散歩

家族のニード:お風呂,トイレといったADL自立,屋内の独歩での歩行

家族のhope:旅行やお出かけをしたい

家族構成:妻(〇〇歳代),子供2人(ともに女性成人で結婚,子どもがいる.実家とは別宅の流山にて生活)

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周辺環境:自宅周辺は平坦な道が多い.

趣味:日記,スクラップ,散歩

キーパーソン:妻

退院後の受け入れ状況:自宅のバリアフリー化が進んでおり,自宅からの車で通院.

発症前ADL:屋外歩行可能で自立(散歩)

住居環境:一戸建て.玄関から道路までに段差1つあり.玄関にも30㎝ほどの段差あり.トイレには左右に手すり.風呂と洗面所の間に10㎝ほどの段差あり.浴槽の右側に手すりあり.寝室は1階を予定.

 

【理学療法初期評価】

1.全体像

介助で車椅子にて来室.しかし,車椅子の自走は可能.笑顔である.体型としては細身.尿道カテーテルは使用していない.車椅子からリハ台へのトランスファーは楽に行っているように感じられた.また,車椅子には円座が敷かれている.

 

2.バイタルサイン(血圧・脈拍)(表1)

表1 評価時のバイタルサインの記録

 

○日(前)

(後)

○日(前)

(後)

○日(前)

(後)

○日(前)

(後)

収縮期血圧(mmHg)

128

140

130

124

130

128

132

138

拡張期血圧(mmHg)

72

84

62

72

74

74

76

74

脈拍(回/分)

100

98

92

98

98

96

92

92

※(前)は評価開始前,(後)は終了後

<解釈>

大きな血圧変動はないと考えられる.また,アンダーソンの基準からも施行に問題ないと判断し,評価を行った.

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3.片麻痺機能テスト(Brunnstrom Recovery Stage:以下B.R.S)

 上肢:stageⅤ

 下肢:stageⅣ

 手指:stageⅣ

<解釈>

 上肢の評価において,肘伸展位肩屈曲90°での回内外において共同運動が出現.3つの項目のうち2つが可能であるためⅤと考える.下肢において,Ⅴの各項目で動作は可能であるものの,分離性がなく共同運動が出現しているためⅣであると考える.手指では,全可動域の全指伸展が不可能であり,また各指の指腹部をつまむ動作も困難であったことからⅣであると考える.このことから,下肢において麻痺による分離運動に関して稚拙であることからも,歩行や立ち上がり動作に影響が出てくるものと考える.

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4.関節可動域検査

測定部位/運動方向

Rt.

Lt.

備考

肩関節 外転

100

  

    水平屈曲

100

 

※三角筋後部に伸長痛

    水平伸展

20

 

※三角筋後部に緊張・疼痛

    伸展

  

※右上腕三頭筋に伸長痛.可動域はfull.

股関節 屈曲(膝屈曲位)  

105

105

 

    伸展(側臥位)

10

15

 

    外転

25

30

※内転筋群に緊張あり

    内転

15

15

 

    外旋(股関節90°位)

30

30

 

    内旋

15

20

 

膝関節 屈曲(背臥位)

150

150

 

足関節 背屈(膝屈曲位)

15

15

 

    底屈

25

25

 

    外がえし

15

20

 

    内がえし

10

10

 

(単位:°)

<解釈>

肩関節に関しては,上記の検査に対し,筋緊張が亢進し,伸長痛が存在した.肘関節屈曲に関しての可動域はfullで可能なものの,最終域で拮抗筋に伸長痛が生じた.股関節外転では,左右ともに内転筋群に軽度な緊張が見られたものの,右側が強い傾向にあった.股関節の屈曲においては,end feelで筋の伸張性による制限(farm)によるものと判断した.

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5.筋力検査

握力:Rt.12kg  Lt.28kg

運動

Rt.

Lt.

体幹    屈曲    

3

 

頚部複合屈曲      

4

 

肩関節   屈曲

4

5

      伸展

3

5

      外旋

4

5

内旋

4

5

肘関節   屈曲

3

5

      伸展

3

5

股関節   屈曲

3

4

      外旋

4

5

      内旋

3

5

      伸展

4

5

      伸展(膝90°屈曲)

3

5

膝関節   屈曲

4

5

      伸展

3

5

足指  MP屈曲

4

5

    PIP・DIP屈曲

4

5

    MP・IP伸展

3

5

※体幹・頸部に関しては全体の筋力なので,左右の区別はつけない.記載は右に記入.

<解釈>

 本来ならば中枢神経疾患に対して麻痺側は筋力検査を行わない.しかし,今回では分離運動が可能になってきたこと,在宅復帰に向けての筋力を大まかに知る上で計測した.しかし,過度な抵抗では共同運動が上肢に出現してしまうため,共同運動が出現しない程度の抵抗を最大とし計測した.左側と比較すると全体的に筋力低下がみられる.特に下肢の近位側と体幹である.左右の全筋力が3レベル以上あるため,重力に抗しての筋力は発揮できるが,歩行や立ち上がりなどの動作に伴う負荷に関しては,十分な筋力があるとは言えず,動作になんらかの形で代償動作やできない動作が出てくるものと考えられる.

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6.形態測定

四肢周径

Rt.

Lt.

差(少)

伸展位上腕周径(外側上顆より10cm)

23.2

22.3

0.9(Lt.)

最大前腕周径(肘関節裂隙より5cm)

23.3

23.0

0.3(Lt.)

膝蓋骨直上

34.4

34.8

0.4(Rt.)

5cm(膝蓋骨上縁より)

33.3

34.2

0.9(Rt.)

10cm(5㎝と同様)

34.6

36.3

1.7(Rt.)

下腿周径(裂隙より5㎝)

30.3

30.5

0.2(Rt.)

棘果長

77.6

77.6

0

転子果長

74.5

75.5

1.0(Rt.)

(単位:cm)

<解釈>

 周径に関して,大腿周径の10㎝部右側に低値を認め左右差が生じている.10㎝上では大腿四頭筋全体の状態を示している.このことからも右大腿部の筋萎縮が生じている可能性が考えられる.一方,肢長に関しては転子果長において1㎝の差が生じている.1~1.5㎝は問題ない範囲であり計測上の誤差の可能性も考えられる.仮に問題がある場合,棘果長には左右差がないことから,転子部から外果に問題があるものと考えられる.そのため歩行や立位に影響を及ぼすことが考えられる.

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7.感覚検査

①表在感覚

ⅰ.触覚検査   

顔面:9/10(軽度鈍麻) 大腿:9/10(軽度鈍麻) 下腿:9/10(軽度鈍麻)   足底:9/10(軽度鈍麻)

ⅱ.痛覚検査

前腕:9/10(軽度鈍麻) 足部:9/10(軽度鈍麻)

※触覚・温痛覚ともに非麻痺側の感覚を10とした.また,異常のある部分のみを記載した.

<解釈>

 本人も感覚に対して微妙なところであると応えており,判定に対して鈍麻が軽度あると判断することは難しい.また,右上肢において肩から手指にかけてだるさと軽度のしびれが存在する.これらは,麻痺による感覚機能の低下,運動の随意性低下によるものと考えられる.

 

②深部感覚

ⅰ.他動運動感覚  

下肢:4/5

※他動運動感覚と運動覚を測定し,異常のあるもののみを記載.他動運動覚は5回のうちの正答数を記載.股・膝・足関節を合わせて行った.運動覚は手指にて行った.

<解釈>

 結果としては,4回であったがその1回に関してはわずかな過度屈曲であった.内容として,明らかに方向性が異なっていたのではないため,軽度の鈍麻があるとは言い難い.

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8.反射検査

[表在反射]

 

Rt.

Lt.

腹壁反射

[深部腱反射](図4)

 

Rt.

Lt.

上腕二頭筋

++

上腕三頭筋

++

腕橈骨筋

++

膝蓋腱

++

アキレス腱

±

±

[病的反射]                    

 

Rt.

Lt.

ホフマン

  +

バビンスキー

図4 腱反射の測定結果

※図の表記

消失   (-)増強法を用いても反応なし

減弱   (±)増強法を用いれば反応が得られるor収縮はあるが関節運動ない

正常   (+)刺激に対して適切な反応が得られる

やや亢進 (++)刺激に対して著明な関節運動が起きる

亢進   (+++)筋腹を叩いても反応が得られる(クローヌス)

著明な亢進(++++)筋腹を叩いても著明な関節運動が起きる

<解釈>

 錐体路障害の特徴としては痙性,腹壁反射消失,腱反射亢進,病的反射出現である.これらのことを踏まえ,錐体路障害が残存していることが考えられる.しかし,アキレス腱反射に関しては糖尿病による神経障害も考えられる.一方,表在感覚検査の足底の結果は軽度鈍麻であったが本人からも微妙なところであるとのことから,必ずしも糖尿病病変による神経障害と判別するのは難しいと考える.

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9.筋緊張検査

背臥位にて検査を行った.筋緊張の検査としてmodified Ashworth Scaleを使用した.他動的に各関節を左右上下に動かし,股関節屈伸の左右,右内外転,頸部屈伸・回旋に抵抗感を示し1と判定した.またROM検査にて膝関節屈曲の計測時に緊張が亢進し,痙性が出現した.このときハムストリングス,大腿四頭筋にも緊張を認めた.安静後再度計測にて緊張は消失した.このことから下肢に若干の緊張・痙性が認められ,立位や座位においても緊張の増大が考えられ,スムーズな関節運動を阻害し,ADL動作影響を及ぼしているものと考えられる.

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10.バランス・姿勢反応検査

 今回,座位,立位での平衡反応,頸・体幹の立ち直り,上下肢の保護伸展反応,そしてロンベルグ徴候について測定を行った.

座位:平衡反応においては左への外力において右の上下肢の動きが緩慢であり,左右差が認められた.頸・体幹の立ち直りについては左右の外力からも観察され左右差は見られなかった.後方の外力に関しては立ち直り反応が出現するものの,平衡反応において右上肢に反応は見られるものの右下肢は見られず,右上肢の保護伸展反応も確認されなかった.しかし,本人はバランスを崩し転倒する位置に関しては十分に理解できている.

 

立位:左右の外力に関しては平衡反応,および頸・体幹の立ち直り,上下肢の保護伸展反応が観察された.しかし,座位と同様に左への外力では右の上下肢の動きが緩慢であり,左右差が認められた.後方の外力においては平衡反応および立ち直り反応は観察されるが,座位と同様に左右差が認められる.また左下肢の背屈反応は観察されるものの,右においては爪先がわずかに伸展する程度あった.

 

ロンベルグ徴候:正常(開眼・閉眼ともに30秒保持可能)

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11.姿勢分析

ⅰ.背臥位(図5)

 視診と触診において右側の肩甲帯と骨盤が軽度後方回旋している.しかし,左側と比較すると大きな差異は生じていない.頭部は軽度左側に回旋している.肩甲帯が右側で挙上,左側下制しており右肘関節を軽度屈曲させ,手指は全指屈曲位である.足部に変形は見られない.

 このことから右の胸鎖乳突筋と右上肢の軽度の筋緊張亢進し,このような姿勢をとっているものと考えられる.

       

図5 背臥位の肢位

 

ⅱ.座位(図6)

 矢状面においては視診で骨盤が後傾しており,脊柱は腰椎後弯が増強し,体幹前傾位となっている.また,頭部も前方位に位置している.前額面においては体幹が左側に軽度側屈し,右側の肩甲帯挙上,左側は下制が起こっている.

 このことから腹筋群の活用がうまく行われていないことが示唆され,また重心の位置が左側に偏るため左側に体重が過度にかかっていることが考えられる.

図6 座位の肢位(左:矢状面 右:前額面)

 

ⅲ.立位(図7)

 視診と触診において矢状面から頭部は前方に位置し,骨盤は後傾している.右膝関節は軽度屈曲位.前額面からは右側骨盤の後方回旋が起こっている.右肘関節軽度屈曲位で肩甲骨は右挙上,左は下制となっている.また,体重が左側に偏っている.立位では右上下肢の緊張が亢進していることが考えられ,骨盤も後傾していることからも,腹筋群の活用がうまく行えていないことが示唆される.

図7 立位の肢位(矢状面)

 

12.動作分析

起き上がり(自立)(図8)

第1相 背臥位(開始姿位):右上肢を軽度屈曲.両下肢は股・膝関節伸展位.頭部は正中位.

第2相 背臥位~片肘側臥位:左股関節を膝軽度屈曲位から屈曲させながら持ち上げる.左上肢を右側に水平内転させ,右肘関節を屈曲させる.左下肢を内転させる.

第3相 肩肘側臥位~座位:右手掌を台に開き肘関節を伸展させ,体幹を起こす.左下肢をベッドから出し,内転させ,体幹を引き起こし座位となる.

図8 起き上がり動作

 

立ち上がり(監視)(図9)

第1相 座位(プラットホーム):上肢は大腿部に乗せ,骨盤後傾位.腰椎は後弯し,頭部は前方位.

第2相 座位~軽度膝屈曲位:左肩関節約45°屈曲位.体幹の屈曲動作起こす.屈曲動作時に方向としては左側に上肢を伸ばし,体重を左側に移動させる.その後,膝関節,股関節伸展により殿部の挙上.

第3相 軽度膝屈曲位~立位: 膝関節,股関節を伸展させ,体幹も伸展.上肢の肩関節屈曲は45°から伸展に伴い,減少し0°となる.

図9 立ち上がり動作

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13.歩行分析

<歩行環境>

①杖の使用

使用杖:T字杖

歩行パターン:交互二点一点支持歩行(前型) 

歩行レベル:腋窩軽介助

上肢の振り:右上肢は常に肘関節軽度屈曲位 

10m速度:18秒

右<麻痺側>

左<非麻痺側>

立脚相

遊脚相

①heel contact~mid-stance

踵から床面へと接地.骨盤は右に軽度下制,股関節屈曲,外旋,膝関節伸展.足部は軽度外旋.麻痺側肩甲帯は左側より挙上している.heel contactの後,股関節伸展が起こりmid-stanceへと移行するが,股関節屈伸0°の時に体幹の右側方傾斜が軽度見られる.また膝関節においては,伸展位で時に過伸展気味になる時がある.

②mid-stance~foot off

踵より離地が起こり,足関節底屈を伴わない.膝関節軽度屈曲位である.

股関節内外旋中間位,膝関節は軽度屈曲から始まる.

足関節底屈はさせtoe off.股関節と膝関節を屈曲増大させながら,mid-swingに移行.

その後,股関節屈曲,膝関節を伸展させながら,膝関節軽度屈曲位にてheel contact.

遊脚相

立脚相

 股関節伸展,膝関節軽度屈曲より始まる.その後,股関節は屈曲するものの,膝関節の屈曲は増大せず,足部の背屈を伴わないまま,mid-swing.その後,股関節屈曲増大し,足関節が軽度背屈する.

①heel contact~mid-stance

踵より接地.足関節の底屈が起こりfoot flat.

膝関節屈曲が増加し,mid-stance.その時に肩甲帯は左側下制,右側挙上である.重心は左側にあるものと考えられる.

②mid-stance~foot off

 股関節伸展と膝関節屈曲を増大させる.Toe offの手前では骨盤が左に傾斜しているため,重心は左側に残っているものと考えられる.

②杖なし

 歩行レベル:腋窩軽介助

 上肢の振り:左上肢に関してはスイングあり,右上肢は軽度肘関節屈曲位

10m速度:20秒

右<麻痺側>

左<非麻痺側>

立脚相

遊脚相

①heel contact~mid-stance

股関節軽度外転,外旋,屈曲にて踵より接地するものの軽度の底屈を伴わず体幹の屈曲による重心移動でfoot flat.骨盤は左側で軽度後方回旋,下制し,体幹は右側屈にてmid-stance.その時に後方によろめき転倒の可能性がある.

②mid-stance~foot off

 股関節を伸展させ,膝関節は軽度屈曲位を保ちながら,足関節を軽度底屈させながら,toe off.

股関節伸展・膝関節屈曲,足関節底屈を伴って,その後,股関節が屈曲しmid-swing.股関節が屈曲し外転・外旋を伴いながら,やや肩より外側にheel contact.

遊脚相

立脚相

股関節伸展から股関節を増大させ,軽度外転,外旋,膝関節軽度屈曲位でmid-swing.軽度のぶん回し歩行が認められる.その後,股関節を屈曲させ膝関節の屈曲を増大させないままheel contact.

①heel contact~mid-stance

 肩より外側にheel contactする.骨盤を左側に傾斜させ,体幹も側屈しながら,mid-stance.

②mid-stance~foot off

 時に左側外力による平衡反応で右上肢の動きが緩慢であることからふらつきが生じる.骨盤の左側が徐々に挙上し,体幹の左側屈も減少するがheel contact時にも残る.

杖なし歩行では,右側heel contactからmid-stanceへと移行する時,右後方への側屈伸展を観察することができる.また,1周期において左側と比較し,膝関節の屈伸が減少している.歩幅は右において減少している.常に体重が左側により位置している.杖ありでは,右側heel contactからmid-stanceへと移行する時,右後方への側屈伸展が減少している.右の歩幅も増加している.また,常に歩行時の動揺があり,保護伸展反応が右側にて低下であることからも杖ありなしにて,腋窩介助が必要であると考えられる.

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14.ADL評価(Barthel Index)       

85/100点(できるADLでの評価)

食事:10点 車椅子座位にて行う.食事はお粥である.把持部の太いスプーンやフォークの補助具を使用する.母指と示指,中指を使用し食事をする.肩甲骨を内転かつ挙上して,食べ物を口元に運ぶ.コップに関しては左手を使用する.10分ほどで完食している.

更衣:10点 靴は踵に紐が付いたものを使用し,右の靴は左下肢に右下肢を乗せ履く.靴下は両上肢を使用し,座位にて靴と同様にして行い自立である.服やズボンに関して自立している.

整容:5点 洗顔は左上肢のみ使用で行う.車椅子に座って行う.歯磨きは右手にブラシを持ち行う.うがいの時に車椅子からでは台が高すぎるため,時々こぼしてしまう.

入浴:5点 一部介助にて入浴まで行う.浴槽に入っているものの,深さがあり自力では困難なため介助を要する.左右の手すりにつかまり行う.椅子に座りながら自身で洗うことができる.今回は自身で洗体を行えているため5点と判断した.

排尿:10点 尿意にて行えている.

排便:10点 便意にて行えている.

移乗:15点 自立して車椅子からプラットホームベッド,その反対も行える.

トイレ:10点 車椅子にてトイレに向かい,その後入室.病棟内のトイレで自立.左手でズボンの着脱を行う.左右の手すりにつかまり着席.左手にてペーパーを取る.排尿の時にも座位で行う.

平地歩行:10点 腋窩介助歩行にT字杖を使用して,可能.

階段昇降:0点 歩行は可能であるものの,常に手すりにつかまった状態であり,体幹は前傾し,転倒の危険性が高い.常に介助を要する.今回は介助量が多いため0点と判断した.

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15.脳神経検査

舌咽・迷走神経(Ⅸ・Ⅹ):軟口蓋・口蓋に左右差あり(左側に軽度偏位),咽頭反射は軽度減弱.

舌下神経(ⅩⅡ):舌の萎縮軽度あり,舌は右側に軽度偏位,右側からの抵抗に対しに減弱.

※脳神経検査は舌咽,迷走,副,舌下神経を検査.異常のみを記載.

<解釈>

 当症例では延髄の内側にて病変が存在する.延髄に病変が存在するため,舌や咽頭に関して障害が認められるものの,明らかな差ではなく軽度であるため大きな病変となっていることは考えにくい.また同時に延髄に病変が存在する裏付けになったものと考える.

【リスク管理】

 今回の症例では脳梗塞であるが,既往として糖尿病や心筋梗塞を持っており,リスクファクターとなっていると考えられる.生化学検査結果からHbA1cや血糖が上昇していることからも糖尿病について考慮するべきと考える.糖尿病が動脈硬化を進行させ,動脈硬化よって血栓が発生し血流量を低下させ,梗塞を発生させた可能性も大いに考えられる.そのため,常にバイタルサインを把握しておく必要がある.動脈硬化や心ポンプ機能,筋ポンプによる血流不全も起こしていることも考えられ,起立性低血圧も考慮する必要がある.

 また薬による副作用として出血傾向やめまいが挙げられる.そのため,過度な負荷による血圧上昇や怪我による出血も考えられる.姿勢反応や筋力低下もあるため歩行や立位において転倒による二次的障害を起こすことも考えられるので十分に注意する必要がある.

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【問題点抽出】

<inpairment>

#1 腹筋群・右下肢の筋力低下と右大腿部筋萎縮

#2 立ち直り反応・保護伸展反応の軽度低下

#3 下肢の共同運動の出現と分離運動困難

#4 右側の筋緊張軽度亢進

#5 右上下肢のROM制限(特に股関節屈曲と三角筋後部の伸長痛)

♯6 脚長差(Rt. <Lt.)

♯7 しびれ

♯8 舌萎縮,軟口蓋の異常

♯9 生化学検査異常数値(糖質・HbA1c 他)

 

<disability>

#10 起き上がり動作の安定性低下(♯1・3・4)

#11 長時間の立位困難(♯1・2・4・5)

#12 歩行能力低下(長時間は不可能)(♯1~4・6)

#13 立ち上がり動作に監視を要する(♯1・3・4)

♯14 構音障害(♯8)

 

<handicap>

#15 妻への介助量の増加(♯10~13)

#16 生活環境の狭小化(♯11)

♯17 新たなバリアフリーへの負担(♯10・12・13)

♯18 コミュニケーションの構築困難(♯14)

 

【目標設定】

短期目標(2週間後):両股関節可動域改善(股関節屈曲120°まで),歩行車での屋内歩行自立,トイレ動作や整容においての立位獲得

長期目標(1ヶ月後):杖を使用しての屋内歩行自立,階段昇降の自立,体幹下肢筋力の改善(股・膝伸展MMT4まで)

 

【治療プログラム】

①関節可動域練習(股関節を中心に):股関節周囲筋のストレッチ

②重錘を使用しての下肢筋力増強練習:股関節伸展・外転,膝関節伸展 など

③歩行・階段昇降練習    

④床からの立ち上がり練習(台などを用いて)

⑤バランスボールなどでのバランス練習(腹筋群・平衡反応の促進)

 

【考察】

 今回の症例では延髄内側での脳梗塞である.延髄内側梗塞での症状としては病側の舌萎縮・麻痺,反対側片麻痺(顔面を含まない)及び深部感覚障害である1).またラクナ梗塞で広範囲部位への障害はMRIの画像やDr.情報からないものと考えられる.延髄には舌咽,迷走,副,舌下神経の核が存在し,構音障害も呈する可能性がありコミュニケーションにも多少の支障が出てくるものと考えられる.また,延髄内側には内側毛帯が存在し,深部感覚や皮膚感覚の神経伝導路となっている.一方,腹側には錐体路が存在するため,そこまで病変がMRI画像所見でも該当するため,運動障害を呈することが予測される.これらを踏まえた上で考察する必要があるものと考える.

 まず脳卒中の予後に関して述べる.二木2)らは発症時のB.R.Sは予後予測する上で必要な要素であり,発症時にStageⅣ以上であるならば麻痺は年齢を問わず,回復することを報告している.また,内田3)らはB.R.Sのことを踏まえ発症後3ヶ月は下肢の麻痺が最も回復し,痴呆や理解力低下がない限り,何らかの形で歩行は可能となることを報告している.一方で福井ら4)は微細な梗塞の回復は良好であるが,1か月で回復が固定されてしまうことを報告している.しかし発症から1か月が経過しているが,リハ開始時にB.R.S上肢Ⅴ,下肢Ⅵ,手指Ⅳであり,二木らのような報告もあるので十分に麻痺の程度は改善されると考えられる.

 まず今回の症例に対しての問題点として腹筋群・右下肢の筋力低下と右大腿部筋萎縮,立ち直り反応・保護伸展反応の軽度低下,下肢の共同運動の出現と分離運動困難,右側の筋緊張軽度亢進,右上下肢のROM制限,脚長差といったものが考えられる.これらは歩行困難などADL動作に障害をもたらすばかりか今までの活動範囲の狭小化によるQOL低下や妻への介助量の増大と負の要素が増大してしまう.また,〇〇月下旬より退院し,通院でのリハということを念頭に置かなくてはならない.

以上のような問題点を考慮した上で短期目標に両股関節可動域改善,歩行車での屋内歩行自立,トイレ動作や整容においての立位獲得を目標に設定した理由について述べる.まず可動域からであるが,患者様の自宅では就寝時ベッドではなく床に布団を敷く形式となっている.その時に必要になってくるのが股関節の可動域となってくる.日常生活において股関節の可動域は必須である.また床の物を拾う時にも股関節の動きは重要となってくる.中村5)らは日常の多くの動作において,股関節は少なくとも屈曲120°必要であることを報告している.今回のケースでもADL自立に主眼を置いた場合,股関節の可動域は重要な要素であると考える.特に今回の症例において自宅は敷布団であり,床からの立ち上がりを要する.そのためには股関節の可動域も必要となってくる.その他にも浴槽での入浴では股関節屈曲の動作も含まれてくる.こういうことからも可動域制限によって日常生活に支障をきたし,在宅復帰に対しても障害となるためアプローチを行うべきと考える.

次に歩行車での屋内歩行自立,トイレ動作や整容においての立位獲得について述べていく.機能回復については,はじめにも述べたが発症後3ヶ月は下肢の麻痺が最も回復する.現在では発症後1ヶ月であるため,今後3ヶ月までさらなる麻痺の回復による機能改善を望むことが可能であると考える.長期目標と並行してしまうが,徐々に歩行が獲得されれば,監視下のもと車いすでの生活を少しでも軽減させるべきと考える.これは,退院の時にいきなり車いす生活からの脱却は非常に危険を伴う.そのため,徐々に麻痺の程度や機能の回復段階にも影響してくるが,今後退院のことを考慮し行っていく必要があると考える.

続いて長期目標について述べていく.はじめに歩行について筋力など他の要因を関連付けて述べる.まず筋力は人が活動する時の力源となっている.それだけに筋力に低下が生じると動作障害やADL障害に直結するものと考えることができる.その筋力低下の一つの問題点として伴ってくるのが歩行動作における影響が考えられる.歩行動作に影響を及ぼしているものに右側大殿筋と膝関節の伸展筋ならびに腹筋群といった筋力だけではなく,立ち直り反応と保護伸展反応の低下,脚長差の問題も絡んでくると考えられる.杖がない状態での歩行では,右側heel contactからmid-stanceへと移行する時に股関節の伸展を必要とする.しかし,大殿筋の筋力が3であるため体幹を伸展させることで股関節の伸展の代償運動を生じさせているものと考えられる.しかし,腹筋群と膝関節伸筋である大腿四頭筋の筋力低下から代償動作に抗しきれず,後方に倒れるものと考えられる.その時に立ち直り反応は左上下肢で生じるものの,反応は軽度であり,保護伸展反応も生じないことから転倒による二次的障害が発生する可能性がある.一方で,杖を使用することで重心が前方に行き,後方への代償運動も抑制され,杖の支持により歩行に安定性が向上するため杖での歩行が望ましいと考える.また,歩行以外にも筋力低下が原因となっているものとして起き上がり動作も考えられる.これは腹筋群の低下により下肢を過度に挙上し,その勢いで起き上がっている.もちろん,体軸内回旋を用いて側臥位から上肢を伸展させて行う方法もあり,別の方法を探る必要があると考える.座位姿勢や立位姿勢にも腹筋群の低下があり,骨盤が後傾のため張力が減少し不良姿勢の誘発を招いている.本人も認識しているが,最も安楽姿勢のため常に取りがちな姿位となるので,姿勢の矯正も含め,腹筋群の強化も必要であると考える.もちろん筋力だけの問題ではない.歩行では運動の協調性も障害され,共同運動の出現により単一の関節を意図した通りに動かすことができないため異常歩行を出現させていることも考えられる.また筋緊張も亢進しているのも一つの原因でもあると考えられる.そのためより,共同運動より逸脱した分離運動パターンを促進させ,stageを高めていく必要があるものと考えるが,stageは脳の回復に依存するためセラピストが直接アプローチすることは難しい.しかし予後予測を考慮し,次の段階へのアプローチを常に考えておく必要があるものと考える.

長期目標は退院を見据えての目標となってくる.現在病棟内では車いすでの生活が主となっているが今後の麻痺の回復が大いに考えられることからも短期目標と同様に筋力の増強と車椅子生活の軽減を図っていく必要があるものと考えられる.また自宅の玄関に一つ段差があることからも筋力やバランス感覚や姿勢反応が問題となってくるのでアプローチを考える必要がある.自宅のバリアフリー化が進んでいるとのことであったが必ずしも本人の障害にマッチしたものとは限らない.お風呂場に椅子などを設置し,安定した座位で入浴ができれば介助量も軽減することができる.機能回復としては十分な回復が望めるため,最低限である自宅(屋内)の歩行や動作に関して,自宅の状況を把握した上で必要な立ち上がりやADL動作を本人や家族とともに指導していく必要があると考える.

最後に現在リハ室と病棟での生活について更衣動作にギャップが生じている.この点はできるADLとしているADLとの関連になってくる.Ns.との綿密な連絡をとり,そのギャップを埋めていく必要があると考える.

 

【終わりに】

今回,初めての臨床の現場であり評価手順や技術,知識等に関してまだまだ未熟なところが多々あり痛切さを感じている.このような経験からさらに上のレベルに近づけるように努力していきたいと考える.最後になりましたが,今回担当させていただいた患者様,ご家族,またご多忙の中ご指導して下さったスタッフの先生方に大変深く感謝申し上げます.

 

【参考・引用文献】

1)平山恵造 他:臨床神経内科学 第5版.南山堂,2006,3,pp247

2)二木 立 他:脳卒中の早期リハビリテーション 第2版.医学書院,1992,7,pp33-73

3)内田成男 他:脳卒中における機能予測の試み.理学療法,20(2),pp209-215,2003

4)福井国彦 他:脳卒中最前線 第3版.医歯薬出版,2003,5,pp72-75

5)中村隆一 他:臨床運動学 第3版.医歯薬出版,2002,5,pp92-93

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-脳血管疾患, 書き方, 病院, レポート・レジュメ