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【大腿骨頚部骨折+CCS施行】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月29日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「大腿骨頚部骨折+CCS施行」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 大腿骨頚部骨折を呈する患者

  • CCSを施行

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「大腿骨頚部骨折+CCS施行」の患者のレポート・レジュメ作成例

<基本的情報>

  • 氏名:
  • 生年月日:
  • 年齢:60歳代
  • 性別:男性
  • 身長・体重:
  • BMI:(やせ型)
  • 職業:無職(以前は公務員)
  • 既往歴:〇〇年〇〇月〇〇日 腸閉塞
  • 主訴:どこまで動いていいのかわからず、右下肢への力の加減が難しい、右下肢運動時に大腿外側面が痛む
  • 本人のNeed:早く歩けるようになりたい
  • 家族(妻)のNeed:歩けるようになってほしい
  • 病前の生活:仕事をやめてからは1日中、自宅にいることが多かった。奥さんの手伝いで買い物に行く程度であった。自宅では堀コタツに入って座っていることが多く食事もコタツの上で行なっている。寝室は2階でベッドに寝ていた。
  • 家屋情報:駐車場から玄関までの間に15段の階段があり右側に手すりがついている。
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<医学的情報>

  • 診断名:右大腿骨頚部内側骨折(Gardenの分類でⅢ~Ⅳ)
  • 現病歴:〇〇年〇〇月〇〇日 2mくらいの高さから転落、〇〇年〇〇月〇〇日 ope施行
  • 術式:CCS(骨接合術)
  • 主治医より:腸脛靭帯と外側広筋を切開し骨を露出しopeを行なった。年齢が60歳代であることとTHAの耐用年数を考えたときに高齢でのopeを必要とするため骨癒合を期待してCCSとした。リスク管理として過度の内旋・内転運動はさけ歩行時はやや外旋位での歩行を行なったほうがよい。
  • 生化学検査:CRP(正常0.4以下)
 

CRP

〇〇年〇〇月〇〇日(受傷時)

0.1

〇〇年〇〇月〇〇日(術後)

2.3

  • 投薬

ガストローム:[作用]胃粘膜と結合して被覆層を形成し,攻撃因子の侵襲から胃粘膜を保護する [副作用]過敏症、便秘、下痢、肝機能障害など

ノイロビタン:[作用]ビタミン類の補給 [副作用]便秘、下痢、めまい

ツムラ大建中湯:体力が低下した人で,手足,腹部が冷え,比較的強い腹痛を訴え,腹部膨満・鼓腸を呈している場合に用いられる

 

<理学療法評価>

(〇〇年〇〇月〇〇日)

全体像

リハビリテーション室へは車椅子にて奥さんと2人で来室する。駆動は行なっておらず奥さんが押してくる。体型は小柄でやせ型である。コミュニケーション能力に問題はなく、こちらの質問に対して的確に返答表情はやや暗いが検査には協力的である。

 

視診・触診・問診

・右大腿骨近位部外側後面に術創部がありガーゼが張ってある。

・術創部において発赤(+)、熱感(+)圧痛(+)、安静時痛(-)、運動時痛(+)、腫脹(-)である。

・運動時痛は股関節を屈曲させたときに「ズーン」と鈍いような痛みが起こる。

・右の肘頭付近に創傷があるが痛みはない。

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動作観察

  • 車椅子~ベッドへの移乗:自立

開始肢位

車椅子坐位。左側にベッドがある。頭部・体幹は正中位でバックレストに寄りかかっている。両前腕はアームレストに乗せており、両足底はフットレストに乗っている。四肢・体幹は左右対象的である。

Ⅰ相

両足部をフットレストから降ろし、下肢を使ってフットレストを持ち上げる。このとき左足底は床面に接地している。右足底は全面接地しておらず、左に比べ膝関節がやや屈曲位であり、つま先だけが床面に接地している。

Ⅱ相

頭部・体幹の屈曲に伴って、左膝関節軽度屈曲により足部を後方に移動させる。右膝関節の屈曲は見られずⅠ相と変化はない。両上肢においては手指でアームレストを握っている。

Ⅲ相

体幹をさらに屈曲させ重心を前方へ移動させる。このとき体幹がやや左側へよる。つぎに両上肢でアームレストを押し返し、左下肢で体幹を持ち上げ、立ち上がる。このとき右下肢足底は床面に接地していない。このときの支持基底面は両手掌面と左足底を結んだ面である。

Ⅳ相

左手掌面をアームレストから放し、ベッドに移動させる。このとき左下肢を軸足とし、頭部・体幹を右回旋させ両殿部をベッドに移動させる。

  • 立ち上がり(平行棒内):自立

開始肢位

車椅子坐位。

頭部・体幹正中位で両上肢はアームレストの上においてある。両股関節は屈曲位で右下肢はやや外転・外旋位にある。両足底は床面に接している

Ⅰ相

頭部・体幹を屈曲させ、両手掌面で平行棒を把持し、同時に両膝関節を屈曲させ足部を後方へ引く。

Ⅱ相

両上肢で平行棒を押し返すように頭部・体幹を屈曲させて両殿部を車椅子から離床させる。下肢においては左下肢の股関節・膝関節の屈曲角度が増し重心が前方へ移動する。

Ⅳ相

頭部・体幹・股関節・膝関節の伸展、肘関節屈筋群の作用により体を立位へと持っていく。

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  • 平行棒内歩行:自立

開始肢位

両手掌面で平行棒を握り、左下肢は床へ全面接地している。右下肢は膝関節屈曲位で足部は床面に接地していない。頭部・体幹はやや前屈位である。支持基底面は両手掌面と左足底面を結んだ面である。

Ⅰ相

両手掌面を平行棒から離し、頭部・体幹を前方へ移動させる。その後、両手掌面で平行棒の前方を把持し重心を前方へ移動させる。

Ⅱ相

両上肢で頭部・体幹を前方へ引き付けると同時に左下肢足底で床面を踏み込み両下肢を前方へ振り出す。

Ⅲ相

左下肢の踵から接地し、足底をつく。このとき右下肢は軽度屈曲位で床から離床している。

  • 松葉杖歩行(監視レベル)

両松葉杖と右下肢で立位を保っている。両松葉杖を前方に出し次に左下肢を両松葉杖より前方へ振り出す。このとき両脇で松葉杖をしっかり絞める癖がまだついておらずやや不安定となる。

*平行棒内で両手を平行棒から離し片脚立位をとってもらったところ安定して姿勢を保持する事ができた。また本人の問診より病室では片脚で顔を洗ったり、歯磨きをしているころからバランス能力は良いと判断した。

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形態計測

 下肢長(単位:cm)
 

左右差

転子果長

72.0

72.0

棘果長

75.5

75.5

周径
 

左右差(左と比べ)

膝蓋骨上より5cm

32.0

32.0

10cm

35.0

36.0

-1.0

15cm

39.0

39.0

下腿最大周径

31.0

31.5

-0.5

最小周径

19.0

19.0

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関節可動域検査

(単位:°)

 

備考(右下肢について)

自動

他動

自動

他動

股関節 屈曲

80P

120P

90

120

自動運動において大腿外側面(術部)に「ズーン」とする痛みが発生した。他動運動において抵抗感は筋・腱が伸びるような感じでハムストリングスを触診したところ腱の張りを認めた。

外転

25

25

25

25

特に疼痛は認められなかった。

内転

10P

10P

10

10

自動・他動運動において術部に「ピリッ」と伸ばされるような感じの痛みがすると答えた。

外旋

40

40

40

40

特に疼痛は認められなかった。

内旋

25

30

25

30

膝関節 屈曲

120

125p

125

125

術部において「ズキッ」とする痛みと、大腿前面においてつっぱる感じがすると答えた。

伸展

特に問題なし

全て背臥位で行なった。側臥位も完全にとれないため股関節伸展は測定していない。

足関節においては両側の左右差はみられなかったこと、全可動域を動かせていたことから測定していない。

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MMT

 

備考(右下肢)

股関節 屈曲

4P

術部に筋肉痛のような「ビリッ」とする痛みが発生し十分な力が発揮できないと答えた(耐えられる程度の痛み)。

伸展

2↑

2↑

腹臥位、側臥位が困難なため背臥位において股関節・膝関節屈曲位においてブリッジを行なえるため重力に抗する運動が可能と判断し「2」以上はあると判断した。

股関節屈曲位での外転

2↑P

2↑

長座位において股関節外転を行なったところ全可動域を動かすことができたが術創部に「ズキッ」とする痛みを感じた。

外転

2↑

2↑

背臥位で行なった。全可動域を動かすことができ、また抵抗に対しても負けることなく動かすことができたため「2」以上はあると判断した。

内転

2↑

2↑

外旋

左右差を比べた結果、右のほうの抵抗感が左に比べ弱かったため「4」とした。

内旋

膝関節 伸展

4P

伸展位において、上から抵抗をかけたところ右のほうが弱かったため「4」とした。また術部に「ビリッ」とする痛みが発生した。(耐えられ程度の痛み)

足関節 背屈

3↑

3↑

本来は立位で行なうが右下肢が全免荷のため坐位において足部を床に接地させ踵を上げるよう指示したところ重力に抗してあげることができたため「3」はあると判断した。

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三脚徴候

(-)

坐位において膝関節90°屈曲位から右下肢を伸展方向へ動かしたときに体幹の伸展が起こるかを確認したところ変化は見られなかった

 

extention lag

自動運動時・他動運動時において変化なし   

 

ADL検査(Bathel Index)

80点

①食事:10点(右手に箸を持ち麻痺側である左手は茶碗を持っている)

②車椅子からベッドへの移乗:15点(自立)

③整容:5点(全て自立)

④トイレ動作:10点(自立)ベッドから起き上がり自分で車椅子に乗りトイレまで行き自分で行なっている

⑤入浴:0点(抜糸前のため)

⑥歩行:5点(車椅子にて移動可能)

⑦階段昇降:5点(監視を必要とする)

⑧着替え:10点(自立)

⑨排便コントロール:10点

⑩排尿コントロール:10点

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<統合と解釈>

 本症例は〇〇年〇〇月〇〇日に自宅の木の枝を切っていたところ約2m下へ転落し大腿骨頚部内側骨折を受傷し、〇〇年〇〇月〇〇日に骨接合術(CCS)を施行した60歳代の男性である。

 大腿骨頚部内側骨折は関節包内の骨折であり、骨折部には骨癒合に必要な血液を豊富に含む骨膜がなく、かつ、滑液が骨折間に侵入して骨癒合を妨げる。さらに、骨頭部へ向かう血流が常に末梢側から送られるので、骨折により血管が遮断されると、骨頭部の循環が悪くなり、遷延治療や骨頭壊死をもたらす危険がある。

 本症例の全体像としてリハ室へは車椅子に乗っており、奥さんに押してもらっている。服装はパジャマを着ており両下肢には深部静脈血栓を予防すするためのストッキングを履いている。体型は小柄でやせ型である。坐位姿勢は安定しており、頭部・体幹は正中位である。両足底はフットレストに置いてあるが右下肢はやや股関節外転・外旋位をとっている。コミュニケーションにおいてリハビリの初日は表情がやや暗かった現在では高校野球やオリンピックの話などもしていて明るくなってきたように感じる。

 まず、問診から行なった。主訴として「右下肢を動かすと大腿外側面が痛む」ということからいつ、どういうときに、どのように痛むかを聞いたところ股関節を屈曲方向へ動かすと術部に「ビリッ」とする痛みが出現するということだった。次に視診・触診を行なったところ術部周囲に発赤・熱感があり、ガーゼの上より圧を加えたところ「ズキッ」とする筋肉痛のような痛みが出現した。生化学検査においてCRP値が2.3(正常:0.4以下)であり、この数値は炎症や組織の破壊病変があると増加し、いわゆる炎症反応を示している。本症例においては腸脛靭帯・外側広筋を切開しており、皮膚・靭帯・筋・を切開しているため、組織の破壊が起こり炎症症状がおこっていると判断できる。

 次に、現在どこまで動作能力があるかを把握するため①車椅子~ベッドへの移乗、②平行棒内での立ち上がりの動作観察を行なった。車椅子~ベッドへの移乗においてはまず両下肢でフットレストを上へ持ち上げる。このとき左下肢に比べ右下肢大腿部の持ち上げる高さがやや低い。両足底を床面に接地させるが右足底は踵がやや浮いている。両手掌面でアームレストの前方を把持している。頭部・体幹はやや屈曲位である。移乗動作においては一度、立ち上がってからベッドへ移乗しており、左足部を後方へ引くが右足部は動いていない。次に頭部・体幹をさらに屈曲させ左膝関節伸筋群と両上肢の肘伸筋群の収縮により殿部を車椅子より離床させる。このとき右下肢は床面に接しておらず股・膝関節は軽度屈曲位を保つ。片脚立位のバランスは安定しており左下肢を軸として体幹・殿部を回旋させ、次に頭部・体幹を屈曲させながら殿部からベッドへ接地する。

平行棒内での立ち上がりにおいても車椅子からの立ち上がりと変化はない。これらの動作から予想される原因として①右股関節屈筋群の筋力低下、②右股関節の関節可動域制限、③脚長差の有無、④術部の運動時痛が考えられ、この原因を確かめるためにROM検査、MMT、形態計測を行った。

ROM検査においては背臥位で行い右股関節屈曲においてはactive「80°」、passive「120°」で差が40°であった。この現象に対して考えられる理由としては①股関節の構造的変化、②腸脛靭帯・外側広筋を切開していることによる筋出力の低下③拮抗筋であるハムストリングスの短縮が考えられる。

①股関節構造的変化おいてはLPPである股関節軽度屈曲位・外転位・外旋位において下肢を大腿骨頭と反対方向へ引っ張ることにより股関節周囲の靭帯の伸張を確認することができる。しかし本症例においては骨癒合の阻害となるため検査は避けたため原因として削除することはできないがpassiveにおいて「120°」可動域があったため関節構造における制限ではないと判断した。

②腸脛靭帯・外側広筋の筋出力においてはMMTを用いた。文献によると、腸脛靭帯は大腿筋膜張筋とつながっており、股関節屈曲、股関節軽度屈曲位での外転、膝関節伸展・屈曲に作用するといわれている。

まず股関節屈曲において主に作用する筋は腸腰筋であり、坐位において膝関節屈曲位で股関節を屈曲したところ重力に抗して下肢を上げることができた。抵抗に対しては術創部に「ビリッ」とする痛みが発生し、十分な力が発揮できないと訴えた。

次に大腿筋膜張筋においては側臥位での計測は避け、長座位において行なった。大腿筋膜張筋は股関節軽度屈曲位で外転運動の作用があるためである。長座位において行なったところactiveにおいて術部に疼痛が出現したが全可動域を動かすことが出来た。次にわずかな抵抗をかけて行なったところ全可動域を動かすことが出来なかったため「2」はあると判断した。

次に膝関節伸展においては大腿四頭筋・大腿筋膜張筋が作用する。MMTにおいては抗重力位においては全可動域を動かすことができたが抵抗をかけたところ左を「5」とした場合に右側はやや低下していたため「4」とした。訴えとして術創部に「ビリッ」とする痛みが出現し耐えられる程度の痛みであったが十分に力が入らないということであった。

以上のことから股関節屈曲・軽度屈曲位での外転・膝関節伸展においての術創部の痛みはopeにおいて腸脛靭帯・外側広筋を切開したことによる炎症症状が原因と考えられ、疼痛により筋出力が十分に発揮できないために抵抗に抗した筋収縮力が得られなかったと考えられる。

③拮抗筋であるハムストリングスの短縮においては端坐位において膝関節を90°屈曲位より他動的に右膝関節を伸展させたときの体幹の伸展の有無を確認したところ、体幹伸展は認められなかった。ROM検査においても膝関節伸展「0°」であり、下肢長においても左右差がなかったことからハムストリングスの短縮は原因でないと判断した。

次に股関節内転においての疼痛はactive、passiveともに大腿外側(術創部)の皮膚につっぱる感じがあると訴えた。可動域に制限はなく、股関節内転筋の拮抗筋である大腿筋膜張筋の延長である腸脛靭帯を触診したところ強い張りを感じた。文献によると「皮膚に傷や炎症があるとその周囲の痛覚閾値が著しく低下する。これを防御過敏症という。損傷部位を麻酔すれば周囲の閾値も戻ることから、皮膚にはかなり広く枝分かれする神経線維があって、その一部が損傷されると分枝から未知の物質を遊離し、知覚過敏が起こる。」とされていることから大腿外側におけるつっぱり感は内転方向へ動かしたことにより皮膚が引き伸ばされたことにより神経線維が過敏に反応したことによる疼痛と判断した。

内転のMMTにおいては術創部が大腿外側面にあり、主治医より側臥位は避けるようにと本人から聞いたため、側臥位は避け背臥位で行なった。外転・内転ともに全可動域を動かすことが可能であり、抵抗を加えて行なってところ負けることなく耐えることができたため内転筋・外転筋ともにMMTにおいて「2」以上はあると考えられるが6週間の免荷において抗重力筋ではない股関節内転筋・外転筋においては立位をとれないことによって左と比べ筋収縮力は低く、筋力低下が起こると予測される。文献によると「最大筋力の20~30%の筋活動があれば筋力は維持され、20%以下であれば筋力は低下する。また絶対安静の状態で筋収縮を行なわなければ1日に1~1.5%筋力低下をきたす」ことが報告されていることからも健側である左股関節内転筋・外転筋と比べ右側の筋収縮力は弱く6週間の免荷により筋萎縮が起こりその結果の筋力の低下が考えられる。そのため右股関節内転・外転の筋力維持訓練が必要と考えられる。

膝関節屈曲においてはactiveにおいて「120°」、passiveにおいて「125°」であった。いずれも疼痛が発生し、passiveにおいて術部に「ズーン」とする痛みと大腿前面において、つっぱる感じであった。この痛みは股関節内転時に起こった疼痛と同じであり大腿四頭筋が伸張されたことで術創部の皮膚も引き伸ばされたことにより起こったものと判断した。

次に脚長差の有無について測定したが形態計測により棘下長、転子下長ともに左右差はなく脚長差は認められなかった。

周径においては膝蓋骨上より10cmの高さで患側である右のほうが1.0cm細くなっていた。膝蓋骨上より10cm上の位置は内側広筋の筋萎縮を知ることができる位置である。内側広筋が最も働く位置は膝関節を完全伸展位させるための最後に働く筋である。視診にいては筋の膨隆部が左と比べし少ない。しかし、膝関節伸展のMMTにおいては上記の結果より筋力低下の可能性は低い。またエクステンション・ラグにおいても自動・他動ともに差がなかったことから内側広筋が筋萎縮している可能性は低く、術創部の疼痛により十分な筋収縮が得られなかったと考えられる。以上のことから1.0cmの差は誤差と判断した。

下腿最大周径においては健側である左下肢と比較すると0.5cm細くなっていることがわかったが0.5cmであるため誤差とした。MMTにおいては本来、片脚立位において測定するのであるが右下肢が全免荷であるため立位は避け坐位で行なった。坐位において足底面を床に接地させ、踵だけを上げるように指示したところ可能であったことから重力に抗して可能であると考え下腿三頭筋の筋力は「3」以上あると判断した。両下肢を浮かせた状態で下腿三頭筋を触診したところ患側である下腿三頭筋の移動性が広く触った感じも張りがなく柔らかくなっていた。文献によると、「下腿三頭筋は歩行において立脚時に最も収縮力が強くなり、遊脚時には最も活動が低下している。」とされ、本症例において患側下肢は歩行時の遊脚時と同様に宙に浮いている状態である。この状態が6週間継続するため筋収縮力は低下しそれに伴い筋萎縮が起こると考えられ、現在の筋力より低下すると考えられるため、下腿三頭筋の筋力訓練も同時に行なっていく。

 歩行観察においては現在、平行棒内自立歩行である。開始肢位は両上手掌面で平行棒を把持し、右下肢は股関節・膝関節軽度屈曲位であり足部や軽度底屈位であり足部は床へ接していない。歩行においてはまず両手掌を平行棒から離し頭部・体幹を前方へ移動させ、体幹より前方の平行棒を両手掌で把持し、重心を前方へ移動させる。次に両肩関節伸展・肘関節屈曲により頭部・体幹を手掌に近づけ左下肢は振り子のように前方へ移動させる。左足部はH.O→F.Fとなる。この時片脚で体重を支えるため膝関節の屈曲が増加しクッションの役割をしている。

 松葉杖歩行においては両松葉杖で大振り歩行である。両松葉杖を回すように振り出し、前方へ接地するこのとき腋窩部分でしっかり挟み込め松葉杖を安定させるのだが挟み込むタイミングが合っていないため体勢が不安定となるため監視レベルである。

ADL検査においてはBathel Indexを用いた結果、80点であった。階段昇降・歩行・入浴の項目で減点があった。入浴においては抜鈎がされていないため入れない状態である。階段昇降においては両手で手すりを持ち片脚で行なっているが足部接地時に不安定となるため監視が必要となる。歩行においては現在、車椅子駆動は自立しているが、松葉杖歩行においては監視が必要となる。

 以上のことにより本症例の問題点として、

1次性Impeirment

#1.腸脛靭帯・外側広筋の切開による炎症症状

#2.大腿骨頚部骨折

2次性Impeirment

#3.大腿筋膜張筋・大腿四頭筋の筋出力の低下

#4.股関節内転・外転筋の筋力低下

#5.下腿三頭筋の筋力低下

が挙げられる。これらが阻害するADLとしては歩行動作能力である。現在、病室での生活はほとんどベッド上の生活であり、トイレ、食事以外ベッドで端坐位をとっていることが多い。右下肢が全免荷であるため歩行手段としては車椅子となってしまう。車椅子生活が長引くと健側下肢の筋力低下も考えられる。また、自宅での退院を考えると玄関まで15段の階段を上がらないといけないため階段昇降訓練も必要となってくる。手すりが右についているためそのことも考慮に入れて訓練を行っていく。また自宅では掘りこたつに座って過ごすことがあるため、起座位からの立ち上がり、または転倒時の立ち上がりを訓練する必要もある。寝室においては2階のベッドである。本人は1階に寝ることも考えたが畳の上で寝るようになると立位をとるのが難しくなるため2階寝るようになると言っていた。そのため自宅内においても階段昇降能力は必要である。自宅内においては階段・トイレ・浴槽には手すりがついているため自宅での生活は可能と考えるが洗顔や歯磨きなど普通では洗面所において立位で行なう動作が松葉杖を持っていることにより困難となるため、洗面所に椅子などを置いていただき座った状態で行なえるようにして頂く。また自宅での生活を考えたときに外出の際には15段の階段を降ることになるため安全面を考えて一人での外出は避け妻や娘に付き添ってもらうように心掛けて頂く。

本症例は妻と娘の3人で暮らしており、現在は仕事を退職されて1日を自宅で過ごすことが多いため仕事面での支障はないが妻と一緒に買い物へ出かけ際に車の運転し、また荷物を持ったり力仕事を手伝っていた。今回の受傷により6週間の免荷期間があり、車を運転することや買い物の際に松葉杖を持っているため荷物を持つこともできない。また妻は毎日、娘に送ってもらって病院へ来院しており、家族への負担も増えていると考えられる。そのため少しでも早く自宅での生活が望ましいが不便な動作が起こってくると考えられるため退院前には一度外泊をして生活してみることも必要と考える。

リスク管理として股関節の内転・内旋方向への動きを避けるため足を交差させることや坐位において足を組むことは避けてもらい、寝返りをする際にも患側の内転・内旋を避けるために患側へ寝返るよう指導していく。また自宅での生活となると病院とは違い患側下肢の注意が低下し、無意識のうちに患側下肢を床についてしまうことも考えられるため患側の靴下を脱いでおくとか、リビングや寝室に張り紙を張っておくなど自宅で荷重をかけないように意識させる工夫が必要と考える。

 

<問題点抽出>

1次性Impeirment

#1.腸脛靭帯・外側広筋の切開による炎症症状

#2.大腿骨頚部骨折

 

2次性Impeirment

#3.大腿筋膜張筋・大腿四頭筋の筋出力の低下

#4.股関節内転・外転筋の筋力低下

#5.下腿三頭筋の筋力低下

 

Disabirity

#6.歩行能力低下(#1.2.3.4.5)

#7.階段昇降能力の低下(#1.2.3.4.5)

#8.起座位からの立ち上がり能力の低下(#1.2.3.4.5)

#9.立位での整容動作困難(#1.2.3.4.5)

#10.術創部の疼痛による股関節・膝関節の運動制限(#1.2)

 

Handicap

#11.家族への負担が増える 

#12. 一人での外出が困難

#13.車の運転困難

 

<ゴール設定>

  • 短期ゴール(2w)

①両松葉杖での屋外歩行自立

②両松葉杖(片松葉杖)での階段昇降動作の獲得

③片脚での起座位~立位動作の獲得

④患側下肢の筋力維持

 

  • 長期ゴール(4w)

①患側下肢の筋力維持

 

<治療プログラム>

注意点

・術創部に対して疼痛をできるだけ起こさないようにするため背臥位においてリラックスできる姿勢で行なう

・過度な股関節の内転・内旋運動を避ける

・全免荷のため股関節に負担のかからないようにしっかり把持して行なう

 

  • 右下肢の筋力維持訓練 #3.4.5

目的:右下肢への荷重が禁忌のため筋力低下が考えられるため筋力維持を目的に行なう

方法:抵抗運動

・背臥位において股関節外転・内転筋に対して大腿部をしっかり把持しながら行なう。

・坐位において大腿四頭筋・下腿三頭筋に対して抵抗を加える。その際に表情や本人の意思を聞きながら行なう。

*股関節内転においては内旋運動が起こらないように足部をしっかり把持し、股関節外転位から行なう。

 

  • 平行棒内歩行訓練 #6.9

目的:松葉杖歩行の準備運動として2~3往復行なう。

 

  • 両松葉杖歩行訓練 #3.4.5.6.

目的:松葉杖歩行能力の獲得のため

方法:腋窩で松葉杖を閉めるタイミングを介助しながら行い歩行時の安定感の獲得を目指していく。

 

  • 階段昇降訓練 #7

目的:松葉杖を用いても階段昇降の獲得のため

方法:まず手本を見てもらってから昇りに関しては松葉杖先の1段上についてもらいしっかり安定を確認してから左足を松葉杖と同じ段についてもらう。降りに関しては先に左足を下ろしてもらう。このとき、右下肢が股関節屈曲・膝関節伸展方向へあったほうが階段に引っかからないため説明していく。

 

  • 床上動作訓練 #9

目的:片脚での起座位~立位までの動作能力の向上を目的に行なう

方法:股関節内転・内旋を伴わない方法で行なえる立ち上がり方を訓練する。

 

<参考文献>

  1. 細田多穂・柳澤腱編集 理学療法ハンドブック第3巻 協同医書出版社2003
  2. 細田多穂・柳澤腱編集 理学療法ハンドブック第1巻 協同医書出版社2003
  3. 上田 敏 リハビリテーション基礎医学 医書出版第2版 2002
  4. 中村隆一 基礎運動学第5版 医歯薬出版株式会社 2002
  5. 博田節夫 関節運動学的アプローチ AKA 医歯薬出版株式会社 2003

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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