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【上腕骨外科頚骨折+デゾー固定】レポートの作成例【実習】

2021年12月29日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「上腕骨外科頚骨折+デゾー固定」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 上腕骨外科頚骨折を呈する患者

  • デゾー固定を施行

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「上腕骨外科頚骨折+デゾー固定」の患者のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ 一般的情報

名前:

年齢:80歳代

性別:女性

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Ⅱ 医学的情報

現病歴:右上腕骨外科頚骨折、尿路感染症、認知症

〇〇年〇〇月〇〇日 自宅内にて転倒

〇〇年〇〇月〇〇日 他院よりの紹介により当院に入院。デゾー固定(三角巾+バストバンド)3週間

〇〇年〇〇月〇〇日 理学療法開始

〇〇年〇〇月〇〇日 デゾー固定除去

 

既往歴:心筋梗塞、脳梗塞、第1腰椎圧迫骨折、第4腰椎圧迫骨折

〇〇年〇〇月〇〇日 公設市場にて転倒し第1腰椎圧迫骨折、変形性膝関節症、骨粗鬆症

〇〇年〇〇月〇〇日 右脳梗塞→不全左片麻痺

〇〇年〇〇月〇〇日 転倒にて第4腰椎圧迫骨折

 

主訴:最近物覚えが悪い、右肩関節運動時右肩~前腕近位1/2に疼痛

 

Need:排便はオムツではなく一人でトイレに行き用を足したい。ゆくゆくは自宅療養したい

 

医師からの情報:

年齢的なことを考慮したうえでこれ以上の骨癒合は求められず、患者の主訴である痛みに対して保存的に治療をおこなうことは患者の全身機能の低下に繋がるので、少々の痛みを訴えても身体を動かすように心掛ける。

 

ヘルパーからの情報:

病室では一日中寝ており活動はみとめられない

 

バイタル:血圧130/65mmHg 脈拍64/BPM 呼吸数18/分

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服薬:

疼痛 ボルタレン坐薬、アタラックスP、ソセゴン

不隠 ソセゴン、アタラックスP

血圧上昇 アダラート、アポプロン

便秘 センノサイト、レシカルボン坐薬、グリセリン浣腸

 

Ⅲ 社会的情報

職業歴:船頭

経済状況:厚生年金により収入を得ている

家族構成:90歳代になる夫と二人暮し。息子、娘共に独立。面会に訪れる娘さんがキーパーソンと思われる

住居環境:屋内は手すり設置

趣味:水泳

生活像:食事、リハビリテーション時以外はベッド上にて背臥位もしくは右側臥位をとっている

嗜好:特になし

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Ⅳ 理学療法評価

1.観察

1)静的観察

端坐位:

<前方より見て>

体幹は左に傾き、骨盤も左に傾いている。左大腿にくらべ右大腿は開き気味。両膝の上に手を置いて坐位可能だが、長時間にわたり坐位をとると、体幹が後傾してしまうためベッドの端を手で把持することにより可能。また臀部に痛みを訴える。

※端坐位で作業をしていると上体が後傾してしまう

<後方より見て>

体幹は左に傾き、骨盤も左に傾いている。左肩甲骨翼状気味、右肩甲骨は身体に沿って平たく、下角は右のほうが上部にある。最大側彎はL4に対しL5が右方向に偏位している(L3、L4)

<側方より見て>

円背。最大凸部はL1もしくはTh12

<上方より見て>

右肩が前方に突出している

 

立位保持:

腰部を支えることでかろうじて可能だが、膝が震えてしまい、また本人の転倒への恐怖もあり長時間の立位保持は不可。身体全体が右に寄っており、顔も右下方を向いている

 

2)動的観察

動作分析

①車椅子→ベッド

開始肢位は車椅子の背もたれにもたれた状態で体幹は前傾、骨盤は後傾して殿部のやや後方に坐面を確保し、股関節屈曲膝屈曲で足底の全面を接地している。右上肢、もしくは左上肢は肩関節屈伸0°、肘屈曲、前腕を回内位としアームレストに前腕を乗せ手部はアームレストの端を握っている。対肢は肩関節屈曲、内転、肘関節若干屈曲、前腕回内位で手掌は大腿前部に置く。

 片足ずつ膝関節屈曲し、フットレストより足部を降ろして足底全面接地する。左肩関節屈曲、肘関節伸展、前腕回外させ、体幹を前屈、右回旋して左フットレストに手をかけて肩関節水平伸展、肘関節屈曲方向に力を入れ引き上げ、再び肩関節屈曲、内転、前腕回内させ右フットレストに手をかけて肩関節水平内転、肘関節屈曲方向に力を入れ引き上げる。一度背もたれにもたれ直し、両上肢を肩関節屈曲、肘関節屈曲、前腕軽度回内、手関節尺屈しアームレストの端をつかみ肩関節伸展、肘関節伸展方向に押し出すように力を入れ、同時に体幹は前傾させ、その勢いを利用し殿部を車椅子の前方にいざらし、殿部が車椅子の坐面前方に移動させる。

 膝関節90°以上屈曲させ、足部をやや引き気味にし左肩関節屈曲、軽度外転、肘関節伸展、前腕回内位とし手掌面を自身の前方やや外方のベッド上に着き、右肩関節軽度屈曲、肘関節屈曲、前腕回内位でベッドの端の下をつかみ、右肩関節を伸展方向に力を入れ、体幹を前傾させ、重心を殿部より両足底面へと移し、股関節・膝関節に伸展方向の力を入れ、立位へと移る。このとき重心は左手掌にも分散される。

 立位姿勢にて左肩関節屈曲、肘関節若干屈曲、前腕回内位、手指伸展位でベッドに手を着き、右肩関節軽度屈曲、肘関節屈曲、前腕回外位でベッドの端の下をつかんでいる。体幹は若干前傾、股関節・膝関節を軽度屈曲、足関節背屈で目線はベッド上の左手のやや内方を見る。右肩関節をさらに屈曲、軽度外転、肘関節若干伸展、前腕回内位としベッド上に手掌を着き、さらに前方に左上肢に乗っていた重心の分散をはかる。左下肢を若干内旋させ、次に右下肢を若干外旋させることにより骨盤を右回旋させ、左肩関節内転、左手掌を自身の前内側に移して体幹を右回旋させる。このように踏み返しを二回ほど繰り返しベッドに対し身体が90°程回旋させる。

左肩関節軽度屈曲、外転、肘関節若干屈曲、前腕回内位で重心を足底のみではなく左上肢にも移し、右肩関節屈曲、肘関節屈曲、前腕回外位で自身の左大腿のすぐ外側で再びベッドの端をつかみ、また右足底で急に腰が落ちないよう制動をかけて、左踵を支点に身体全体を右方向に回旋させながら股関節・膝関節を屈曲させ左殿部を接地させる。左殿部が接地すると重心は一気に左殿部へと移り、右殿部が急激に落下しベッドに接地する。

右手掌を一度ベッドの端から離し、右肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の右大腿のすぐ外側のベッドの端をつかむ。次に左肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の左大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ、両手掌を押し出すようにして深く腰掛ける。

両肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の両大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ、股関節屈曲、若干外転・外旋、膝関節屈曲、足底は全面接地し、頭部は若干左側屈・右回旋し、目線は右前下方を向いている。

 

②ベッド→車椅子

 開始肢位は両肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の両大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ、股関節屈曲、若干外転・外旋、膝関節屈曲、足底は全面接地し、頭部は若干左側屈・右回旋し、目線は右前下方を向いている。

左肩関節伸展、肘関節屈曲、前腕中間位、手関節背屈で自身の後方に手掌を着きベッドを押し出すように力を入れ、同時に体幹を前傾させる勢いを利用して殿部をベッドの端まで移動させる。

左肩関節屈曲、肘関節伸展、前腕中間位、で右アームレストをつかみ、右肩関節若干伸展、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の左大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ、体幹を前傾させ足底に重心を移しながら左上肢はアームレストを引くように肩関節伸展、肘関節屈曲方向に力を入れ、右手掌でベッドを押し出すように肩関節・肘関節伸展方向に力を入れ、また股関節・膝関節に伸展方向の力を入れて立位へと移る。

右上肢はすぐ肩関節屈曲、肘関節若干屈曲、前腕回内位にて左のアームレストの先端をつかみ、左肩関節内転、肘関節屈曲、前腕回内位にて左のアームレストの中1/2をつかみ体幹を右回旋させ、次に左下肢を若干内転・内旋させ、次に右下肢を若干外転・外旋させることにより骨盤を右回旋させていく。この踏み返しを一度行い体が車椅子に対し約90°回旋させる。

両踵を支点に身体全体を右回旋させ、体幹を前屈させながら徐々に左肩関節伸展、肘関節屈曲していく。同時に股関節・膝関節を屈曲させて左殿部から車椅子坐面に腰掛ける。

左肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で右アームレストの端をつかみ、体幹を若干前屈させながら両前腕に体重を乗せ、両足底を支点に膝関節伸展方向へ蹴りだして車椅子の坐面に十分に乗っていない両殿部を後方に送り深く腰掛ける。

片足を股関節屈曲、膝関節屈曲し下肢を挙上させたら股関節外転させ、足底をフットレストの先端にかけて、股関節伸展方向に力を加えてフットレストを引き下ろす。対肢も同じことをおこないフットレストを引き下ろす。

車椅子の背もたれにもたれた状態で体幹は前傾、骨盤は後傾して殿部のやや後方に坐面を確保し、股関節屈曲、膝関節屈曲で足底をフットレストに接地している。右上肢、もしくは左上肢は肩関節屈伸0°、肘屈曲、前腕を回内位としアームレストに前腕を乗せ手部はアームレストの端を握っている。対肢は肩関節屈曲、内転、肘関節若干屈曲、前腕回内位で手掌は大腿前部に置く。

 

③起居動作(口頭支持を与えた左側臥位からの起居)

開始肢位は背臥位(円背が存在するためやや左側臥位気味)で足関節底屈、膝関節・股関節若干屈曲、左肩関節軽度屈曲、外転、外旋、肘関節軽度屈曲、前腕回内位、体幹前屈。

 始めから左側臥位気味であったため股関節屈曲・膝関節を屈曲させることにより左股関節外転、外旋、右股関節は内転、内旋して特に力を入れることなく左側臥位となり、左肩関節若干屈曲、内転、内旋、肘関節屈曲、前腕中間位、手背をベッドに着け、右肩関節若干屈曲、内転、肘関節屈曲、前腕中間位となり胸の前を前腕が通り手関節を背屈させ手掌はベッドに着く。

 股関節をさらに屈曲させることにより両下腿をベッドより垂らし、目線を左腸骨に向けて体幹を屈曲、右回旋させ、同時に左肩関節に外転方向の力を加え前腕でベッドを押し出すように力を入れる。また右肩関節屈曲、肘関節屈曲を保ち、水平内転方向に力を入れて手掌にてベッドを押し出すようにすることで上部体幹を離地する。

 さらに左肩関節外転方向の力を加え前腕でベッドを押し出すようにして体幹の離地を進めていき、ベッドに対し体幹が約30°程離地したら左肩関節外旋、前腕回内し手掌をベッドに着けることで上部体幹は下方を向く。左肩関節屈曲、肘関節伸展方向に力を入れ、同時に右肩関節屈曲、肘関節伸展方向に力を入れて両手掌にてベッドを押し出すようにする。

 体幹がベッドに対し約70°程離地したら右肩関節・肘関節若干屈曲、前腕回内させ、左大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ、体幹を右回旋させながら左手掌をさらに押し出す。

 両肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の両大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ坐位の安定をはかる。

両肩関節屈伸0°、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌屈で自身の両大腿のすぐ外側のベッドの端をつかみ、股関節屈曲、若干外転・外旋、膝関節屈曲、足底は全面接地し、頭部は若干左側屈・右回旋し、目線は右前下方を向いている。

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2.検査測定

1.長谷川式簡易認知症検査

年齢はいくつですか?

生年月日はわかるが年齢はわからない

0点

今日は何年、何月、何日、何曜日ですか?(計4点)

月、曜日

2点

ここはどこですか?(2点)

5秒後に家?病院?施設?のヒント(1点)

 

2点

これから言う3つの言葉を言ってください(計3点)

桜・猫・電車

覚えていてください

 

3点

100-7=? 93-7=?(計2点)

 

0点

6-8-2と3-5-2-9の逆唱(計2点)

 

0点

先ほど覚えてもらった言葉を覚えていますか?

自発で各2点(計6点)

植物・動物・乗り物のヒントで各1点(計3点)

植物、動物はヒントで回答

 

2点

5つの物品を見せ、隠し、何があったか言ってください

ペン・ボール・はさみ・時計・タオル(計5点)

ボール、はさみ

2点

知っている野菜の名前を言ってください

10秒で打ち切る 5個-0点、6個-1点、7個-2点、8個-3点、9個-4点、10個-5点

キャベツ、大根、

菜っ葉

0点

合計

 

11点

※20点以下は認知症を疑う

 正常老人25点以上

 認知症群10点以下

合計11点で認知症が疑われる。

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2.ROM

関節

備考

120°

肩関節屈曲

90°(p++)

自動45°(p++)

肩周囲に痛みを訴える

45°

伸展

30°(p++)

95°

外転

85°(p++)

45°

内旋

50°(p++)

45°

外旋

40°(p++)

155°

肘関節屈曲

150°(p++)

上腕遠位1/2から前腕近位1/2に痛みを訴える

自動-10°

伸展

-10°(p++)

自動-20°(p++)

80°

前腕回内

70°(p+)

若干の痛みを訴える

80°

回外

80°(p+)

50°

掌屈

60°

 

60°

背屈

50°

 

120°

股関節屈曲

125°

 

-20°

伸展

-30°

立位にて測定

35°

外転

30°

 

20°

内転

30°

25°

外旋

30°

15°

内旋

20°

150°

膝関節屈曲

130°

側臥位にて測定

-25°

伸展

-20°

 

25°

足関節底屈

30°

 

25°

背屈

20°

 
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3.MMT

運動

備考

3ないし4

肩関節屈曲

2(p++)

肩周囲に痛みを訴える

2

伸展

2(p++)

4

外転

2(p++)

2

内旋

2(p++)

2

外旋

2(p++)

5

肘関節屈曲

2(p++)

上腕遠位1/2から前腕近位1/2に痛みを訴える

5

伸展

2(p++)

5

前腕回内

4(p++)

若干の痛みを訴える

5

回外

4(p++)

3

掌屈

3

 

2-

背屈

2-(p+)

 

5

握り

5

握力右6㎏ 左8㎏

4

股関節屈曲

2

 

2-

伸展

2+

側臥位にて測定

2-

外転

2

坐位にて測定

2-

内転

2

2-

外旋

2-

 

2-

内旋

2

 

2

膝関節屈曲

2

側臥位にて測定

2

伸展

2-

 

2

足関節底屈

2

 

2-

背屈

2-

 
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4.顔面の状態

外観:下顎は左に偏倚。口角は左に下がっている

触察:左咬筋の萎縮

顔面・四肢感覚検査:左右差、鈍麻共に認められず、全身のしびれ感を訴えるがどのようなものか本人にもなんとなくとしかわからない。しかし左右口唇や右口角に涎や食物残渣が出ても気がつかないことから何らかの感覚鈍麻が存在すると思われる

口すぼめ運動:特に右側が稚拙

歯の噛み締め:左右差なし

 

5.ADL

四肢にしびれ感があり、力が入りにくく、感覚が鈍麻。病棟での介助はホームヘルパーによりおこなわれている。

食事:食欲あり。食事は車椅子に乗ったままおこなう。食事の準備をしてもらい、摂食はスプーンを右手に、茶碗を左手に持ち可能。リハ室にて箸使いは自立。摂食はむせることはなく可能。口腔内に若干の食物残渣があり右口角から出てくることがある

着替え:全介助。リハ室にて上衣の更衣は衣服を用意すれば可能、下衣は不可能。ボタンかけ、紐結び可能。靴、靴下ともに全介助。リハ室にて車椅子に乗った状態で靴を脱ぐことは可能、背もたれなしでは不可能

整容:洗顔はおしぼりを配ってもらえれば自立。櫛梳き自立。歯みがき粉はしぼってもらい歯磨きは可能。爪切り全介助

トイレ:オムツ管理。本人曰く尿意・便意はわかるらしいが、尿路感染症の存在より脳梗塞を原因とした排尿障害が疑われる

風呂:全介助、入浴用車椅子で浴槽へ移動

起居:右側臥位から柵をつかみ起居可能。左側臥位からの起居は介助が必要

立ち上がり:軽度介助。平行棒につかまって立ち上がり可能。プラットホームのような車椅子よりやや低めの台では手をつき軽度介助にて移乗可能

移動:車椅子全介助。時に四つ這い位でベッド上を移動しようとするが右肩上腕骨骨折部に荷重をかけることとなるので実用性はない

※車椅子乗車時には身体が落ちないよう紐にて車椅子に固定

移乗:坐位保持は自立。口頭支持など一部介助。車椅子からベッドへの移乗は口頭支持と軽度介助もしくは要監視。移乗の準備として坐面を前に持ってくる為には口頭支持が必要

車椅子操作:口頭支持。フットレストは手で上げることが可能だがときに口頭支持が必要。フットレストを下げるには手と足を利用し時に口頭支持が必要

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Ⅴ.統合と解釈

本症例は80歳代女性で上腕骨外科頚骨折を呈した患者である。上腕骨外科頚骨折とは肩を下にした状態で転倒した際に起こるもので、軽微な外力にて生じ、特に高齢の女性で骨粗鬆症を合併している患者に多くみられる。

現在医師からは疼痛を伴っても積極的に運動をおこなわせるよう指示が出ている。

骨折にいたった経緯として、既往歴にある第1腰椎の圧迫骨折による下肢筋やL1以下の体性感覚へ何らかの影響とその際より生じた脊柱の側彎・円背が立位保持のための筋力やバランス機能の低下に影響を与え、さらに脳梗塞の後遺症である左下肢への力の入りにくさが絡み合い転倒を引き起こし、ここに基礎疾患である骨粗鬆症が存在したため骨折にいたったと思われる。

外科頚骨折後、既往歴にある心筋梗塞や高齢の女性ということから観血的整復のリスクが高く保存療法が選択され、〇〇月〇〇日~〇〇月〇〇日まで安静固定を続けていたが、円背が存在するために背臥位をとりにくく、また左方への側彎のため患者にとっては右側臥位が最も楽な肢位であったようで、この肢位を続けたためにさらに骨の癒合は悪くなり、いまだにその癒合は得られていない。この際医師より背臥位についての指示があったがその指示入力は悪く、認知症症(HDS-R11点)を診断された。

骨折後の骨の癒合は得られていないがその連続性は保たれているため右肩関節の運動は可能であるが、その運動範囲は痛みにより屈曲90°、外転85°、外旋40°に可動域制限をうけ、MMTは共に2である。運動により右肩~上腕近位1/2までに痛みが誘発される。しかし機能的肢位(屈曲30°外転60~80°外旋20°)まで痛みを生ずることなく可動可能で、これによる日常生活への影響はさほどなく、手指の巧緻性については箸の使用、ボタンかけ、紐結びなど問題なくおこなうことができることから食事、上衣の更衣、手櫛などに対応し、実用手として十分な機能を備えているといえよう。また車椅子を推進させうるだけの肩関節の運動域(20~70°)を保持しているが、現在それに伴う筋力が不足しており、またハンドリムに押し出す力をかけることにより右上肢に痛みを生じることから自力にて車椅子の推進は不可能である。しかし最も車椅子の自操を困難としているのは認知症であり、一つ一つの動作を覚えることができても自操のための一連の動作を行うことが困難となっている。

骨折治療のための長期臥床が与えた影響は肩関節だけではなく全身のROM制限、筋力低下など構造的なもの、さらには認知症の増悪にまでおよぶこととなり、基本的動作能力の低下をきたした。

安全にADL(食事・整容・更衣・排泄・入浴・起居・移動・移乗)を行使するうえで坐位、立位の安定保持は欠かすことのできない要素である。

坐位保持は短時間であれば両手を膝の上に置き補助なしで可能。長時間の保持や手作業を加えると徐々に体幹が後傾してくるが、両手でベッドの端をつかむことにより安定して可能である。ただ単に坐位保持という観点からは問題はないが手作業がこれに加わることにより後傾してくるということから要監視、口頭支持により体幹の後傾を指摘する必要がでてくる。常に背もたれのある環境を整えることにより安全な自立した坐位保持が可能となり手作業も問題なくおこなうことができると思われる。

起立については物につかまった状態を軽度介助もしくは要監視である。立位保持にはつかまる物もしくは介助が必要で、短時間(数十秒)のみ可能でこの際の上肢の自由度はないに等しい。正常人の立位保持は筋活動より骨性の支持によるところが大きく、この患者さんは下肢筋の筋力低下をきたしているため両上肢により物をつかみ体重を支えるか介助にて起立が可能だが、股関節に屈曲拘縮(伸展右-30°左-20°)が存在するため股関節、膝関節を伸ばしきることができず、股関節屈筋に対し持続的な活動が求められるが、股関節屈筋MMTは右4、左2、膝伸筋は右2-、左2のため立位保持に必要な筋力を十分に得られていない。この筋力低下の原因は現疾患である上腕骨外科頚骨折をきたす以前にも転倒していることから一概に長期臥床だけによるものと考えることはできず、左右の股関節屈筋筋力の相違から脳梗塞、下肢全体の筋力低下から腰椎圧迫骨折(L1、L4)の影響も考えられる。また変形性脊椎症からくる円背・側彎や変形性膝関節症による膝のアライメントの異常も立位バランスの保持に影響を与えていると考えられる。

起居は右側臥位からのみ可能だが上腕骨外科頚骨折の存在から疼痛を生じ、また骨折部位の癒合を阻害することから本来なら十分なリスク管理を必要とするが、骨折に対するリスク管理より全身機能の低下を予防することが先決という医師からの指示により右側臥位からの起居を実行しているが、そのつど患者は痛みを訴えながら起居する。左側臥位からの起居は既往歴にある左不全片麻痺の影響により左上肢の筋力低下、肩関節MMT伸展2、内旋2をきたしているために不可能ではないかと思われたが、関節MMT外転4、肘伸展5から考えると起居できるのではないかという可能性も考えられたため、ひとつひとつの動作を根気よく言語指示することにより身体をうまく指示通りに動かすことが可能であった。以上のことから筋力低下のみが起居を阻害しているのではなく認知症により起居動作を忘れているという可能性がもっとも考えられる。

下衣の更衣をおこなうためには一度起立して下衣を上げるか、ベッド上を後方に転がり坐面を離地し下衣を上げ再び起き上がる必要がある。車椅子にてフットレストの上下が可能なことから坐位において下衣の引き上げ下げが可能と思われるが、体幹を前屈するため坐位保持困難から前方への転倒の危険性が存在し、仮に紐にて体幹を固定したとしてもその後の起立と立位保持の困難、後方への転がり後の起居動作の困難からこれらを安全に行使することは不可能と思われる。入浴における脱着位に関しても同じことがいえるが、これに加え浴室内で着衣していないことや床面の滑りやすさから転倒による受傷への危険度は増すため全介助にて入浴をおこなっている。

 現在は安全性を考慮し、日常生活動作の殆どを介助に頼っている状態だが、その最たる原因として考えられるのが認知症による指示入力の困難さにある。認知症により日常動作を想起できず、また行動の安全性を教育するために記憶の保持が求められるがこれも困難となっている。そのため動作に対する指示がわかっていながら動作が想起できなかったり、指示自体が理解できない。また上腕骨外科頚骨折の安静期に禁止肢位をとってしまったり、移乗動作の際に右上肢に荷重をかけ疼痛を引き起こしてしまうことがある。日常生活における身体活動、日常的動作の維持は精神機能の維持に繋がるが、リハ室において可能な動作でも病室では監視をしているだけの時間と人手のなさが過介助となり、患者の機能低下のみではなく認知症の増悪を助長させているというのも事実であろう。現在排泄はオムツ利用によるが患者が排尿・排便感を保持しているにもかかわらずオムツを利用しているという事実は局部の不潔につながり、現在尿路感染症を呈しているということに反している。ここで患者の尿意・排便感の訴えは認知症によるものではないかという疑いが存在するが、先日便意を訴えているにもかかわらず起立動作をおこなったところオムツ内にて排便し「我慢していたのに」と言ったことから排尿・排便感、またそれを我慢するだけの機能は保たれていると考えられ、オムツの利用は介助に割く時間と人手の不足が引き起こしているこの患者への不利益であろう。

 以上よりこの患者の身体機能、精神機能に最も悪影響を与えているには認知症症であり、これが存在することにより日常生活能力を発症以前の状態に戻すことは難しい。そのためにも日常生活における活動量を増大させ、五感を通した外的刺激を得ることによりその知的活動を促進させ、精神機能をこれ以上増悪させないよう維持していくことが課題とされる。

 

Ⅵ.問題点

Impairment

#1認知症

・与えた指示が通らない

・新しい指示を覚えられない

・動作を思い出せない

・人の顔の識別がままならない

・見当識障害

 

#2筋力低下

下肢筋全体、特に股関節屈筋と膝関節伸筋、体幹前傾のための筋群の筋力低下。上肢についても筋力低下を認められるが、その機能を果たすだけの筋力を保持しているため現状の維持を考えていく

 

#3関節可動域制限

股関節屈筋と膝関節伸筋の屈曲拘縮のため安定した立位をとることができない。上肢についても関節可動域制限が認められるが、その機能を果たすのに必要な運動域を確保しているため現状の維持を考えていく

 

#4右上腕骨外科頚の疼痛

右上肢の運動や荷重をかけたときに生じる疼痛

 

#5第1腰椎圧迫骨折・第4腰椎圧迫骨折、変形性脊椎症・円背・側彎

両下肢筋の筋力低下、坐位・立位における体幹の前後左右のバランス不良

 

#6変形性膝関節症

膝の内反変形による立位バランスの不良

 

#7脳梗塞

左不全片麻痺による若干の左半身の筋力低下

 

#8骨粗鬆症

上腕骨外科頚骨折の骨癒合の不良

 

#9心筋梗塞

運動に対する制限

 

Disability

#10移動

移乗能力があるにもかかわらず病棟では車椅子へ移乗の介助をうけている

 

#11トイレ

尿意・排便意があるにもかかわらずオムツの利用

 

#12更衣

上衣の着脱ができるにもかかわらず病棟では全介助。下衣の脱着はできないため全介助

 

#13入浴

自身で洗体可能な部分も全介助

 

#14整容

歯ブラシへの歯みがき粉の搾り出し

 

#15起居

右側臥位からしか起き上がれず、その際右上腕骨外科頚骨折部に痛みを生じる。左側臥位からは口頭支持がないと起き上がれない

 

Handicap

#16親族や他人との意思疎通

 

#17異常行動

 

Ⅶ.ゴール設定

ショートゴール(3週間):立位保持や移乗をバランスよくおこなうために股関節、膝関節の関節拘縮の改善と下肢筋の筋力維持。現在できるADL活動を今後も維持していくため上肢の関節可動域と筋力の維持

ロングゴール(3ヶ月):ベッド上での安全な起居動作から車椅子への移乗動作。ポータブルトイレへの安全な移乗と排尿、排便、後始末、下着・ズボン上げ

 

Ⅷ.治療プログラム立案

・これ以上認知症を増悪させないためにも同一の治療者が接し、コミュニケーションをとっていく

・動作を言語指示ではなく動きをもって覚えてもらうため椅子からベッドへの移乗動作を反復練習

・上肢、下肢のROM訓練(右肩関節は痛みに注意を払う)

上肢:DIP、PIP、MP関節と手関節、肘関節、肩関節、肩甲帯の屈伸を自動介助にて行う

下肢:股関節、膝関節、足関節の伸展を自動介助にておこなう

・右上肢:利き手としての機能を失わないためにペグや箸を利用した協調性の維持訓練

・左上肢:しっかりと手すりやそれに変わるものをつかみ身体を支えるのに必要な筋力を得るため、平行棒や車椅子の手すりを利用した立ち上がり訓練

・下肢筋を一つ一つ増強させるのではなく立ち上がりの為の筋群全体の筋力増強とその協調性を養うため椅子からの立ち上がり運動

・バランス保持機能を改善するために立位・坐位にて体幹の回旋運動

※運動前、中、後にバイタルをチェックし運動中止はアンダーソンの基準に順ずる

※脳血管性認知症は動脈硬化によるものが主なため運動療法はその予防(患者がきついと感じるような過度なものは避ける)に働き、人とのコミュニケーションは精神機能低下の予防に働く

 

Ⅸ.フォローアップ

将来ヘルパーを利用したとしても、自力による移動手段の確保の困難と常時一人の生活により認知症を増悪させるという危険から独居は不可能と思われる。家族と同居することにより自身では不可能な日常生活関連動作を補填することができ、常時ではないにしろ一日の内何度も家族と触れ合う機会を持つことができ、認知症の進行を最小限にとどめることができる。しかしなんでも家族が介助することにより、自身でおこなえることをしないことが寝たきりにつながり、さらには認知症の増悪へとつながるため家族への日常動作の重要性を説明し、現在の能力を損なわないためにその具体的方法を指導することにより患者の予後をより良い方向へと誘導する。

また家族への負担を減らすためにも福祉制度の紹介(ヘルパー、デイサービス、デイケア、訪問リハなどとその申請方法)、室内の環境整備の工夫(手すり設置、段差解消、浴槽とその周辺の整備などとその援助システム)を進言する。

 

ADL機能を損なわないための指導

食事:車椅子でとらず、そのつど椅子に移動する。摂食はスプーンではなく箸を利用し、時間をかけおこなう。右手に箸、左手に茶碗を持ってもらう

更衣:毎日更衣する。更衣は坐位でおこない後方に倒れても安全なスペースを確保する

整容:爪切り、櫛梳き、歯磨きは背もたれのある場所でおこなう

トイレ:尿意・便意を訴えたら速やかにトイレに連れて行く。家に患者さん一人の時間があるならオムツの使用かヘルパーを利用する

風呂:脱衣所から浴室までは介助をしながら移動。自身で洗体できる部分は自身でおこなってもらい届かない部分について介助する

移動:屋内、屋外共に車椅子を利用し全介助でおこなう。車椅子への移乗はできる限り自身でおこなう(要監視)

外出:家に篭りっぱなしにならないよう車椅子を利用し散歩などをして、外気に触れる機会をつくる

睡眠:ベッドからの転落を防ぐために頭部と足部の側方に取り外し可能な柵を設置し、自力で起き上がりの際に利用できるようにしておく

生活環境:規則正しい生活をおくる。よく使うものは置く位置を定める。できるだけ孤独を味合わせず、また寝込むようなことは避ける。コミュニケーションはゆっくり理解しやすい言葉を用い、老人のペースに合わせる。環境の変化への対応は困難で混乱をきたすのでできるだけ避ける。定期的(一ヶ月毎)に診察に来院してもらう

※できないことをさせるのではなくできることをさせる

※全ての動作において体調の悪いときは決して無理をさせてはならない

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 整形疾患, 病院, レポート・レジュメ