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【関節リウマチ+TKA施行】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月25日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「関節リウマチ(RA)+TKA施行」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 関節リウマチの患者

  • TKAを施行
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「関節リウマチ(RA)+TKAを施行」の患者のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ,症例紹介

◆氏名:

◆性別: 

◆生年月日:

◆年齢:

◆家族構成:

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◆住居:持家一軒家平屋

◆主訴:右膝の痛み.握力がないので家事の時に不自由.

◆本人の要望:右膝の痛みをとりたい.

◆利き手:右手

◆趣味:特に無し

◆嗜好品:無し

◆視力:眼鏡・コンタクト使用

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Ⅱ,医学的情報

◆診断名:RA(歳頃から発症)

◆術式:右TKA・右足趾形成術 

◆現病歴:歳頃から発症

     〇〇年〇〇月〇〇日 左TKA・足趾形成術 当院にて施行

     〇〇年〇〇月〇〇日 5〜6年前より痛みがあり,昨年の手術の時もすでに痛かったが痛みの強い左から行った.右TKA・足趾形成術目的で当院入院

◆合併症:鉄欠乏症貧血、環軸椎亜脱臼(約8mm)

◆既往歴: 歳 虫垂炎Ope S病院にて

      歳 左卵巣摘出 当院にて

      〇〇年〇〇月〇〇日 突発性難聴(右)発症 

◆生化学検査:

CRP―2,62mg/dl ↑(正常値0,5以下)炎症の強い時上昇

ALP―367IU/l ↑(正常値105~320)胆道,肝臓に障害があると上昇

クレアチニン―0,5mg/dl ↓(正常値0,6~1,2)低値の場合,尿崩症・妊娠・筋ジストロフィー・多発性筋炎等

Ca―7,8mg/dl ↓(正常値8,3~10,2)低値の場合,副甲状腺機能低下症・慢性腎炎・ビタミンD欠乏症・カルシウム摂取不足

Fe―44ug/dl ↓(正常値70~180)低値の場合,鉄欠乏性貧血・赤血球増多症・二次性貧血

◆内 服 薬: 

プレドニン(プレドニゾロン):ステロイド性抗炎症剤

【適応】リウマチ疾患

【副作用】〈重大〉1)誘発感染症,感染症の増悪2)続発性副腎皮質機能不全,糖尿病3)消化性潰瘍,膵炎4)精神変調,うつ状態,痙攣5)骨粗鬆症,大腿骨及び上腕骨等の骨頭無菌性壊死,ミオパシー6)緑内障,後嚢白内障7)血栓症〈その他〉1)内分泌2)消化器3)精神神経4)筋・骨格5)脂質・蛋白質代謝6)体液・電解質7)眼8)血液9)皮膚10)過敏症11)その他(発熱,疲労感,ステロイド腎症,体重増加,精子数及び運動性の増減) 

 

マーズレンS

【適応】胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃炎

【副作用】1)消化器(悪心,嘔吐,便秘,下痢,腹痛,膨満感,嘔気,胃部不快感等)

 

サイドテック

【適応】非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍

【副作用】〈重大〉ショック,アナフィラキシー様症状(呼吸困難,ふるえ等)〈その他〉1)消化器(下痢,腹痛,嘔気,腹部膨満感,消化不良,嘔吐,食欲不振,おくび,便秘等)2)肝臓(GPT・GOT・Al-P・LDH・ビリルビンの上昇等)3)腎臓(蛋白尿,クレアチニン上昇,多尿,頻尿,BUNの上昇)4)血液(白血球増多,白血球減少,赤血球減少等)5)生殖器(閉経後出血,月経異常)6)皮膚(発疹,蕁麻疹,そう痒)7)精神神経(めまい,口渇,異常空腹感,頭痛,舌麻痺)8)その他〔ほてり,発熱,胸痛,浮腫(顔面,手足),心悸亢進,静脈炎,しびれ感〕

 

アザルプジンMTX(メトトレキサート) :免疫抑制剤

【適応】1)急性白血病,慢性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,絨毛性疾患(絨毛癌,破壊胞状奇胎,胞状奇胎)2)乳癌3)a)肉腫(骨肉腫,軟部肉腫等)b)急性白血病の中枢神経系及び睾丸への浸潤に対する寛解c)悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解4)胃癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強

【副作用】〈重大〉1)ショック,アナフィラキシー様症状(冷感,呼吸困難,血圧低下等)2)骨髄抑制(骨髄抑制,汎血球減少) 3)重篤な肝障害(劇症肝炎,肝不全,肝組織の壊死・線維化・硬変等) 4)重篤な腎障害(急性腎不全,尿細管壊死,重症ネフロパチー等) 5)間質性肺炎,肺線維症(発熱,咳嗽,呼吸困難等の呼吸器症状) 6)重篤な皮膚障害7)重篤な腸炎(出血性腸炎,壊死性腸炎等8)痙攣,失語,片麻痺,脳症,痴呆,麻痺,ギランバレー症候群,昏睡〈その他〉1)過敏症(発疹,蕁麻疹,そう痒,発熱等)2)血液3)肝臓4)腎臓5)消化器6)皮膚7)精神神経8)呼吸器9)生殖器10)その他(膀胱炎,倦怠感,耳下腺炎,結膜炎,低蛋白血症,動悸,感染症,胸部圧迫感) 

 

フォリアミン(葉酸)

【適応】1)葉酸欠乏症の予防及び治療2)消耗性疾患,妊産婦,授乳婦等)3吸収不全症候群4)悪性貧血の補助療法5)以下の疾患のうち,葉酸の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合:a)栄養性貧血b)妊娠性貧血c)小児貧血d)抗痙攣薬,抗マラリア薬投与に起因する貧血6)アルコール中毒及び肝疾患に関連する大赤血球性貧血7)再生不良性貧血8)顆粒球減少症

【副作用】1)消化器(食欲不振,悪心等)2)過敏症(紅斑,そう痒感,全身倦怠感等のアレルギー症状)3)その他(浮腫,体重減少) 

◆X線所見 :*画像添付推奨

◆Steinbrocker stage:    

 

3(手関節掌側脱臼・尺骨頭の背側脱臼)

3(手関節掌側脱臼・尺骨頭の背側脱臼)

手指

3(母指ダックネック変形・尺側偏位)

3(母指ダックネック変形・尺側偏位)

2↓

TKA

3(内反)

2→3

3(内反)

足趾

外反母趾形成術・2~5趾滑膜切除施行

外反母趾・CockUp Toe脱臼・転位+

◆Steinbrocker classの分類:2(動作の際に,1ヵ所あるいはそれ以上の関節に苦痛や運動制限はあっても,普通の活動なら何とかできる程度の機能)

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◆ADL能力評価(藤林の分類):

移動動作―Ⅲb(杖などを用いて立ち上がり・階段・0,5〜1Km歩行可

上肢動作―Ⅱ(通常の日常生活なら十分出来るが,関節不快感や可動域制限はある)

トイレ・入浴動作―Ⅱ(通常の日常生活は十分出来るが,関節不快感や可動域制限は有)

◆リハ開始日:〇〇年〇〇月〇〇日

 

Ⅲ,他部門よりの情報

◆Nsからの情報:手術が予定通り行えるように体調に気をつけていく.

◆Drからの情報:今回も去年の左に引き続き疼痛除去目的に右のTKAと足趾形成術を行う.術後の筋力低下が考えられるので,筋力増強訓練を行っていってほしい.

 

Ⅳ,理学療法評価(術前)

◆全体像

リハビリ室に傘杖独歩にて来室.ゆっくりとした口調で穏やかな印象.

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◆形態測定

<下肢長>単位:cm
 

左右差

下肢長(SMD)

74,5

74,0

-0,5

下肢長(TMD)

68,5

69,0

-0,5

大腿長(大転子~膝裂隙)

33,0

34,0

1,0

下肢長(膝裂隙~外果)

35,5

34,5

-1,0

コメント: SMD・TMDにおいて脚長差は認められない.大腿長・下腿長においては,左膝のTKA術を施行している事から差が生じたものと考える.

 

<下肢周径>単位:cm
  

左右差

大腿

パテラ上縁0cm

37,0

39,5

2,5

 

     5cm

39,0

42,0

3,0

 

     10cm

42,0

43,5

1,5

 

     15cm

46,5

47,0

0,5

下腿

最大(腓骨頭下10cm)

30,0

29,5

-0,5

 

最小

21,0

20,5

-0,5

*背臥位にて計測

コメント: 右膝の腫脹が認められる.

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◆ROM-T

単位:度   

  

備考

屈曲

170(170P)

160(170P)

 
 

伸展

60

60

坐位

 

外転

180

180

 
 

内転

0

0

 
 

水平屈曲

120

115

坐位

 

水平伸展

30

30

坐位

 

外旋

70(75P)

90(95P)

 
 

内旋

75(80P)

75(80P)

 

屈曲

145(155)

140(145P)

 
 

伸展

0

-10(-10P)

 

前腕

回内

100

90

 
 

回外

95

100

 

背屈

20(30)

-5(0 C)

手・手指は坐位にて

 

掌屈

35(40PC)

55(60C)

 
 

橈屈

0 C

0 C

 
 

尺屈

30

45

 

母指

橈側外転

(30)

(60)

 
 

尺側外転

(0)

(0)

 
 

掌側外転

(35)

(55)

 
 

掌側内転

(0)

(0)

 
 

MP屈曲

(70)

(20)

 
 

MP伸展

(-10)

(-5)

 
 

IP屈曲

(-10)

(50)

 
 

IP伸展

(80)

(30)

 

示指

MP屈曲

(60)

(65)

 
 

MP伸展

(35)

(45)

 
 

PIP屈曲

(65)

(85)

 
 

PIP伸展

(20)

(0)

 
 

DIP屈曲

(75)

(65)

 
 

DIP伸展

(0)

(20)

 

中指

MP屈曲

(75)

(65)

 
 

MP伸展

(40)

(60)

 
 

PIP屈曲

(70)

(80)

 
 

PIP伸展

(0)

(10)

 
 

DIP屈曲

(60)

(80)

 
 

DIP伸展

(0)

(5)

 

環指

MP屈曲

(80)

(70)

 
 

MP伸展

(60)

(50)

 
 

PIP屈曲

(80)

(90)

 
 

PIP伸展

(15)

(0)

 
 

DIP屈曲

(70)

(65)

 
 

DIP伸展

(0)

(20)

 

小指

MP屈曲

(85)

(55)

 
 

MP伸展

(70)

(40)

 
 

PIP屈曲

(90)

(100)

 
 

PIP伸展

(0)

(0)

 
 

DIP屈曲

(80)

(85)

 
 

DIP伸展

(0)

(5)

 

屈曲(膝屈曲位)

105(115)

30 P(100P)

 
 

屈曲(SLR)

90(95)

95(105P)

 
 

伸展

10(20)

10(25)

側臥位にて

 

外転

(30)

(30)

 
 

内転

(10)

(10)

 
 

外旋

(55)

(20 P)

 
 

内旋

(25)

(25)

 

屈曲

125(125P)

70P(75P)

 
 

伸展

5

0

 

背屈(膝屈曲位)

30(30)

25(30)

 
 

背屈(膝伸展位)

20(25)

10(20)

 

底屈

30(30)

30(30)

 

足部

外がえし

5(10)

10(20)

 
 

内がえし

30(30)

20(30)

 

*(P)痛み,(C)拘縮   *自動(他動)

*特に記載していないものは全て背臥位にて計測

 コメント:右肘において痛みによる伸展制限有り.両手関節において拘縮がみられ,掌側脱臼と尺骨頭の背側脱臼がみられる.手指においてはかなり変形が進んでおり,母指MP関節以外において過伸展がみられる.母指はダックネック変形が,2~5指には尺側偏位がみられる.左膝においてTKA術後であるが反張がみられる.右股・膝においての制限は右膝の疼痛によるものである.

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◆MMT

  

肢位

屈曲

4

4

上肢は全て坐位にて行う

 

伸展

4

4

 
 

外転

4

4+

 
 

外旋

4

3+

 
 

内旋

4

4

 

屈曲

5

5

 
 

伸展

5

4

 

前腕

回外

4

4

 
 

回内

5

4

 

掌屈

3

3

 
 

背屈

4

4-

 

股関節

屈曲

4

3

坐位

 

伸展(膝屈曲位)

5

腹臥位(右膝が痛く実行不可)

 

伸展(膝伸展位)

5

腹臥位(右膝が痛く実行不可)

 

外転

4

4-

背臥位

 

内転

4

4-

背臥位

 

外旋

3

坐位(右膝が痛く実行不可)

 

内旋

3

3

坐位

膝関節

屈曲

3

2

坐位(右膝の痛みによる)

 

伸展

5

2

坐位(右膝の痛みによる)

足関節

底屈

4+

4

背臥位

 

背屈

4

4

背臥位

握力

 

46mmHg

42mmHg

 
  

0 Kg

0 Kg

 

コメント: 右膝の痛みにより筋力発揮が右股・膝関節周囲筋において見られない.又,全体的に筋力低下がみられる.握力低下が著しい.

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◆疼痛検査

安静時痛

首の後がこわばる(VAS 2~3)

 

運動時痛

[歩行時]右膝の痛みが大きい.(VAS 8)

杖を突くので左手首も痛い.(VAS 3~4)

左足第4中足骨あたりがジンジン痛い.(VAS 3)

 

[姿勢変換時] 寝返り・起き上がり時等の姿勢変換時,右膝が痛い.(VAS 8)

夜間痛:体が重い感じ.寝返りをうって側臥位になると肩・膝が特に痛い.(VAS 6)

 

コメント:首のこわばりは環軸椎亜脱臼の影響によると考える.夜間痛の側臥位の痛みは,関節に負担がかかっている為と考える.

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◆ADL

Barthel Index 100/100点

Leeの間変法  37/63点

 

食事:自立 箸を使用し行う.

移乗:自立 両手で拳を作り基節骨をついて押し上げながら立ち上がり,歩行して行う.

整容動作:自立 歯磨きにおいて力が入らず時間がかかる.

トイレ動作:自立 病棟内トイレ使用.着脱に時間がかかる.

入浴動作:自立 高めのシャワーチェアーを使用し,柄の長いブラシを使用して行う.

歩行:自立 左に傘杖をついて独歩.

階段昇降:自立 1段ずつ行う.降りるときは後ろから降りたほうが楽である.

更衣動作:自立 多少時間がかかるが,仕上がり度も良い.小さいボタンは留められない.

排尿・排便の管理:自立 

 コメント:Barthel Indexにおいては100点となるが,Leeの間変法においては37/63点とかなり点数が下がる.これは実際行えてはいるが,時間がかかったり痛みをこらえて何とか行っている為であると考える.

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10m歩行

 

時間

歩数

歩幅

歩行速度

歩行率

杖無し(5日)

12,88秒

25歩

40,0cm

46,5m/min

116,3step/min

杖無し(11日)

12,32秒

24歩

41,6cm

48,7m/min

117,1step/min

杖有り(5日)

14,25秒

27歩

37,0cm

42,1m/min

113,8step/min

杖有り(11日)

12,16秒

23歩

43,4cm

49,3m/min

113,6step/min

 

時間

歩数

歩幅

歩行速度

歩行率

杖無し(平均)

12,6秒

24,5歩

40,8cm

47,6m/min

116,7step/min

杖有り(平均)

13,2秒

25歩

40,2cm

45,7m/min

113,7step/min

コメント:杖使用時の方が杖無し歩行より若干であるが歩幅も小さく,時間も遅い.歩幅・歩行率ともに正常範囲である.

 

◆姿勢アライメント

[後方より] 頸部左側屈.右肩下制.右骨盤下制.骨盤左方移動(体幹左側屈).両肩甲骨下方回旋.両膝間大.

コメント:右膝の疼痛の為常に右膝は軽度屈曲位にある為,この代償として頸部左側屈.右肩下制・右骨盤下制・骨盤左方移動(体幹左側屈)がおこっている.

 

◆歩行分析

スターティングポジション

右前額面 耳垂・膝より後方を通る.(肩峰―大転子―外果の前方2cmは直線上)      

左前額面 耳垂より後方を通り,膝より前方を通る.

矢状面  後頭隆起と殿裂より右方を通る.(棘突起―両膝間―両内果間は一直線上)

 

右立脚期(踵接地期):ほとんどHCは消失しすぐにFFとなる.

右立脚期(足底接地期):股・膝関節屈曲.足関節背屈.右骨盤は下制している.

右立脚期(立脚中期):股・膝関節屈曲.足関節背屈.右骨盤は下制し若干左方へ移動する.

右立脚期(踵離床期): HO期は短くすぐにTOとなる.股関節中間~やや屈曲.膝関節屈曲.足関節背屈.

右立脚期(足尖離床期):強い蹴りだしは見られず,体幹やや左側方移動する.股関節中間~やや屈曲.膝関節屈曲.足関節底屈.

右遊脚期(加速期):股関節屈曲,膝屈曲,足関節底屈.

右遊脚期(遊脚中期):股関節屈曲,膝屈曲,足関節中間位.

右遊脚期(減速期):股関節屈曲,膝屈曲,足関節底屈.

*左手に傘杖を突いた2点1点歩行である.常に頸部軽度左側屈,右肩下制し,骨盤は右に下制・左方移動し,体幹は軽度左側屈している.上肢の振りは小さく,歩幅は左の方が大きい.歩隔も約3cmと若干狭い.肩甲帯・骨盤帯の回旋はほとんど見られない.足角は右約0°左約7°である.W―Knee actionは消失している.

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◆動作分析

寝返り:背臥位→右側臥位

殿部を持ち上げ骨盤を左にずらす.頸部右回旋し,左の肩を屈曲内転して体幹前面に持ってくることで左肩甲帯を右回旋する.体軸内回旋により骨盤帯が右回旋して寝返る.左も同じようにして行う.遂行時間は速い.

 

起き上がり:頸部軽度屈曲し,体幹を前屈にておこし左右片方ずつ肘立て,両前腕支持となる.体幹を右回旋し右前腕に重心を移し,左肘を後方に伸展して左手掌支持となる.次に体幹を左回旋し左手掌面に重心を移し右肘を後方に伸展して両手掌面支持となる.両手掌面を交互に前方移動することで体幹をおこし長坐位となる.遂行時間は速い.

 

立ち上がり:端坐位より両手で拳を作り基節骨部でベッドを押して立ち上がる.

コメント:基本動作においては右膝の痛みは伴うが,遂行時間は速い.

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Ⅴ,問題点

Impairment Level  

#1.疼痛(特に右膝 両手・両手指・左第4中足骨頭・頸後部)

#2.両下肢筋力低下

#3.右肘関節伸展・右膝関節屈曲関節可動域制限

#4.関節変形(手関節・手指・右膝・足・右足趾)

#5.握力低下

#6.両肩・右肘伸展・両前腕・手関節筋力低下

 

Disability Level

#7.歩行能力低下(#1,2,3)

#8.更衣・整容・入浴・トイレ動作の能力低下(#1,4,5,6)

 

Handicap Level

#9.家事困難(#1,2,3,4,5,6,7)

#10.家庭復帰困難(#1,2,3,4,5,6,7)

 

Ⅵ.PTプログラム(術前)

1.アイシング(右膝) 20分―#1

 

2.下肢筋力増強訓練(各20回)―#2,4,5,6,7

両下肢パテラ・セッティング

股関節伸展筋群――背臥位にて両膝の後に枕を置き,Hip Upを行う

左膝関節伸展筋――端坐位にて膝の屈伸(赤セラバンドを下腿近位部につけて)

左股関節外転筋群―背臥位にて左股関節軽度屈曲し外転運動

 

3.握力増強訓練―#4,6,7

テニスボールの把持訓練

 

4.DYJOC BOARD―#1,2,5

 

5.日常生活指導―#1

①関節にできるだけ負担をかけないように洋式の生活を心がける.

②小関節より大関節を使う.

③自助具の検討

④ホームエクササイズ

・腹式呼吸

・自動ROM訓練

・筋力増強訓練

・ストレッチング

 

Ⅶ.ゴール

STG(2w―術前):両下肢筋力増強(特に大腿四頭筋)、握力増強

LTG(4w―術後):P-トイレへの移乗自立

FG:家庭復帰

 

Ⅷ.考察

 本症例は慢性関節リウマチ(以下,RAと略す)により関節変形が進行しており(両手関節・手指・右膝関節・両足関節・両足趾においてほぼStage3),疼痛軽減目的で右TKA・右足趾形成術を予定している.

本症例において最大の問題点は右膝の疼痛である.これは,5~6年前から痛みが起こっており,それに伴う歩行能力低下により両下肢の筋力低下を引き起こしている.更に術後安静による筋力低下が考えられる事から積極的に筋力増強訓練を行っていく.訓練方法は,大腿四頭筋の筋力増強訓練を中心に行うが,右膝に関しては疼痛が強い為,DYJOC訓練の前にアイシングを施行し疼痛軽減した上で行う.また関節に負担をかけないパテラセッテングは,300~400回行うことで500m歩行したのと同じ筋力増強効果が大腿四頭筋にみられる1)と言われていることから,積極的に行っていく.左膝の大腿四頭筋の筋力増強に関しては,術後の右下肢免荷時期の移動・移乗動作時がスムーズに行えるように,パテラセッテング以外に等張性筋力増強訓練も行い積極的にアプローチしていく.この右膝の疼痛は,TKA術施行により改善される事から,歩行能力も改善でき更に更衣・整容・入浴・家事動作も,改善されると考える.

変形(両母指ダックネック変形・両2~5指尺側偏位・両手関節掌側脱臼・両尺骨頭背側変形)による手指の巧緻動作能力低下と握力低下により更衣・家事動作能力低下を起こしている為,握力低下に対しテニスボール把持訓練により握力増強訓練を行い,巧緻動作能力低下に関しては,これ以上の変形が起きないように関節に負担をかけない関節保護に沿った動作の指導と自助具の検討を行っていく.

その他の疼痛に関して,手関節においては特に左手関節において左手で杖を突き歩行する事により,痛みが発生している為グリップにスポンジを巻いた上に包帯で巻いて大きくし改善を図るようアプローチする.左足趾に関しては,変形(両足関節変形・CockUp変形)を起こしている為足底板等の処方が必要であると考える.

 右肘関節伸展・右膝関節屈曲関節可動域制限は,疼痛によるものであり,右膝に関してはTKA施行により改善できると考える.

ゴールとして術前までをSTGとし,術後安静での筋力低下による移乗・移動動作能力低下予防の為に,両下肢筋力増強をあげ積極的にアプローチしていく.また家事動作にも有用な握力増強をあげ訓練していく.

LTGは術後2wとし, P-トイレへの移乗自立をあげた.この時期は完全免荷となる為,左下肢の筋力を片足立位バランスがきちんと取れるか評価してから,訓練を行い転倒の予防に努める.本症例は合併症として骨粗鬆症があることから,転倒による骨折などには十分に留意する.

FGとして,家庭復帰・主婦業復帰をあげ,主婦業復帰に対し家事動作の指導・自助具の検討などを行い,今後の家事動作による関節の負担の軽減を図るようアプローチしていく.

本症例は貧血も合併している事から疲労には十分に留意し,また過度の訓練は理学療法に対する信頼性を損なう2)と言われている事から,無理をせず行うよう注意していく.運動に関しては,運動を続けている人ほど機能障害が少なくて済む1)と言われている事から,ホームエクササイズを指導し家庭でも続けるように指導する.

その他合併症として環軸椎亜脱臼を約8mm起こしており,中等度である事から今後も高い枕を使用しない等,更なる脱臼の予防に努め,重篤な脊髄症状を起こさないように注意をする様指導も行っていく.

最後にRAは,慢性・炎症性・全身性疾患であり,疼痛・緩解を繰り返し進行していく為、変形・疼痛軽減の為の関節保護の原則を守り動作を行うようにADL指導を行い,心理面においても不安を抱えている方が多いので,言葉使いには十分に配慮していく.

 

Ⅸ.引用・参考文献

1)石原 義恕 他:リウマチテキスト.南山堂 p96~97 

2)細田 多穂 他:理学療法ハンドブック 協同医書出版 2000 p199-225

3)岩倉 博光 他:臨床リハビリテーション 慢性関節リウマチ 医歯薬出版株式会社 1990

4)安保 雅博:リハビリテーションにおける評価.医歯薬出版株式会社.1996.p275-284

5)大田 近雄:理学療法技術ガイド.文光堂.2001.p995-999

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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