訪問看護 フィジカルアセスメント

「体温が高い!」発熱している利用者のフィジカルアセスメント【訪問看護】

2022年9月14日

”訪問看護における”フィジカルアセスメントの事例集。

今回、想定するシチュエーションは、発熱している利用者に対するフィジカルアセスメントです。

今回想定するシチュエーション

「体温が高い!!」
発熱している利用者に対するフィジカルアセスメント

いつも通りバイタルサインを測ると体温が高い!!

訪問看護では十分に考えられるシチュエーションです。

テンパらず、冷静に原因分析と対策を講じることが望まれます。

この記事では、発熱している利用者に対するアセスメントの方法をお伝えするとともに、報告のポイントまでご紹介してまいります。

このような事例をもっと知りたい!という方は、記事の最後18事例をまとめたリンクを記載しておくので、ぜひ日々の業務にご活用ください。

発熱している利用者に対するアセスメントのポイント

発熱している利用者に対するアセスメントのポイントは、以下が考えられます。

アセスメントのポイント
・発熱の原因
・他にはどのような症状が出ているか
・日常生活にどのような影響が出ているか
・すぐに医師に報告するのが望ましいか

一言で発熱といっても、裏側には様々な疾患が潜んでいることがあります。

「この発熱はどこからきているのか」という点は常に頭に入れてアセスメントするようにしましょう。

発熱を引き起こす疾患は以下のようにまとめられます。

◎感染性による発熱

全身性敗血症、ウイルス疾患など
中枢系髄膜炎、脳炎など
呼吸器系上気道炎、気管支炎、肺炎など
消化器系腸炎、腹膜炎など
泌尿器系腎盂腎炎、膀胱炎など
その他蜂窩織炎、カテーテル感染など

◎非感染性による発熱

悪性腫瘍がん、白血病、悪性リンパ腫など
膠原病全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど
その他うつ熱(熱中症)、脳血管疾患など

発熱のアセスメントをする際は、「感染性」「非感染性」かを分けて考えることが重要です。

見分け方の一つの指標として、2週間以内の発熱は感染性であることが多く、それ以上続く場合は非感染性によるものが多いです。

また、「病気によるもの」「外的環境によるもの」かも重要です。

うつ熱(熱中症)を代表とする外的環境によるものであれば、環境を整えてあげることも訪問看護の役割と言えるでしょう。

うつ熱とは

うつ熱:外気温が高い環境にいることにより、体の放熱機能が低下している状態

外気温を涼しくしたり、水分摂取を促すなどの対処が必要

 

この中でも、高齢者に多い発熱の原因としては、褥瘡や外傷、呼吸器系、泌尿器系、消化器系、カテーテルなど医療機器挿入による感染が挙げられます。

発熱している利用者に対するフィジカルアセスメントの方法

フィジカルアセスメントは、基本形(問診(主観的評価)→フィジカルイグザミネーション(客観的評価)→アセスメント(評価分析)→ケア・報告)に則って進めてまいります。

トコル
トコル

そもそもフィジカルアセスメントって何?どうやって進めていくの?と悩んでいる人は、まずはコチラの記事(訪問看護における"フィジカルアセスメントの目的と順番)を見てみよう!

"訪問看護における"フィジカルアセスメントの目的と順番【事例まとめ 】

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問診(主観的評価)

まずは問診をしていきましょう。

聞くべき内容は、以下が考えられます。

  • 熱があることに気付いていたか
  • いつもと違う症状はあるか(呼吸苦、咳、痛みなど)
  • 何かいつもと違うことをしたか(どこかに出かけた、ワクチン摂取をしたなど)
  • 食事の内容(生モノを食べたかなど)
  • エアコンはずっとつけていたか(暑い日)
  • いつもの内服薬は飲めているか
  • 日常生活はいつも通りできているか(トイレに行けているか、食事はできているかなど)

発熱している利用者は体力も低下していることが推察されます。

状況に合わせて、必要最低限の問診にすることが望ましいでしょう。

本人から聞けない情報は、家族から聴取するようにしましょう。

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フィジカルイグザミネーション(客観的評価)

問診の精度にかかわらず、フィジカルイグザミネーション(客観的評価)を行うことが重要です。

その際、共通して以下の点に留意をして評価していきましょう。

客観的評価をする時に気をつけること
・前回訪問時との変化
・左右差の有無
・できるだけ数値化をする

バイタルサイン・意識レベル

個人差はありますが、一般的に発熱の基準は以下の通りにまとめられます。

微熱37.0~37.9度
中等熱38.0~38.9度
高熱39度以上

体温を測る際は、年齢により差があること(小児>成人>高齢者)、日内変動があること(早朝<夕方)、麻痺がある人は左右差があること(麻痺側<非麻痺側)などを頭に入れておきましょう。

また、2020年以降は新型コロナウイルスの影響を無視できません。

もし、発熱があった場合は新型コロナウイルスを疑い、すぐに防護対策を講じたほうが良いでしょう。

当たり前ではありますが、体温以外にも脈拍・血圧・SpO2・呼吸数などのバイタルも測定します。

特に脈拍は発熱との関連性が高く、体温が1度上昇すると約10回/分増加すると言われています。

バイタルサインの正常値・基準値

血圧

収縮期血圧:〜120mmHg

拡張期血圧:〜80mmHg

脈拍

50~80回/分

体温

36.0度~36.9度

呼吸数

12~20回/分

 

一般的に、脈が速いと血圧は上昇しますが、逆に血圧が低下していたらショック状態であることが推察されます。

ショック徴候(ショックの5P)

1.皮膚・顔面蒼白(Pallor)
2.発汗・冷汗(Perspiration)
3.虚脱(Prostration)
4.脈拍微弱・触知不能(Pulselessness)
5.呼吸不全(Pulmonary insufficiency)

ショック徴候を認める場合は緊急度が高いため、すぐに医師に連絡か救急要請をしましょう。

同じく緊急度が高い原因として、敗血症が挙げられます。

敗血症は全身性炎症反応症候群(SIRS)を伴う感染症で、発症者の約30%がショックを引き起こすと言われています。

以下の4項目のうち、2項目以上を満たす場合を判断基準とします。

SIRSの判断基準

①体温:38℃以上または36℃以下

②脈拍数:90回/分以上

③呼吸数:20回/分以上またはPaCO2 32mmHg以下

④白血球数:12000/mm3以上または4000mm3未満、または未熟型白血球10%以上

また、発熱には意識障害を伴うことがあります(高度な脱水、髄膜炎、脳炎など)。

意識レベルは「Japan coma scale(JCS)」「Glasgow coma scale(GCS)」といった標準化されたもので評価しましょう。

Japan coma scale(JCS)の内容

Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態(1桁で表現)

delirium、confusion、senselessness

1.だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない

2.見当識障害がある

3.自分の名前・生年月日が言えない

Ⅱ.刺激により覚醒、刺激をやめると眠り込む状態(2桁で表現)

stupor、lethargy、hypersomnia、somnolence、drowsiness

10.普通の呼びかけで容易に開眼する.

20.大きな声または体を揺さぶることにより開眼する.簡単な命令に応ずる.

30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する

Ⅲ.刺激をしても覚醒しない状態(3桁で表現)

deep coma、coma、semicoma

100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする

200.痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる

300.痛み刺激に反応しない

覚醒状態により3群に分類、次に各群を各種刺激に対する反応で3段階に分類、全体で9段階に分類されています。

不穏状態があればR(restlessness)、失禁があればI(incontinence)、無動性無言があればA(akinetic mutism、apallic state)をそれぞれ数字の後につけます(100-I、20-RIなど)。

 

Glasgow coma scale(GCS)の内容

観察項目

反応

スコア

開眼 eye opening

自発的に開眼 spontaneous

4

音声により開眼 to speech

3

疼痛により開眼 to pain

2

開眼しない nil

1

最良言語反応 verbal response

見当識あり orientated

5

錯乱状態、会話混乱 confused conversation

4

不適当な言葉、言語混乱 inappropriate words

3

理解不能な声 incomprehensible sounds

2

発語しない nil

1

最良運動反応 motor response

命令に従う obeys

6

疼痛部認識可能 localises

5

四肢の逃避反応 flexes withdraws

4

四肢の異常屈曲反応 abnormal flexion

3

四肢の伸展反応 extends

2

全く動かない nil

1

言語や疼痛刺激に対する開眼反応・言語反応・運動反応の3項目について、その反応性をスコアの合計(E+V+M)により評価をします(15点満点、最低3点)。

 

視診

視診では、主に「顔面・皮膚」「呼吸パターン」「四肢の動き」に着目します。

いつもより顔色が悪い、皮膚にチアノーゼが見られていたら、循環不全や呼吸不全、貧血を疑います。

チアノーゼは中心性か末梢性かもみておきましょう。

  • 中心性チアノーゼ:くちびるが青っぽくなっている。心機能の低下で出現
  • 末梢性チアノーゼ:手足が青っぽくなっている。血管系の狭窄・閉塞で出現

中心性チアノーゼを認める場合は速やかに酸素を投与する必要があるため、その場で医師に報告をすることが望まれます

皮膚を観察する際は、「帯状疱疹」の有無にも注意をしましょう。

帯状疱疹とは

帯状疱疹とは、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。 

身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと赤い斑点(はんてん)が帯状(おびじょう)にあらわれるのが特徴です。

 

次に呼吸パターンです。

呼吸器系に影響がある場合、以下のような呼吸パターンを示すことがあります。

  • 口すぼめ呼吸(口を閉じて鼻から息を吸い、口を細めて細く息を吐く呼吸)の有無
  • 鼻翼呼吸(息を吸うときに小鼻が開く呼吸)の有無
  • 奇異呼吸(吸気時に胸郭が収縮し、呼気時に拡張する呼吸)の有無

口すぼめ呼吸のイラスト

 

最後は四肢の動きです。

発熱は脳炎や脳血管疾患によることも考えられるので、四肢に麻痺がないかをチェックしましょう。

四肢の動きは、バレー徴候を用いて判断すると良いでしょう。

バレー徴候(上肢)の方法

立位または座位で両上肢を手掌面を上に向けたまま肩関節90度前方挙上位に保持しておくように指示をします。

この時、麻痺側の上肢は下降しながら回内してきます。

 

バレー徴候(下肢)の方法

腹臥位において両側の膝関節を45度屈曲位に保持しておくように指示をします。

この時、麻痺の下肢は落下してきます。

 

触診

触診では、痛み熱感を中心にみていきましょう。

先ほども申した通り、発熱は様々な原因が考えられます。

痛みがある場所に原因が潜んでいるかもしれません。

頭痛脳血管疾患、脳炎など
咽頭痛上気道炎、気管支炎など
胸痛胸膜炎、膿胸など
背部痛腎盂腎炎、膀胱炎など
腹痛腸炎、腹膜炎など
排尿痛尿道炎、前立腺炎など
筋肉痛・関節痛インフルエンザ、新型コロナウイルスなど

うつ熱の場合は熱がこもった状態であるため、皮膚温が高い傾向にあります。

手背で皮膚に触れると相手の熱感を感じやすくなります。

また、浮腫の有無も大切な判断材料になります。

浮腫も発熱と同様、裏側には起因となる原因が隠されています。

詳しくはコチラの記事(「うわ!むくみが強くなってる!」浮腫がある利用者に対するフィジカルアセスメント)を参考にしてください。

「うわ!むくみが強くなってる!」浮腫がある利用者に対するフィジカルアセスメント

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打診

打診をすることで臓器の位置や水・分泌物の有無などを調べることができます。

発熱の原因と思われる場所を打診して評価しましょう。

正常な打診音の特徴は以下にまとめておきます。

音の種類音の特徴臓器
鼓音太鼓がなるような音胃・腸
濁音詰まったような音心臓・肝臓
共鳴音響くような音
過共鳴音共鳴音よりも響く音肺(肺気腫)
無共鳴音響がない音筋肉

例えば、共鳴音がなるべき部分(肺)で濁音や無共鳴音がなれば、胸水や無気肺などの可能性が推察されます。

また、腸に貯留物がない場合は鼓音がしますが、便の詰まりがあると濁音がします。

聴診

聴診では主に呼吸音を評価し、異常音(副雑音)がないかを確認します。

副雑音の種類と特徴は以下の通りです。

音の特徴疑うべき疾患
いびき音(ブーブー)低くいびきのような音気管の狭窄など
笛音(ピーピー)高く笛を吹いているような音気管支喘息、気管支の炎症など
捻髪音(バリバリ)高く小さい音間質性肺炎、肺炎・心不全の初期など
水泡音(ボコボコ)沸騰しているような音肺炎、肺水腫、分泌物(痰)など
摩擦音(ギュッギュッ)雪道を歩くような音転移性がんなど

肺炎が疑われる場合は、バリバリという捻髪音やボコボコという水泡音が確認できます。

詳しくは、こちらの記事(「ちょっと苦しい…」呼吸苦を訴える利用者のフィジカルアセスメント)で詳しく書いているので参考にしてください。

「ちょっと苦しい…」呼吸苦を訴える利用者のフィジカルアセスメント

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報告の方法・ポイント

一般的に、普段と違うことが起こったらケアマネジャー・主治医に報告します。

ケアマネジャーには、どのような些細なことであれ報告をしておくと後のトラブル回避に繋がります。

主治医にも報告をすることが望ましいですが、往診かその他か、または訪問看護との関係性によっても変わってくるかと思います。

基本的に、往診であれば些細なことでも報告した方が良いでしょう。

もちろん、緊急性が高い発熱に関しては、その場で報告をして指示を仰ぎます。

緊急性が低いと判断した場合は、FAXで報告するのも良いでしょう。

報告の一例は以下の通りです。

  • 本日の訪問の様子
    (→例:本日訪問時、体温が37.8度の高値を示していました。)
  • 評価した結果
    (→例:その他のバイタルサインは-------で、いつもより若干脈拍の上昇を認めます。意識レベルは清明で会話も通常通りできています。部屋の温度は30度で部屋も締め切りであったため、うつ熱の可能性が高いと考えます。)
  • 対応したこと(→例:エアコンの温度を26度に設定して水分摂取を促したところ、退室時の体温は37.2度まで下がりました。何かまたお変わりがあったら、弊社の緊急時連絡先に電話をするようお伝えしております。)

報告をする際は状態を伝えるだけではなく、推察される原因まであわせて伝えると親切です。

うつ熱といった外部環境による発熱が続くのであれば、サービスの追加や増回をケアマネジャーに提案してみましょう。

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訪問看護におけるフィジカルアセスメント18事例まとめ

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今回ご紹介した事例以外にも、当サイトでは訪問看護におけるフィジカルアセスメントを18事例掲載しています。

どれも訪問看護ではあるあるの事例なので、ぜひ日々の業務にご活用ください!

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