理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。
今回は、「脳梗塞+半側空間無視」の患者のレポート・レジュメです。
実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。
しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。
当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。
紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。
作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!
レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】
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今回ご紹介するレポートの患者想定
今回ご紹介する患者想定
- 施設に入所中
脳梗塞
半側空間無視を呈する
- 超高齢
歩行獲得を目指す
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脳梗塞+半側空間無視のレポート・レジュメ作成例
Ⅰ.はじめに
今回,脳梗塞により左片麻痺,半側空間無視を呈した症例について,評価・治療を行なう機会を得たのでここに報告する.
Ⅱ.症例紹介
1.一般的情報
[性別]女性
[年齢]90歳代
[利き手]右手
2.医学的情報
[診断名] 脳梗塞(右中大脳動脈領域)
[障害名] 左片麻痺,左半側空間無視
[現病歴] 〇〇年〇〇月〇〇日昼頃,徒歩約2分の距離に住んでいる長女が自宅を訪ねると,ベッド下で転倒しているところを発見し救急要請,当院入院.
[既往歴] 約30年前に高血圧,心肥大.心房細動。
[経過] 〇○月〇〇日に当病院系列老人保健施設に入所。
[他部門情報]
①Dr:血圧が高値のため,禁忌として収縮期血圧160以下に押さえながらリハビリを施行.
②Ns:夜間眠れていないことが多く、昼夜逆転生活。食事は拒否することが多く、食べても少量.
②ST:重度左半側空間無視害を認める.
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3.基礎・社会的情報
[本人Hope] 歩けるようになりたい.
[家族Hope] 仕事が忙しく介助できないので、施設での生活をしてほしい。
[発症前生活] ADL自立.杖歩行可の生活.食事は長女宅へ徒歩にて食べに行っていた.
[職業] 無職
[家族構成] 独居.徒歩約2分の場所に長女宅あり.
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[家屋構造] 持ち家.和式トイレ,ベッド生活.手すりなし.
Ⅲ.理学療法評価・Ⅳ.問題点抽出(ICF)・Ⅴ.目標設定・Ⅵ.治療プログラム
初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日) | 最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ⅲ.理学療法評価 1.全体像:病室では日中ベッド上か車椅子上での生活.常に右側を向いており,両眼球も右方偏倚.傾眠傾向であるが,右側から挨拶をしたり呼びかけを行うと,返答見られる。意識レベルはE4,V4,M6(GCS).点滴,酸素吸入,尿バルーン装着.「歩けるようになりたい」と話し,リハビリには意欲的に取り組み,自分で出来るようになると笑顔を見せる.左肩,左下腿外側,左大転子周辺に褥瘡あり. 2.バイタルサイン:
3.HDS-R:15/30点 4.BRS:左上肢:stageⅣ 左下肢:stageⅤ 左手指:stageⅤ 5.筋力検査(MMT):
6.感覚検査: 1)表在感覚:左上下肢を強く触ってもよく分からないとの訴え. 2)深部感覚:運動覚:手指4/5 7.反射検査: 1)深部腱反射:左下肢亢進 2)病的反射:左バビンスキー反射陽性 8.筋緊張検査:左上下肢ともに低下 9.姿勢観察: 1)車椅子座位 頚部右回旋,右側屈し常に右側を向いている.体幹右回旋,右側屈.両上肢はアームレスト上.時間が経つと体幹右側屈増大,前屈が見られ,前かがみになる姿勢をとる.プラットフォーム上座位は不可能。 2)立位姿勢(ズボン後方,左腋窩を介助状態) 頚部右回旋,右側屈.体幹は過度に前屈し,視線は下方.上肢は軽度外転し,肘関節は軽度屈曲.膝関節軽度屈曲.介助状態から左腋窩を離すと,頭から前方に倒れこみそうになり,ズボン後方を離すと,後方の車椅子に膝折れをし,勢いよく座り込む. 10.動作観察 1)立ち上がり(車椅子座位から右上肢にて歩行器を把持):軽介助 座位から体幹を前屈,膝を屈曲し,立ち上がり動作の準備段階は確認できるが,膝関節伸展をさせ離殿動作が困難なためズボン後方を把持し離殿を介助. 2)立位姿勢からの下肢振り出し(右上肢にて歩行器を把持):軽介助 立位姿勢の軽介助状態にて,歩行器を把持した状態からの下肢の振り出し.両下肢ともに膝関節の動きは確認できず,股関節を屈曲することによる振り出し.歩幅は半歩. 11.ADL評価 :0/100点(Barthel index) Ⅳ.問題点抽出 (ICF) [心身機能] #1:左半側空間無視 #2:高血圧 #3:筋持久力低下 #4:下肢筋力低下(左>右) #5:麻痺側上下肢随意性低下 #6:麻痺側感覚重度鈍麻疑い [能力] #7:立位能力低下(静的バランス低下) #8:立位アライメントの逸脱 #9:基本動作能力低下 #10:歩行能力・耐久性の低下 #11:ADL能力低下 [参加] #10:家庭内自立困難 #11:活動範囲狭小化 [環境因子] #12:入院生活 #13:点滴,酸素吸入,尿バルーン装着 #14:独居,手すりなし [個人因子] #15:高年齢 #16:意識障害 #17:認知症 #18:傾眠傾向(覚醒レベル低下) #19:褥瘡 #20:生活リズム不規則 Ⅴ.目標設定 STG(1W):端座位保持自立(10秒) LTG(2W):端座位保持自立(30秒) Ⅵ.治療プログラム 1)筋力増強訓練(①膝関節伸展②立ち上がり③立位保持) 2)歩行練習(立位から下肢の振り出し練習.歩行へ) 3)基本動作訓練(寝返り,起き上がり,立ち上がり,移乗) 4)関節可動域訓練 | Ⅲ.理学療法評価 1.全体像:初期と著変は無いが、表情、傾眠傾向は日によって異なることが多い。 2.バイタルサイン:
*日によって異なることが多く、安静時収縮期血圧70~100mmHgと変動がある。 3.HDS-R:15/30点 4.BRS:左上肢:stageⅤ 左下肢:stageⅤ-Ⅵ 左手指:stageⅥ 5.筋力検査(MMT):
6.感覚検査: 1)表在感覚:左上下肢を強く触ってもよく分からないとの訴え. 2)深部感覚:運動覚:手指4/5 7.反射検査: 1)深部腱反射:正常 2)病的反射:左バビンスキー反射陰性 8.筋緊張検査:左上下肢ともに低下 9.姿勢観察: 1)車椅子座位 体幹は正中位に支持されているが、頚部右回旋し,常に右側を向いている. 2)座位(プラットフォーム上):見守り 3)立位姿勢(左腋窩を介助状態) 頚部右回旋、体幹前屈も初期よりは軽減しているが、介助している左腋窩を離すと、前方へ倒れこむ。初期にズボン後方に介助を要していたが、介助なくても支持可能。時間が経つと、膝折れが見られる。 10.動作観察 1)立ち上がり(車椅子座位から右上肢にて歩行器を把持):軽介助 初期と著変はないが、離殿の際に介助量軽減を認める。 11.歩行観察:Walkerを使用した歩行。後方から中等度介助。 ・連続歩行耐久性:約7m。 Walkerに前腕を乗せているが、介助をして支えないと落ちてしまう。 体幹は前屈して寄りかかるようにした姿勢をとる。 歩幅は両側ともに半歩程で、常に膝屈曲位で支持は不可能。 12.ADL評価 :0/100点(Barthel index) Ⅳ.問題点抽出 (ICF) [心身機能] #1:血圧低値 #2:左半側空間無視 #3:麻痺側上下肢随意性低下 #4:下肢筋力低下(左>右) #5: 筋持久力低下 #6:麻痺側感覚重度鈍麻疑い [能力] #7:立位能力低下(静的バランス低下) (#2,3,4,5,6) #8:基本動作能力低下 (#2,3,4,5,6) #9:歩行能力・耐久性の低下(#1-6) #10:ADL能力低下(#1-6) [参加] #11:家庭内自立困難(#7-10) #12:活動範囲狭小化(#7-10) [環境因子] #13:施設生活 #14:尿バルーン装着 #15:独居,手すりなし [個人因子] #16: 生活リズム不規則 #17:食事量少量 #18:高年齢 #19:傾眠傾向(覚醒レベル低下) #20:認知症 #21:褥瘡 Ⅴ.目標設定 STG(1M):移乗介助量軽減 LTG(2M):支持物あり立位保持自立(30秒) Ⅵ.治療プログラム 1)筋力増強訓練(①膝関節伸展②立ち上がり③立位保持④足踏み) 2)歩行練習(Walker歩行) 3)基本動作訓練(移乗) 4)関節可動域訓練 5)風船バレー |
Ⅶ.考察
本症例は〇〇年〇〇月〇〇日に脳梗塞を発症.左片麻痺,左半側空間無視(以下USN)を呈し,〇〇日当院入院をした患者様である.ご本人のHopeは「外に出て歩けるようになりたい」であることを考えると,歩行能力について目標設定することは重要であると考えた.しかし,本症例は90歳代という高年齢で左USNを呈している.高齢であることはUSNの改善に否定的な因子となるとの報告や,発症から一週間経った初期評価時でも改善は見られていないことからも,今後本症例のUSNの大きな改善は見込めず,残存する可能性が高いと考えた.そのため、家庭復帰をするには,転倒リスクを防ぐためや,認知症も認められているために,現在は独居であるが,近くに長女宅があることからも家族の介助が必須となってくると考えられるため、介助量軽減に着目して目標設定とした.初期の目標はトイレ時,食事時等の介助量の軽減のために,座位保持能力の向上を目標としてリハビリを勧めていくことを挙げた。
高齢はUSNの改善に否定的な因子となるという報告の一方で,早期の歩行訓練を積極的に導入することにより,USN側への注意喚起を学習し改善する可能性があるとの報告や,早期の歩行はすべてのADLの予後に肯定的な因子として働くとの報告があるため,現在は車椅子上での生活から立位,そして歩行に繋がる練習を取り入れることが重要であると考える.これら練習を取り入れることにより,現在の筋緊張低下状態から随意性向上を狙い,座位保持の獲得,USNの改善に繋げられたらと考える.
本症例の立ち上がり動作から立位姿勢の特徴として,離殿動作困難,体幹の前屈,膝折れが挙げられる.これら原因は,下肢筋力の低下,下肢筋持久力の低下,麻痺側上下肢随意性低下,左USNが挙げられると考える.動作自立の指標とされている膝関節伸展筋力が著名な低下を示していることから,治療プログラムとして筋力増強訓練(①膝関節伸展②立ち上がり③立位保持),歩行練習を中心に立案した.
本症例は発症から一週間経っておらず覚醒レベルの低下,高血圧が見られている.そのため,治療プログラムを立案するにあたって,理解しやすい単純な動作にて行うという点に配慮をした.高血圧については,急性期の反応性高血圧の場合は,自律神経障害の改善により,10日ほどで自然に落ち着いてくるとの報告があるものの,本症例は既往歴に高血圧があるため,早期の改善は認められないかもしれないという予測を立て,随時バイタルサイン,表情をチェックし,こまめに休憩を取り入れながら施行する事が重要であると考える.
USNへのリハビリ中の配慮として,発症から17日間はUSN側からの注意喚起は行わないほうが良いとの報告や,左側からの指示が全く入らない現在の患者様の状態を考えると,幻覚,幻聴様の刺激を与えるよりも,空間認知のある右側からの指示を与えるほうが安心感を与えることができるため適していると考える.またUSNにおける方向性注意の問題は眼球や頭部の向きではなく,体幹の回旋に依存しているとの報告があることから,座位・立位時の体幹アライメントを常に注意し,修正することが大切である.これらは,病棟でも介入できるアプローチであるため,チームアプローチとして常に日頃の姿勢に気をつけて頂くことが大切であると考える.
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疾患名 | 特徴 | |
脳血管疾患 | 脳梗塞 | 高次脳機能障害 / 半側空間無視 / 重度片麻痺 / 失語症 / 脳梗塞(延髄)+片麻痺 / 脳梗塞(内包)+片麻痺 / 発語失行 / 脳梗塞(多発性)+片麻痺 / 脳梗塞(基底核)+片麻痺 / 内頸動脈閉塞 / 一過性脳虚血発作(TIA) / 脳梗塞後遺症(数年経過) / トイレ自立を目標 / 自宅復帰を目標 / 歩行獲得を目標 / 施設入所中 |
脳出血 | 片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標 | |
くも膜下出血 | ||
整形疾患 | 変形性 | 股関節症(置換術) / 股関節症(THA) / 膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行 |
骨折 | 大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折 | |
リウマチ | 強い痛み / TKA施行 | |
脊椎・脊髄 | 頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症 | |
その他 | 大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷 | |
認知症 | アルツハイマー | |
精神疾患 | うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症② | |
内科・循環器科 | 慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫 | |
難病疾患 | パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難 | |
小児疾患 | 脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症 | |
種々の疾患が合併 | 大腿骨頸部骨折+脳梗塞 / 一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ |