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【椎間板ヘルニア+すべり症】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月28日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「椎間板ヘルニア+すべり症」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 椎間板ヘルニアを呈する患者

  • すべり症を合併している
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「椎間板ヘルニア+すべり症」の患者のレポート・レジュメ作成例

A.はじめに

今回、腰椎椎間板ヘルニアと腰椎変性後方すべり症を呈した患者に対して評価をする機会を得たので、以下に報告をする。

 

B.症例紹介

【患者氏名】

【年齢】歳代

【主訴】左下肢がしびれる

【ニード】職場復帰

【職業】

【病名】腰椎椎間板ヘルニア(L5~S1)、第5腰椎変性後方すべり症

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C.社会的情報

【家屋構造】

2階建ての一軒家である。部屋は二階にあり、階段には手すりがついている。自宅前に階段等の段差はない。トイレは洋式である。

 

D.医学的所見

【MRI所見】L5と仙椎間の椎間板が変性して、L5が約7mm後方へ。この部分の前彎が消失している。また椎間板の一部が左後方へ飛び出し、神経を強く圧迫している。

【入院年月日】〇〇年〇〇月〇〇日

【手術日】〇〇年〇〇月〇〇日

【手術様式】PLIF

腰椎椎間板ヘルニア摘出して、腰仙椎固定術を後方から行う。L5と仙椎間の後方の骨を一部切除して後方からヘルニアをとっている。その間の椎体間を骨をつめたチタン製の椎間板ゲージで固定している。

【現病歴】

〇〇年〇〇月〇〇日病院受診坐骨神経痛と診断

〇〇年〇〇月〇〇日疼痛のため歩行困難で入院

【既往歴】なし

【合併症】なし

【薬剤状況】

 1)ボルタレン

効能:抗炎症薬

副作用:かぶれ、かゆみ、発疹、発熱、刺激感。喘息のある方は注意

 2)ムコスタ

効能:胃の粘膜を丈夫にする。胃酸に対する抵抗力を高め、胃炎や胃潰瘍の治りをよくする

副作用:ほぼないが、ショックや血液障害、肝硬変の障害があるが極めてまれである

【一般情報】

身長: cm

体重: Kg

BMI:

血圧:116/76

脈拍数:72

【他部門情報】

Dr.全身状態は安定していて、入院予定期間は三週間である。左側にヘルニアが突出しているが手術の際両側から開いて固定するためしびれが右側におこる可能性もある。

Ns.病棟内ADLは自立している。お風呂はシャワーで過ごされ、トイレ等の移動は歩行器で行っている。早く歩行器をとって歩行出来るようにして欲しいとの事である。

【入院前の生活状況】

デスクワークでパソコンを使い仕事をするのがほとんどである。遅い時には朝9時~夜11時位まで仕事を続けて行われていた。通勤時間も一時間程車と電車を使い、1日中ほぼ座位姿勢をとっていた。  

 

E.理学療法評価

【全体像】

病室へ行き、挨拶をすると笑顔で挨拶を返してくれた。リハ室までは歩行器使用にて来られ、リハに対しても積極的である。

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【検査・測定】

<ROM測定> 

※(P):痛み

 

備考

 

自動

他動

自動

他動

 

股関節 屈曲

50°

56°(P)

60°

65°(P)

 

    伸展

15°

10°(P)

側臥位

    外転

40°

46°

40°

45°

 

    内転

20°

22°(P)

18°

20°

 

    外旋

60°

72°

42°

57°(P)

 

    内旋

32°

37°

30°

43°(P)

 

膝関節 屈曲

150°

155°

150°

155°

 

    伸展

 

足関節 背屈

20°

10°(P)

膝関節屈曲

    底屈

50°

55°

50°

53°

膝関節屈曲

※  股関節屈曲

47°(P)

48°(P)

膝関節伸展

※体幹前屈・側屈・回旋時に腰部に痛みが出るため、本人からの要望と体調を考慮して、測定不可

<備考>

  • 股関節屈曲(膝関節屈曲時)に大殿筋に伸張痛
  • 股関節屈曲(膝関節伸展時)ハムストリングスに伸張痛
  • 股関節伸展時に大腿直筋に伸張痛
  • 股関節内転・内旋時に大腿筋膜張筋に伸張痛
  • 股関節外旋・外転時に内転筋に伸張痛
  • 足関節背屈時に下腿三頭筋に伸張痛
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<感覚検査> 
1)表在感覚

<判断基準>

正常:10  軽度鈍麻:9,8,7  中等度鈍麻:6,5,4  高度鈍麻:3,2,1  感覚消失:0

触覚:10/10

温・痛覚:右側大腿外側部 6/10

 

2)深部感覚

<判断基準>

正常:5  軽度鈍麻:4  中等度鈍麻:3,2     高度鈍麻:1  感覚消失:0

位置覚・運動覚:5/5

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<異常感覚・疼痛検査>

※入院当初のしびれや痛みが混じった感覚を10点とする

1)安静時

・背臥位で右側大腿外側部に重たくてダルイ感じ VAS2/10

・座位保持20分位で右側大腿外側部痛み VAS3~4/10

 

2)動作時

・トイレ・ズボン着脱動作、シャワー時に腰背部に痛み  VAS3/10

・歩行時術部周囲の腰背部にズキッとした痛み  VAS3/10

 

3)夜間痛

・寝返り時に右側大腿外側部・腰背部に痛み  2/10

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<MMT>
 

備考

股関節屈曲

5

5

 

股関節屈曲・外転・膝屈曲位での外旋

5

5

 

股関節伸展

 

   外転

5

5

 

股関節屈曲位からの外転

5

5

 

股関節内転

4

3

 

   外旋

5

5

 

   内旋

5

5

 

膝関節屈曲

5

5

背臥位で測定

   伸展

4

4

 

足関節背屈

5

5

 

   底屈 

4

4

背臥位で測定

※股関節伸展の際大腿部前面に疼痛出現のため今回は測定出来なかったが、ROM測定の際は股関節伸展可能だったため、3以上はあると思われる。  

※体幹前屈・側屈・回旋時に腰部に痛みが出るため、本人からの要望と体調を考慮して、体幹筋力測定不可

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<四肢周径・四肢長> 

※膝関節伸展位により疼痛出現のため両膝関節屈曲の状態で測定

差=右-左

1)四肢長
 

下肢長(TMD)

   (SMD)

大腿長(大転子~外側上顆)

37.0cm

37.0cm

下腿長(外側上顆~足関節外果)

38.4cm

38.4cm

2)四肢周径
 

大腿周径

   

膝蓋骨上縁 0cm

37.0cm

36.0cm

1.0cm

      5cm

37.2cm

37.0cm

0.2cm

      10cm 

39.4cm

38.3cm

1.1cm

15cm

41.2cm

40.2cm

1.0cm

下腿周径

   

最大下腿周径(腓骨頭より13cm)

36.0cm

34.6cm

1.4cm

最小下腿周径(外果直上)

22.2cm

22.2cm

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<腱反射>

・膝蓋腱反射:正常        

・アキレス腱反射:正常 

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<動作分析> 
  • 姿勢分析

・立位矢状面:歩行器使用

歩行器に肩・肘関節屈曲位により前腕を歩行器にのせて支持している。頚部前屈位、胸椎屈曲、腰椎後彎、骨盤後傾、股関節屈曲、膝関節軽度屈曲位で重心点は後方にある。

・立位矢状面

頚部軽度前屈位、肩甲帯軽度後方突出、肩関節中間位、肘関節軽度屈曲、前腕中間位をとっている。胸椎後彎して腰椎前彎、骨盤前傾をとり、股関節屈曲、膝関節伸展、足関節中間位となっている。

・端座位矢状面

頚部軽度前屈、両肩関節軽度屈曲、肩甲帯軽度後方突出となり手掌を軽くベッド上においている。胸椎は軽度屈曲しており、腰椎軽度前彎、骨盤軽度前傾で、両股・膝関節屈曲をとりベッド上から下肢を垂らして、足底接地の状態である。

 

  • 起き上がり(ベッド上背臥位~端座位:左側へ起き上がる)

第1相(背臥位~側臥位)

開始肢位:両膝関節軽度屈曲状態で腰椎部にタオルを入れて軽度前彎位を保っている

両膝・股関節屈曲により膝を立てる。左肘関節屈曲によりon elbowになり骨盤帯と肩甲帯を同時に寝返る方向(左回旋)して、側臥位の状態をとる(左側を向く)。体軸内回旋はみられない。

第2相(側臥位~端座位)

左肩・肘関節屈曲、前腕中間位、手関節軽度掌屈、手指伸展位(下側上肢)はon elbowの形をとり、右肩関節屈曲・内転、肘関節屈曲、前腕回内位、手関節背屈、手指伸展位(上側上肢)となり側臥位をとっている。そこから上側上肢は右肩関節屈曲・内転、肘関節伸展、手関節背屈、手指伸展位をとり肘関節ロックの状態で手掌をベッド上におしつけてon handの状態をとっている。その際下側上肢は左肩・肘関節屈曲、前腕中間位、手関節軽度掌屈、手指屈曲の状態で殿部を軸として左肘関節と体幹を後方に持っていきながら、端座位をとる。

終了肢位:端座位矢状面と同じ

 

  • 立ち上がり(端座位~立位)

開始肢位:端座位矢状面と同じ

両肩・肘関節伸展、前腕回外、手関節背屈、手指伸展位となり肘関節をロックした状態をとりベッド上に手掌をつき、体幹が前傾することなく軽度伸展位のまま両股・膝関節伸展、足関節中間位の状態で立ち上がる。

終了肢位:立位矢状面と同じ

 

  • 立位~端座位まで

開始肢位:立位矢状面と同じ

両股・膝関節屈曲、足関節軽度背屈状態で体幹軽度前傾のまま、両肩関節伸展・肘関節軽度屈曲、前腕回外、手関節背屈、手指伸展位をとる。そこからさらに、両股・膝関節を屈曲させて足関節を背屈位となり手掌をベッド上につき体幹伸展位のままで、殿部をゆっくり下ろそうとする。その時両上肢を伸展位としてベッド上に手掌をつき支えながら、端座位となる。

終了肢位:端座位矢状面と同じ

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  • 歩行分析(右側立脚期:歩行器使用)

開始肢位:立位矢状面と同じ

※歩容

全体として各関節屈曲傾向にあり、骨盤帯は常に後方にあり下肢を引きづりながら歩いている。

・踵接地期

股関節屈曲位、膝関節伸展はみられずに軽度屈曲状態で足関節軽度背屈となり踵接地はわずかにみられるが骨盤は後方に残り胸腰椎屈曲、頚部前屈位となっている。

・足底接地期

股関節屈曲位のまま膝関節軽度屈曲で足関節底屈位となったまま骨盤は後方に残り胸腰椎屈曲、頚部前屈位となっている。

・立脚中期

股関節中間位はみられずに屈曲位のままで、膝関節軽度屈曲、足関節中間位となる。また、胸腰椎屈曲となり頚部前屈位で骨盤は後方に残っている。

・踵離地期

股関節伸展はみられずに、膝関節軽度屈曲、足関節軽度背屈位となる。頚部は前屈位となり胸腰椎屈曲位となり骨盤は後方に残っている。

・足趾離地期

軽度の股関節伸展はみられるが、骨盤は後方にあり膝関節屈曲角も小さく、足関節軽度底屈位となり、骨盤は後方にあり、頚部前屈・胸腰椎屈曲位である。

・遊脚中期

股関節中間位~軽度屈曲位で膝関節の最大屈曲はみられずに足関節中間位のままである。頚部前屈位・胸腰椎屈曲、骨盤は後方にある。

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<ADL評価>  

項目

得点

摘要

食事

10

自立。自助具などの装着は可。標準時間内に食べ終わる

5

部分介助(例えば、おかずを細かくしてもらう)

0

全介助

車椅子からベッドへの移乗

15

自立。ブレーキ、フットレスの操作ができる。歩行自立を含む

10

軽度の部分介助あるいは監視を要す

5

座ることは可能だが、ほぼ全介助

0

全介助あるいは不可能

整容

5

自立(洗面、整髪、歯磨き、髭剃り)

0

部分介助または全介助

トイレ動作

10

自立。衣服の操作、後始末やポータブル便器などをの場合は洗浄も含む

5

部分介助。体を支える、衣服・後始末に介助を要する

0

全介助または不可能

入浴

5

自立

0

部分介助または全介助

歩行

15

45m以上の歩行。補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用は可

10

45m以上の介助歩行。歩行器使用を含む

5

歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能

0

上記以外

階段昇降

10

自立。手すりなどの使用の有無は問わない

5

介助または監視を要する

0

不能

着替え

10

自立。靴、ファスナー、装具の着脱を含む

5

部分介助。標準的な時間内、半分以上は自分で行える

0

上記以外

排便コントロール

10

失禁無し。浣腸、座薬の取り扱いも可能

5

時に失禁あり。浣腸、座薬の取り扱いに介助を要するものも含む

0

上記以外

排尿コントロール

10

失禁無し。収尿器の取り扱いも可能

5

時に失禁あり。収尿器の取り扱いに介助を要するものも含む

0

上記以外

BI=>60点以上:介助が少ない

   40点以下:かなりの介助を要する

   20点以下:全介助

合計:100点

 

1)食事:普通の食事をとる事に関しては、問題は無いが座位保持が長くなる(20分位)ため下肢にしびれ等がおきて日常生活の中では一番きついとの事

2)椅子からベッドへの移乗:可能であるがスムーズには行えず、辛そうに行われている

3)整容:洗顔の際に体幹前屈時に下肢にしびれと痛みが混じったものがある

4)トイレ動作:便器に座ったり、立ったりする際下肢にしびれと痛みが混じったもの

5)入浴:シャワーで自立しているが浴槽に入る事は出来ない

6)移動:歩行器により自立している

7)階段昇降:腰への負担を考え現在行ってはいない。

8)更衣:自分で行っているが、ズボンをはく際に辛いとの事

9)排尿・排便:入院当初は便秘気味だったが現在問題はない

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F.問題点

Body Functions                    

♯1,異常感覚(安静時)

♯2,ハムストリングス・殿筋群・下腿三頭筋伸張性低下

♯3,大腿四頭筋・大腿筋膜張筋・内転筋伸張性低下       

♯4,動作時疼痛(歩行時・入浴・衣服着脱時)

♯5,股関節内転筋力低下

♯6,痛覚障害

 

Activity Limitation

#7,腰背部疼痛のため座位保持困難(♯1,2,3,5 *1,2)

♯8,腰背部痛・伸張痛のため歩行困難(♯1,2,3,4,6 *1,2)

♯9,腰背部痛のため起居動作困難(♯1,2,3,4)

 

Participation Restriction

♯10,家庭での調理動作困難(♯1,2,3,4,7,8)

♯11,家庭での入浴動作困難(♯1,2,3,4)

♯12,職場でのデスクワーク困難(♯1,2,3,4,5,8)

 

Environmental Factor

♯13,家庭復帰後日中独居

 

Personal Factor

♯14,腰痛再発への恐怖心

♯15,家庭復帰後日中独居

 

G.ゴール設定

S.G(2w):家庭での入浴・排泄・更衣時の疼痛軽減

L.G(4w):職場でのデスクワーク時の疼痛軽減

F.G:腰痛再発予防

 

H.治療プログラム

1,腹筋収縮運動

目的:股関節屈曲・膝関節伸展により腹筋群の等尺性収縮を行う事により骨盤後傾を促す。

 

2,下腿三頭筋・前脛骨筋収縮運動

目的:背臥位で股関節・膝関節屈曲をとり足関節底背屈を行い、臥床による血液循環不良防止のため筋ポンプ作用を利用して、血液循環改善を促す。

 

3,大腿四頭筋収縮運動

目的:背臥位で膝関節の下に枕をいれて、膝関節伸展させることにより、大腿四頭筋を収縮させ臥床による筋力低下を防止するため。

 

4,腹筋・殿筋群収縮運動

目的:背臥位で股関節・膝関節を屈曲させてブリッジングさせることにより腹筋・殿筋強化と腰椎前彎を減少させると同時に腰背筋群の伸張を目的とする。

 

5,腹筋・背筋同時収縮運動

目的:バランスボール上で座位姿勢保持させる事により腹筋・背筋の同時収縮を促す。

 

6,股関節内転筋等尺性収縮

目的:両大腿部に枕を挟み、股関節内転させる事により内転筋筋力増強と臥床による筋力低下防止のため

 

7,大殿筋・ハムストリングス・下腿三頭筋・腸腰筋伸張運動

目的:大殿筋・腸腰筋・ハムストリングス・下腿三頭筋のストレッチングを目的として、一側下肢屈曲・他側下肢伸展位をとり両上肢で壁を押す。

 

8,個別的ストレッチ

1)大殿筋伸張

開始肢位:背臥位で股関節中等度屈曲・内転、膝関節中等度屈曲位

伸張法:膝関節が反対側腋窩部につくようにする

2)腸腰筋伸張

開始肢位:腹臥位とする

伸張法:股関節は伸展位にする。膝関節伸展位を維持する

3)中殿筋伸張

開始肢位:背臥位で股関節中等度屈曲・内転、膝関節中等度屈曲する

伸張法:股関節屈曲・内転する

4)大腿直筋伸張

開始肢位:腹臥位で股関節内外旋中間位

伸張法:踵が殿筋中央部に触れるように膝関節を最大屈曲しながら、股関節伸展する

5)内側広筋伸張

開始肢位:腹臥位で股関節内外旋中間位

伸張法:踵が殿裂または殿裂を超えて反対側殿部に触れるように膝関節最大屈曲しながら股関節伸展

6)外側広筋伸張

開始肢位:腹臥位で股関節内外旋中間位

伸張法:踵が殿部外側部にでるように、膝関節を最大屈曲しながら股関節伸展                                       

7)半腱様筋・半膜様筋伸張

開始肢位:背臥位股関節屈曲・内旋位、膝関節軽度屈曲位

伸張法:股関節内旋位で屈曲・内転した後、膝関節を伸展

備考:上述の伸張は半腱様筋・半膜様筋の起始部に近い筋線維が伸張される。膝関節を伸展位に近づける程末梢部の線維が伸張される。

8)大腿二頭筋伸張

開始肢位:背臥位で股関節屈曲・外旋位、膝関節軽度屈曲位

伸張法:股関節外旋で屈曲・外転した後、膝関節伸展

備考:膝関節伸展位に近づく程末梢部の筋線維が伸張される

9)腓腹筋(外側頭)伸張

開始肢位:背臥位、両下肢伸展位

伸張法:足関節背屈する。伸張する方向は下腿長軸より外側である

10)腓腹筋(内側頭)伸張

開始肢位:背臥位、両下肢伸展位

伸張法:足関節背屈する。伸張する方向は下腿長軸より内側である

11)ヒラメ筋伸張

開始肢位:背臥位、膝関節約90°屈曲位、下腿は外旋、足関節外転位

伸張法:足関節最大背屈

12)内転筋伸張

開始肢位:背臥位、股関節外転、膝関節屈曲位

伸張法:股関節外旋させる

備考:膝関節伸展位に近づく程末梢部の筋線維が伸張される

13)大腿筋膜張筋

開始肢位:背臥位、股関節内転、膝関節屈曲位

伸張法:股関節内旋させる

 

I.考察

本症例は腰椎椎間板ヘルニア(L5/S1)、第5腰椎変性後方すべり症を呈し〇〇年〇〇月〇〇日にPLIFを行われた方である。腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の退行変性過程の中で生じる代表的な腰痛・下肢痛を引き起こす疾患であり、本症は椎間板変性により発生するが、外力学的負荷・先天的要因も存在している1)とされている。本症例は椎間板が左後側方に突出していたため左下肢に疼痛がおこっていた。しかしPLIFにより腰椎椎間板ヘルニアを摘出して、後方に滑っている腰仙椎間を固定してその間の椎体間は骨をつめたチタン製の椎間板ゲージで固定した事により左下肢の疼痛はなくなった。しかし、手術後は右大腿外側部に異常感覚が出現して本症例のneedでもあり長期ゴールでもある職場(事務職)復帰を困難にしている。

本症例は中途半端な形で仕事を休んでいるため、仕事の事を気にされている。そのため長期ゴールとして職場復帰を上げると同時にそれに伴う腰痛再発予防を最終ゴールとした。ゴール獲得のためには長時間座位姿勢を保持する事は避けられないが安静にしていても座位時にも右大腿外側部に異常感覚が出現して座位姿勢の保持を困難にしている。また、睡眠時にも下肢に異常感覚が出現すると同時に寝返りをうつ際に痛みがでるため異常感覚が一番の問題点であると考えた。

本症例は、術前は左下肢に神経根由来の疼痛が出現していたが、手術により改善されている。しかし、術後は右大腿外側部と全く関係無い部位に異常感覚が出現している。その原因として黒澤らによると脊柱の椎間関節は自律神経系が関与するため、皮膚の質感や組織の過敏性が関連痛として現れると報告している。関連痛とは本来内臓に侵害刺激が加えられた際に、内臓とは離れた位置にある、皮膚表面や筋肉に感じる特別過敏な感覚や痛みの事を指している。本症例は術後早期のため椎間板を摘出した事により、組織に過敏性がおこり下肢に異常感覚が出現していると考えられる。これは、時間の経過とともに、組織に順応性がおこり改善されていくと考えた。

異常感覚によりベッド上臥床状態となっているため、血液循環不良や筋力低下が示唆されるため、術後早期から足関節低背屈運動により下腿三頭筋・前脛骨筋の収縮を促し血液循環改善を図り、大腿四頭筋収縮運動などにより筋力低下を図っていく必要があると考えられる。

本症例はデスクワークの為、長時間(AM9:00~PM11:00)座位姿勢をとる事は必要不可欠となってくる。本症例術後の座位姿勢は胸椎後彎、腰椎軽度前彎、骨盤軽度前傾ときれいな姿勢に見えるが、この姿勢を長時間続けると腰背部3)の筋が持続的に緊張した状態となり、腰仙椎間部に剪断力が働き、腹筋群の起始・停止間距離が広がり腹腔圧が高めにくくなっていくため腹筋群の筋力低下がおこってくると考えられる。

本症例は術後早期という事もあり、体幹の筋力・可動域は本人の要望と同時に体調を考慮して測定する事は出来なかった。しかし、この座位姿勢のまま職場へ復帰しても腰背筋群が持続的に緊張した状態となり腰仙椎間部に剪断力が働き腰椎前彎傾向になり、腰痛が再発する危険性があると考えた。

Kapandji5)によると、腹腔内圧上昇によって椎間板に作用する長軸方向の圧迫力はL5/S1間で30%も減少すると言われている。本症例のゴールを獲得するには腹腔内圧を上昇させて腹筋群の筋力増強を行い、再発予防を行っていかなければいけないと考えられる。その方法として、SLRの肢位をとる事により腹筋群への等尺性収縮を行い、バランスボール上で座位姿勢をとる事により腹筋・背筋同時収縮を促して座位保持時間を延長していかなければいきたい。

 また腰椎前彎・骨盤前傾により大腿直筋、腸腰筋がタイトネス状態となり股関節屈曲・膝関節伸展位をとり、拮抗筋であるハムストリングスや下腿三頭筋、大殿筋も相対的に伸張されてタイトネス状態をとっていると考えられる。そのためシャワー時・ズボン着脱時など体幹屈曲時に股関節屈曲の際にハムストリングス・大殿筋・下腿三頭筋に伸張痛がおこるため、股関節屈曲(膝関節伸展・屈曲)・足関節背屈の可動域が減弱していると考えられる。

股関節内転・内旋時には大腿筋膜張筋に伸張痛が出現している。大腿筋膜張筋の作用が股関節屈曲・外転であるため、拮抗筋である内転筋が相対的にタイトネスとなり股関節外転・外旋の際に伸張痛が出現してその結果股関節内転筋力が他の筋に比べ劣っていると考えられる。伸張痛が出現している筋に対しては、個別的なストレッチを行い伸張性を出していくべきと考えた。伸張方法としては、近位筋7)は遠位筋による運動を固定する役割があるので、近位筋から伸張させていき、最終可動域でIb抑制の影響により筋の伸張性が増す10~20秒間行っていく必要があると報告されている。伸張性を出すことにより、体幹の運動を伴うトイレ・シャワー時に伸張痛は出現せずにスムーズに動作が行えるようになり家庭復帰した際にも疼痛は軽減して、家庭内で独居となっても日常生活には困らないと考えた。

歩行時(歩行器使用)には前腕を歩行器にのせて骨盤を常に後方に残した姿勢で歩いている。これは腰椎前彎による疼痛回避のため、歩行器という物的代償により腰椎後彎・骨盤後傾になっていると考えられる。この姿勢では、腰椎後部に圧がかかりそこからまた腰痛が再発する可能性があるので、出来るだけ早期に歩行器使用をやめて、体幹を伸展していくべきと考えられる。

本症例ゴール獲得のためには座位姿勢保持時間延長(現在20分程度)は必ず必要である。そのためにはタイトネス筋に対する伸張と同時に腹腔内圧上昇を中心的に行い、最終ゴールでもある腰痛再発予防をはかっていくべきであると考えられる。

 

<参考文献>

  1. 磯崎 弘司 著:腰椎椎間板ヘルニアの病期別理学療法ガイドライン,理学療法19巻1号,pp144~152,2002
  2. 大和田 哲雄 他著:腰椎変性すべり症に対するSteffee VSP systemを用いたPLIFの長期成績,脊椎脊髄,pp193~200,2004
  3. 三村 晃庸 著:筋緊張、疲労による腰痛の場合のストレッチングと筋力強化,sportsmedicine,pp10~14,2004
  4. 石田 和宏 著:腰椎椎間板ヘルニア,理学療法23巻1号,pp322~326,2006
  5. 戸田 佳孝 他著:腰痛患者と健常人での腹腔外圧の比較,整形外科 Vol54,2003
  6. 松田 直樹 他著:運動時の体幹のバイオメカニクスからみた腰痛への影響,臨床スポーツ医学Vol22,pp1115~1123,2005
  7. 田中 聡 他著:関節可動域運動の基本,PTジャーナル第38巻,2004

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

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整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
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