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【関節可動域制限+TKA施行】レポート・レジュメの作成例【実習】

2021年12月28日

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。

今回は、「関節可動域制限+TKA施行」の患者のレポート・レジュメです。

実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。

しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。

当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。

紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。

作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!

 

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今回ご紹介するレポートの患者想定

 

今回ご紹介する患者想定

  • 病院に入院中
  • 関節可動域制限を呈する患者

  • TKAを施行
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「関節可動域制限+TKA施行」の患者のレポート・レジュメ作成例

Ⅰ.はじめに

 今回長期実習において、術前膝関節の可動域制限が著明であったTKA施行後の高齢患者を担当した。術前の評価・生活の方法について知る事の重要性について学ぶ事ができ、術後早期からアプローチをしたことにより改善が見られた為、ここに報告する。

 

Ⅱ.一般患者情報

1.基礎情報

名前:

年齢:

 

2.社会的情報

趣味:ゲートボール、グランドゴルフ、散歩

利き手:右

職歴:学校給食、施設で食事を作る

家族構成:一人暮らし

キーパーソン:四女。保母をしている。一人暮らし

要望:家に帰りたい、ゲートボール、グランドゴルフがしたい

性格:神経質、活発な性格

入院前の生活:趣味のゲートボール、グランドゴルフを行うなど活動的である。また、日曜日には四女に買い物に連れて行ってもらうなどしていた。最寄のバス停まで100m程度あるが、歩いていっていた。

退院後の方針:自宅で一人暮らし。自宅の向かいにはキーパーソンである四女が住んでいる

退院後の移動について:屋内では用心の為、杖を使うか、伝い歩きで生活をする

本人の希望:杖は肩が痛くなる為、シルバーカーを使用する

退院後の生活について:自宅から歩行での移動が必要になる場所は、農協100m・郵便局200m・タクシー乗り場100m。老人会、高齢者大学の参加は、月に1度コミュニティーセンターで行なわれ、タクシーで移動する。趣味をおこなうために必要な歩行時間は、ゲートボールが30分程度、グランドゴルフが休憩を含んで1.5時間〜2時間程度。

家屋状況:門から玄関までは5m、段差は約25cmある。一戸建てで、玄関には段差あり。トイレは洋式、ベッドを使用、風呂は半埋め込み式。洋式の生活で、床からの立ち上がりほとんど行なわれない。

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3.医学的情報

診断名:左変形性膝関節症(〇〇年〇〇月〇〇日初診)右膝関節術後(〇〇年〇〇月〇〇日初診)

障害名:関節可動域制限、筋力低下

主訴:(初期評価時)トイレが不自由(最終評価時)膝裏の外側がつっぱる

現病歴(発病歴): 〇〇年〇〇月〇〇日、M病院で左膝の手術(脛骨高位骨切り術)をして、その後疼痛なく過ごしていた。〇〇年〇〇月〇〇日K病院にて、右膝の手術(脛骨高位骨切り術)施行。〇〇年〇〇月〇〇日便秘になりトイレに何往復もしていたことから、膝痛増強。また、下血した事から、A病院へ内科で入院。その入院中に、整形外科受診し手術を進められ、〇〇年〇〇月〇〇日手術目的のため、当院入院となる。

既往歴:

卵巣癒着手術(〇〇年〇〇月〇〇日)

子宮全摘手術(〇〇年〇〇月〇〇日)

高血圧症(〇〇年〇〇月〇〇日)

甲状腺腫(〇〇年〇〇月〇〇日)

右膝脛骨高位骨切術(〇〇年〇〇月〇〇日)

右白内障手術(〇〇年〇〇月〇〇日)

甲状腺水腫(〇〇年〇〇月〇〇日)

横紋筋融解症〇〇年〇〇月〇〇日

心筋梗塞〇〇年〇〇月〇〇日 

手術施行:〇〇年〇〇月〇〇日

手術術式:左TKA

主治医のコメント:内側側副靱帯、外側側副靭帯が緩い為、シーネ・装具を作製する。

CPK値:

〇〇年〇〇月〇〇日 2962H

〇〇年〇〇月〇〇日 2071H

〇〇年〇〇月〇〇日 601H 

正常値:50~210U/L

*CPK(creatine phoshokinase)クレアチンキナーゼ:ATPのエネルギーをクレアチンリン酸の形で貯蔵し、またはその逆作用で分解する。骨格筋、心筋などエネルギー代謝に必要な酵素。神経疾患(筋ジストロフィーなど)によるもの、循環器系疾患(急性心筋梗塞、狭心症、心筋炎、甲状腺機能低下症、外傷、脳梗塞など)によるもので高値を示す。

 

服用薬:

  • フェロミア

適応:造血作用

副作用:吐き気、食欲不振、腹痛、便秘

  • ロルフェナミン

適応:消炎作用、鎮痛作用、下熱作用

副作用:発疹、かゆみ、腹痛、胃の不快感

  • フロモックス

適応:抗菌作用

副作用:過敏症の場合重いアレルギーによる血液障害、腎障害

  • カマグ

適応:便秘症、十二指腸潰瘍、胃炎

副作用:下痢

  • アスベリンシロップ

適応:咳をすくなくする作用

副作用:眠気、幻暈、食欲不振、便秘、発赤

  • チラ-ジンS

適応:甲状腺ホルモンを補う

副作用:動悸、幻暈、発汗、苛立ち、体重減少

  • プロレナ-ル

適応:血管拡張、循環改善

副作用:下痢、頭痛、むかつき、かゆみ

  • ユベラ

適応:血管壁強化、血行障害、動脈硬化

副作用:胃の不快感、便秘、下痢

  • ザイロリック

適応:尿酸の産生を抑制作用

副作用:過敏症の場合、胃腸症状、脱毛

  • ラジスミン

適応:血圧降下作用

副作用:発疹、食欲不振、胸焼け、頭痛、幻暈

※ チラ-ジンSはT病院から、プロレナ-ル・ユベラ・ザイロリック・ラジスミンはA病院より持参  

 

4.他部門からの情報

主治医から:〇〇年〇〇月〇〇日情報収集(最終評価時)

退院についは、杖(T-cane)による歩行が安定した頃を見込んでおり、約3週間後である。リハビリでの注意点は、心筋梗塞の既往があることからも過負荷にならないようにすること。手術時、注意点であった靱帯・膝蓋腱の緩みは徐々に固まってきている。ADL訓練については、低い段差の昇降から徐々に取り入れていって良い。退院後の歩行については、屋内ではつたい歩きか独歩、屋外では杖による歩行である。退院後のリハビリについては、ADL・関節可動域も改善してから退院するので基本的は必要ない。しかし、本人が希望するならば地元にあるA病院(主治医が非常勤で勤務している)に週1度程度通院しても良い。家屋改造については、現在の所必要がない。しかし、必要性が出てきた場合は、地元のA病院に依頼し対応する。退院後の生活については、キーパーソンが平日は保母の仕事をしている事からも、日中は一人で過ごす事になる。このことや、年齢的なことも考慮してもデイケアなどの利用を考えても良い。また、趣味であるゲートボール、グランドゴルフは無理をしない程度で行なっても良い。

 

看護師から:〇〇年〇〇月〇〇日情報収集(初期評価時)

リハビリ・トイレ以外の時間は、ベッド上でテレビを見ている事が多い。病室での他患とのコミュニケーションは良好である。しかし、他患の言動に対して気にしたりすることもあり、性格的にも心配性な面もある。手術延期については、持参分の薬物の副作用などによりCPKが高値になり横紋筋融解症と考えられため、主治医の判断により延期された。その後、CPKも安定し〇〇月〇〇日に手術となる。

看護師から:〇〇年〇〇月〇〇日情報収集(最終評価時)

病室での過ごし方、他患とのコミュニケーションについては以前と変わらない。安静度(以前の状態に戻る事)は、車椅子・歩行器と向上している。歩行器のついては、ゆっくり歩行し安定している。ADLは、入浴以外は自立している。しかし、夜間の排泄については一日のみ病棟トイレを使用したが、回数が多い(3~4回)為、現在はポータブルトイレを使用している。

 

5.術前の理学療法

 〇〇年〇〇月〇〇日より、開始される。〇〇日には、術後の移乗の指導が行なわれる。手術延期になった為、〇〇日~〇〇日には、健側の筋力増強訓練、関節可動域訓練、車椅子駆動訓練が行なわれる。〇〇日には、再び術後の移乗の指導が行なわれる。

 

Ⅲ.理学療法評価・Ⅳ.問題点・Ⅴ.ゴール(目標)・Ⅵ.治療プログラム

初期評価(〇〇年〇〇月〇〇日)最終評価(〇〇年〇〇月〇〇日)

1.全体像

リハビリ室には、介助者に車椅子を押してもらい来室する。病室より表情少し堅いが、挨拶には大きな声で返答する。評価に対しては協力的で、雰囲気になれると冗談を言うなど、明るい一面が見られる。また、ストッキネットを装着する際、踵の位置を気にしたり、弛みを気にするなど神経質な面も見られる。

1.全体像

リハビリ室には、介助者に車椅子を押してもらい来室する。表情は、にこやかで大きな声で挨拶をする。その後、昨日病室であったこと等を自ら積極的に会話し、コミュニケーションは良好である。訓練・評価に対しては、「今日は何をしますか、今日は何を質問しますか」等、明るい表情で冗談をまじえながら、積極的に行う。疲労感も自ら訴える。毎回装具を装着する際PTSに確認するなど神経質な面は、以前と同様に見られる。

2.検査・測定

2.検査・測定

1).改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R):

問診・検査測定中の会話内容が情報収集一致する為、施行の必要性なし

1).改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R):

会話内容から認知症症状は見られず、施行の必要性なし

2).関節可動域テスト(ROM-T):

運動方向

上肢

肩関節屈曲

×

×

伸展

×

×

外転

×

×

内転

×

×

外旋

×

×

内旋

×

×

肘関節屈曲

130

145

伸展

-15

×

前腕回内

×

×

回外

×

×

手関節掌屈

×

×

背屈

×

×

橈屈

×

×

尺屈

×

×

下肢

股関節屈曲

110(120)

×(120)

伸展

×

×

外転

(50)

(50)

内転

(20)

×

外旋

(35)

×

内旋

(40)

(30)

膝関節屈曲

110(115)

(90)P

伸展

-5(-5)

-10(10)

足関節膝伸展位背屈

(15)

(5)

膝屈曲位背屈

(20)

(15)

底屈

45(45)

40(45)

●可動域は「自動(他動)」で表記

●「P」は痛みを示す

2).関節可動域テスト(ROM-T):

運動方向

下肢

膝関節屈曲

110(115)

90(95)

伸展

-5(-5)

-10(-10)

足関節膝伸展位背屈

(15)

(10)

膝屈曲位背屈

(20)

(15)

底屈

50(50)

50(50)

●可動域は「自動(他動)」で表記

●両手指に慢性関節リウマチ様の変形あるもののRAテスト陰性

●上肢・股関節については、特に問題がない為測定せず

3).徒手筋力テスト(MMT):

運動

下肢

股関節屈曲

N

F- P

股関節伸展

G

G

股関節外転

G

G

膝関節屈曲

N

G

膝関節伸展

N

G

足関節底屈

N

G

足関節背屈

N

G

●「P」は疼痛を示す

3).徒手筋力テスト(MMT):

運動

下肢

股関節屈曲

N

N

股関節伸展

G

G

股関節外転

N

G

膝関節屈曲

N

N

膝関節伸展

N

G

足関節底屈

N

N

足関節背屈

N

N

●股関節伸展測定時、膝関節屈曲80°で測定

4).GMT:

項目

備考

握力

13.0

19.0

 

4).GMT:

項目

備考

握力

14.4

19.3

 

5).形態測定:

項目

測定値

備考

身長

cm

カルテより

体重

kg

車椅子にて測定

BMI

 

体重(kg)÷身長(m)² 標準値は22

標準体重

48.1Kg

22×身長(m)²

5).形態測定:

項目

測定値

備考

身長

cm

カルテより

体重

Kg

病棟にて立位で測定

BMI

 

体重(kg)÷身長(m)² 標準値は22

標準体重

48.1Kg

22×身長(m)²

四肢長:単位cm

 

下肢長:SMD(上前腸骨棘~内果)

74.5

76

:TMD(大転子~外果)

68

69

●  背臥位にて測定する。

四肢長:単位cm

 

下肢長:SMD(上前腸骨棘~内果)

75

76

:TMD(大転子~外果)

68

69

●背臥位にて測定する。

四肢周径:単位cm

 

大 腿 周 径

膝蓋骨上縁より0cm

36

×

5cm

37.5

×

10cm

42

×

下 腿 周 径

最大下腿周径

30

29

最小下腿周径

20

20

●背臥位にて測定する

四肢周径:単位cm

 

大 腿 周 径

膝蓋骨上縁より0cm

35.5

36.5

5cm

37

37

10cm

42

39.5

●背臥位にて測定する

6).ADL評価:

Barthel index:60点/100点

項目

得点

食事

10

車椅子からのベッドの移乗

10

整容

5

トイレ動作

10

入浴

0

歩行

0

階段昇降

0

着替え

5

排便コントロール

10

排尿コントロール

10

病棟ADL

●更衣:上半身は自立している。下半身はシーネの為介助は必要だが、ズボンの上げ下ろしは可能である

●入浴:体調不良のため介助浴は中止している

●排泄:昼間は病棟トイレにて自立しているが、夜間はポータブルを使用している

6).ADL評価:

Barthel index:85点/100点

項目

得点

食事

10

車椅子からのベッドの移乗

15

整容

5

トイレ動作

10

入浴

0

歩行

15

階段昇降

0

着替え

10

排便コントロール

10

排尿コントロール

10

病棟ADL

●更衣:自立している

●入浴:シャワー椅子による介助入浴。洗体については自分で行える

●排泄:自立している。しかし、回数が多い為、夜間はポータブルを利用している

7).疼痛評価

種類:

運動時痛 -

安静時痛 -

圧痛   -

夜間痛  -

 

腫張:

大腿部  +

下腿部  +

7).疼痛評価

種類:

運動時痛 -

安静時痛 -

圧痛   -

夜間痛  -

VAS:0cm

左膝から下腿の外側にかけて伸長感を訴える

8).触診:

足関節背屈時に下腿後面を触診。腓骨頭より後面内側に伸長感あり。

8).触診:

足関節背屈時に下腿後面を触診。腓骨頭より後面外側に伸長感あり。

 

9).短縮テスト

(1)ハムストリングス短縮テスト:

SLRを行なった際、左右とも約90°で著明な差は見られない。

プラットホーム端にて股関節伸展で膝関節伸展と股関節屈曲(端座位)で膝関節伸展では、左右とも約10°程度の関節可動域に差があり、左右差は約5°程度ある。

(2)大腿直筋短縮テスト:

腹臥位にて股関節伸展位での膝関節の屈曲を行う。右90°、左80°。背臥位による可動域測定より、右は25°、左は15°の制限がある。

9).クリニカルパス

術後1日 接地可

術後3日 起立訓練

術後7日 PWB1/2

術後10日 PWB2/3、筋力に応じてFWB

術後14日 FWB

術後28日 ADL訓練

 

10).姿勢分析・動作分析:

(1)起き上がり(背臥位→端座位、端坐位→背臥位):自立レベル

 

(2)端座位:自立レベル

 

(3)立ち上がり:自立レベル

 

(4)移乗(車椅子→プラットホーム、プラットホーム→車椅子):遠位監視レベル(左下肢NWB)

手掌で把持する所がリーチの範囲内にあれば、安全に移乗出来る。しかし、リーチの範囲にない場合、手掌で一側の車椅子のアームレストを把持し、反対側で対象物を摑もうと体幹を前屈し、殿部を座面より浮かして膝関節屈曲位のままの不安定な姿勢でジャンプをする場面が病室にてあった。

(4)移乗(車椅子→プラットホーム、プラットホーム→車椅子):自立レベル(左下肢FWB)

(5)立位(平行棒内):自立レベル。

体幹を右側屈、骨盤左上がり、両手掌で支持する。右上肢は、肩軽度外転(約°30)、肘軽度屈曲(約°30)で支持、左上肢は、肩軽度外転(約°45)、肘中間位で、左肩上がりで支持する。重心線は、右下肢をとおり、左足底は軽く触れる程度の足底接地である。

 

(6)術前の立位:自立レベル。

体幹は前傾し、骨盤は左上がりの軽度左側屈姿勢。右下肢は股関節軽度屈曲、膝関節は軽度屈曲、足関節背屈、左下肢は股関節中等度(約45°)屈曲、膝関節屈曲(約90°)、足関節中間位のつま先立ち。

(6)術後の立位:自立レベル。

体幹は軽度前傾し、左側屈姿勢。骨盤は右に前方回旋している。右下肢は股関節軽度屈曲、膝関節は中間位、足関節は軽度背屈位。左下肢は、股関節屈曲位、膝関節軽度屈曲位、足関節背屈位で足底接地。

(7) 術前の歩行:T-caneにて自立レベル。

立脚期

(右)

●膝関節屈曲位による踵接地の消失、足底接地から杖支持により体幹の過度の側屈による右重心移動

(左)

●膝関節屈曲位による踵接地の消失

●尖足による体重支持

●立脚期が短い

●体幹の右側屈

遊脚期

(右)

●加速期の股関節伸展の制限

(左)

●加速期の股関節伸展の制限

●遊脚中期・減速期の膝関節の伸展制限

 

(8)平行棒内歩行:監視レベル。

立脚期

●PWB1/2術後7日後

●PWB2/3術後10日後

●FWB術後14日後

(右)

●膝関節屈曲位による踵接地の消失、足底接地から

●体幹の後屈

(左)

●膝関節屈曲位による踵接地の消失、足底接地から

●足関節底屈による踏み返しの消失

●推進力・スピードの低下

●体幹の全後傾、右側屈

遊脚期

(右)

●加速期の膝関節屈曲の減少

(左)

●加速期の膝関節屈曲の減少

●加速期の股関節伸展の制限

 
 

(9)歩行器歩行:遠位監視レベル。

立脚期

(右)

●足底接地から始まる

●膝関節が伸展不全

●足関節の底屈がない

●股関節の伸展が小さい

(左)

●足底接地から始まる

●膝関節が若干屈曲位

●足関節の底屈がない

●股関節の伸展が小さい

●踏み返しが弱い

●立脚期が短い

遊脚期

(右)

●股関節の屈曲小さい

(左)

●体幹の右側屈

●膝関節の屈曲が小さい

●足関節の背屈が弱い

●足先が床につっかっかる事が時折ある

●振り出しが小さい

 

(10)杖(T-cane)歩行:遠位監視レベル。

立脚期

(右)

●股関節伸展が小さい

●足関節の底屈がない

(左)

●足底接地から始まる

●膝関節が屈曲位

●股関節の伸展が小さい

●踏み返しが弱い

●立脚期が短い

遊脚期

(右)

●股関節の屈曲小さい

(左)

●終始膝屈曲位

●体幹の右側屈

●膝関節の屈曲が小さい

●足関節の背屈が弱い

●足先が床につっかっかる事が時折ある

その他

●  体幹の回旋が少ない

Ⅳ.問題点

1.Impairment Level

#1.内側側副靭帯・外側側副靭帯・膝蓋腱の緩み

#2.筋力低下(右股関節伸展、外転、左下肢筋)

#3.関節可動域制限(左膝関節屈曲、両膝関節伸展)

#4.筋の短縮(腓腹筋外側頭、大腿二頭筋内側頭)

#5.疼痛(左膝内側部)

 

2.Disability Level

#6.歩行能力の低下(応用も含む)

#7.ADL能力の低下(床からの立ち上がり能等含む)

 

3.Handicap Level

#8.家庭復帰困難(家庭内・屋外での日常生活の制限)

#9.その他(クリパスによる荷重制限)

Ⅳ.問題点

1.Impairment Level

#1.筋力低下(両股関節伸展筋、左外転筋力)

#2.関節可動域制限(左膝関節屈曲、両膝関節伸展)

#3.筋の短縮(腓腹筋外側頭)

#4.筋持久力の低下

#5.内側側副靭帯・外側側副靭帯・膝蓋腱の緩み

 

2.Disability Level

#6.歩行能力の低下(応用・持久力も含む)

#7.ADL能力の低下(床からの立ち上がり能等含む)

 

3.Handicap Level

#8.家庭復帰困難(家庭内・屋外での日常生活の制限)

Ⅴ.ゴール(目標)

1. 短期ゴール(3W):FWB、T-cane歩行の獲得

2. 長期ゴール(6W): ADLの自立

Ⅴ.ゴール(目標)

1. 短期ゴール(3W):T-cane歩行の安定、持久力の向上

2. 最終ゴール: 家庭生活の自立

Ⅵ.治療プログラム

 

1. アイシング:

目的:患部の腫張(炎症)の軽減、痛み感覚受容器の域値の上昇、筋紡錘・腱紡錘興奮性の低下。毛細血管は3~5分で収縮の変化が大きく効果的である

方法:5分以上

1.左下肢伸長訓練:

①ハムストリングス伸長

手の位置と運動:遠位の一側でアキレス腱部を持つ。反対側で膝前面を支持する。

②大腿直筋伸長

手の位置と運動:患者は側臥位で、股関節中間位、膝関節屈曲位。一側で殿部を固定し、筋緊張を感じるまで膝を屈曲する。膝屈曲に制限(約90°)がある為、それを超える場合は大腿遠位部を把持し、股関節を伸展する。

③下腿三頭筋伸長

手の位置と運動:遠位の一側で踵骨を摑み、足底に前腕を当てる。反対側で下腿遠位端を固定する。前腕で足底部を押し上げながら、踵骨を引く。膝関節伸展位で、腓腹筋の伸長となる。また、屈曲位でヒラメ筋の伸長、関節包内の伸長となる為、両方行う。

目的:筋の伸長

持続的に伸張することによりⅠb抑制を利用し行う

方法:20秒~30秒

2. 左下肢伸長訓練:

①ハムストリングス伸長

手の位置と運動:遠位の一側でアキレス腱部を持つ。反対側で膝前面を支持する。

②大腿直筋伸長

手の位置と運動:患者は側臥位で、股関節中間位、膝関節を屈曲位。一側で殿部を固定し、筋緊張を感じるまで膝を屈曲する。膝屈曲に制限(約90°)がある為、それを超える場合は大腿遠位部を把持し、股関節を伸展する。

③下腿三頭筋伸長

手の位置と運動:遠位の一側で踵骨を摑み、足底に前腕を当てる。反対側で下腿遠位端を固定する。前腕で足底部を押し上げながら、踵骨を引く。膝関節伸展位で、腓腹筋の伸長となる。また、屈曲位でヒラメ筋の伸長となる為、両方行う。

目的:筋の伸長

持続的に伸張することによりⅠb抑制を利用し行う

方法:15秒間5回

2.Patella mobilization:

目的:関節可動域の改善、大腿四頭筋の筋力効率向上

方法:膝完全伸展位か軽度屈曲位にて、膝蓋骨を上下・左右に他動的に動かす

3. Patella mobilization:

目的:関節可動域の改善、大腿四頭筋の筋力効率向上

方法:膝完全伸展位か軽度屈曲位にて、膝蓋骨を上下・左右に他動的に動かす

3. 関節可動域訓練:

目的:関節可動域の改善

方法:背臥位にて、一側の手掌で膝窩を把持し、反対側で踵部を支持する。股関節を屈曲しながら、大腿直筋の緊張をとり、膝関節を屈曲する。膝窩を把持した手掌は、大腿の外側へ移動し、最大屈曲をする。

4. 関節可動域訓練:

目的:関節可動域の改善

方法:背臥位にて、一側の手掌で膝窩を把持し、反対側で踵部を支持する。股関節を屈曲しながら、大腿直筋の緊張をとり、膝関節を屈曲する。膝窩を把持した手掌は、大腿の外側へ移動し、最大屈曲をする。

4.Patella setting:

目的:大腿四頭筋の等尺性の筋力強化と内側広筋による膝蓋骨の内側引き付け作用効果

方法:膝窩部にタオルを置き、押し付けるようにする

5. Patella setting:

目的:大腿四頭筋の等尺性の筋力強化と内側広筋による膝蓋骨の内側引き付け作用効果

方法:膝窩部にタオルを置き、押し付けるようにする

5.筋力増強訓練

①殿部挙上

目的:歩行時の体幹の安定、殿筋・背筋の強化

方法:背臥位で、踵部にタオルなどで支え下肢挙上位をとり、殿部を挙上する

10回2セットから開始。翌日の疲労を確認の上回数を変更

②SLR:股関節屈筋、下肢筋の筋力増強

足関節を背屈することで大腿四頭筋の筋力増強効果が増す

目的:歩行時の膝折れ防止、歩行動作の改善

方法:自重による自動運動、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の2/3以上で行う(20~30%では筋力増強が得られないことから)

股関節屈曲角度は約30°

10回2セット。翌日の疲労を確認の上回数を変更

③抵抗運動による等張性大腿四頭筋運動:大腿四頭筋の筋力増強

④抵抗運動による等張性外転筋運動:外転筋の筋力増強

目的:歩行時の膝折れ防止、歩行動作の改善

方法:背臥位で膝関節90°屈曲位で、徒手による抵抗を加える。術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の2/3以上で行う(20~30%では筋力増強が得られないことから)。

10回2セット。翌日の疲労を確認の上回数を変更

6. 下肢筋力増強訓練:

①SLR:股関節屈筋、下肢筋の筋力増強

足関節を背屈することで大腿四頭筋の筋力増強効果が増す

目的:歩行時の膝折れ防止、歩行動作の改善

方法:自重による自動運動、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/3~50%で行う(20~30%では筋力増強が得られないことから)。

股関節屈曲角度は約30°

10回2セット、翌日の疲労を確認の上回数を変更。

②抵抗運動による等張性大腿四頭筋運動:大腿四頭筋の筋力増強

③抵抗運動による等張性外転筋運動:外転筋の筋力増強

目的:歩行時の膝折れ防止、歩行動作の改善

方法:背臥位で徒手による抵抗を加え、術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/3~50%で行う(20~30%では筋力増強が得られないことから)

10回2セット、翌日の疲労を確認の上回数を変更

6.歩行訓練:

目的:正常歩行・重心移動の改善・持久力の向上

方法:歩行器→T-cane→屋外歩行へと徐々に進めていく

翌日の疲労を確認の上距離を変更

7.歩行訓練:

目的:正常歩行・重心移動の改善・持久力の向上

方法:平行棒内→歩行器→T-cane→屋外歩行へと徐々に進めていく

翌日の疲労を確認の上距離を変更 

7.ADL訓練

①階段昇降訓練(段差昇降)

②床からの立ち上がり動作訓練

目的:家庭生活の自立を目指して

③入浴動作訓練

④畳の上で歩行・つたい歩き

8.ADL訓練

①階段昇降訓練

②床からの立ち上がり動作訓練

目的:家庭生活の自立を目指して

 

Ⅶ.治療経過

          1W  2W  3W  4W  5W  

①物理療法     ―――――――――――――――→

②伸張訓練     ―――――――――――――――→

③関節可動域訓練  ―――――――――――――――→

④筋力増強筋訓練  ―――――――――――――――→

⑤立位訓練        ―――→

⑥歩行訓練            ――――――――→

Ⅷ.考察

本症例は、〇〇年〇〇月〇〇日より痛みが増加し、手術目的(TKA)で当院入院をした○歳の女性である。

術前の痛みがない状態では、家から100m歩きタクシーに乗りゲートボールやグランドゴルフを行なったり、日曜日には三女と一緒に買い物に出かけたり、老人会に参加するなど、社交的で活動的であった。痛みが出てからは、杖歩行となり活動量は低下した。術前の評価においても分かるように、膝屈曲90°伸展-25°の関節可動域制限、筋力低下があるものの何とか生活をしていた。

初期の段階においては、家庭復帰に必要な能力として、歩行能力、階段昇降能力、立ち上がり能力があり、問題点として、Disabilityは、歩行能力の低下、ADL能力低下(床からの立ち上がり、入浴)を挙げた。Impairmentに、内側側副靭帯・外側側副靭帯・膝蓋腱の緩み、筋力低下、関節可動域制限、筋の短縮、疼痛を挙げていた。

まず、内側側副靭帯・外側側副靭帯・膝蓋腱の緩みについて述べる。手術後、主治医より内側側副靭帯・外側側副靭帯・膝蓋腱の緩がある為、可動域訓練・SLRも後日指示するというコメントがあった。現段階においては、内側側副靭帯・外側側副靭帯・膝蓋腱の緩みは回復にむかっており、装具装着は必要であるが、問題点の重要性は低くなっていると考えられる。これは、術後のシーネ固定・装具装着を行い自然治癒するまでの期間固定を行なった結果、回復に向かった為であると考えられる。その結果、主治医のより退院3ヵ月後には装着しないで生活して良いと指示があった。しかし、腱の治癒過程は6~8週間といわれている事からも、注意は必要と考えられる。

次に、筋力低下について述べる。右股関節伸展・外転、左下肢筋力低下があったが、現段階では股関節伸展を除いては、MMT測定において筋力増強が認められている。手術前の歩行においては、左膝の疼痛の為に杖歩行であった。右立脚期は、踵接地より始まり、足底で体重を支持し、膝関節軽度屈曲位のままで、つま先離地で終わる。しかし、左立脚期は、つま先接地から始まり、そのままつま先で体重を支持して、つま先離地で終わる。その為、左立脚期は体幹は右に側屈しており、立脚期は短い。右遊脚期は短く、左遊脚期は膝関節の伸展がないまま踵接地を迎える。

筋力低下においては、MMTの測定より下肢筋力の弱化が見られた為、Patella setting・SLR・大腿四頭筋訓練・外転筋訓練をおこなった。この筋の弱化は、手術前の歩行の様子からも考える事が出来る。

Patella settingは、大腿四頭筋の等尺性の筋力強化と内側広筋による膝蓋骨の内側引き付け作用効果を促すことを目的として行なった。また、股関節と踵部が同一の床面上に固定される事により、関節を安定化させる単関節筋の筋の筋力増強があると言われている。

SLRは、特に股関節屈筋・大腿四頭筋特に大腿直筋の筋力増強を目的とした。股関節屈曲筋は、歩行周期の立脚期踵離れから遊脚中期まで大腿直筋とともに働く重要な筋である。

大腿四頭筋訓練は、立位、立脚時の膝折れの防止、踵接地を促すことによる歩行動作の改善を目的として行なった。特に大腿直筋は、足底接地から立脚中期の股関節の重心移動に伴い膝関節を伸展させる働き、つま先離れから加速期における屈曲の働き、加速期から遊脚中期の振り出しに重要な働きをする。

これらを、本症例の訓練に取り入れた理由は、術前の歩行が左膝関節伸展-25°で歩行していた事より終末回旋運動が消失していたと考えた為である。

外転筋訓練は、踵接地期における骨盤を水平に保ち安定化させる働き、立脚期における遠心性の収縮による骨盤の低下防止の為に重要な働きをする。本症例の訓練に取り入れた理由は、術前の歩行が、左膝屈曲90°膝関節伸展-25°でる事からも、脚長差があり、骨盤が傾斜しており外転筋を使用せず体幹の代償で歩行していた事が考えられる為である。

また、強度については術後の筋力増強が目的の為、最大筋力の1/3~50%で行った。文献によれば、抵抗訓練開始後1~2週間の筋力増大は神経因子によるもので、筋の肥大は3~6週間以降とされている。本症例の場合、筋力増強から4~5週間経過したが、現在の所筋の肥大は認められない。筋肥大をしない筋力増加のメカニズムにおいては、筋性因子として筋線維の微細構造上の変化のために単位面積あたりより多くの筋張力を発生するようになる事、神経性因子として前角細胞の活動性の改善により、より多くの運動単位が筋張力発生に参加するようになる事がある。MMTの結果、左下肢では股関節屈曲・伸展・外転、膝関節の屈曲・伸展の筋力は確実に増強しており、神経因子によりものだと考えられる。

次に、関節可動域制限について筋の短縮とともに、各関節ごとに述べる。

膝関節においては、初期と同様に現段階においても膝関節の屈曲制限、伸展制限はある。これは、初期の段階でも見られた大腿二頭筋の短縮、下腿三頭筋の短縮、関節包を含めた軟部組織の問題、膝蓋骨の可動性が影響していると考えられる。これにより、膝の屈曲拘縮が引き起こされていると考えられる。Kapandjiによれば、膝蓋骨の動きは正常運動では大腿骨の膝蓋関節面の中心溝に沿って顆間窩に向かう下方垂直編位であり、円弧に沿った編位運動であるため、膝の屈曲・伸展に不可欠であるとのことである。

屈曲制限に対しては、膝蓋骨の可動性を出すことにより、膝関節の可動域の改善を考えPatella mobilizationと膝関節可動域訓練、大腿直筋の短縮に対しての伸張訓練をおこなった。その結果、屈曲の可動域の改善がみられた。

 伸展制限に対しては、膝蓋骨の可動性を出すことにより、膝関節の可動域の改善を考えPatella mobilizationと膝関節可動域訓練、ハムストリングス・下腿三頭筋の短縮に対しての伸張訓練をおこなった。

その結果、評価時と変化がないため訓練の効果があったとはいい難い。この事柄に関しては、手術前の立位・歩行からもわかるように膝関節は屈曲位であった事から軟部組織が短縮しており、術前の状態から変化せず伸びなかった為であると考えられる。

次に、足関節においては、初期に段階では足関節の底屈に制限がなく、背屈に制限がある事から下腿三頭筋の短縮が考えられていた。現在では、足関節背屈においては腓腹筋の短縮による影響は取り除かれ改善したと考えられる。この結果から、関節包を含めた軟部組織・関節自体の可動性の問題と言える。この関節自体の可動性の問題は、手術前10年間近く足関節底屈で生活していたことが原因と考えられる。

疼痛においては、膝関節に対してアイシングを行なった。訓練前に行う目的は、寒冷の疼痛の効果としては、感覚受容器の域値の上昇、痛刺激の神経伝導インパルスの減少があり、疼痛の軽減により運動療法の前処置として関節可動域訓練、筋力増強訓練を効率的に行うためである。その他の効果として、炎症の症状の抑制、血管収縮による代謝の低下により、自然治癒を阻害しないようにする働きもある。本症例の場合創部の痛みについては、術後より訴えてはいなかった為、炎症症状の抑制に効果があったと考えられる。

歩行障害においては、術前に見られた右立脚期の足底接地から(杖支持により)体幹の過度の側屈による右重心移動、左立脚期の尖足による体重支持は、左膝関節の伸展可動域拡大の為、改善している。現在でも歩行中重心線が右側にあるが以前よりは中央に近くなるといった改善が見られたり、左立脚期における左足底による体重支持の改善が見られる。

その他、ADL評価においては、Barthel indexでは、移乗・歩行・着替えにおいて改善が見られ85点になっている。

次に新たに問題点となった点において、今後考えられる訓練について述べる。

筋持久力の低下が挙げられる。約1ヵ月間、手術後であり歩行を行なっていない為、大腿周径においても0.5~1㎝の低下が見られる。また、入院前の歩行では、膝屈曲位で歩行していたこともあり、MMTの結果からも大腿四頭筋、特に内側広筋の弱化が考えられる。これは、膝関節の伸展を考えると、終末強制回旋運動において最終域で最も働く筋が内側広筋であることから考えられる。また、筋持久力については、改善する為には、「小さい負荷(最大筋力の50%以下程度で)で多い回数が原則とされる為、筋疲労が生じるまで行う」と文献による事から、疲労の状態を観察しながら徐々に回数を増やしていきたいと考える。

 MMTの結果から右殿筋の筋力低下があった為、筋力増強の必要性があると考えられる。また、本症例の場合、両膝に手術を行っている。その為、膝の負担を軽減する為にも、下肢挙上位においての殿部挙上を行う事を考えた。

歩行訓練については、現在の所訓練室を杖歩行で2~3周程度である。退院後の生活を考慮すると、今後は訓練室内で距離を伸ばして歩行の持久力をつけたうえで、屋外においての歩行を考える必要がある。趣味における移動などを考慮しても、屋外歩行において15分程度の持久力は最低必要であると考えられる。その為、院内歩行、屋外歩行とレベルを上げて行く必要がある。

ADL訓練においては、まず段差昇降から行なっていく必要がある。家屋構造を聴取した結果、室内に段差はないものの、入浴を行う場合はまたぐ動作が必要である。その為、入浴のシュミレーション等も取り入れていきたいと考える。また、膝関節の負担を考慮した場合、浴槽内での椅子の使用も考えられる。

短期ゴールは杖歩行の安定性の獲得、最終ゴールは家庭生活の自立と考える。退院後の生活のおいては、キーパーソンが仕事をしている事からも、一人で自立した生活が必要であると考えられる。活発な性格な為、趣味などで家の中に閉じこもる事は考えにくい。しかし、年齢的な事を考慮に入れると将来的には、デイサービスなどの利用などを考慮に入れておく必要がある。また、今後は、高齢であることも考えて、転倒などによる骨折など、長期臥床にならないように生活指導を行っていく必要があると考えられる。

 

Ⅸ.終わりに

 本症例を担当させていただき、術前の評価・生活状況を知る事の大切さが感じられた。特に、術前の歩容を知ることのより、筋力低下・関節可動域制限などの問題がある程度予想する事が出来、その事柄に対するアプローチが重要であることを学んだ。

 最後に、本稿作成にするにあたりご指導いただきましたの臨床実習指導者の皆様に深く感謝いたします。

 

Ⅸ.参考文献

  1. 細田多穂 柳澤健:理学療法ハンドブック改訂第3版:協同医書出版社:2000
  2. 石井斎 武富由雄:図解理学療法技術ガイド第2版:文光堂:2001
  3. 千住秀明 他:運動療法Ⅰ:神稜文庫:1999
  4. A.Kapandji:カパンディ関節の生理学第5版:医歯薬出版:1988
  5. PTジャーナル第25巻第3号:医学書院:1991年3月:pp170-175
  6. 理学療法第7巻第4号:医学書院:1990年7月:pp257-262
  7. 上田敏 千野直一:リハビリテーション基礎医学第2版:医学書院:1994

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疾患名
特徴
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脳出血片麻痺① / 片麻痺② / 片麻痺③ / 失語症 / 移乗介助量軽減を目標

くも膜下出血

片麻痺 / 認知症 / 職場復帰を目標

整形疾患変形性股関節症(置換術) / 股関節症(THA)膝関節症(保存療法) / 膝関節症(TKA) / THA+TKA同時施行
骨折大腿骨頸部骨折(鎖骨骨折合併) / 大腿骨頸部骨折(CHS) / 大腿骨頸部骨折(CCS) / 大腿骨転子部骨折(ORIF) / 大腿骨骨幹部骨折 / 上腕骨外科頸骨折 / 脛骨腓骨開放骨折 / 腰椎圧迫骨折 / 脛骨腓骨遠位端骨折
リウマチ強い痛み / TKA施行 
脊椎・脊髄

頚椎症性脊髄症 / 椎間板ヘルニア(すべり症) / 腰部脊柱管狭窄症 / 脊髄カリエス / 変形性頚椎症 / 中心性頸髄損傷 / 頸髄症

その他大腿骨頭壊死(THA) / 股関節の痛み(THA) / 関節可動域制限(TKA) / 肩関節拘縮 / 膝前十字靭帯損傷
認知症アルツハイマー
精神疾患うつ病 / 統合失調症① / 統合失調症②
内科・循環器科慢性腎不全 / 腎不全 / 間質性肺炎 / 糖尿病 / 肺気腫
難病疾患パーキンソン病 / 薬剤性パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 全身性エリテマトーデス / 原因不明の歩行困難
小児疾患脳性麻痺① / 脳性麻痺② / 低酸素性虚血性脳症
種々の疾患が合併大腿骨頸部骨折+脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)+関節リウマチ

-書き方, 病院, 整形疾患, レポート・レジュメ