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【統合失調症+医療保護入院】レポート・レジュメの作成例【実習】

2022年1月2日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「統合失調症+医療保護入院」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 統合失調症の患者

  • 医療保護入院をした

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「統合失調症+医療保護入院」の患者のレポート・レジュメ作成例

(1)はじめに

今回、臨床実習において作業療法学科学生(以下、OTS)は、長期入院している統合失調症の男性を担当し、評価および考察したのでここに報告する。

 

(2)症例紹介

①氏名: 

②性別:男性 

③年齢:歳

④生年月日:

⑤住所:

⑥診断名: 統合失調症

⑦入院形態: 医療保護入院

⑧入院・通院歴:〇〇年〇〇月〇〇日 S病院初診

        〇〇年〇〇月〇〇日 当院初診・入院

⑨家族構成:Key Personは兄。本症例の入院・治療費以外の金銭は兄が振り込んでいる。たまに連絡あっていたものの、最近は引っ越した(未確認)様子で面会にも来なくなった。面倒を見たり、たまに面会に来ているのは近所に住んでいる叔母で、本症例の父方の兄弟(兄)の妻。離婚した実父の行方は全くわからない。

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⑩教育歴:                                                                   

⑪知能指数(WAISによる):IQ=68(H5,13時点) 

⑫職歴:

⑬婚姻歴:なし

⑭保険:

⑮性格:神経質、引っ込み思案

⑯趣味:ゲートボール

⑰嗜好: たばこ 13本/日

⑱身長:cm

⑲体重:kg

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(3)臨床像

現病歴:祖母と2人暮らしであった。祖母が高齢になったため、〇〇年〇〇月〇〇日よりホームヘルパーが来て家事を手伝うようになる。その頃から本症例は何もしなくなり、不定期に勤めていた土木作業の仕事にも行かなくなった。その後祖母が本院に入院したため、本症例は一人暮らしをしていたが生活の面倒は近所に住む叔母がみていた。日中は寝ていて夜中に置きだし、隣家へ行き、意味不明の発言をしたり、ガスをつけっぱなしにしたり、必要もなく焚き火をするなどの行動がみられ始め、目が離せなくなる。時に独語も見られていた。このため、保健センターに相談に行き、S病院を進められ、〇〇年〇〇月〇〇日初診し、投薬を受ける。〇〇年〇〇月〇〇日に「具合が悪い」と兄に電話があり、駆けつけたところ流延ひどく、S病院に電話したが担当医不在と断られたため、兄に連れられて本院初診、初回入院となる。

〇〇年〇〇月〇〇日〜(1週間)保護室

〇〇年〇〇月〇〇日 OT処方箋作成

〇〇年〇〇月〇〇日 生活保護申請(それまでは国民健康保険)治療費と入院費のみ年金と併用となる。

〇〇年〇〇月〇〇日 準開放病棟へ移棟

〇〇年〇〇月〇〇日 開放病棟へ移棟

〇〇年〇〇月〇〇日 急性期病棟へ移棟

※Ns学生が受け持ちにつき、本人断れず精神的に不安定となり、自分から「急性期病棟に行きたい」とNsに申し出た

〇〇年〇〇月〇〇日 開放病棟へ移棟(症状改善し、本人からも意欲みられたため)

主病名:統合失調症

合併症:薬剤性パーキンソニズム、便秘症、慢性肝炎、不眠症

*禁忌薬物・・ルーランにて肝障害

 

(4)現在の治療

  • 薬物療法

【毎食後】

<リスパダ-ル錠>1mg 2T

適応)統合失調症

作用)抗精神病薬、ドパミンD2・5HT2拮抗薬

副作用)眠気、ふらつき、口渇、倦怠感等

<アキリデン錠>1mg 2T

適応)特発性パーキンソニズム、その他のパーキンソニズム、向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア・アカシジア

作用)抗パーキンソン剤

副作用)口渇、悪心、便秘、下痢、発疹等

<プロルモン錠>20mg 6T

適応)慢性肝疾患

作用)肝機能改善剤

副作用)色素沈着、嘔気、胃腸障害、下痢等

<酸化マグネシウム>3g 

適応)便秘症

作用)緩下剤、制酸剤

副作用)高マグネシウム血症、下痢等

 

【眠前】

<レンデム錠>0,25mg 1T

適応)不眠症

作用)睡眠導入剤

副作用)残眠感、眠気、ふらつき、頭重感、だるさ、めまい、頭痛、倦怠感

 

【便秘時】

<ラキソセリン>数滴

適応)便秘症

作用)緩下剤          

副作用)腹痛、復鳴、悪心・嘔吐等

 

  • 入院精神療法

男性の開放病棟入院。一番最近の外出は昨年の○月。実兄が迎えにきた。本人の話ではテレビ等見ながら過ごした様子。

 

  • 作業療法

ゲートボール、グランドゴルフ、歩こう会、ミニバレー、カラオケ、ビデオ鑑賞等に参加。ゲートボール大会の選手になっており、○月はゲートボール大会の練習にほぼ毎日参加している。〇〇年〇〇月〇〇日時点では、週1~2回のOT活動参加。大体週1~2回のペースが多い。○月時点の看護日誌では「きついけど、頑張って参加している」と答えている。

 

(5)他部門からの情報

  • 主治医からの情報

診察は週一回、火曜の午前中。診察時の様子は、問いかけに対して答えるか静かに頷く程度で、本人から積極的な訴えはない。現在は問いかけに対してなんとか反応が出来、疎通性がとれているが、状態が悪いときは昏迷を呈していた。IQが低いため思考内容が単純で貧困である。MRもあるが、SCの影響もある。言語的表現が、豊かではないため、精神症状がどのくらいか理解すのが困難であった。そのため、投薬量を調節しながら、精神症状の程度の把握を行なってきた。独語・空笑は隠しているわけではないが、問いかけに対してたまに「きこえてくる」と漏らすときもある。しかし幻聴内容は一貫しない。今後は長期入院が予想される。年齢が若いため、長期的なプランとしてはグループホームも考えられないこともないが、まずは院内での生活障害を少なくし、できるだけ社会性を身につけていく。

 

  • 担当看護士からの情報

服薬はナース管理。食後デイルームにて薬を渡すと、その場で飲薬する。服薬の自己管理に関して本人から意欲が見られれば、1日~3日,4日~7日分と段階を追いながら進めてもいけるのだが、現在はそのような訴えはない。問題は自発性の低下であり、声かけ等接触を持ち、状態の把握に努めることや、活動を通じて他患とのコミュニケーションがとれるようになる事、気分転換に外出を計画すること自室で過ごす時間を短くすることなどおこなっていきたい。活動には促がしによって活動に参加することも多い。最近たばこの量が増えているため、気分がたばこにいかないよう関わっていってくださいとのこと。

 

  • ソーシャルワーカーからの情報

家族の面会はほとんどない。キーパーソンである兄の面会はほとんどなく、時々近くに住んでいるおばが面会に来程度。今後は自立生活は困難だと予想されるが、家族状況からみても退院後引き取ってくれるところはなく、院内生活の質が上がれば救護施設等の入所が考えられる。

 

(6)OTS評価

  • 外見

小柄で小太り。幼く見える。服装は不潔感は少ないが、だらしない感じ。髪は短髪で黒髪に白髪交じり。色黒で目は大きく、唇は赤みが少なく紫色っぽい。下唇に直径5mmほどのほくろがある。終始そわそわしており、じっとしていられない。

 

  • 表情

無表情であることが多い。話を聞くときには視線を合わせることができるが、調子の悪そうな時は表情冴えず、うつむきがちである。問いかけへの反応は、静かに頷く程度。会話時もほぼ無表情であるが、時折笑顔が見られることもある。

 

  • 精神症状

活動には、放送や声かけ等で促せば出てくることも多いが、自発的に参加することはほとんどない。活動以外は、ベッドに腰掛けたり、横になったりして自室で過ごすことが多く、その他ではデイルームで喫煙するかテレビを見る程度である。日中でもスタッフや他患に積極的に交流する様子はほとんど見られない。以上のことから意欲の低下や無為等の陰性症状が考えられる。時に独語や空笑がみられる。

 

  • 心理・感情面

OTSとの会話時でも、頷くと同時に小走りに食事を貰いに行ったり、ゲートボールが始まっているのを見て突然走り出すなどの行動がみられる。興味の対象が視界に入ると、そのことに集中するような傾向がある。

 

  • 知的機能

IQは68で、境界という診断を受けている。思考内容が単純で貧困とのこと。

 

  • 行動

日中はゲートボールなど病棟外に出て、活動に参加することも多い。病棟では自室で過ごすことが多いが、時々促されて娯楽室でNsと花札をしている。デイルームでは喫煙したり、ぼーっとしたりテレビを眺めていたりする。

<一日の流れ>

 6:00前  起床 起床後は、喫煙所で喫煙したりして過ごす。

 7:40~  朝食

 9:00前後 検温  月・土・日はデイルームで、その他は自室にて行なう。

10:00~  AM活動

11:45~  昼食   

13:30   ラジオ体操

14:00~  PM活動

15:00~  おやつ  

18:00~  夕食 夕食後は19:30~20:00頃から自室ベッドで横になり、テレビはあまりみない。火曜の20:00はテレビの歌番組を見て過ごしていることもあるが、眠前薬を済ますと自室に戻って就床する。

20:30 眠前薬・就床 デイルームにて行なう。

<活動内容>

   AM             PM

月曜 歩こう会           OTレク

火曜 診察・売店          入浴

水曜 掃除・OTレク        ゲートボールorグランドゴルフ

木曜 リネン交換・OTレク     OTレク

金曜 歩こう会           入浴

土曜 グランドゴルフ        ――――

※ 歩こう会やOTレク等については、全てに参加するわけではない。

――――はとくに何の活動もない日

 

  • 活動への参加状況と作業遂行能力

<歩こう会>

院外を一時間ほど歩く。ペースは速目だが、遅れることはない。慣れているようで、途中まではそんなに疲れた様子はみられない。終わったあとは、「きつかった」と話している。途中の休憩時は、他患とともに喫煙し、他患の話を聞いて笑顔がみられることもある。肥満解消・予防のため、歩こう会に参加しているとのこと。

<ゲートボール・グランドゴルフ>

表情は無表情であることが多い。OTRの声かけやショットが上手く決まると笑顔がみられることもある。OTSが、勝っていることやゴールしたことを話題にしても表情がわずかに和らぐ程度で「はい」程度の反応しかない。他患と話すことはなく、ゲームの行方をじっと追う。ゲートボールでは、チーム戦であることからか、自分の順が来ると他患からの指示を待つ。指示を貰う時は、その患者の方をチラッと見るぐらいで、頷いたりなどの反応はしない。意見したり考えたりする様子もなくただ指示に従う。指示に対して苦痛を感じている様子はない。

<OTSとの花札>

表情は無表情、問いかけに対して頷き等の反応である。自分の出す番になると、時間をかけてジーッと考える。OTSが配り方や点数がわからず問い掛けると、言葉は少ないが、指で指示したり頷いたりしながら教えてくれる。

<ビデオ鑑賞(OT)>

はじめから最後まで、席を立たずに見ている。見ている間は、普段よりそわそわする様子も少ない。どんな場面でも表情の変化はないが、鑑賞後ビデオはおもしろかったと無表情に話している。

<リネン交換>

ベッドが隣り合っているK,Y氏と、お互いのシーツ交換を手伝いあう。シーツは、デイルームに自分の分のみ取りに来る。2人の間に会話や声かけはみられないが、手際よく行なっている。OTSとともにシーツ交換行なう時も、同様で無表情。

 

  • 対人関係

<対Dr>問診中の態度は静かに頷くことが多い。

<対Ns>いつも大人しく物静か。話しかけても頷いたり、反応は少ない。活動には促せば参加する。最近はNsの促しによって参加率も良い。

<対OTS>オリエンテーションでは、OTRがOTSを紹介するとうつむいて、照れたように笑っている。はじめは声小さく受け答えする。OTSが名前をいうと、本症例も一歩前に出てOTSと向き合い、OTSに視線を合わせてはっきりと名前を言った。表情は終始照れたような笑顔で、恥ずかしそうな様子であった。普段は、問いかけに対して瞬きしながら静かに頷くことが多い。時々「花札しますか?」「下に行きましょうか?」等自発的に提案してくることもある。OTSが笑顔だと症例も笑顔になることが多い

<対他患>自分から話し掛けることはほとんど見られない。話し掛けられると静かに答える程度。ゲートボール大会でよい成績を収めて帰ってきて、他患から話し掛けられているときは笑顔も見られていた。おとなしい性格のため、他患からたばこやジュースをたかられたりする。自室ではベッドが隣同士のK,Y氏と向かい合って話していたり、場を共有しているといった感じの方が多い。ゲートボールではとくに、K,T氏の指示に従うことが多い様子。時には、他患に促され、歌に合わせて本症例が踊るような場面もある。

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  • ADL

食事:食事時間になると列に並び、デイルームの席について食べる。食べ方はゆっくりで箸を使用する。他患との会話はなく、無表情。食欲はあり、配膳後食事が余っていると、おかわりをすることもある。昼食(12:45)夕食(18:00)時間にはデイルームにでて来ることが出来、促しは必要としない。ここ数ヶ月は毎食粥食。粥食を食べているのは肥満防止のため。本人も「太り気味」という自覚があり、「粥食になって大分痩せた」などとも話しているとのこと。朝食時間(7:40頃)にも促しなしでデイルームに出てこられる。朝はパン食であることも多い。

整容(整髪):とくに行なっていないが、短髪のため寝癖は見られない。

衛生(洗面、歯磨き):朝は促しによって行なっている。夜は行なっていない。際立って不潔感を感じるということはない。

更衣:更衣はおもに入浴時に行なう。入浴時でも、汚れていなければ、下着のみ換えて同じ服を着ることも多い。入浴時に新しい下着のみもって行き、入浴後、風呂場~自室までは今まで着ていた服を着用してきて、自室で新しい服に着替える。活動後、汗をかいた時は更衣することができる。

入浴:週二回、火曜と金曜が入浴日となっており、毎回必ず入浴を行なっている。洗体もきれいに行なっている。風呂場は2階(症例の病棟は3階)にある。

排泄:病棟トイレにて行い、介助や促しはいらない。緩下剤により排便調節を行なっている。

睡眠:睡眠は朝まで良好。夕食後、19:30~20:00から自室ベッドで横になり、眠前薬(20:30)を済ますと就床する。朝は6:00前に起床。

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  • APDL

健康管理(服薬):Ns管理。毎食後と眠前はデイルームにて薬を貰い、その場で自分で飲む。拒薬はない。

洗濯:病棟内にある共同の洗濯機を使用し、自分で行なう。洗い終わると自室に干す。干したものは乾いても取り込まず、更衣時に干してあるのから使用することが多い様子。

掃除:掃除の日には清掃しているが、念入りにするといった感じはない。

整理整頓: 日中は掛け布団を二つ折りにしてあり、ベッド回りの様子からもとくに不潔な印象は受けない。洗濯物を干しっぱなしにして、そこから使用している状況から毎回きちんと整理整頓行っているといった感じではない。

買い物・金銭:小遣いは月2万。金銭はナース管理。事務所にお金を入れるのは実兄。小遣いや生活費(入院費・治療費以外)は実兄のお金であり、本症例もそれをわかっている。そのため無駄遣いはなく、買い物時もジュースとたばこしか買わない。

電話の利用:なし

 

  • 病感・病識

Drの話では、病識・病感を持つには、自分の行動を振返ったり、そこから複雑な考えを思い巡らせるなど、ある程度の理解力を要する。本症例については、知能が低く思考内容が貧困であることから、病識・病感ともにないとのこと。しかしNs学生が受け持ちについた際、断れず精神的に不安定となり、自分から「急性期病棟に行きたい」とNsに申し出たことはある。

 

(9)問題点

#1 自発性・意欲が減退している

#2 対人交流が狭い

#3 感情表現が少ない

#4 自己表現が少ない            

#5 自己管理能力の低下(服薬・たばこ・金銭について)

 

(10)目標設定

Sort Goal

#1 他患との交流の機会を増やす

 

Long Goal

#2 OTSとの関係作り

#3 自発性を向上させる

#4 自己表現・感情表現が出来るようになる

#5 身体機能の維持・向上

 

Final Goal                     

#6 院内で過ごしやすく、健康的な生活を獲得する

 

(11)治療プログラム

  • トランプ・花札

時間)空いている時間

場所)娯楽室

目的)・OTSとの関係作り・活動性の向上・他患との交流の機会を増やす

方法)症例が他の活動への意欲が低く、自室で過ごしている時などに促して実施する。OTSと一対一で行なう。

 

  • アンデルセン手芸

時間)30~60分。金曜のAM その他空いている時間

場所)OT棟またはDルーム

目的)・OTSとの関係作り・自発性、意欲の向上 ・集中力を高める

方法)棒作りの作業などは、デイルームで空いている時間を利用しながら行う。編む、色付け等の作業は出来る分は病棟で行い、その他は金曜のAM手工芸の時間を利用して、OT棟で実施する。困難な作業は、OTSが介入しながらおこなっていく。始めは簡単な作品を選び、出来ればレベルを上げて2作品の作成を目指す。

 

  • 折り紙の壁飾り(手工芸)

時間)週一回。16:00から1時間程度

場所)Dルーム

形態)クローズドのグループ。人数は4人。

目的)・他患との交流の機会を増やす・OTSとの関係作り・自発性、意欲の向上・集中力を高める・気分転換 ・成功体験を持たせる

方法)同じ作業のくり返しである折り紙の手工芸を導入し、OTSとグループのメンバーとともに作品を作る。出来上がった作品は、病棟に飾る。

 

  • 既存のプログラムにOTSと一緒に参加する

対象)歩こう会、ゲートボール、グランドゴルフ、OTレク等

目的)・OTSとの関係作り・身体機能の維持、向上・活動性の向上・身体を動かすことによるストレスの発散・他患との交流の機会を増やす

方法)実施を強要せず、見学参加でもいいので促していく。

 

(12)考察

本症例は、〇〇年に発病し、〇〇年〇〇月〇〇日本院初回入院して以来、約四年間入院療養を続けている統合失調症の男性である。〇〇年〇〇月〇〇日より準開放病棟、開放病棟へと移棟し、〇〇年〇〇月〇〇日に5ヶ月間 急性期病棟へ移棟、その後〇〇年〇〇月〇〇日より再度開放病棟へ移棟し、現在に至る。薬剤性パーキンソニズム、便秘症等を合併しており、薬物療法で対応している。

外見は、小柄で小太り。実年齢よりも幼く見える。知的に低いことが影響していると考えられる。服装は不潔感は少ないが、だらしない感じ。髪は短髪で、色黒。目は大きく、唇は赤みが少なく紫色っぽい。下唇に直径5mmほどのほくろがある。終始そわそわしており、じっとしていられない。薬剤性パーキンソニズムと考えられる。無表情であることが多く、問いかけへの反応は静かに頷きながら、小さく「はい」という程度。会話時や活動時には、時折笑顔が見られることもある。他患との交流はほとんどみられない。話し掛けられると、静かに答える程度。自室では、ベッドが隣り合っているK,Y氏と向かい合って話していたり、シーツ交換を手伝いあったりし、場を共有しているといった感じのことが多い。喫煙所では、喫煙席に人がいると椅子に座らず立っていたり、椅子に座っても他患と視線が合わない方向を向いていたりする。廊下で他患が邪魔な時も、すぐに諦め、遠回りして通る。大人しい性格のため、他患からジュースやたばこをたかられることもある。このような行動は、知能の低さにより思考内容が貧困なこと、性格や精神症状の影響により、言いたいことがあっても言わずに(伝えられずに)成長してきて、今ではそれが症例の習慣となっているものと考える。NsやOTSに自発的に話し掛けることもほとんどなく、問いかけに答えるか、必要なことを伝える程度。対話時は、反応は少ないが疎通性はある。

一日の生活は、日によって乗らない時は自室で寝ていることもあるが、ほとんどは活動があれば、促しにより参加することも多い。ADL面では自発的か促しによって行なえており、とくに支障をきたしているものはない。服薬・たばこ・金銭については現在Ns管理となっている。服薬については、病識がないことより、自己管理への意欲がなく、自己管理になれば服薬が疎かになることが考えられる。たばこについては自己管理になると喫煙量が増え、本人もそれがわかっているため自己管理をしたいとは思っていない。金銭についても同様に本人の意欲がなく、自己管理能力もない。現在、管理が入らなくなれば、一日寝て過ごし、喫煙量が増加し、服薬は疎かになるなど、自分の欲求の赴くままに生活し、症状悪化に繋がることが考えられる。これらのことから、服薬やたばこ、日中の活動についても、管理がなければきちんと行なうことが出来ないことが問題であると考える。

OTS観察では、ゲートボール大会が近づくと落ち着きのない様子が見られたり、日によって活動への意欲が高い時や、いつもよりそわそわして意欲の低いことがある。このような場合には、OTSの方から「調子悪いですか?」など声かけすることによって症例の反応をみる。また〇〇年には、Ns学生が受け持ちにつき、断れず精神的に不安定となり、自分から「急性期病棟に行きたい」とNsに申し出たことがある。このように、症例は自発的な感情や自己表現が少なく、積極的に意思を示す能力が低下しているものと考える。

これらのことから、OTSでは、#1 自発性・意欲が減退している、#2 対人交流が狭い、#3 感情表現が少ない、#4 自己表現が少ない、#5 自己管理能力の低下(服薬・たばこ・金銭について)を問題点とした。

これに対して、Sort Goalでは、#1 他患との交流の機会を増やすことを、Long Goalでは、#2 OTSとの関係作り、#3自発性を向上させる、、#4 自己表現・感情表現が出来るようになる、#5 身体機能の維持・向上をFinal Goalでは、#6 院内で過ごしやすく、健康的な生活を獲得することを目標とした。

そこで、OTSでは①トランプ・花札 ②アンデルセン手芸 ③折り紙の壁飾り作り ④既存のプログラムにOTSと一緒に参加するというプログラムを立案し、Final Goalへの援助を行なおうと考えた。

まず①では、他の活動への意欲が低く自室で過ごしている時や空いた時間を利用し、トランプ・花札などの娯楽的活動を促し、活動性の向上を図ろうと考えた。基本的にはOTSと一対一で行なう。他患が周りで見ていることもあると思うので、OTSを介して場を共有する、あるいは交流を図ろうと考える。

次に②アンデルセン手芸では、症例が黙想時、不随意運動が見られなくなることより、ある程度集中力を要する活動を提供してみて、症例の反応をみてみたいと考えたことから、この活動を選んだ。オリエンテーションは出来上がりの作品の写真を見せながら実施する。棒作りの作業などは、デイルームで空いている時間を利用しながら行う。はじめは、OTSがいくつか棒を用意していく。編む、色付け等の作業では、出来る分は病棟で行い、その他は金曜のAM手工芸の時間を利用して、OT棟で実施する。編む作業は困難が予測されるため、出来ないところはOTSが介入しながら行っていく。失敗体験が続き、症例の意欲を低下させることのないよう、そのつどフォローしていこうと考える。始めは簡単な作品を選び、出来ればレベルを上げて2作品の作成を目指す。新しいプログラムを立案することで、日中の何もしていない時間を有効に利用していきたいと考える。

③折り紙の壁飾り作りでは、OTSがクローズドのグループを作り、活動を行なおうと考えた。参加を強要しないため、人数は4人で設定し、毎回OTSを入れて3~4人で活動を行なう。作り方は、同じ作業を何度も繰り返すといったものであり、余裕が出てくれば、会話をしながら作業を進められ、他患との関係作りに繋がると考える。またOT棟といういつもと違う環境で作業を行なうことで、OTSやメンバーとの共有体験も一層強くなるのではないかと考える。出来上がった作品は病棟に飾ろうと考える。目的は、他患と活動を通じた交流の機会を持つことと、OTSとの関係作りである。

④既存のプログラムにOTSと一緒に参加するでは、現在本症例が参加している 歩こう会、ゲートボール、グランドゴルフ、OTレク等にOTSとともに参加する。慣れた活動に継続して参加することで、生活のリズムの維持を行ないたいと考える。参加は実施することを強要せず、見学参加でもよいので促しを行なう。目的はOTSとの関係作りと、身体機能の維持、向上、活動性の向上、身体を動かすことによるストレスの発散、他患との交流の機会を増やすことである。

以上のプログラムによってOTSと本症例の信頼関係を築き、OTSがより話しやすい存在になることで、本症例からの自発的なアプローチを増やし、OTSがストレスの発散できる存在となればと考える。またOTSが本症例の反応を多く受け、本症例の状況をより正確に把握することで、対人交流が広く、リズムが整った生活を獲得するための援助を行なっていきたいと考える。

 

(13)経過

OTSの関わりとそれに対する本症例の変化について4期に分けて報告する。

第1期:OTSの紹介を受け、OTSに興味を示す時期

第2期:OTSに慣れ、興味がなくなる時期

第3期:活動導入期、活動に対して関心が低い時期

第4期:活動に慣れ、促せば流れに沿って実施する時期

 

第1期:OTSの紹介を受け、OTSに興味を示す時期

OTSが担当となり、症例と関わり始めた時期。OTSに対する興味があり、受け答え時は視線が合うことが多く、言葉は少ないが反応がある。また、しばしば笑顔がみられるなど、表情もよいときが多い印象であった。オリエンテーション時は、うつむきながら笑顔がみられ、終始恥ずかしそうな様子。OTRがOTSを紹介すると、受け答えは声小さく、言葉数も少ないが、OTSが名前を言うと、症例も一歩前に出て、はきはきと自分の名前を言った。OTSとの花札では、OTSが配り方や配点が解らず 問い掛けると、言葉は少ないが指で指示しながら教えたり、また自発的に「下に行きましょうか」といい、OTSを促す様子も見られた。しかし、Nsの問いかけに対して「ちょっと落ち着かん」と話している様子から、OTSが担当となったことによる負担があるものと考えられる。これは、症例が 初対面の人(OTS)に対して、普段以上に頑張って反応することで、(多くは能力的に)より良く思われたいといった気持ちが働いているとも考えられ、そのために緊張感や負担が大きくなっていることが考えられる。またゲートボール大会が近づいていることの影響も考えられる。OTSに対して、興味・関心を持っている様子であるが、同時に、緊張感も高い時期であると考える。

 

第2期:OTSに慣れ、興味がなくなる時期

ゲートボール大会 翌日頃からの様子。ゲートボール大会翌日は、OTSへの反応が乏しく、表情さえない。その後は 日によって比較的気分がよさそうな時と気分が乗らない日があり、気分が良い際には言葉少なく受け答えし、時折笑顔も見られるが、気分の乗らない日にはほとんど反応なく、視線も合わない。OTSが活動を促すと「行きません」と首を振るが、OTSの姿ない間に活動に出るなどの行動が多くみられ、他者(OTS含)との関わりを避けているといった印象を受ける。これはOTSの存在に慣れてきたことで、その日の気分を態度で表すことができるようになったものと考える。診察時には「特に変わったことはない」と静かに話しており、OTSと気負いせず関われるようになったことで、負担が低下したものと考えられる。

 

第3期:活動導入期、活動に対して関心が低い時期

アンデルセンを導入した頃。初めてプログラムの導入を話してみたときには、OTS「実習が5週終わって、後半分なので一緒に何かしてみましょうか」というと「しません」といい、「では私が考えて〇〇さんに提案してみるのはどうですか?」などと話すが反応は一定であった。これは意欲の低下した患者に対し、OTSの促し方が曖昧であり、対応が不適切であった。そのため次回は、用具(適当な大きさに切った広告紙を準備)を持って病室を訪問し、「一緒に作りたいものがあるのでDルームに来て下さい」と促し、まずは実施してみようと考えた。OTSの声かけに「はい」と頷きDルームに出てくる。初回は編み棒を使って棒作りを実施。簡単に説明するのみで実施し始め「簡単」と話している。OTSが席を促しても席につかず、終始立って実施し、これは症例が活動に関心がなく、早く止めたいといった気持ちを表しているものと考えられる。また活動中に空笑がみられる場面があり、活動に対する抵抗感の影響や、簡単過ぎる作業の繰り返しにより、妄想や幻聴などが入り込みやすくなってしまったものと考える。その後もOTSが促せば実施するが、与えられた活動を流れに沿って実施しているといった感じであり、積極性は見られない。OTS「手工芸は好きですか?」本症例「(首を振る)」といった様子からも、活動に対する関心は低いことが伺える。しかし、活動中 自分が作った棒を一本一本きれいに並べながら棒作りを進めており、徐々に増えていくことに達成感を持っているものと考える。活動中は終始無表情で活動を進め、活動後はすぐに自室に戻るが、OTSがこれまで作った棒を集めて見せると「うわーたいそうある」とやや表情和らいだ。活動に対して意欲はみられないが、抵抗感は徐々に低下してきた様子である。

 

第4期:活動に慣れ、促せば流れに沿って実施する時期

アンデルセンを促すと、以前より受け入れが良くなり、活動が始まると意欲的に取り組める時期。これまで作ってきた棒を使用しOTSが編んでみると、棒が太すぎて編みにくいと感じた。そのため、OTSが細い棒を用意して、編む際に、(これまで一緒に作ってきた)太い方をOTSが使用して、細い方を症例に使わせ進めようと考えた。診察後、症例を促すと細い棒作りを実施し始めたため、予定を変更し、症例にも細い棒作りを実施させてみる。当初、細い棒作りは、芯を使用せず指で丸める作業のため、症例には難易度が高く、意欲の低下に繋がるものと考えていた。しかし、OTSが説明し、行なわせてみると、他者(OTSやNs)を模倣しながら要領よく実施しており、考えていた以上に能力高いことがわかった。出来あがると、Ns達から「〇〇さん上手たい。器用ねー」などと言われ、嬉しそうな表情が見られる。ある程度能力の必要な作業を行ない、他者から賞賛を受けることで、症例の意欲も高まったものと考えられ、次々に作業に取り組む。難易度が高い作業を、上手に出来たことで、達成感が高かったものと考えられる。持続して取り組んでおり、以前よりも集中力高い。OTSの問いかけには視線を合わせて反応し、表情和らいだ。活動後、OTSが「どうでした?」と尋ねると「楽しかった」と答える。これまで症例の活動への意欲が低かったのには、OTSが、はじめから症例の失敗体験を避け、難易度の低い作業を選択していたことが原因のひとつであったものと考えられる。その後の作業は、まず①2本の棒をボンドでつなぎ、芯となる棒を8本作る。②つないだ棒の内部に針金を通す。③網目編みを作る。④編む。⑤新しい棒を継ぐといった工程。①ではOTSの説明を、視線を合わせて聞き、自発的に実施する。ボンドの塊が出来ないように一つ一つ指で丁寧に伸ばしている。②では棒が細いため針金が通りにくいが、熱心に通そうとしている。③では、説明を理解しており、実施するのはやや苦戦しているが自分で行っていた。④では、はじめはよくわからないといった様子であったが、自分でやっているうちに要領をつかむ。始めの方で 2度ほど、OTSをじっと見て「わからないです?」と尋ねると頷く状況があった。その場合はOTSが介入し説明しながら実施したが、その後は訴えもなく、一人で実施できる。OTSやNsに、間違っているところを指摘された際には、ほどいてやり直すなど、活動への意欲がみられた。促がしの際は興味が低く、仕方なくさせられるといた感じであるが、活動が始まると徐々に関心を示し始める。活動中OTSの問い掛けにはほとんど反応がなく、工程が進み、難易度が上がるにつれ、活動への集中力が高まっている様子。持続性もあり、一時間半という長い間活動に取り組むことが出来るようになった。これは、始めは困難に感じていても、同じ作業の繰り返しであることで、徐々に作業がスムーズに進むようになり、楽しみを感じたものと考える。活動を行なうことで、徐々に表情和らぎ、時折笑顔がみられる。

  

最終評価

初期評価時より変化が見られたところのみ記載する。

 

(5)他部門からの情報

①主治医からの情報

OTSと籠を編んでいることや、「OTSと歩こう会に参加し、(OTSが)きついといっていた」など自発的に話す様子が見られる。

②担当看護士からの情報

〇〇月〇〇日より一週間の現金を自己管理とし、服薬・たばこのみNs管理で様子を見るとのこと(2,500円/週)。これまではノート購入を行なっていたが、現金で買物をし、現金を使った際は、ノートに日付・購入物品・値段・残高を記入する。今後の看護計画として、現金管理を進めていくことが目標。OTSとのアンデルセンについては、診察時に「広告紙で籠を作っていると頭の体操にもなる」と話している。

 

(6)OTS評価

⑥行動

ほとんど毎日、何かしらの活動へ参加する。夕方頃にはNsと花札をすることが日課となり、時折他患とも花札をしている。

⑦活動への参加状況

<アンデルセン>

関心が低く、意欲はみられないが、実施し始めると集中して取り組む様子。これは、自発性が低下していることや関心が低いことなどから意欲は低いが、作っていく棒が増えたり、籠が出来てくることに達成感を持っているためと考える。また作業工程は、理解でき、要領を掴むと、ひとりで進められる。診察時にはOTSと籠を編んでいると話し「広告紙で籠を作っていると頭の体操にもなる」と話していたとのこと。現在籠を編んでおり、あと一回程度で編み終わる。しかし、促すと「ゲートボール行く」など理由付けをして活動を拒んでいる様子。

⑧対人関係

<対OTS>

問いかけに対して反応がある程度で、自発的に話をすることはほとんどない。会話は続かない。表情は無表情であり、笑顔がみられることもあるが少ない。気分が良くない日はOTSが声かけしても視線が合わず、反応はほとんどない。OTSが活動を促すと「行かない」といったり反応が全くなく、OTSがいない間に活動に出ているなど、関わりを避けるといった感じである。

<対他患>

移棟してきた人と過ごしていることが多く見られる。相手が一方的に関わっているといった感じで、症例からの反応は少ない。時折促され、花札を実施している。

⑩APDL

買い物・金銭:現金の自己管理を行なっている。買い物をした際は、ノートに日付・購入物品・値段・残高を記入している。残高の計算は非常に時間がかかるものの、正しく実施できる。

 

(14)問題点

#1 自発性・意欲が減退している

#2 感情表現が少ない

#3 対人交流が少ない

#4 自己管理能力の低下(服薬・たばこ・金銭について)

#5 その時々で気分が変わる

 

(15)目標設定

Sort Goal

#1 OTSとの関係作り

 

Long Goal

#2 自発性を向上させる

#3 自己表現・感情表現が出来るようになる

#4 他患と交流が出来るようになる

#5 身体機能の維持・向上

 

Final Goal

#6 院内で過ごしやすく、健康的な生活を獲得する            

 

(16)治療プログラム

①アンデルセン手芸

時間)30~60分。火曜の午前中(診察後)

場所)Dルーム

目的)・自発性、意欲の向上 ・達成感を得る ・自信の向上を図る ・集中力を高める

方法)今回実施した作品を完成させ、次の作品を作る。

 

②卓球

時間)木曜の15:30~16:30、45分程度

場所)体育館

形態)クローズドのグループ。人数は4人。

目的)・他患と打ち合うことで、まず2人の共有体験を持たせる・グループとすることで、他患との交流に慣れる・規則正しく活動に参加する・感情を表現する(成功や失敗に、嬉しい、悔しい、おもしろいなどを表出する)・自発性、意欲を高める・集中力を高める・気分転換

方法)OTSと患者4名のグループで実施する。

 

③花札

時間)空いている時間

場所)娯楽室

目的)・OTSとの関係作り・他患との交流の機会を増やす

方法)これまでと同じように、夕方の時間を利用し、症例の意欲が見られたときに実施する。OTSが入ることで、他患との交流を促すようにする。

 

④既存のプログラムにOTSと一緒に参加する

対象)歩こう会、ゲートボール、グランドゴルフ、スローピッチ、カラオケ等

目的)・規則正しい生活を送る・自発性、意欲を高める・OTSとの関係作り・身体機能の維持、向上・身体を動かすことによるストレスの発散・他患との交流の機会を増やす

方法)実施を強要せず、見学参加でもいいので促していく。

 

(17)考察

初期評価時に、本症例の問題点として、①自発性・意欲が減退している、②対人交流が狭い、③感情表現が少ない、④自己表現が少ない、⑤自己管理能力の低下(服薬・たばこ・金銭について)と設定し、アプローチしてきた。Final Goalは院内で過ごしやすく、健康的な生活を獲得することである。

初期評価時に設定したプログラムについて、既存のプログラム(歩こう会、ゲートボール、グランドゴルフ、スローピッチ、カラオケ等)に一緒に参加しながらOTSとの関係作りを進め、またアンデルセン手芸は現在まででセッション5回実施、花札は16:00頃からOTSと二人で実施することもあれば、Nsや他患と行なっているのをOTSが見学するといった感じで進めてきた。グループ活動である 折り紙の壁飾りについては一度も実施していないといった状況である。

折り紙(グループ)では、初期評価時に他患との交流を増やすことを目的として立案した。当初一度折り紙を促したが、「しません」と活動に対して拒否的であった。その後、OTSがアンデルセンの実施のみで余裕がなく、実施しなかったのが反省点である。アンデルセンでも当初は折り紙と同様「しません」との反応であった。しかし、OTSと介した他患との交流をもちたいと考えた時、まずはOTSとの関係が取れなければならず、そのために アンデルセンは実施することとした。

OTSが担当となり、症例と関わり始めた時期は、OTSに対する興味があり、受け答え時は視線が合うことが多く、言葉は少ないが反応がある。また、しばしば笑顔がみられるなど、表情もよいときが多い印象であった。オリエンテーション時は、OTSが名前を言うと、症例も一歩前に出て、はきはきと自分の名前を言う。終始うつむいて、恥ずかしそうな笑顔であった。OTSとの花札では、OTSが配り方や配点が解らず 問い掛けると、言葉は少ないが指で指示しながら教えたり、また自発的に「下に行きましょうか」といい、OTSを促す様子も見られた。

その後、徐々にOTSへ抵抗感を示し始める。問いかけに対して表情さえず、ほとんど反応がないといった様子で、またOTSの促しに対しては「行きません」と答えるが、活動に参加していたり、OTSの姿がない間に活動に出ていたりすることが増えた。OTSでは当初より、どんな活動にもなるだけ促し、一緒に行き、また 活動中も、より多くの関わりを持とうと声かけ等行なっていた。これによりOTSが終始側にいるという状況に対して症例が負担に感じたものと考えられる。そのため、まずはOTSとの関係作りを目標に、プログラムを実施しようと考えた。そこで、初期評価時に立案したアンデルセン手芸を導入し始める。また、既存の活動への参加時は、一緒に参加するが、無理に近づかず、他患と関わりながらなど、距離を持って観察を行なうようにした。

OTSと二人で実施する活動を取り入れたいと言うことを、初めて症例に伝えた際には、OTS「実習が5週終わって、後半分なので一緒に何かしてみましょうか」本症例「しません」といった感じで、「では私が考えて〇〇さんに提案してみるのはどうですか?」などと話すが反応は一定であった。これは意欲の低下した患者に対し、活動への動機付けが曖昧であり、OTSの対応が不適切であったものと考える。そのため次回は、用具(適当な大きさに切った広告紙を準備)を持って病室を訪問し、「一緒に作りたいものがあるのでDルームに来て下さい」と促し、まずは実施してみようと考えた。OTSの声かけに「はい」と頷きDルームに出てくる。初回は編み棒を使って棒作りを実施。簡単に説明するのみで実施し始め「簡単」と話している。OTSが席を促しても席につかず、終始立って実施し、これは症例が活動に関心がなく、早く止めたいといった気持ちを表しているものと考えられる。また活動中に空笑がみられる場面があり、活動に対する抵抗感や、簡単過ぎる作業の繰り返しにより、妄想や幻聴などが入り込みやすくなってしまったことが影響していると考える。その後もOTSが促せば実施するが、与えられた活動を流れに沿って実施しているといった感じであり、積極性は見られない。OTS「手工芸は好きですか?」本症例「(首を振る)」といった様子からも、活動に対する関心は低いことが伺える。しかし、活動中 自分が作った棒を一本一本きれいに並べながら棒作りを進めており、棒が増えていくことに達成感を持っているものと考える。その後徐々に受け入れが良くなり、活動が始まると意欲的に取り組むといった状況。当初から編み棒を使って棒作りを実施させており、細い棒作りは、芯を使用せず指で丸める作業のため、症例には難易度が高く、意欲の低下に繋がるものと考えていた。しかし、OTSが説明し、行なわせてみると、他者(OTSやNs)を模倣しながら要領よく実施しており、考えていた以上に能力高いことがわかった。出来あがると、Nsから「〇〇さん上手たい。器用ねー」などと言われ、嬉しそうな表情が見られ、次々に作業に取り組む様子。ある程度能力の必要な作業を行ない、上手く実施出来たことで、達成感が高かったものと考えられる。また、他者から賞賛を受けることで、症例の意欲が高まったものと考えられる。活動後には、OTS「どうでした?」本症例「楽しかった」と答える。これまで症例の活動への意欲が低かったのには、OTSが、はじめから症例の失敗体験を避け、難易度の低い作業を選択していたことが原因のひとつであったものと考えられる。その後は編む作業を実施。ボンドの塊が出来ないように一つ一つ指で丁寧に伸ばしていたり、通りにくい針金を、熱心に通そうとする様子が見られ、意欲的に活動に取り組んでいる。理解力も見られ、工程を説明すると、はじめはよくわからないといった様子であったが、自分でやっているうちに要領をつかみだし、その後は訴えもなく、一人で実施できるといった状況である。当初と比べ、受け入れは良くなったものの、やはり促がしの際は興味が低く、仕方なくさせられるといた感じである。これは、活動に対する動機付けが不十分であるためと考えられる。しかし活動が始まると徐々に関心を示し始める。活動中OTSの問い掛けにはほとんど反応がなく、工程が進み、難易度が上がるにつれ、活動への集中力が高まっている様子。持続性もあり、一時間半という長い間活動に取り組むことが出来るようになった。これは、始めは困難に感じていても、同じ作業の繰り返しであることで、徐々に作業がスムーズに進むようになり、楽しみを感じたものと考える。活動を行なうことで、徐々に表情和らぎ、時折笑顔がみられる。

現在、OTSとの受け答えは、日によって比較的反応がよかったり、悪かったりなどで、症例の様子が以前と比べて大きく変化することはみられなかった。しかし、担当当初、Nsの声かけに「ちょっと落ち着かん」と話しており、OTSが担当となったことによる負担があった様子。これは、症例が 初対面の人(OTS)に対して、普段以上に頑張って反応することで、(多くは能力的に)より良く思われたいといった気持ちが働いているとも考えられ、そのために緊張感や負担が大きくなっていることが考えられる。OTSに対して、興味・関心を持っているが、同時に、緊張感も高かったものと考える。そこで、アンデルセンを実施したり、また活動中の対応を検討することで、現在のような状況である。診察時には「特に変わったことはない」と静かに話しており、OTSと気負いせず関われるようになったことで、負担が低下したものと考えられる。

以上の様な経過をたどり、最終評価を実施。

〇〇月〇〇日より一週間の現金が自己管理となる(2,500円/週)。これまではノート購入を行なっていたが、現金で買物をし、現金を使った際は、ノートに日付・購入物品・値段・残高を記入するといった方法。〇〇月〇〇日現在、現金管理を続けており、残高の計算には非常に時間がかかっているものの、問題なく実施できている。

花札では、当初の目的として、OTSとの関係作り、活動性の向上、他患との交流の機会を増やすを挙げ、OTSと一対一で実施するとしていた。しかし、実際はNsと実施し、OTSが見学としている状況が多かった。OTSと実施する際は、発語がほとんど見られず、「もうやめようか」と持続性も低い。これは、OTSとの関係が未熟であったためと考えられる。Nsと実施している際には、持続性があり、発語が比較的多く見られ、また時折笑顔が見られる。このような状況から、OTSでは、OTSを相手に実施するより、症例の慣れた存在を介することで、OTSと抵抗感なく関わることが出来、OTSとの関係作りが進むものと考えた。また、OTSと一対一でなくでなくとも、他患との交流を増やすと言う目的が達成できていた。このことから、今後は、相手をOTSと限定せず、花札をすることでOTSや他患と関わりをもつことを目的に実施していこうと考える。

既存の活動への参加では、OTSとの関係作り、身体機能の維持・向上、活動性の向上、身体を動かすことによるストレスの発散、他患との交流の機会を増やすことを目的に立案し実行した。活動への参加率が以前と比べ、高くなった。これはOTSが担当となり、促しを行なうようになったことが影響していると考えられる。これにより、活動性の向上、身体機能の維持・向上が図れたものと考えられる。また、歩こう会では、OTSの声かけに反応がよいことが多かったが、その他ではいつも通りの反応であることが多かった。活動中は、流れに沿って参加しているといった様子であるが、時折嬉しそうな表情が見られるなど、ストレスの発散に繋がっているものと考える。他患との交流については、活動中自発的に関わってゆく様子などはほとんど見られず、変化がなかったと考える。今後は、規則正しい生活を送るといった目的を中心に、既存のプログラムへの参加を継続したいと考える。

上記より、現時点での本症例の問題点として、#1自発性・意欲が減退している、#2感情表現が少ない、#3対人交流が少ない、#4自己管理能力の低下(服薬・たばこ・金銭について)、#5その時々で気分が変動することを挙げた。これに対して、OTSではSort Goal#1OTSとの関係作り、Long Goal#2自発性を向上させる、#3自己表現・感情表現が出来るようになる、#4他患と交流が出来るようになる、#5身体機能の維持・向上、Final Goal#6院内で過ごしやすく、健康的な生活を獲得することを目標に設定した。そこで、今後の活動として、①アンデルセン手芸、②卓球、③花札、④既存のプログラムを継続して実施しようと考えた。

まず、①アンデルセン手芸では、OTSとの関係作り、自発性、意欲の向上、集中力を高める目的で実施してきた。OTSと一緒に活動を実施することで、関係作りに繋がったものと考えられる。活動中の集中力は高く、徐々に意欲がみられていることから、今後も継続し、あと1作品の完成を目指す。時間は火曜の午前中(診察後)30~60分程度とし、Dルームで実施する。これにより、自発性、意欲の向上、達成感を高める、集中力を高めることを図りたいと考える。

つぎに、グループ活動として②卓球を取り入れる。卓球という活動を取り入れたことについて。歩こう会の際に、休憩中笑顔で他患と関われていたり、OTSへ自発的に問い掛けがある。反応も普段と比べで表情よく、はきはきと答える様子。このことから、活動性が高まることで、感情を表現しやすくなるものと考えた。そのため、活動性の高い活動を提供し、症例の感情表現を高めたいと考えた。また、卓球(シングルで実施)は、二者で行なえる活動であるため、グループの一人ひとりとの関係作りを図ることが出来ると考えた。また、体育館で行う活動であるため天候に左右されず、これにより活動に規則正しく参加する習慣を付けたいと考える。形態はクローズドとし、メンバーは4人。OTSはリーダーとして活動に入り、症例と他患の関係やグループの状況などを観察する。まず形態をクローズドとしたことについて、グループのメンバーとの関係作りが進みやすいと考えたためである。また、二者で実施するため、人数は偶数。メンバーが二人であれば、メンバーの心理的負担が大きく、また他患との交流を促すという目的に対して、メンバーが二人というのは不適であると考えた。そのため人数は4人とする。その他目的として、自発性、意欲を高める、集中力を高める、気分転換がある。時間は、木曜の15:30~16:30の間の45分程度とし、体育館で実施する。

③花札では現在と同じように、夕方の空いている時間を利用して実施する。目的はおもにOTSとの関係作りであり、他患が介入する場面が多いことから、他患との交流の機会を増やす機会にもなると考える。症例の相手は、OTSでも他患でも良い。その他④既存のプログラム(歩こう会、ゲートボール、グランドゴルフ、スローピッチ、カラオケ等)への参加を継続し、規則正しい生活を送る、自発性、意欲を高める、OTSとの関係作り、身体機能の維持・向上、身体を動かすことによるストレスの発散、他患との交流の機会を増やしていこうと考える。

初期評価時に立案したプログラムの実施によって、担当当初に感じられていたOTSへの抵抗感がなくなり、関係作りが進んだものと考える。今後、最終評価時に設定したLong Goalに近づけてゆけるよう、上記に挙げたプログラムによりアプローチしていこうと考える。今後も入院生活が続くであろう症例にとって、現在の場が少しでも過ごしやすく健康的であってほしいと思う。そのためにはOTSとの個人的な関わりのみでなく、集団活動への参加を促し、集団内で他患と上手く関わりが持てるよう援助したいと考えた。現在の症例にとっては、他患と関わらないことが最も負担が少ないと考えられるが、必要に応じて関わりを持ち、その際の心理的負担を下げられればと考える。これらのアプローチによって、最終評価で設定したLong Goalを達成し、最終的にはFinal Goalに近づけたいと考える。

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 病院, レポート・レジュメ, 精神疾患