脳血管疾患 書き方 整形疾患 病院 レポート・レジュメ

【大腿骨骨幹部骨折+脳幹梗塞】レポート・レジュメの作成例【実習】

2022年1月1日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「大腿骨骨幹部骨折+脳幹梗塞」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

トコル
レポート・レジュメの書き方を詳しく知りたい!という方は、この記事(レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】)も参考にしよう!
書き方
レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】
レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】

本サイトは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価シートの無料ダウンロード、レポート・レジュメの書き方や作成例を中心にご紹介しています。   今回は、「レポート・レジュメ ...

続きを見る

 

今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 大腿骨骨幹部骨折を呈する患者

  • 既往歴に脳幹梗塞あり

あわせて読む
整形疾患
【実習】整形疾患の評価ポイント!【無料評価シート多数】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「整形疾患」の評価です。 今回は、評価ポイントの解説に加えて、「整形疾患」の評価に最適な評価シートを ...

続きを見る

あわせて読む
脳神経検査
【実習】脳神経検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「脳神経検査」です。 脳神経検査は、脳神経障害の程度を知るなど、臨床上とても大事な評価項目になります ...

続きを見る

 

「大腿骨骨幹部骨折+脳幹梗塞」の患者のレポート・レジュメ作成例

≪Ⅰ.基本情報≫

【1.症例の紹介】

患者氏名:

年齢:70歳代

その他:体重kg

利き手:右手

 

【2.診断名】

右大腿骨骨幹部骨折、右大腿骨転子部骨折、脳梗塞後遺症(左片麻痺)、骨粗鬆症、狭心症

 

【3.障害名】

左不全片麻痺

 

【4.合併症】

変形性頚椎症、閉塞性動脈硬化症に伴う末梢循環障害、腰部脊柱管狭窄症、末梢神経障害、便秘症、うつ病、慢性胃炎

 

【5.現病歴および経過】

〇〇年〇〇月〇〇日、A病院にて右大腿骨転子部骨折手術を行い、〇〇月○日に退院となったが、再転倒され、右大腿骨骨幹部骨折のため、〇〇年〇〇月〇〇日に再入院。〇〇年〇〇月〇〇日手術施行。〇〇年〇〇月〇〇日リハビリ目的にてB病院に転院される。理学療法の経過として、〇〇年〇〇月〇〇日より起立訓練(免荷)、筋力増強訓練、バランス訓練を開始される。

 

【6.既往歴】

〇〇年〇〇月〇〇日 脳幹梗塞(左不全片麻痺)発症

〇〇年〇〇月〇〇日 腰椎椎間板ヘルニア手術

 

【7.主訴】

ふらつきがある。うまく歩けない。

 

【8.Need】

歩行器や杖なしで、早く歩けるようになりたい。

 

【9.hope】

早く修道院に戻りたい。早く仕事に復帰したい。

 

【10.その他】

障害老人の日常生活自立度:A2

あわせて読む
一般情報-1
【実習】「一般情報」のポイントを解説!【書式無料ダウンロード】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「一般情報」です。 一般情報とは、「患者名」「疾患名」など、患者の基本的な情報を指します。 レジュメ ...

続きを見る

 

≪Ⅱ.個人的・社会背景≫

【1.職歴】

 

【2.趣味】

読書・音楽鑑賞(病室で聖書などを読んだり、音楽を聴いたりしている。)

 

【3.病前の1日の生活習慣】

修道院で、パソコンなどの事務の仕事を行なっていた。

 

【4.家屋構造】

修道院に住んでおり、修道院は4階建てで、寝食する所は3階である。仕事をする事務所は1階である。エレベーターは無く、スロープ付きの階段が設置してある。

 

≪Ⅲ.医学的情報≫

【1.他部門からの情報】

主治医:本症例の大腿骨骨幹部骨折の分類では、横骨折に近い骨折である。転位の有無は不明。禁忌事項では、転倒させない、強い痛みを伴わせないことである。術側下肢の全荷重は可能。鎮静剤などの服用で意識が低下する事があるので、注意しなければならない。

担当看護師:ADLはほぼ自立しているとの事。入浴では、ケアスタッフの方が見守りと少し背中を洗ってあげる程度の事をしている。リスク管理では、転倒をさせない、急な動きをしない、ゆっくり歩く、危ないときなどは声をかけるなどの対応をしている。1日の排尿回数は8~10回、排便回数は1回である。

MSW:未婚のため、家族はいない。家族代わりが修道院に一緒に住んでいるシスターである。退院後は、修道院は他県にあるため、通院は不可能。そのため、紹介状を書いてもらうなどの処置をとる。また、対象者は要介護認定2であるため、退院後は特別養護老人ホーム入所も検討している。

 

【2.手術所見】

〇〇年〇〇月〇〇日、右大腿骨外側骨折(転子部骨折)手術(横止め螺子髄内釘)を行い、〇〇年〇〇月〇〇日に退院となったが、再転倒され、右大腿骨骨幹部骨折のため、〇〇年〇〇月〇〇日に再入院。〇〇年〇〇月〇〇日手術施行(髄内釘の抜釘+新たな髄内釘挿入)。

 

【3.X線所見】

 

【4.服用薬剤】

①アモバン錠    

作用:鎮静・睡眠作用

適応:常習性不眠症

副作用:眠気、口の渇き、ふらつき、頭痛、倦怠感、吐き気、めまい

②ユベラニコチネート

作用:末梢血管の血行をよくし、補強する、血液の凝固性を弱める作用

適応:末梢の血行障害、動脈硬化症、高脂血症

副作用:食欲不振、下痢、便秘、発疹

③メチコバール

作用:障害を受けた末梢神経の修復を促進させる

適応:末梢神経障害

副作用:発疹などの過敏症状、食欲不振、吐き気、下痢

④プロレナール

作用:血管を拡張して血流量を増す、血液が固まるのを抑える

適応:閉塞性血栓性血管炎

副作用:下痢、むかつき、顔のほてり、頭痛、かゆみ

⑤トワーズレン

作用:炎症を抑え、粘膜にできた潰瘍の治癒を促進する

適応:胃炎、胃潰瘍

副作用:下痢、便秘、お腹が張るなどの軽い消化器症状

⑥パキシル錠

作用:セロトニンの取り込みを阻害して、うつの症状やパニック障害への改善効果

適応:うつ病

副作用:吐き気、眠気、口の渇き、めまい

⑦プレタール錠

作用:血小板が集まって固まるのを抑え、血管を拡張して血流量を増やす 

適応:動脈の閉塞に伴うさまざまな症状

副作用:頭痛、むかつき、動悸、軟便

⑧カルフィーナ錠

作用:腸管からのカルシウム吸収を高めて、カルシウム不足による骨の病気の治療に効果を示す

適応:くる病、骨軟化症、骨粗鬆症

副作用:高Ca血症、食欲不振、吐き気などの胃腸症状、不眠、めまい、軽度の血圧上昇

⑨ガスポートD錠

作用:胃酸分泌抑制、消化酵素ペプシンの分泌抑制

適応:胃・十二指腸潰瘍、胃炎

副作用:発疹、じんま疹、血液障害などの過敏症状や便秘、口やのどの渇き

 

≪Ⅳ.機能診断学的評価・理学的所見・理学療法評価≫

【1.全身状態】

バイタルサイン:血圧:130/74㎜Hg、脈拍:72回/分、呼吸数:17回/分、体温:36.5℃

視力:眼鏡

聴力:普通

あわせて読む
バイタルサイン
【実習】バイタルサインの記載に必須!【記録用紙無料ダウンロード】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「バイタルサイン」です。 患者のリスク管理をするため、バイタルサインの測定は必須項目です。 正常値か ...

続きを見る

 

【2.全体像】

訓練室には歩行器で来室。体型は小柄である。挨拶に対して笑顔で返答し表情が明るい。検査・測定中に集中力がときおり散漫になり、よそ見をしたりしている時などが見受けられ、途中で別の話題にすぐ入ったりする時がある。リハビリに対するモチベーションは高い。

コミュニケーション:良好。こちらからの問いかけにもはっきり答えられ、明るく自分から話されることが多い。

精神状態:安定している。

性格:穏やかで温和

意欲:訓練・検査に対しては、意欲的で協力的である。自己訓練も毎日よくされている。

あわせて読む
問診
【実習】患者への「問診」の方法を解説!【書式無料ダウンロード】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「問診」です。 問診は、患者に対して「どのようになりたいと思っているか」「いまの病気をどのように思っ ...

続きを見る

 

【3.精神・認知機能】

ⅰ)HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)

得点:27/30

減点項目:今日の年月日(今日の日にち〔16日〕に対して、18日と答えた。)

野菜の名前(白菜、キュウリ、トマト、春菊、キャベツ、ごぼう、たけのこ、レンコン 8つ)

あわせて読む
認知機能
【実習】認知機能の評価ポイント!HDS-R/MMSE【評価用紙】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「認知機能」の評価です。 認知機能は、今後の自立度に直結するため、臨床上欠かせない評価になります。 ...

続きを見る

 

ⅱ)高次脳機能検査

半側空間失認

①線分末消試験:すべての線分をチェックできる

②線分二等分テスト:中央に印をつける事ができる

③模写試験:線に乱れがあるが、ほぼ正確に模写ができる

《Assessment》

以上の検査を施行した結果、異常所見はみられなかった。しかし、対象者は歩行中に右の方に歩いていったり、坐位・立位の安静姿勢時に重心線が右に傾いていたり、顔面や体幹は右の方へ向いたり、また、集中力に欠けていたりするなど、日常生活の中で観察することができ、空間失認の障害・注意力の障害が考えられる。

あわせて読む
高次脳機能障害
【実習】高次脳機能障害の評価ポイント!【無料評価シート多数】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「高次脳機能障害」です。 高次脳機能障害は、歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大事な評 ...

続きを見る

 

【4.運動機能評価】

ⅰ)形態測定

①四肢長

  

右(cm)

左(cm)

下肢長

SMD

 72.5

 74.0

TMD

 64.5

 65.0

大腿長

 33.0

 33.0

下腿長

 32.5

 32.5

②四肢周径

  

右(cm)

左(cm)

 

膝蓋骨上縁より0cm

 31.0

 32.0

 

5cm

 30.0

 31.5

大腿周径

10cm

 32.0

 31.5

 

15cm

 33.0

 34.0

 

20cm

 34.0

 35.5

下腿周径

最大

 27.5

 27.0

 

最小

 19.0

 19.0

 《Assessment》

 四肢長では、下肢長に関しては右下肢の方が短くなっている。これは、大腿骨転子部骨折・大腿骨骨幹部骨折に対する手術の影響で下肢長が短くなったためと考えられる。四肢周径では、大体周径に関しては右下肢が全体的に小さく、大腿全体の筋群の萎縮が考えられ、術後の安静による廃用的なものと考えられる。しかし、すべての部位に左右差が見られるわけではないので、右下肢の大腿全体の筋群すべてが萎縮しているのではなく、筋萎縮は局在的なものであると考えられる。

あわせて読む
形態測定
【実習】形態測定の評価ポイント!【カンペ付き無料ダウンロード】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「形態測定」です。 形態測定は、骨折の転移や筋肉の発達を把握できるなど、臨床上欠かせない評価になりま ...

続きを見る

 

ⅱ)関節可動域検査(他動的)
  

股関節

屈曲

105°

110°

伸展

10°

10°

外転

15°

25°

内転

15°

15°

外旋

20°

20°

内旋

20°

20°

SLR

45°P

60°

膝関節

屈曲

135°

140°

伸展

足関節

底屈

45°

45°

背屈

10°

トーマステスト右(-)  左(-)

《assessment》

 膝関節の屈曲・左足関節の背屈の可動域制限がある。膝関節の屈曲制限のため、手術後は正座が出来なくなっている。左足関節背屈の制限因子は、脳幹梗塞後遺症による痙性と考えられる。トーマステストは陰性で股関節の屈曲拘縮は認められない。

あわせて読む
関節可動域検査(ROM-Test)
【実習】関節可動域検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「関節可動域検査(ROM-Test)」です。 関節可動域検査(ROM-Test)は、筋肉の柔軟性を確 ...

続きを見る

 

ⅲ)MMT
  

体幹

屈筋

2+

伸筋

回旋筋

股関節

屈筋

3+

3+

伸筋

外転筋

3+

内転筋

3+

外旋筋

4-

内旋筋

4-

膝関節

屈筋

3+

伸筋

4+

足関節

底屈筋

背屈筋

握力:右 13.1㎏  左11.0㎏

《Assessment》

 体幹筋の筋力低下が著明であるが、股関節周囲の筋力低下もみられる。体幹筋の筋力低下は、坐位・立位時の体幹前傾の原因と考えられる。右下肢の筋力が左下肢に比べて低下しており、骨折による下肢筋力の低下、術後の安静による廃用的なものと考えられる。また、左上肢の筋力がやや低下し、握力の低下もみられ、歩行器の把持能力や上肢の支持性がやや不十分である。左上肢の筋力低下は、脳幹梗塞後遺症の麻痺によるものと考えられる。

あわせて読む
筋力検査
【実習】筋力検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「筋力検査」です。 筋力検査は、歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になり ...

続きを見る

 

ⅳ)腱反射・病的反射

深部腱反射

病的反射

 

 

胸筋反射

++

ホフマン

上腕二頭筋反射

++

トレムナー

上腕三頭筋反射

++

ワルデンベルグ

腕橈骨筋反射

バビンスキー

膝蓋腱反射

++

足クローヌス

アキレス腱反射

++

 

《Assessment》

深部腱反射は、左側が右側に比べわずかに亢進しており、脳幹梗塞による錐体路障害の徴候がみられる。しかし、錐体路障害時にみられるバビンスキー反射、ホフマン反射などはみられなかったが、足クローヌスは出現した。

あわせて読む
反射検査-1
【実習】反射検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シートあり】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「反射検査」です。 反射検査は、錐体路障害・錐体外路障害を見分けるなど、臨床上とても大事な評価項目に ...

続きを見る

 

ⅴ)疼痛検査

痛みの部位:右膝の上部の手術の縫合部

痛みの種類:ピリッとする痛み

痛みの発生する動作:安静時

痛みの発生期間:断続的

痛みの強さ:VAS 5/10

あわせて読む
疼痛評価
【実習】疼痛(痛み)の評価ポイント!【図付き評価シートダウンロード可】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「疼痛の評価」です。 疼痛は、歩行・ADLの自立に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります ...

続きを見る

 

ⅵ)筋緊張検査

安静時筋緊張(被動性検査)

①右上肢:筋緊張の増加はみられなかった。

②左上肢:上腕二頭筋の筋緊張は軽度増加し、肘伸展時、可動域の終わりにわずかの抵抗感を呈する。回外筋にも軽度の筋緊張がみられる。

③右下肢:筋緊張の増加はみられなかった。

④左下肢:ハムストリングスの筋緊張は軽度増加し、股関節・膝関節伸展時、可動域の終わりにわずかの抵抗感を呈する。足関節背屈時に下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)の筋緊張が増加する。

あわせて読む
筋緊張検査
【実習】筋緊張検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シートあり】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「筋緊張検査」です。 筋緊張検査は、中枢神経系の障害程度を把握するなど、臨床上とても大事な評価項目に ...

続きを見る

 

ⅶ)感覚検査
①表在感覚

(非麻痺側を正常(10)とした時に、麻痺側の同じ部位の程度を対象者に数字で答えてもらう。)

触覚

麻痺側

痛覚

麻痺側

上腕

10/10

上腕

10/10

前腕

10/10

前腕

9/10

手部

9/10

手部

10/10

大腿

10/10

大腿

10/10

下腿

10/10

下腿

10/10

足部

10/10

足部

9/10

②深部感覚

運動覚:手指・足指において、他動的に屈曲・伸展方向に動かし対象者に「上・下」どちらに動いたのか言ってもらう。

位置覚:麻痺側上肢・下肢を動かした後に、それと同じ肢位を非麻痺側で模倣させる。

 

 

手指Ⅰ

5/5

5/5

足指Ⅰ

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

5/5

U/E

5/5

5/5

L/E

5/5

4/5

《Assessment》

麻痺側に軽度の感覚鈍麻がみられる。脳幹梗塞の後遺症によるものと考えられる。

深部感覚には、問題はみられなかった。

あわせて読む
感覚検査
【実習】感覚検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シートあり】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「感覚検査」です。 感覚検査は、中枢神経系の障害程度を把握、患者が生活する上でのリスク管理など、臨床 ...

続きを見る

 

ⅷ)Brunnstrom stage test

上肢:StageⅥ(StageⅤまでの課題すべて可能で非麻痺側と同程度にスムーズに動かせることが可能)

手指:StageⅥ(StageⅤまでの課題すべてと個別の手指運動が可能)

下肢:StageⅥ(坐位:下腿内外旋が足の内・外がえしを伴って可能)(立位:股外転が可能)

《Assessment》

〇〇年〇〇月〇〇日に脳幹梗塞を発症しているが、後遺症である左片麻痺は軽度であるが、下肢の随意性低下がみられる。

あわせて読む
片麻痺患者に対する評価
【実習】片麻痺の患者の評価ポイント!【カンペ付き評価シートあり】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「片麻痺の患者に対する評価(=片麻痺機能検査)」です。 脳梗塞や脳出血など、脳の障害を負うと片麻痺が ...

続きを見る

 

ⅸ)12脳神経検査

①視神経(Ⅱ):視力、視野を見る⇒視力は正常(右目の視力が左に比べて小さい)。対座試験において視野も正常である。

②動眼(Ⅲ)・滑車(Ⅳ)・外転(Ⅵ)神経:眼瞼下垂、眼振の有無、指を上下左右に動かし眼球運動を見る。⇒上眼瞼の下端が瞳孔にかかっている眼瞼下垂が観察される。眼振・斜視なし、瞳孔左右対称、眼球運動異常なし

③顔面神経(Ⅶ):閉眼、笑顔を作った際、顔面の麻痺の程度を見る。⇒眼輪筋・口輪筋ともに両側対称的に収縮するが、右側の口角が左側に比べて少し下がっている。

④聴神経(Ⅷ):

リンネ試験:正常Rinne(+) 

ウェーバー試験:正常

⑤舌咽(Ⅸ)・迷走神経(Ⅹ):口を開けさせ「アーアー」と言わせる⇒軟口蓋・口蓋垂の偏奇なし。

⑥副神経(Ⅺ):僧帽筋・胸鎖乳突筋の収縮を見る⇒収縮あり

⑦舌下神経(Ⅻ):舌を出してもらい偏奇を見る。⇒舌の偏奇なし

《Assessment》

 眼瞼下垂は動眼(Ⅲ)・滑車(Ⅳ)・外転(Ⅵ)神経の障害で起こっているものと考えられる。右側の口角が少し垂れているのは、中枢性の顔面神経麻痺が考えられる。これは、対象者が脳幹梗塞を発症しており、それによる脳幹障害が反対側の片麻痺と同側の脳神経麻痺を起こす交叉性片麻痺が原因と考える。

あわせて読む
脳神経検査
【実習】脳神経検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「脳神経検査」です。 脳神経検査は、脳神経障害の程度を知るなど、臨床上とても大事な評価項目になります ...

続きを見る

 

ⅹ)姿勢分析・バランステスト

①坐位

〔静的バランス〕

両足・膝は閉じており、体幹は軽度右側屈・回旋し、右の肩が少し下がっている。頚部軽度後屈・軽度右回旋位、体幹は前屈し、骨盤は後傾位になっているため脊柱は後彎しており、仙骨座りになっている。矢状面上で両肩は股関節上にはなく、後方にあり右肩が若干下がっており、頭部は軽度右回旋し、視線は右前下方であり、右の眼瞼が下がっている。

〔動的バランス〕

左右の外乱刺激に対して、頭部・体幹の立ち直り反応は出現しないが、外乱が強くなると、側方保護伸展反応が出現する。その際、上肢は肩関節の屈曲・外転、肘関節伸展、手指の伸展・外転で倒れるのを防ぐ。恐怖心から筋緊張が高まっている。

 

②立位

〔静的バランス〕

頚部軽度後屈・右回旋位で右肩甲帯が後退し、体幹は前屈位・脊柱は後彎して円背を示し、骨盤は軽度後傾。体幹は軽度右回旋し、右にやや傾いている。股関節・膝関節は軽度屈曲。視線は下方を向いており、体幹のふらつきがある。片脚立位は両下肢とも立位保持不可能であった。

・Romberg試験

立位保持:1分(開眼)可能  1分(閉眼)可能

→視覚による影響をみるために開眼と閉眼の2条件において観察したが、ふらつきの大きさはどちらも変わらなかった。

〔動的バランス〕

左右の外乱刺激に対して、頭部・体幹の立ち直り反応は出現しないが、外乱が強くなると平衡反応が出現する。その際、重心を移動させた側の股関節の内転と対側の外転が起こり、そして、重心を移動させた側と対側の下肢のステップ(ステッピング反応)が出現し、頭部と体幹を立ち直らせる。外乱が強くなると、すぐにバランスを崩し、バランス保持能力が低い。

あわせて読む
バランス
【実習】バランスの評価ポイント!【評価シートダウンロード可】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「バランス」です。 バランスは、転倒の予防に必須で歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大 ...

続きを見る

 

【5.基本的動作能力の分析】

寝返り・起き上がり・立ち上がり自立。

1.寝返り(背臥位から側臥位へ)

①非麻痺側への寝返り:下肢先行型。左膝関節、右膝関節の順に屈曲させて、股関節を屈曲する。下肢、体幹、上肢・肩甲帯の順で寝返りを行う。その際、腹直筋・腹斜筋の筋力が低下しているため、体幹のコントロールが不十分なため、体幹を回旋させようと努力して寝返る。

②麻痺側への寝返り:下肢先行型。右下肢を屈曲・内旋、左下肢を屈曲・外旋し、右上肢を屈曲・内転・内旋し、左側にもっていき、床を両足底面で押して大きな回転モーメントを発生させるために非麻痺側の上下肢、肩や骨盤に回旋が起こり、下肢、体幹、上肢、肩甲帯の順で寝返りを行う。

 

2.起きあがり

①背臥位から長坐位への起きあがり:両股・膝関節を屈曲して膝立ち位になり、両上肢のon elbowsで指示し、体幹を起き上がらせながら、両肘関節伸展し、手掌で床面を強く押しながら体幹をゆっくり起こしていき、両股・膝関節を伸展して長坐位となる。手を突かないで腹筋の力だけで起き上がることは出来ない。

②背臥位から端坐位への起き上がり

 下肢先行型で非麻痺側に寝返って、右上肢のon elbowで体を起こしていき、on elbowから手掌で支持し、同時に右下肢を外転、左下肢を内転しながら両下肢を台から下ろしていき、体幹を正中位に向けて右手で床を強く押しながら起き上がる。

 

3.立ち上がり

体幹前屈・股関節屈曲しながら、両大腿の上に手をついて、股関節を過度に屈曲しながら、前方に体重移動し、ゆっくりと立ち上がる。しかし、膝の前方移動が少ない。時々、重心の前方移動が不十分でバランスを崩して失敗する時が見られる。

《assessment》

 寝返りは、非麻痺側への寝返りの方が簡単にできていた。本人に聞いたところ、病室でいつも寝返りは非麻痺側に行なっているので、やり易いとの事だった。立ち上がりの際に時々失敗が見られるのは、足部を越えて両肩を前方に移動させることができない、また膝を前方に移動することができないので、重心線が足底から離れているために起こってしまう。

あわせて読む
動作分析
【実習】動作分析のポイント!【無料評価シートダウンロード可】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「動作分析」です。 動作分析は、患者の自立を目指すため、問題点を把握するためなど、臨床上とても大事な ...

続きを見る

 

【6.歩行分析】

歩行:歩行器を用いて自立

歩行場所:リハビリ室

履物:裸足

歩行パターン:前型

10m歩行テスト:

時間:20秒  歩数:31歩  歩行速度:50㎝/s    歩行率:1.55steps/min   歩幅:32.5㎝

 頚部はやや後屈・肩甲帯は右側が後退し、体幹前屈位で脊柱は後彎し、骨盤は後傾している。歩行全般で、骨盤の左右移動が大きくふらつきが見られる。膝折れはほとんど起こらない。股関節は常に屈曲位のままである。視線は前下方を向いている。非麻痺側から麻痺側下肢を出す時の歩幅が小さく、麻痺側の足関節の底屈、背屈があまりみられない。非麻痺側の遊脚期が短い。

 

【麻痺側(左)立脚期】

heel contact:ときおりH.Cが起こらず、前足部から入り足指を床に引っかけるときが見られる。歩幅、歩隔が狭い。

foot flat:足底接地から起こるときがみられる。膝関節の過伸展(反張膝)は見られない。

mid stance:膝折れ(-)

heel off:背屈があまり見られない。

toe off:股関節・膝関節を軽度屈曲、足関節を底屈し、踵を床から離す。

 

【麻痺側(左)遊脚期】

体幹前屈位で、股関節の伸展が不十分なため振り出しが少なく、膝関節の屈曲と足関節の背屈も不十分で、時につま先を引っかけることがある。

《assessment》

 股関節の伸展が不十分なのは、股関節伸筋である大殿筋の筋力低下によるものと考えられる。踵離地時には、足関節の背屈制限による前足部への体重移動が不十分なため、蹴り出しが少ない。踵離地から遊脚中期にかけて膝関節の屈曲が不十分なのは、大腿四頭筋とハムストリングスの相反性抑制機構の低下によるものと考えられる。また、歩行時にふらつきが見られるのは、脳幹梗塞の後遺症によるものと考えられる。

あわせて読む
歩行分析
【実習】歩行分析のポイント!【図付き評価シートダウンロード可】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「歩行分析」です。 歩行分析は、歩行自立を目指すためなど、特に理学療法の業界ではとても大事な評価項目 ...

続きを見る

 

【7.ADL評価】

FIM 118/126点

項目

≪セルフケア≫

A.食事

B.整容

C.入浴

D.更衣(上半身)

E.更衣(下半身)

F.トイレ動作

≪排泄管理≫

G.排尿コントロール

H.排便コントロール

≪移乗≫

I.ベッド、椅子、車椅子

J.トイレ

K.浴槽、シャワー

≪移動≫

L.歩行、車椅子

M.階段

≪コミュニケーション≫

N.理解

O.表出

≪社会的認知≫

P.社会的交流

Q.問題解決

R.記憶

FIM合計

118

*A 動作は少し遅いが、自立している。食事中の会話も見られる。

*C 対象者が清拭をする際、安全性の問題で監視が必要である

*D・E 通常より時間がかかる 

*K 介助者が監視している

*L 歩行器で自立している

*M 手すりを必要としているが自立している。

《assessment》

 ADL面ではほぼ自立している。在宅復帰する場合には、対象者の部屋は3階にあり、事務所のある1階まではエレベーターはなく、階段を使用しなければならないので、階段昇降の自立は必要不可欠である。

あわせて読む
ADL評価
【実習】ADL評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「ADL評価」です。 ADL評価は、在宅復帰を目指す患者に対してなど、臨床上とても大事な評価項目にな ...

続きを見る

 

≪Ⅴ.問題点≫

Impairment(機能障害)レベル

#1.左不全片麻痺(随意性低下)

#2.関節可動域制限(膝関節屈曲・足関節背屈)

#3.筋力低下(体幹・左上肢・両下肢)

#4.高次脳機能障害(空間失認・注意力の障害)

 

Activity Limitation(活動制限)レベル

#5.歩行能力低下(#1・2・3・4)

#6.バランス能力低下、耐久性低下(#1・2・3・4)

 

Participation restriction(参加制約)レベル

#7.家庭復帰困難

#8.職場復帰困難

 

Environmental Factor(環境因子)

#9.Key personとなる人物がいない

#10.対象者の部屋が3階だが、エレベーターは設置されていない

#11.自宅が他県のため制度の手続きに時間がかかる

 

Personal Factor(個人因子)

#12.職業(修道院のシスター)

 

≪Ⅵ.治療目標(ゴール)≫

Short goal(2weeks):杖歩行見守り

Long goal(4weeks):病棟内杖歩行自立、階段昇降自立

 

≪理学療法プログラム≫

①ROM拡大および拘縮予防を目的としたROM訓練:1関節10回程度行い、1日に2~3回実施する。

②筋力の維持・増強を目的とした筋力増強訓練:目的とする体幹、左上肢、両下肢の骨格筋に対し最小限の抵抗から始める 運動の強度:最大筋力の30~40%   

③立位バランス(平衡)訓練:片足位を保持する。横歩き、または下肢を交叉させての横歩き。2歩前進し、2歩後退することで元に戻る。

④重量負荷による歩行訓練:体重の1~2%の重錘を麻痺側下腿部の足関節につけての歩行訓練。

⑤随意運動の促通(神経筋再教育):骨格筋の固有受容器を刺激することで筋収縮を誘発する方法。筋の伸張によって固有受容器の興奮性を高め、急激な伸張によって一気に伸張反射を生じさせる。

⑥温熱療法(ホットパック)・マッサージ:運動療法の前処置として行なう。血管拡張させ、骨格筋血流量を増加させる。

*なお、訓練時には骨粗鬆症による易骨折性によるリスク管理を常に考えなければならない。特に筋力増強訓練を行う際は、易疲労性を呈し、over useになりやすいので注意する。本症例では、筋力や能力の維持・向上に重点をおいた治療を行っていく必要があると思われる。

 

≪考察≫

本症例は、〇〇年〇〇月〇〇日に脳幹梗塞を発症し左片麻痺の後遺症があり、右大腿骨骨幹部骨折を呈した70歳代の対象者である。現病歴は〇〇年〇〇月〇〇日A病院にて右大腿骨転子部骨折手術を行い、〇〇年〇〇月〇〇日に退院となったが、自室で再転倒され、右大腿骨骨幹部骨折のため、〇〇年〇〇月〇〇日に再入院。〇〇年〇〇月〇〇日手術施行。〇〇年〇〇月〇〇日より理学療法が開始され、〇〇年〇〇月〇〇日リハビリ目的にてB病院に転院される。住居は事務所兼自宅の4階建てで、エレベーターの設置はなく、本人の部屋は3階である。対象者は意識レベルに問題はなく、歩行器で訓練室に1人で来室し、PTSによる検査・測定に対しても協力的で理解が良く、理学療法に対しても積極的である。性格も明るくコミュニケーションの状態は良好で、対象者の活動性も高く、立ち上がり訓練などの自主訓練を積極的にされている。本症例は、脳幹梗塞の後遺症(左片麻痺)もあり、運動機能の障害としては、Brunnstrom stageはstageⅥで麻痺の障害は軽度であるが、麻痺側下肢の随意性低下がみられる。失語、失行はみられないが、高次脳機能障害として空間失認の障害・注意力の障害がみられ、立位・歩行時のバランス能力の低下もみられる。

本症例の大腿骨骨幹部骨折は、大きな外力により発生し、大腿中央部の骨折である。術式として横止め螺子髄内釘を行ない、術後約4ヶ月が過ぎており、術側下肢は全荷重を行なうことができる。ADLの状態は、ほとんど自立しているが、入浴時に関しては見守りと背中を少し洗ってもらったりする程度の軽介助が必要であるが、ほとんど問題はない。

本症例で一番の問題点は、屋内歩行実用性低下のため、在宅復帰困難となっていることである。屋内歩行の実用性を困難にしている原因としては、バランス能力の低下である。バランス能力とは、身体の重心線を一定の支持基底面内に収めることのできる能力である。バランスを構成する要素(視覚・前庭機能・末梢感覚・神経筋調節・筋力・反応時間)の機能低下がバランスの能力低下につながると考えられる。バランス能力低下の因子として、麻痺側下肢の随意性低下、体幹筋(腹筋群・背筋群)・両下肢の筋力低下、左足関節の背屈制限、空間的失認・注意力の障害などが考えられる。

最初に、体幹筋(腹筋群・背筋群)・両下肢の筋力低下は骨折による下肢筋力の低下、術後の安静による廃用的なものと考えられる。次に、歩行時のバランス能力低下は安静立位姿勢時の不良姿勢が要因になっていると考えられる。特に体幹の伸筋である脊柱起立筋、股関節伸筋であるハムストリングス、股関節外転筋である中殿筋、足関節の底屈筋である下腿三頭筋の筋力低下が著明である。安静立位姿勢を保持するための抗重力筋のうち、脊柱起立筋、大腿二頭筋、ヒラメ筋は主要姿勢筋である。これらの筋力低下により、安静立位姿勢が体幹は前屈位で頸部は後屈、脊柱は後彎して円背を示し、骨盤は軽度後傾位になり、体幹は軽度右回旋し、右にやや傾いた不良姿勢になっている。そのため、開眼での立位保持は1分間可能であったが、ふらつきがみられた。

歩行時の問題点として、左足関節の背屈制限・股関節外転筋である中殿筋の筋力低下、注意力・集中力障害、空間認知の障害によるバランス能力の低下が著明にみられる。歩行周期全般においては、常に体幹前屈位、骨盤後傾位、膝屈曲位などが挙げられる。これは、脊柱起立筋が歩行周期全般にわたって活動し、慣性と重力によって体幹が前方へ屈曲するのを防止して、同時に左右への動揺も抑制しているが、体幹筋の筋力低下によりこの活動が起こらず、体幹前屈位・骨盤後傾位になってしまっている。また、麻痺側立脚期の踵接地期に足関節が背屈せず、足指から床に接地するので足指を床に巻き込んで転倒する可能性が高い。左足関節の背屈制限は、麻痺による随意性低下によるものと考えられる。中殿筋は、片脚で起立する時に起立側の骨盤を安定させるのに強力に働く。そのため、中殿筋の筋力低下により歩行時のふらつきがみられる。また、集中力が散漫で視線を多方向に動かしたり、注意力が低下しているために足関節の背屈が長続きせず、足指を床に引っかけたりするのが見られる。さらに空間認知の障害により、体重心・圧中心点が支持基底面内での位置がずれることによって、徐々に右方向に歩いていったり、体幹の軸が傾いたりして、ふらつきが起こっているものとも考えられる。これは、本症例が脳幹梗塞であるため、小腦と連結している上・中・下小脳脚の障害によって、バランス能力の低下につながっているものと考えられる。

基本的動作能力における実用性の要素には、①安全性、②安定性、③遂行時間、④耐久性、⑤社会に容認できる方法の5つがあげられる。

これらの問題点にアプローチするため、以下のような治療プログラムを作成した。麻痺側の随意性向上、左足関節背屈のROM改善、体幹・両下肢筋力の筋力増強・活動性の向上、立位バランス能力の向上、歩容の改善、歩行訓練である。これらを重点的にアプローチすることで再転倒防止にもつながっていくのではないかと考え、治療プログラムとしてあげた。また、左上肢の支持性・握力が低下しているため、上肢の筋力増強も行なっていく。これらにより、立位バランスの改善と歩容の改善がみられれば杖を利用した歩行訓練へと移行する。在宅復帰した際に対象者の仕事場である事務所が1階で、対象者の部屋が3階なので、転倒防止のために階段昇降などの下肢荷重位でのCKC運動による下肢筋力増強訓練も取り入れていく。

退院後は、対象者の自宅が他県のため通院することは不可能である。そのため、獲得した基本動作能力を維持するため、ホームプログラムを実施し、通所サービスなどを利用して機能維持、向上を図り、本人の以前からの希望であった仕事復帰ができるように今後も援助していく必要がある。しかし、本人は要介護認定2で家族もおらず、しかも、住居は階段が多く再転倒する可能性もあるため、特別養護老人ホームの入所も検討する必要性がある。最終的には対象者のニードである在宅復帰をさせ、仕事にも復帰し、屋内だけではなく、自立した屋外歩行による自由な外出ができるように今後も本人に指導していく。

 

参考・引用文献

1)田崎 義昭・斎藤 佳雄:ベッドサイドの神経の診かた 第16版,南山堂,2004,pp110-111,120,235,350

2)千野 直一:脳卒中患者の機能評価 SIASとFIMの実際,シュプリンガー・フェアラーク東京,1997

3)片田 重彦・吉澤 英造他:整形外科手術後療法ハンドブック 第4版,南山堂,2003,pp78,79

4)藤田 勉:脳卒中最前線-急性期の診断からリハビリテーションまで 第2版,医歯薬出版,1994

5)島田 隆明:脳卒中片麻痺患者に対する重量負荷による歩行訓練の試み,理学療法 22巻6号,pp860-864

6)千住 秀明:運動療法Ⅰ 第2版,神陵文庫,2005,pp125,184-185

7)鈴木 俊明・大沼 俊博:脳血管障害片麻痺に対する理学療法評価,神陵文庫,2001

8)奈良 勲:標準理学療法学 専門分野 運動療法学 各論,医学書院,2001,pp16,146-147

9)中村 隆一・齋藤 宏・長崎 浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版,2003,pp348,390

10)嶋田 智明・金子 翼:関節可動障害-その評価と理学療法・作業療法,メディカルプレス,1990,pp22

 

レポート・レジュメの作成例をもっと教えて欲しい!

今回は、「大腿骨骨幹部骨折+脳幹梗塞」の患者のレポート・レジュメの作成例を紹介しました。

当サイトでは、数多くのレポート・レジュメの作成例を紹介しています。

おそらく、あなたが実習で担当するであろう疾患のほとんどを網羅しているので、ぜひ参考にして実習に望んでください。

疾患別のレポート・レジュメ作成例

書き方
レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】
レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】

本サイトは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価シートの無料ダウンロード、レポート・レジュメの書き方や作成例を中心にご紹介しています。   今回は、「レポート・レジュメ ...

続きを見る

疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-脳血管疾患, 書き方, 整形疾患, 病院, レポート・レジュメ