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【くも膜下出血+片麻痺】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月22日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「くも膜下出血+片麻痺」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • くも膜下出血

  • 右片麻痺を呈する

  • 若年

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くも膜下出血+片麻痺のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ.はじめに

 今回くも膜下出血により右片麻痺を呈した症例について,評価結果をもとに問題点の抽出,目標設定,治療プログラムの立案を行なう機会を得て,本症例の経過を追い,最終的な問題点と今後の方針について考察したので以下に報告する.

 

Ⅱ.症例紹介

1.一般情報

【年齢・性別】20歳代・男性 

【身長・体重・BMI】

【職業】無職

【趣味】読書

【発症前生活】:ADL自立.日中は家にいて読書をすることが多かった.

【スポーツ歴】:中学生時代に軟式テニス部に所属. 

【生活歴】<喫煙>なし <アルコール>なし

【介護保険】不適応 【障害手帳】なし

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2.医学的情報

【診断名】くも膜下出血(左中大脳動脈瘤,CPA),神経原性肺水腫   

【障害名】右片麻痺

【現病歴】 〇〇年〇〇月〇〇日,最近めまいがするとの訴えから当院を受診し入院.〇〇日退院.〇〇日深夜2時頃,同居兄が1階本人の部屋からうなり声が聞こえる.意識障害があり救急要請.当院入院.同日手術(コイル塞栓術施行).

【既往歴】なし

【服薬状況】

①アムロジン(降圧薬:Ca拮抗薬)

②ブロプレス(降圧薬:アンデオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

③フェノバール(抗てんかん薬:8月31日より投与開始)

【画像所見】〇〇月〇〇日の画像

*添付推奨

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3.社会的情報

【家族Hope】自分一人で歩けるようになって欲しい.元々の生活をして欲しい.

【家族ニード】独歩の獲得,ADL自立.

【家族構成・キーパーソン】両親,兄と同居.キーパーソンは母親.

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【家屋構造・状況】2階建ての持ち家.主な生活場所は1階.本人は1階を寝室として利用していた.寝具は敷布団,トイレ洋式(手すりあり).

 

4.他部門情報

①Dr:在宅復帰を考え,今後は通院リハを予定している.

②Ns:排便・排尿時にはナースコールにて旨を伝えることが可能.トイレ動作,食事は自立.以前は夜間眠れていなかったが,最近は夜も眠れており,規則正しい生活を送っている.

③OT:上肢・体幹の筋力トレーニング施行し,筋力増強を目標.更衣,整容動作は促しを要していたが,現在は動作遅いものの自立している.

④ST:失語の程度は中等度から軽度.理解力,発語ともに増えているが,文レベルでの理解,書字能力が低下している.発動性低下は初期時より改善は見られるものの,まだ残存している.

 

Ⅲ.理学療法評価

初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

1.全体像

病室では日中ベッド上での生活.挨拶をすると目を合わせることは可能だが,発語は見られない.点滴,尿バルーン装着.意識レベルはE4,V3(a),M6(GCS).呼びかけに対してうなずく反応があり,指示にはジェスチャー,誘導を用いることで可能.リハビリには意欲的に取り組む.

2.バイタルサイン

 

血圧(BP)

心拍数(HR)

SpO2

歩行前

118/78

109

97

歩行中

138

歩行直後

124/82

136

97

歩行3分後

116/80

112

97

3.HDS-R:検査不可.

4Brunnstrom Stage(以下BRS):右上下肢

上肢:stageⅣ 下肢:stageⅣ 手指:stageⅤ

5.関節可動域検査:著名な制限を示す.

 

足関節  背屈

10°

SLR    

30°

35°

6.筋力検査(MMT):

 

股関節屈曲

4

4+

   伸展

3

3+

膝関節屈曲

3

3+

   伸展

3

3+

足関節背屈

3

4

   底屈

3

4

・ハンドヘルトダイナモメータ(HHD):

膝関節伸展筋力測定(体重比) 右14.1% 左21.2%

7.形態測定

下肢周径膝蓋骨上縁より10cm,15cmにて2cmの左右差(左>右).

8.感覚検査(麻痺側を非麻痺側と比較):

①表在感覚:上下肢5/10 足底7/10

③深部感覚:運動覚:足指3/5

9.反射検査

1)深部腱反射:右上下肢亢進

2)病的反射:右バビンスキー反射陽性

10.筋緊張検査

右上下肢ともに軽度亢進

11.バランス検査

1)姿勢保持時間計測:30秒以上安定(座位・立位)

ふらつきは見られず,頚部・体幹の立ち直り反射陽性.

2)Functional reach test(以下:FRT):立位10cm座位40cm

12.動作観察

全体を通して動作スピードは緩慢であり,動作を促さなければ次の動作に移れない.

1)寝返り(左方向):軽介助

 背臥位から側臥位に移る際の肩甲帯,骨盤の後退がみられるために,骨盤を側臥位方向に介助することで寝返り可能.

2)起き上がり(左向き側臥位からベッド端への座位):軽介助

 左On elbow肢位の側臥位から,左手掌をベッドに付けて肘伸展させOn handとなる動作が阻害されているために,左肩を座位方向への介助が必要となる.下肢は両下肢ともにベッド端へ下ろすことができないために介助を要する.

3)立ち上がり(手すりなしベッド端から立位):軽介助

 体幹を前屈,膝を屈曲し,立ち上がり動作の準備段階は確認できるが,股関節屈曲,膝関節伸展をさせ離殿動作が困難なためズボン後方を把持し離殿を介助.

4)トランスファー(ベッド端から車椅子座位):軽介助

 座位から左上肢にてベッド端に設置した車椅子の遠位アームレストを把持し,離殿から方向転換をし,車椅子座位となる.その際,離殿動作が阻害されており,方向転換動作についても,ズボン後方を把持し,車椅子を背に向けるまでの骨盤の誘導する介助を要する.

13.歩行観察:Walkerを用い,後方から前腕を支えるように介助.左足先行の揃え型.

連続歩行耐久性は30m.30m歩行時間は3分1秒.

 常に頚部屈曲,体幹軽度前屈により視線は前下方.歩幅は小刻みであり,左下肢よりも右下肢の方が振り出しは小さい.歩行中,麻痺側遊脚期に足指の床への引っ掛かりが見られることが確認される.15mを過ぎた地点で,立ち止まり,体幹の前屈増大し,前後左右への重心動揺,歩行スピードの減少が確認される.本人の「疲れた」との訴え,膝折れ,歩行スピードの減少,心拍数の増大を終了条件とした.

.全体像

日中はベッド上が多いが,あぐらをかいたり,一人でトイレに歩いたりと活動性増加が認められる.話しかけると短文ではあるが返答あり.自らの発語は少なく,動作指示は,複雑な指示には応答できない場合がある.意識レベルは清明.

2.バイタルサイン

 

血圧(BP)

心拍数(HR)

SpO2

歩行前

128/80

91

97

歩行中

99

歩行直後

130/80

102

97

歩行3分後

128/82

88

97

3.HDS-R:23/30点

4.BRS:右上下肢

上肢:stageⅥ 下肢:stageⅥ 手指:stageⅥ

5.関節可動域検査:著名な制限を示す.

 

足関節  背屈

15°

20°

SLR    

70°

55°

6.筋力検査(MMT):

 

股関節屈曲

4+

5

   伸展

3

4

膝関節屈曲

4

4

   伸展

3+

4

足関節背屈

4

5

   底屈

4

5

・ハンドヘルトダイナモメータ(HHD):

膝関節伸展筋力測定(体重比) 右20.2% 左32.9%

7.周径測定

左右差なし.下肢全体的に初期時より3~4cm増大

8.感覚検査(麻痺側を非麻痺側と比較):

①表在感覚:下肢8/10 足底9/10

②深部感覚:運動覚:下肢5/5

9.反射検査

1)深部腱反射:正常(左右差なし)

2)病的反射:バビンスキー反射陰性

10.筋緊張検査

正常.

11.バランス検査

①FRT:立位33cm 座位60cm 

②片脚立位時間:左右30秒以上可能

③Berg Balance Scale(以下:BBS) :54/56点 (減点:踏み台)

12.動作観察

動作スピード向上.動作促し必要とせず自ら遂行可能.

寝返り,起き上がり,立ち上がり(10cm可),移乗:自立

13.歩行観察:フリーハンドでの歩行.介助なし.

①連続歩行耐久性:660m.660m歩行時間:12分48秒.

②6MWD:距離経過は図に示す.

 Borg息切れ感 歩行前:2→歩行後:5→3分後:5

 Borg足の疲れ 歩行前:3→歩行後:6→3分後:7

 下肢の振り出しの左右差は認められなくなり歩幅増大.視線は前方を向いており,足趾の引っかかり消失.疲労が見られると,麻痺側立脚中期に体幹が麻痺側へ傾く.連続歩行の終了条件は,本人の疲労の訴えとした.

○最終時6MWDの歩行距離経過

 

14ADL評価

初期:(FIM)51/126(*Barthel index:35/100)

最終:(FIM)107/126(*Barthel index:90/100

 

Ⅳ.問題点抽出(ICF)・Ⅴ.目標設定・Ⅵ.治療プログラム

Ⅳ.問題点抽出 (ICF

[心身機能]

#1:安静時脈拍高値

#2:運動中脈拍上昇

#3:右片麻痺

#4:下肢筋力低下(左<右)

#5:麻痺側上下肢随意性低下

#6:筋持久力低下

#7:関節可動域制限(足関節背屈,SLR)

#8:麻痺側下肢感覚中等度鈍麻

[能力]

#9:歩行能力・耐久性の低下(#2,3,4,5,6)

#10:立位動作能力低下(動的バランス能力低下) (#3,5,7)

#11:寝返り,起き上がり,立ち上がり,トランスファー軽介助(#3,5,7)

#12:理解力低下

#13:ADL能力低下(#1-7)

[参加]

#14:活動範囲狭小化 (#8-12)

#15:家庭内自立困難(#8-12)

[環境因子]

#16:入院生活

#17:点滴,尿バルーン装着

[個人因子]

#18:失語症

#19:発動性低下

#20:保続疑い

#21:意識障害

#22:生活リズム不規則

 

Ⅴ.目標設定

STG(1W):寝返り,起き上がり,立ち上がり,トランスファー自立.Walker歩行監視レベル.

LTG(2W):点滴棒把持歩行の獲得(軽介助から近位見守りレベル).

 

Ⅵ.治療プログラム

1) 筋力増強訓練(①膝関節伸展②股関節屈曲・伸展③足関節背屈④ブリッジ運動⑤立ち上がり)

2) 歩行練習(Walkerから点滴棒把持)

3) 関節可動域訓練(足関節,SLRを中心とした可動域拡大)

4) 基本動作訓練(寝返り,起き上がり,立ち上がり,移乗)

Ⅳ.問題点抽出 (ICF

[心身機能]

#1:右片麻痺

#2:下肢筋力低下(左<右)

#3:筋持久力低下

#4:麻痺側下肢感覚軽度鈍麻 

#5:関節可動域制限(SLR)

[能力]

#6:歩行能力・耐久性の低下(#1,2,3,4,11)

#7:ADL能力低下(階段昇降,入浴)(#1,2,3,4,11)

#8:理解力低下

[参加]

#9:活動範囲狭小化(#1-4,11)

[環境因子]

#10:入院生活

[個人因子]

#11:発動性低下

#12:失語症

 

Ⅴ.目標設定

STG(2W):階段昇降自立,下肢筋力増強(膝伸展筋力体重比50%以上)

LTG(1M):歩行耐久性(6WMDで630m以上)の向上

 

Ⅵ.治療プログラム

1) 筋力増強訓練(①膝関節伸展②股関節屈曲・伸展③足関節背屈④ブリッジ運動⑤立ち上がり⑥ニーリング⑦膝歩き⑧タンデム歩行⑨後ろ歩き⑩ジャンプ⑪トレッドミル走行⑫エルゴメータ)

2) 歩行練習(屋外歩行含む)

3) 関節可動域訓練

4) 段差・階段昇降練習

Ⅶ.考察

<初期>

本症例は〇〇年〇〇月〇〇日にくも膜下出血を発症.右片麻痺を呈し,〇〇日当院入院.コイル塞栓術を施行した患者様である.発症後ベッド上安静のため運動中脈拍の上昇,前頭葉障害による発動性の低下が見られている.ご家族のHopeは「自分一人で歩けるようになって欲しい,元々の生活に戻って欲しい」であることを考えると,歩行の能力・耐久性の向上,ADL能力の向上が本症例の最重要課題であると考える.今回目標,治療プログラムを立案するにあたって初期評価である現段階では,歩行に繋げるためのベッド上臥位の状態から歩行までの基本動作の自立,歩行能力の向上に焦点を当てた.リハ開始から一週間の本症例の現段階は,安静時心拍数110拍前後,運動時130拍後半と高値を示している.このことは,急性期にでは疾病による初期の絶対安静が酸素運搬系に様々な影響を及ぼすとの報告からも,手術後2週間のベッド上安静によるDeconditioningによる影響が考えられる.そのため,起立耐性能の向上と運動耐容能の向上を獲得する目的で歩行能力向上を目標設定とした.また,早期の歩行はすべてのADLの予後に肯定的な因子として働くとの報告や,臥床状態の発動性低下に対して最も有効な訓練は歩行との報告,若年齢でBRSがⅣ以上あると歩行の予後は良好との報告からも,初期段階で歩行能力の向上を図ることは本症例にとって重要であると考える.

 本症例のWalkerを用いた歩行の特徴として,歩幅は小刻みであり,麻痺側遊脚期に足指の床への引っ掛かり,耐久性の低下が挙げられる.これら原因は麻痺側下肢の随意性低下,筋力低下,不動によるSLR・足関節背屈制限,筋持久力の低下,発動性の低下が挙げられると考える.特に能力低下の見られる耐久性については,動作自立の指標とされている膝関節伸展筋力が著名な低下を示していることから,下肢筋力低下が主として影響していると考えられる.そのため治療プログラムとして,筋力増強訓練,歩行訓練を中心に立案した.

 バランスについて本症例の立位時のFRTは10cmであり,FRTの転倒カットオフ値が15.3cmであることから,前方に支えのない歩行様式にレベルアップした際の転倒が示唆される.そのため随時FRTを評価し,転倒リスクに注意しながら,Walkerから点滴棒把持歩行へとレベルアップを図りたいと考える.

 STGの寝返り,起き上がり,立ち上がり,トランスファー自立は繰り返し各動作を行っていただき,動作パターンの習得を学習することが重要であると考える.

 また心拍数の高値は夜間眠れていないという不規則な生活リズムから生じているのではないかという点も考えられる.そのため,生活場面への促しも含めて,リスク管理として心拍数の急激な上昇に注意をしてリハビリを進めていくことが重要であると考える.

 

<最終>

本症例は〇〇年〇〇月〇〇日にくも膜下出血を発症.右片麻痺を呈し,同日コイル塞栓術を施行した患者様である.家族のHopeが「自分一人で歩けるようになって欲しい」であることや,早期の歩行はADLの予後に肯定的な因子として働くとの報告,若年齢で発症時のBRSがⅣ以上あると歩行予後は良好との報告から歩行訓練を中心にリハビリを行った.結果として最終評価時では,基本動作能力,歩行能力耐久性,ADL能力の向上が得られた.

初期評価時の主な問題点として心拍数の高値が見られていたが,最終評価時では急激な心拍数の上昇が消失した.これらは発症から約3週間目の時期に見られた.先行研究によると,脳損傷により傷害されていた恒常性が働き始めるのは約3週目の時期であるとの報告があることから,初期に考えられたDeconditioningの影響よりも恒常性が本症例の心拍数に影響していたと考えられる.

歩行動作の初期評価時は,Walkerを用いた歩行で歩幅は小刻み,麻痺側遊脚期に足趾の床への引っ掛かり,耐久性の低下が主として見られていた.これら原因は麻痺側下肢の随意性低下,動作自立の指標とされている膝関節伸展筋力低下,筋持久力低下,不動によるSLR・足関節背屈制限,覚醒レベルの低下を考え,アプローチとして発症初期から歩行訓練による抗重力位での運動,下肢筋力増強訓練を中心に取り入れた.その結果,下肢筋力の増強,麻痺側分離運動の改善,覚醒レベルの向上が得られ,初期時に見られていた歩容が改善したと考えられる.FRT,片脚立位などの立位バランス能力が著名に低下していたが,現在ではFRT,BBS,片脚立位ともに転倒カットオフ値を上回っていることからバランス能力が向上し,独歩が自立されたと考えられる.

基本動作能力は,初期時では主に立ち上がり時の離殿動作介助,もしくは促さなければ次の動作に入らない事が,筋力低下とともに理解力低下,発動性低下を原因として認められていた.次の動作の促しは,随時練習中に次はどうするのかという問いを続け,繰り返し練習したことにより動作の流れを理解し,各動作の流れを習得したと考えられる.これら動作に対する理解力向上は整容,更衣においても同様で,次の動作を促さなくても行えるようになった.しかし,現在でも自分から行動に移す場面は少ないことが見られている.これらは,本症例の身体機能は自立出来る能力を有しているため,病前の患者様の性格,前頭葉障害による発動性の低下が影響していると考えられる.この問題点に対して,自発性を促す目的でプログラムを組み,自ら決められた時間にリハ室に来て頂くことや,自主トレを訓練に取り入れることが重要であると考えられる.

病前は家にいる時間が多かったが,年齢も若いことから今後の社会復帰を考えると歩行,ADLに関する予備能力が必要になると推察される.今後の課題は,ADLで階段昇降が見守りであるため階段昇降自立を目標とする.指標として膝関節伸展筋力の階段自立上限値は50%との報告があることから,階段練習に加えて下肢筋力増強訓練を続けて行う.また,6MWDで外出に制限が生じる基準(400m)を下回っていることから,歩行練習を行い,まずは中高齢者の平均距離値である630mを目標とする.これら目標を達成するため,続けて積極的なリハビリを進めたいと考える.

 

Ⅷ.おわりに

学生という立場ではありますが技術,知識等に関してまだまだ未熟なところが多々あり痛切さを感じている.このような経験からさらに上のレベルに近づけるように努力していきたいと考える.今回担当させていただいた利用者様,ご家族,またご多忙の中ご指導して下さったスタッフの先生方に大変深く感謝申し上げます.

 

Ⅸ.参考・引用文献

1)市橋則明 他:運動療法学-障害別アプローチの理論と実際-.文光堂,2008,2,pp435-449

2)渡辺丈眞:高齢者転倒の疫学.理学療法,18(9),pp841-846,2001

3)笠原美代子・他:片脚立位と下肢筋力の関係.理学療法25,142,1998

4)柏木正好:環境適応-中枢神経障害への治療的アプローチ-.青梅社,2004,pp174-186

5)末廣健児 他:トイレ動作について考える.関西理学,8:7-11,2008

 

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疾患名
特徴
脳血管疾患

脳梗塞

高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中

脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

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