訪問看護報告書とは、文字通り「利用者がどのような状態だったか」を報告する書類になります。
文章を書かなければならないため、慣れるのに時間がかかる人が多くいます。
また、細かいルールも存在するため、間違った書き方をしている人も目にします。
今回は、「訪問看護報告書のルールと書き方」を完全解説してまいります。
・いつも文章の言い回しに困っている
・どこまで報告をすれば良いの?
・誰に送付をすれば良いの?
このような悩みを抱えている人は、この記事がすべてを解決してくれるでしょう!
記事の最後には、「訪問看護報告書の記載例(疾患別)」を1,000例以上もまとめているので、あわせて参考にしてください!
メモ
*「(別添)理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護の詳細」=通称「別添」の書き方、疾患別の記載例(多数掲載)は、こちらの記事(訪問看護報告書「別添」の書き方を完全解説【記載例多数】)をご参照ください。
【完全保存版】訪問看護報告書「別添」の書き方を完全解説【記載例多数】
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訪問看護報告書の様式
まずは、訪問看護報告書の様式を確認しておきましょう。
厚生労働省から指定されている様式ですので、各訪問看護ステーションで大きく変わりはないかと思います。
訪問看護報告書の内容は、大きく9つに分けることができます。
- 利用者の基本情報
- 訪問日
- 病状の経過
- 看護の内容
- 家庭での介護の状況
- 衛生材料関係
- 情報提供
- 特記すべき事項
- 作成者と管理者名
項目は多いですが、内容は決して難しいものではありません。
基本的なルールさえ押さえておけば、ある程度自由度は効くのが訪問看護報告書です。
訪問看護報告書のルール
まず、訪問看護報告書の細かいルールをみていく前に、広いルールをQ&A形式で抑えておきましょう。
また、作成したらどこに送付するのですか?
送付先は、訪問看護指示書を発行している主治医、ケアマネジャー(いる場合)、その他関係事業所(複数ステーションが入っている場合など)に送付します。
訪問看護報告書は、利用者には直接提示するものではありません。
ただ、個人情報開示の対象になりますので、開示に耐えうる内容でなければなりません。
そのため、訪問看護計画書と同様に、利用者や家族が見てもわかりやすく、納得できる内容にすることを心掛けましょう。
今まで作成してきた、いわゆる「訪問看護報告書」は看護師用、リハビリ職は、「(別添)理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護の詳細」に記載します。
しかし、「(別添)理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護の詳細」の一項目「看護職員との連携状況、看護の視点からの利用者の評価」を見てわかる通り、看護師と理学療法士両者が内容を共有して作成しなければなりません。
例えば、看護師が「家族の負担軽減で入浴介助を行なった」と報告しているのに対し、理学療法士が「入浴は自立している」と報告してたとしたら、内容が共有できているとは言えません。
この点は、訪問看護計画書にも通ずることですが、両者が一体となった文章を作成するように心掛けましょう。
看護職用報告書
リハビリ用報告書
それでは、それぞれ各項目の細かいルールを見ていきましょう。
①利用者の基本情報
「利用者名」「生年月日」「年齢」「要介護度」「住所」を記載しましょう。
電子カルテを使用しているステーションは、利用者名を入れるとその他情報も自動的に入力してくれるかと思います。
②訪問日
訪問した日に印をつけます。
印のつけ方にルールがあるので、以下をご参照ください。
訪問日の記載ルール
訪問日の記載例
例えば、令和3年2月に下記のように訪問したとします。
1日に2回以上訪問した日:4日、8日、18日、22日、25日
リハビリ職が訪問した日:13日、27日
長時間訪問看護加算を算定した日:1日、15日
この場合、訪問看護報告書の訪問日は下記のように記します。
ちなみに・・・
・1日2回以上訪問した日でも、いづれかの訪問で長時間訪問看護加算を算定した場合は、◎ではなく□で記します。
・同様に、緊急時訪問看護加算を算定した場合も◎ではなく×で記します。
一般的な訪問看護報告書のテンプレートでは、カレンダーが2ヶ月分出力されています。
対象月のみの訪問日が記載されていれば構わないので、上記記載例の場合、右側のカレンダーは空白で構いません。
③病状の経過
病状の経過には、利用者の病状の経過や日常生活動作の状況などを記載します。
訪問看護報告書の中で、最も時間と文章量を必要とする項目でしょう。
訪問看護報告書の肝といっても過言ではありません。
ただ、「報告書が大変」という人に限って、かなり文章量が多い上に余分な文章を書いている人が多すぎます。
訪問看護報告書を書く時のポイントは、以下の通りです。
・その月にあったことのみを報告する
・報告事項のみ記載する
・文章量は出来るだけ少なくする
詳しく解説してまいります。
その月にあったことのみを報告する
文章量が多く、まとまりのない人の特徴として、その月にあったこと以外の報告も入れてしまいます。
正確には、入れてしまうよりも「残してしまう」が正しいでしょう。
今は、電子カルテ形式が多く、前月の報告書を複製して記載するステーションが多いと思います。
その際、前月に書いた文章をそのままコピーしているので、「あ、これは今月も必要だな」と、過去の出来事も残してしまいがちです。
そして出来上がった報告書は、ポイントを抑えられていない、どこが今回の報告なのか、読みにくい報告書が出来上がってしまうのです。
訪問看護報告書は、「対象月にあったことのみを報告する」ことを心掛けましょう。
報告事項のみ記載する
訪問看護報告書は、対象月の利用者の病状経過、家族の介護状況など家族の状態、ケアの内容やその結果を「報告」する文章です。
報連相の中の、「報」をする文章です。
連絡や相談をこの文章ですることは望ましくありません。
分かりやすいのが、文章の終わり(語尾)です。
報告は、語尾が問いかけやクエスチョンマークで終わることはありません。
このような文章が多くある人は、今一度書き方を見直してみましょう。
連絡や相談は、別途FAXを用いて行うか直接電話してやり取りをするようにしましょう。
文章量は出来るだけ少なくする
「その月にあったことのみ報告する」「報告事項のみ記載する」に通じますが、文章量は出来るだけ少なくするよう心掛けましょう。
たくさん書いてある方が頑張っているように見えがちですが、相手のことを考えると望ましいものではありません。
簡潔に、必要なことのみを報告すればそこまで多くならないはずです。
一つの指標として、電子カルテで訪問看護報告書を作成する場合、一つの職種のみ(看護師のみなど)で介入しているにも関わらず、「病状の経過」が2ページに渡ってしまうのは、無駄な文章を書いている可能性が高いです。
1ページに収まるよう記載するのは良いトレーニングになると思いますので、是非心掛けてみてください。
この記事の最後に、各疾患別の訪問看護報告書記載例をまとめていますので、うまく書けないと悩んでいる人は参考にしてみてください。
④看護の内容
この項目には、どのような看護を行ったか記載します。
文章で記載しても構いませんが、私は箇条書き、もしくはケアの内容羅列をオススメします。
羅列するだけだと一見冷たいイメージを与えてしまうかもですが、何よりも分かりやすいです。
だらだら文章を書いて、「結局何のケアをしたの?」ってなるよりは、断然良いと考えます。
ちなみに、私は過去に5回監査を経験しましたが、羅列方式でも指摘を受けることはありませんでした(東京都某区の場合)。
看護の内容の記載例
【看護】
入浴介助、褥瘡処置、点滴管理
*「看護の内容」部分も、各疾患別に記載例を多数作成しております。この記事の最後にまとめていますので、参考にしてみてください。
⑤家庭での介護の状況
ここでは、家庭での介護の状況を記載します。
この点も病状の経過と同様、「簡潔に」「必要なことのみ」を考慮して記載します。
ポイントとしては、
・家族が介護をしているのか、していないのか
・している場合、誰が介護をしているのか
・家族の状態(疲弊度など)はどうか
を盛り込めば十分だと思います。
そこから先、「最近ネグレクト傾向で介護放棄がみられるので、他サービスを導入してはどうでしょうか?」など、相談ごとに持ち込む場合は、別途電話やFAXを用いる方が望ましいでしょう。
ちなみに、精神科訪問看護の報告書には、利用者と家族、または利用者と関わりのある友人などの対人関係についても記載することを求められていますので、忘れず記入するようにしましょう。
精神科訪問看護の対人関係の記載例
家族とは勘当しており関わりはない。近隣に中学校からの友人が住んでおり、月1回程度来訪している。友人の障害に対する理解は良好で、本人の支えになっている。
⑥衛生材料関係
衛生材料関係の項目は、2つあります。
①「衛生材料等の使用量および使用状況」
②「衛生材料等の種類・量の変更」
上記に当てはまる項目があれば記載をしましょう。
特に衛生材料を使用していない場合は、空白で構いません。
衛生材料関係の記載例
衛生材料等の使用量および使用状況 | 衛生材料等の名称:( 栄養チューブ、カテーテルチップ50ml ) |
⑦情報提供
医療保険で介入している利用者で、「訪問看護情報提供療養費」を算定している場合は、「情報提供先」と「情報提供日」を記載します。
「訪問看護情報提供療養費」に関しては、こちらの記事(情報提供書の書き方・記載例紹介【訪問看護情報提供療養費Q&A】)で詳しく解説しています。
「読むのがめんどくさい!」って人は、以下の各機関に情報提供している場合は記載義務があるということを覚えておきましょう。
・「市町村や都道府県」
・「義務教育諸学校」
・「医療機関」
ちなみに、情報提供をしていない場合、介護保険で介入している場合は空白で構いません。
訪問看護情報提供書の書き方・記載例を紹介!【訪問看護情報提供療養費】
続きを見る
情報提供の記載例
情報提供 | 訪問看護情報提供療養費に係る情報提供先( 〇〇保健所 ) |
⑧特記すべき事項
特記すべき事項には、上記の記載欄では書けなかったが記しておきたい内容を記載します。
予定とは別に頻回な訪問を行なった場合は、その理由とケアの内容を記載しましょう。
ちなみに、精神科訪問看護の報告書では、「GAF尺度」を記載する義務があります。
GAF尺度は、月の初めに訪問した際に判定することになっていますので、判定した日(月の初めに訪問した日)とその値を報告書に記載するようにしましょう。
*GAF尺度:厚生労働省「GAF(機能の全体的評定)尺度」
⑨作成者と管理者名
この計画書を作成した人の名前をフルネームで記載します。
看護師とリハビリ職が記載した場合は、両者の名前を記載します。
作成者に加えて、管理者の指名も必須です。
以前は管理者の捺印が必須でしたが、昨今は「必要がない」という見解も出ています。詳しくは関係各所に問い合わせしてください。
訪問看護報告書の記載例
それでは、上記のルールを踏まえた訪問看護報告書の一例をご紹介します(*画像クリックで拡大)。
看護師が定期的な訪問(モニタリング)で介入している場合の訪問看護報告書の書き方は?
リハビリスタッフのモニタリングで介入している利用者がいます。モニタリングは3ヶ月に1回で訪問をしていない月もあるんですが、どのように記載をしたら良いんでしょうか?
確かに、毎月介入していればその時の報告を「訪問看護報告書」に書けば良いので迷うことはありません。
ただ、3ヶ月に1回などのモニタリング訪問だと、「訪問していない月はどうしたら良い?」という疑問が浮かびますよね。
結論、この点に関して厚生労働省に問い合わせましたが、明確な回答は得られませんでした。
そのため、私が所属する訪問看護ステーションや多くの訪問看護ステーションが講じている対策をご紹介します。
監査も問題なく通っているという報告をいただいていますが、各自治体や都道府県により異なる部分もあるかと思いますので、それぞれ関係各所にご確認をお願いいたします。
直近のモニタリング内容を訪問看護報告書に残しておく方法
まずは、次のモニタリングまで直近に行ったモニタリングの内容をそのまま訪問看護報告書に残しておく方法です。
病状の経過 | 下記は、1月に行ったモニタリング時の報告となります。次回のモニタリングは4月を予定しております。 |
その際、報告文章だけだといつの報告か分からなくなってしまうので、「○月にモニタリングをした内容であること」「次のモニタリング予定」もあわせて記述しておくようにしましょう。
次回のモニタリング予定のみ訪問看護報告書に書いておく方法
次は、「次回のモニタリング予定のみを書いておく方法」です。
病状の経過 | 次回のモニタリングは4月を予定しております。 |
確かに、訪問看護報告書は「その月にあったことのみを書く」ことが推奨されます。
そのため、モニタリングをしていない月は、次回の予定のみを記述するに留まっても問題はないと考えます。
ただ、客観的に見ると「果たして報告書と言えるのか」という懸念も湧いてくるので、個人的には前述した「直近のモニタリング内容は残しておく」方法を推奨しています。
もし、「うちの訪問看護ステーションではこうやってる!」などのアイデアやご不明点などがありましたら、お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。
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