訪問看護 フィジカルアセスメント

「ぐるぐる回ってる感じがする…」めまいがある利用者のフィジカルアセスメント

2022年9月14日

”訪問看護における”フィジカルアセスメントの事例集。

今回、想定するシチュエーションは、めまいがある利用者に対するフィジカルアセスメントです。

今回想定するシチュエーション

訪問すると「ぐるぐる回ってる感じがするんだよね…」と訴える
めまいがある利用者に対するフィジカルアセスメント

めまいは症状が軽かったとしても、背景に重大な病気が隠れていることがあります。

緊急度・重症度をしっかりとアセスメントして、未然に大病を防ぐことが求められます。

この記事では、めまいがある利用者に対するアセスメントの方法をお伝えするとともに、報告のポイントまでご紹介してまいります。

このような事例をもっと知りたい!という方は、記事の最後18事例をまとめたリンクを記載しておくので、ぜひ日々の業務にご活用ください。

めまいがある利用者に対するアセスメントのポイント

めまいがある利用者に対するアセスメントのポイントは、以下が考えられます。

アセスメントのポイント
・めまいの種類
・めまいの原因
・めまい以外の症状はあるか
・すぐに医師に報告するのが望ましいか

このポイントを頭に入れながら、フィジカルアセスメントをしていきましょう。

めまいがある利用者に対するフィジカルアセスメントの方法

フィジカルアセスメントは、基本形(問診(主観的評価)→フィジカルイグザミネーション(客観的評価)→アセスメント(評価分析)→ケア・報告)に則って進めてまいります。

トコル
トコル

そもそもフィジカルアセスメントって何?どうやって進めていくの?と悩んでいる人は、まずはコチラの記事(訪問看護における"フィジカルアセスメントの目的と順番)を見てみよう!

"訪問看護における"フィジカルアセスメントの目的と順番【事例まとめ 】

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問診(主観的評価)

まずは問診をしていきましょう。

特にめまいは問診から得られる情報が重要になります。

しかし、言葉ではうまく表すことができない利用者も多いので、ある程度こちらから「こういう感じですか?」などと答えやすくする必要があります。

問診で聞くべき内容は、以下が考えられます。

  • いつからめまいがあるか
  • めまいが強くなるとき・弱くなるときはあるか(立ったとき、姿勢を変えたとき、頭を動かしたときなど)
  • どのようなめまいか(ぐるぐる回る、ふわふわしてる、目の前が真っ暗になるなど)
  • 吐き気はあるか
  • 耳鳴りはあるか
  • 音が聞こえない感じはあるか
  • いつも通り生活はできているか(できなくなったことはないか)
  • 昨日はいつも通り眠れたか
  • いつも通り薬は飲めているか

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めまいの種類や随伴症状を聞くだけで、原因となる疾患を推察することができます。

末梢性めまい中枢性めまい失神性めまい
考えられる疾患内耳の前庭器官の異常
(中耳炎・メニエール病など)
脳血管障害
(小脳出血・脳幹梗塞など)
自律神経系の異常・貧血など
めまいの種類回転性(ぐるぐる)浮遊性(ふわふわ)起立時にくらっと
めまいの強さ強い弱い不定
めまいの持続性一時的持続一時的
吐き気・嘔吐あり時々時々
その他症状難聴・耳鳴り頭痛・運動障害目の前が真っ暗になる

また、会話の中で顔面麻痺構音障害の有無をチェックすることも重要です。

脳血管疾患がある場合、いつもより呂律が回っていない様子や流涎を認める場合があります。

ただし、めまいが強い場合は会話だけでも負担になってしまいます。

状況に合わせて、必要最低限の問診にすることが望ましいでしょう。

本人から聞けない情報は、家族から聴取するするようにしましょう。

フィジカルイグザミネーション(客観的評価)

問診の精度にかかわらず、フィジカルイグザミネーション(客観的評価)を行うことが重要です。

その際、共通して以下の点に留意をして評価していきましょう。

客観的評価をする時に気をつけること
・前回訪問時との変化
・左右差の有無
・できるだけ数値化をする

バイタルサイン・意識レベル

めまいに限らず何か違った症状が現れている場合、まずはバイタルサインを測定します。

出血性を伴う貧血でめまいが現れている場合、血圧低下を生じる可能性があります。

逆に脳血管障害によるめまいが現れている場合は、血圧上昇を認めます。

自律神経障害などによる起立性低血圧を疑う場合は、臥位・座位・立位時の血圧を測定し、どのくらいで血圧が下がるのかを評価するのも良いでしょう。

強い胸背部痛を伴う場合は大動脈解離の可能性があるので、血圧の左右差の有無もチェックしましょう。

バイタルサインの正常値・基準値

血圧

収縮期血圧:〜120mmHg

拡張期血圧:〜80mmHg

脈拍

50~80回/分

体温

36.0度~36.9度

呼吸数

12~20回/分

 

また、不整脈がある場合でもめまいは出現します。

特に徐脈の場合は重症度・緊急度が高いと判断します。

脳血管障害によるめまいが出ている場合は、意識障害を生じることがあります。

「Japan coma scale(JCS)」「Glasgow coma scale(GCS)」といった標準化されたもので評価しましょう。

Japan coma scale(JCS)の内容

Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態(1桁で表現)

delirium、confusion、senselessness

1.だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない

2.見当識障害がある

3.自分の名前・生年月日が言えない

Ⅱ.刺激により覚醒、刺激をやめると眠り込む状態(2桁で表現)

stupor、lethargy、hypersomnia、somnolence、drowsiness

10.普通の呼びかけで容易に開眼する.

20.大きな声または体を揺さぶることにより開眼する.簡単な命令に応ずる.

30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する

Ⅲ.刺激をしても覚醒しない状態(3桁で表現)

deep coma、coma、semicoma

100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする

200.痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる

300.痛み刺激に反応しない

覚醒状態により3群に分類、次に各群を各種刺激に対する反応で3段階に分類、全体で9段階に分類されています。

不穏状態があればR(restlessness)、失禁があればI(incontinence)、無動性無言があればA(akinetic mutism、apallic state)をそれぞれ数字の後につけます(100-I、20-RIなど)。

 

Glasgow coma scale(GCS)の内容

観察項目

反応

スコア

開眼 eye opening

自発的に開眼 spontaneous

4

音声により開眼 to speech

3

疼痛により開眼 to pain

2

開眼しない nil

1

最良言語反応 verbal response

見当識あり orientated

5

錯乱状態、会話混乱 confused conversation

4

不適当な言葉、言語混乱 inappropriate words

3

理解不能な声 incomprehensible sounds

2

発語しない nil

1

最良運動反応 motor response

命令に従う obeys

6

疼痛部認識可能 localises

5

四肢の逃避反応 flexes withdraws

4

四肢の異常屈曲反応 abnormal flexion

3

四肢の伸展反応 extends

2

全く動かない nil

1

言語や疼痛刺激に対する開眼反応・言語反応・運動反応の3項目について、その反応性をスコアの合計(E+V+M)により評価をします(15点満点、最低3点)。

 

視診

視診で重要なのが、脳血管障害による麻痺の有無です。

構音障害や顔面麻痺は問診の時に確認しておきましょう。

四肢の麻痺に関しては、バレー徴候で判断すると良いでしょう。

バレー徴候(上肢)の方法

立位または座位で両上肢を手掌面を上に向けたまま肩関節90度前方挙上位に保持しておくように指示をします。

この時、麻痺側の上肢は下降しながら回内してきます。

 

バレー徴候(下肢)の方法

腹臥位において両側の膝関節を45度屈曲位に保持しておくように指示をします。

この時、麻痺の下肢は落下してきます。

 

加えて、中枢性のめまいは小脳梗塞・出血を起因としていることがあるため、失調の有無も確認することが重要です。

一般的に、四肢の失調は鼻指鼻試験(nose-finger-nose test)を用いて判定します。

鼻指鼻試験(nose-finger-nose test)

人差し指を鼻先に当てさせ、その指先で検者の指と自分の鼻を交互に触るよう指示します。

検者の指は患者の示指先端が肘を伸展した肢位でちょうど届く位置に置き、1往復ごとにその位置を変えます。

測定障害、共同運動障害、振戦の有無が判定可能です。

 

立位ができる人は、ロンベルク試験(Romberg test)で動揺があるかどうかをチェックしましょう。

ロンベルグ試験(Romberg test)

両下肢を揃えつま先を閉じて立たせて閉眼させます。

開眼時より身体動揺が大きくなればロンベルク徴候陽性と判断します。

 

打診

消化器系や循環器系に問題がある場合でもめまいが出現することがあります。

打診をして異常な音がみられていないか確認しましょう。

正常な打診音の特徴は以下にまとめておきます。

音の種類音の特徴臓器
鼓音太鼓がなるような音胃・腸
濁音詰まったような音心臓・肝臓
共鳴音響くような音
過共鳴音共鳴音よりも響く音肺(肺気腫)
無共鳴音響がない音筋肉

聴診

循環器疾患によりめまいが出現することもあるので、聴診にて異常音(副雑音)がないかを確認することも大切です。

また、めまいは嘔吐を伴うことがあります。

誤嚥性肺炎が疑われる場合は、バリバリという捻髪音やボコボコという水泡音が確認できます。

副雑音の種類と特徴は以下の通りです。

音の特徴疑うべき疾患
いびき音(ブーブー)低くいびきのような音気管の狭窄など
笛音(ピーピー)高く笛を吹いているような音気管支喘息、気管支の炎症など
捻髪音(バリバリ)高く小さい音間質性肺炎、肺炎・心不全の初期など
水泡音(ボコボコ)沸騰しているような音肺炎、肺水腫、分泌物(痰)など
摩擦音(ギュッギュッ)雪道を歩くような音転移性がんなど

詳しくは、こちらの記事(「ちょっと苦しい…」呼吸苦を訴える利用者のフィジカルアセスメント)で詳しく書いているので参考にしてください。

「ちょっと苦しい…」呼吸苦を訴える利用者のフィジカルアセスメント

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報告の方法・ポイント

一般的に、普段と違うことが起こったらケアマネジャー・主治医に報告します。

ケアマネジャーには、どのような些細なことであれ報告をしておくと後のトラブル回避に繋がります。

主治医にも報告をすることが望ましいですが、往診かその他か、または訪問看護との関係性によっても変わってくるかと思います。

基本的に、往診であれば些細なことでも報告した方が良いでしょう。

電話するほどではないかな…という場合は、FAXで報告するのも一つです。

報告の際は、以下の点を踏まえると良いでしょう。

  • 本日の訪問の様子
    (→例:本日訪問時、めまいの訴えがありました。訪問前に2回ほど起こったとのことでした。嘔吐はありません。)
  • 評価した結果
    (→例:「ぐるぐる回っている感じがする」との訴えがあったため、回転性のめまいかと思われます。バイタルサインは-------で正常、四肢の動きや身体機能はお変わりありません。訪問中はめまいの訴えはありませんでした。)
  • 考えられる原因(→例:めまいは「頭を急に動かした時に出現した」とのことから、良性発作性頭位めまい症かと思います。再び強いめまいが出現したら、弊社の緊急時連絡先に電話をするようお伝えしております。)

報告をする際は、状態を伝えるだけではなく、めまいの種類や推察される原因、緊急度・重症度まであわせて伝えると親切です。

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訪問看護におけるフィジカルアセスメント18事例まとめ

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今回ご紹介した事例以外にも、当サイトでは訪問看護におけるフィジカルアセスメントを18事例掲載しています。

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