書き方 整形疾患 病院 レポート・レジュメ

【関節リウマチ+強い痛み】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月25日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「関節リウマチ(RA)+強い痛みを訴える」患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 関節リウマチの患者

  • 全身に強い痛みを生じている
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「関節リウマチ+強い痛みを訴える」患者のレポート・レジュメ作成例

【一般情報】

氏名:

年齢:歳代

家族構成:息子が3人いる。特に次男とその妻が世話をしている。

キーパーソン:次男

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【医学的情報】

診断名:関節リウマチ

主訴:寝返りをうつだけで痛く、寒いときが一番つらい。じっとしても痛いので起きて人と話すと気がまぎれる。

ホープ:歩きたい。自分でトイレに行きたい。

家族のホープ:痛みをやわらげてあげたい。動きをよくしてあげたい。

現病歴:歳代で関節リウマチに罹患、歩行障害がありB病院に入院。

既往歴:〇〇年〇〇月〇〇日 慢性胃炎、骨粗鬆症

    〇〇年〇〇月〇〇日 右下腿慢性閉塞性動脈硬化症

    〇〇年〇〇月〇〇日 後縦靭帯骨化症

    〇〇年〇〇月〇〇日 腎のう包、慢性肝炎

    現在A施設にて入所

投薬内容:

  • リードラー
  • ケジフェレ
  • アルシオドール
  • アルキサー
  • ガスイサン
  • インダンレ カプセル

 

他部門からの情報:

Ns:意思はしっかりしていて、反応も返ってくる。リハビリを始めてから、外出をあきらめかけてきているが意識、知能面がはっきりしているのでなかなか難しいところがあり、また、よその人に迷惑をかけるのではと、おしっこが気になって外出できない。食事は箸を使って食べている。食欲はあり、嚥下状態も良いが、おしっこを気にして水分はあまり取らない。便はほとんど出ない。注射、くすりは嫌いで自分からは、注射を打ってほしいとは言ってこない。体がくすりに慣れてきて利きにくい状態にある。全身状態は天候に左右されやすく、状態が悪い日は頭が痛いなど訴える。朝6時におきて、タオル干しなどを手伝ってくれて、何かを出来ること、何かの役に立てることを感じることはいいのではないかと思う。

 

【理学療法評価】

全体像

車椅子自走ができるが、介助時間の関係で、リハ室やトイレには介助者が押してきている。笑顔がよく見られ、受け答えもしっかりしているが、日内や日毎の体調も変わりやすく、動作や精神状態はその日、その時間によってさまざまである。表情や言動、行動から本当に困ったときにしか第3者を頼らず、できることは自分でしようとするが、逆にそれまでは我慢しているようにも感じられる。リハビリは積極的に行っており、病室でも自主練習を行っているが、リハ室に来るのは、リハビリをするというより今抱えている不安を聞いてもらいたい、紛らわしたいというような印象も受ける。

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局所症状

RA特有の疼痛はほとんどの関節にみられる。変形もほとんどの関節にみられ、特に目立つものは、両膝関節、両肘関節、両手関節、両手指(スワンネック変形、尺側偏倚)である。以下に車椅子坐位時と運動時の疼痛を示す。

VASで評価、最大の痛みを10、全く痛くないを0、として10段階で評価した

疼痛/10

  

頚部

肩関節

肘関節

手関節

手指

股関節

膝関節

足関節

足部

車椅子

0

3

7

5

0

5

8

1

1

0

4

6

3

0

5

7

2

1

運動時

3

6

10

6

3

6

9

3

3

3

10

8

4

3

7

9

4

3

コメント:疼痛が大きすぎる。このような痛みでは車椅子に平然と座っていられないので、この数値はどこの疼痛がどこより痛いかの参考程度に理解してもらいたい。

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Stainbrokerのstage分類

 軟骨、骨破壊、関節変形(尺側編位)、筋萎縮があるのでそれに近い「StageⅢ:軟骨ならびに骨破壊・関節変形(亜脱臼、尺側編位、過伸展)・強度の筋萎縮」と判定。

 

Stainbrokerのclass分類

本症例の日常動作は食事以外介助を要するので「Class3:日常動作がすべて高度に制限される」と判定。

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ROMテスト

肩甲帯、肩関節のROM(単位:°  疼痛:P)
  

自動

他動

自動

他動

#1肩甲帯

①屈曲

5

0

②伸展

5

0

③挙上

5

5

④下制

5

5

#2肩関節

⑤屈曲

45

135

90

30

45(P)

15

⑥伸展

      

⑦外転

90

105(P)

15

0

0(P)

0

⑧内転

0

0

0

0

0

0

⑨外旋

0

10(P)

10

0

0(P)

0

⑩内旋

65

65

0

65

65

0

開始肢位:車椅子坐位で測定、両肘は拘縮のため軽度屈曲位

コメント

⑤(右)筋力低下によるものと思われる。MMT2

 (左)自動は筋力低下によるが、他動は疼痛による。MMT2

⑦(右)肩の外旋ができないため。

 (左)疼痛に対する恐怖心などの精神的理由から動かそうとしない

⑨疼痛のため。

 

上肢のROM(単位:°   疼痛:P)
 

自動

他動

自動

他動

#3肘関節

①屈曲

130

135

5

80

100

20

②伸展

-30

-25P

5

-40

-35P

5

#4前腕

③回内

45

50

5

50

60

10

④回外

50

50

0

65

70

5

#5手関節

⑤掌屈

10

10

0

15

30

15

⑥背屈

-5

-5

0

15

30

15

⑦橈屈

-5

-5

0

-10

-10

0

⑧尺屈

10

20

10

20

20

0

コメント

②③④(左、右)関節破壊、拘縮ため

#5関節破壊による変形にため

 

手指のROM(単位:°   疼痛:P)
  

自動

他動

自動

他動

#6拇指

①橈側外転

50

50

0

50

60

10

②尺側内転

0

0

0

0

0

0

③掌側外転

40

50

10

40

50

10

④掌側内転

0

0

0

0

0

0

⑤MP屈曲

30

45

15

25

40

15

⑥MP伸展

-5

0

5

10

20

20

⑦IP屈曲

50

50

0

60

70

10

⑧IP伸展

35

35

0

10

10

0

 

右(自動)

右(他動)

第2

第3

第4

第5

第2

第3

第4

第5

第2

第3

第4

第5

#7指

①MP屈曲

70

65

60

50

75

70

70

60

5

5

10

10

②MP伸展

0

0

0

0

25

25

20

40

25

25

20

40

③PIP屈曲

50

40

50

55

60

45

65

55

10

5

15

0

④PIP伸展

10

10

5

0

20

20

15

0

10

10

10

0

⑤DIP屈曲

30

40

40

30

50

50

50

50

20

10

10

20

⑥DIP伸展

-15

-20

-5

-15

0

0

0

0

15

20

5

15

⑦外転

5

 

5

10

15

 

20

35

10

 

15

20

⑧内転

0

 

0

0

0

 

0

0

0

 

0

0

 

左(自動)

左(他動)

第2

第3

第4

第5

第2

第3

第4

第5

第2

第3

第4

第5

⑨MP屈曲

45

55

70

65

70

50

70

70

25

5

0

0

⑩MP伸展

-30

0

0

0

-25

0

0

20

5

0

0

20

⑪PIP屈曲

60

65

60

60

80

70

60

60

20

5

0

0

⑫PIP伸展

15

15

20

15

15

15

20

15

0

0

0

0

⑬DIP屈曲

45

40

45

50

50

45

45

50

5

5

0

0

⑭DIP伸展

0

0

0

15

0

0

0

0

0

0

15

0

⑮外転

15

 

10

10

15

 

20

45

0

 

10

35

⑯内転

0

 

0

0

0

 

0

0

0

 

0

0

コメント

#7両手指の第2,3,4,5指にスワンネック変形が、左手指の第3,4,5に尺側変位がみられる

手指の変形のため全体的に可動域が足りないところがあるが、ADLの場面の現状で特に問題となるほどの可動域制限はない。その理由として、箸を使うことができる、ボタンをとめることができる、ペットボトルを持つことができる、ヨーグルトの蓋を開けることができる、などがあげられる。

 

下肢のROM(単位:°   疼痛:P)
  

自動

他動

自動

他動

#1股関節

①屈曲

      

②伸展

-50*

-45*

③外転

      

④内転

      

⑤外旋

      

⑥内旋

      

#2膝関節

⑦屈曲

100

120P

20

90

110P

20

⑧伸展

-60

-55

5

-35

-25

10

#3足関節

⑨背屈

10

10

0

15

15

0

⑩底屈

10

10

0

15

15

0

臥位で測定

コメント

②日中は車椅子で過ごし、膝関節の屈曲拘縮があるため臥位でも伸展をとることは難しいので、屈曲拘縮があると思われる。また、膝関節のストレッチングのした後股関節痛が現れるのは、短縮した腸腰筋が膝の伸展とともに相対的に伸ばされたためと思われる。

⑧関節屈曲拘縮のため

⑩変形によるもの

 

頚部・体幹のROM(単位:°   疼痛:P)
   

 

自動

自動

自動

左右差

#1頚部

①屈曲

35

②伸展

5

③回旋

30

5

25

④側屈

15

5

10

#2胸腰部

⑤屈曲

 

⑥伸展

 

⑦回旋

45

45

0

⑧側屈

   

車椅子上で測定

コメント

#1痛みが出ない範囲で行っている

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MMT

頚部、体幹

下肢反動で起き上がる際、屈曲位で固定しているので3はあると推定できる

下肢反動で起き上がるので、2~3はあると推定

 

  

#2肩関節

屈曲

2

2

外転

3

コメント

屈曲30°の位置で中等度の抵抗に抗することができなかった

外転90°の位置で中等度の抵抗に抗することができなかった

 

肘、前腕、手
 

#3肘関節

①屈曲

3

3

②伸展

2

2

#4前腕

③回内

3

3

④回外

3

3

#5手関節

⑤屈曲

3

1

⑥伸展

3

1

コメント

⑤(左)手指の屈曲による代償が出現した

⑥(左)手指の伸展による代償が出現した

 

手指
  

#6拇指

①MP屈曲

3

3

②IP屈曲

  

③MP伸展

  

④IP伸展

  

⑤掌側外転

3

3

⑥橈側外転

3

3

⑦内転

3

3

#7指

⑧MP屈曲

3

3

⑨PIP屈曲

  

⑩DIP屈曲

  

⑪MP伸展

3

3

⑫外転

2

2

⑬内転

  

コメント

握力は、右手で約80センチの棒を持って靴やスリッパを動かすことができるぐらいある。握手では3はあると推定できる。

ピンチ力はボタンをとめることができる、ヨーグルトの蓋を取る、割り箸を割ることができるくらいの力を有する。

 

下肢
  

#1股関節

①屈曲

3

3

#2膝関節

⑧伸展

2

3

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【食事動作】

項目

○/×

箸、スプーンなどを持つことができる(箸)

茶碗を持つことができる

箸、スプーンを使って食物をつかむことができる

箸などで食物を挿すことができる

魚をほぐすことができる

芋、大根などを割ることができる

醤油などをかけることができる

掴んだ食物を口まで運ぶことができる

おわんに入った汁物を口に持っていくことができる

汁物を飲むことができる

食物を口に入れることができる

コップを持つことができる(ペットボトル)

コップを口まで運ぶことができる

お茶などを飲むことができる

ヨーグルトや納豆の蓋を取ることができる

パンなど手にもって食べることができる

コメント

基本的に食事動作は全く介助なしに自立しているが、いつも食べ残している。

 

【入浴動作】

項目

○/×

浴室に入ることができる

桶にお湯を入れることができる

×

水が入った桶を持つことができる

×

桶で体に肩からお湯をかけることができる

×

桶で頭にお湯をかけることができる

×

水道の栓を回すことができる

×

シャワーを使うことができる

×

体をすべて洗うことができる

×

体の一部を洗うことができる

×

体を洗い流すことができる

×

浴槽に入ることができる

×

浴槽で坐位保持ができる

浴槽から出ることができる

×

【更衣動作】

項目

○/×

服をたんすなどから取り出すことができる

かぶりシャツを着ることができる

×

前開きシャツを羽織ることができる

×

ボタンをとめることができる

ボタンをはずすことができる

ベルクロをとめることができる

ベルクロをはずすことができる

ズボンを履くことができる

×

ズボンを脱ぐことができる

×

スカーフを巻くことができる

パンツをはくことができる

×

パンツを脱ぐことができる

×

靴下を履くことができる

×

靴下を脱ぐことができる

×

【整容動作】

項目

○/×

手を洗うことができる

手を拭くことができる

×

顔を拭くことができる

歯を磨くことができる

口をゆすぐことができる

髪を櫛でとくことができる

つめを切ることができる

×

【排泄動作】

項目

○/×

トイレに行くことができる

清拭ができる

水を流すことができる

コメント

トイレ動作はズボンの上げ下ろし以外はすべてできる。車椅子、便座間の移乗は介助してもらっているが、車椅子、ベッド間はできているので、トイレでも可能だと推定する。

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【起居・移動動作】

項目

○/×

寝返りができる

×

起き上がることができる

坐位保持ができる

起立できる

車椅子に移乗できる

車椅子から移乗できる

車椅子を駆動できる

車椅子で方向転換ができる

車椅子を止めることができる

ドアを開けることができる

×

坐位で移動できる

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【問題点】

Impairment

#1 全身の疼痛

#2 両膝関節の荷重時疼痛

#3 右肘関節の運動時疼痛

#4 左肩関節の運動時疼痛

#5 両股関節の疼痛

#6 両手関節の疼痛

#7 両肩関節の屈曲、外転制限(特に左)

#8 両肘関節の屈曲拘縮

#9 両手関節のROM制限

#10 両股関節の屈曲拘縮

#11 両膝関節の屈曲拘縮

#12 両足関節の背屈制限

#13 頚部の回旋制限(特に左)

#14 両肩関節屈筋群の筋力低下

#15 両下肢の伸展筋力低下

#16 右膝伸展角度と左膝伸展角度のちがい

#17 両上肢屈筋群の筋力低下

#18 朝のこわばり

#19 易疲労性

 

Disability

#20 更衣動作全介助(#1、#3、#4、#6,#7,#8,#9、#18,#19)

#21 入浴動作全介助(#1、#2,#7,#8,#9,#14,#17、#18,#19)

#22 整容動作部分介助(#1、#3,#4,#6,#7,#8,#9、#18)

#23 寝返り動作困難(#1、#13、#15)

#24 立ち上がり困難(#1、#2,#5,#10,#11,#12,#15,#16)

#25 トイレ動作一部介助(#1、#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9、#10、#11、#12、#15、#16、#18、#19)

 

Handicap

#26 生活環境の狭小化

 

【ゴール】

短期ゴール(4週間):自助具を使ったADL能力向上

長期ゴール:外出

 

【対策】

物理療法

自助具を使ったADL訓練

装具療法

関節可動域練習

 

【考察】

 本症例は、歳代でリウマチ(RA)と診断された歳代の患者様で、現在リハビリテーションを受けている。本症例の全身状態は天候に左右されやすく、状態が悪い日は頭が痛いと訴える。このことに注意して以下に進めていく。

 疼痛は静止時、運動時ともに認められる。特に肩関節、肘関節、膝関節は運動時に顕著に表れる。中でも左肩関節は少し触られるだけでも、激しい拒否反応を示し、なかなか触らせてもらうことができなかった。ROMでは肩関節の屈曲、外転、外旋、肘では伸展などの痛みが強い。

 ROMは関節の破壊、疼痛、筋力低下によって主に制限される。拘縮は疼痛軽減をはかるためにとろうとする疼痛回避姿勢の影響が強い。特に肩関節、肘関節、膝関節、手関節は制限が強く、ADLの場面でも強く影響してくる。特に肩関節、肘関節のROM制限はリーチ機能を障害し、ADLテストでも入浴、更衣動作に影響を及ぼしている。実際の場面では棒をリーチャーとして使っている。

 右下肢の筋力低下は、廃用性のものと考えられる。それは立位保持訓練の際に特にわかりやすく見えていて、膝関節のROMが左膝のROMに比べて小さいことから、立位時ほぼ左足に体重が乗っており、右足の踵は浮いていて、身体は左よりになっている。これが実際のADL場面で同じように起こっているものと考えられる。例えば、移乗動作や車椅子駆動のときに起こっていると考えられる。

 モチベーションの低下はできるのにしない、できそうなのにやろうとしないことがあげられる。具体的には、移乗動作はできるのにわざわざ看護師を呼んで介助させていたり、車椅子駆動ができるのに押してきてもらったりしている。もちろん疲労や疼痛の影響も考えられるが、できるのにしないということはモチベーションの低下があると考える。また逆にできるのにさせてもらえないであるとか、できるのに環境によってできないことも考えられる。施設のほうでは介助の効率化のためにできるのにさせてもらえないパターンが多々ある。このことができることを阻害し、「どうせできないから」といったモチベーションの低下につながることもあり得る。それと、疼痛もモチベーションの低下につながる。

 手指の変形は両手の第2,3,4,5指にスワンネック変形が、左手の第3,4,5指に尺側偏倚がみられる。現状はさほどADLを阻害していないが、スピード、エネルギーの観点からみるとやはり、問題点として上がってくる。またこれから確実に変形は進行していくので、それに対する対策を今のうちから行うべきである。

 疲労はRAについて回るもので切り離せない。本症例の場合は午後に移乗をする際に臀部が上がらなくなったり、動きがぎこちなくなることはしばしばだった。リスク管理の面や評価する際に数値的な差が出てくることを頭に入れておかなければならない。

ADL能力低下はリーチ機能低下による入浴動作や更衣動作にかなり影響が出ている。1番大きな問題はズボンやパンツが履けないということであろう。これは主訴にも上がっている1人でトイレに行きたいことを阻害している。

移動能力低下は車椅子だが明らかにスピードが遅すぎることと段差を乗り越えるのに相当苦労していた点である。屋内なら問題ないが屋外だと高確率で移動は阻害される。

生活環境狭小化は1つの理由として、トイレにいけないということが考えられる。トイレに自由にいけないことによって外出は必ず制限される。家庭復帰困難は今の状況だと家族は、介護量が多すぎて面倒を看きれない。ここも同じでトイレが自立していれば日中一人にしておいてもなんとかできそうなのは想像できる。

以上これらの問題点が少しでも改善されればADL上の制限を少なくすることができる。

次に対策について述べる。

はじめに物理療法(温熱療法)をあげた。これは運動の前処置としての効果もあるし、鎮痛、血行促進、筋スパズムの軽減があげられる。また疼痛の軽減によりモチベーションがあがる人もいる。

自助具の活用

自助具の目的には、ROM、筋力、感覚低下の補助および代償、巧緻性、協調性の補助、関節保護、エネルギー節約、両手動作の代償と補助などがあげられる。これを踏まえ使用する自助具を選択し、ADLを指導していく。

食事:柄の太いスプーン、曲がりスプーン、箸蔵君、滑り止めつきの皿など

食事動作は代償動作をうまく使いながらおこなっている。箸を使っているがややぎこちない。変形の進行とともに将来把持力が低下するかも知れないので、自助具を使った練習を行っていたほうがよい。

把持能力が落ちた場合は柄の太いスプーンを使う。手指より肘や肩の問題が影響する。とくに肘の屈筋が落ちた場合は、他方の手で支えて介助したり、曲がりスプーンを利用する。道具以外では食卓を高くしたりして食器と口の距離を近くするとよい。

整容:長柄洗顔ブラシ、ジャンボつめきり、長柄ヘアブラシ、レバー式水道栓、固定式ブラシなど。

今のところ結髪、顔をタオルで拭く、手を洗うといった項目はできているので、整容動作ではつめを切ることができないのでこれに対してジャンボつめきりを使用する。

更衣動作:ボタンエイド、リーチャー、ソックスエイド、ズボンエイド

前開きのシャツは動きの悪いほうから袖を通し、よいほうを後方に回して他方の袖を引き寄せる。本症例の場合、この方法だと、服を後方に回す動作が困難なので、そこはリーチャーを利用する。靴下を履くときはソックスエイド、脱ぐ時は自力で脱ぐかリーチャーを使う。靴下はあらかじめ、履きやすいものに改造しておくとよい。

排泄:トイレベンチ、足上げ式便座、ウォシュレット

便器は膝関節の負担を避けるためにも洋式のほうが良い。立ち上がりを容易にするためには、便座を補高したり、足上げ式便座を使う。ズボンの上げ下げはズボンエイドや、リーチャーを使う。移動に関してトイレ内の手すりの配置、広さ、などを考慮しなければならない。トイレベンチはシートスペースが大きいので移乗がしやすい。しかし、現状でズボンの上げ下ろしをすることは困難なので、更衣動作と共に練習を進行していく。

入浴:長柄ブラシ、ループ付きタオル。

身体を洗う際には長柄ブラシやループ付きタオルを利用する。髪はループ付きシャンプーやブラシや長柄付きヘアブラシを使う。洗体動作は関節をいつもより速く、細かく動かさなければならない。疼痛を引き起こすかもしれないので注意する。タオルを絞るときにはそのまま絞らず、水道栓などの蛇口を利用してタオルを絞る。

 

装具療法

 手指にスワンネック変形がある。指の変形は巧緻動作を困難にするので、PIP関節が固まらないうちに、指輪型のものをはめるとよい。尺側編位には尺側編位予防矯正用スプリントを使う。

 

生活指導

 関節の変形や破壊を防止するため、ある動作を遂行する際できるだけ大きい関節を用いて、小さい関節には負担をかけないようにしたり、変形しやすい方向のストレスを避けたりする。

 テーブルを拭くときなどは横に拭くと、手関節・手指共に過負荷がかかる。手関節手指を中間位で前後に行うと、負荷を軽減できる。コップは取っ手がついたものをそのまま、取っ手の部分をもつと、尺側編位を助長するので、下からコップを支えることにより、手指にかかる負担を軽減できる。手関節を中間位にできればもっとよい。車椅子の操作も尺側編位を憎悪させる。

 

【参考文献】

  1. 藤村武史 監修:ここがポイント!整形外科疾患の理学療法、金原出版株式会社、2005
  2. 土屋弘吉 編:日常生活活動(動作)-評価と訓練の実際-(第3版)、医歯薬出版株式会社、2005

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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