この記事では、訪問看護指示書の書き方を解説しております。
「訪問看護ステーションから指示書依頼がきたけどどう書けばいいの?」
「指示期間ってどう設定するの?」
「記載例を教えて!」
こんな疑問にお答えしていきます。
特に、訪問看護指示書に関しては報酬の改定ごとに様々な変化を遂げています。
- 令和3年の介護報酬改定:リハビリテーションの具体的な支持と頻度の記載が義務化
- 令和4年の診療報酬改定:リハビリテーションの具体的な支持と頻度の記載が義務化
- 【NEW】令和6年(2024年)のトリプル改定:「傷病名コード」項目が追加
こちらも記載例を用いて解説していきます。
最新版の書式ダウンロードも可能です。
訪問看護指示書とは
訪問看護業務や訪問リハビリを行うためには、医師が発行する「訪問看護指示書」が必須です。
なぜなら、訪問看護や訪問リハビリは医師の指示がないとすることができないからです。
この訪問看護指示書は、「利用者の自宅に行って看護やリハビリをしてもいいよ」という訪問看護業務の承諾、そして指示を示す書類になります。
昨今の国の方針を見ても、訪問看護の需要は高まり、同時に訪問看護指示書依頼も増えてくることでしょう。
訪問看護指示書は、保険医であれば誰でも記載することができます。
保険医とは:各種社会保険による診療を行なう医師。都道府県知事の認定により資格が与えられる。〔健康保険法(1922)〕
「特別訪問看護指示書」と「精神科訪問看護指示書」に関しては、別記事にまとめてあるので下記リンクをご参照ください。
【2024年改定対応】訪問看護指示書のフォーマット
訪問看護指示書のフォーマットです(ダウンロード可)。
内容に大きな相違がなければ、独自のフォーマットを使用しても構いません。
手書きでもパソコンで作成しても構いません。
よくある質問で、「訪問看護ステーションからの依頼書の中に、指定の用紙が同封されていたんですがこの用紙に書かなければいけないんですか?」と聞かれます。
答えは「No」です。
もちろん、その用紙に記載しても構いませんが、独自のフォーマットを使用しても構いません。
ただ、その際は依頼先を書き忘れがちになるので気をつけましょう(この記事「訪問看護指示書の書き方 ⑧医療機関名(医師名)・依頼先」部分)。
訪問看護指示書の書き方
訪問看護指示書は、項目に沿って記載していけばそれほど難しいものではないでしょう。
しかし、細かいルールがあるのも事実です。
そのルールから外れて記載をしてしまうと、訪問看護ステーションから「〇〇が間違っているので、再発行をお願いします」と電話がきます。
このような無駄な業務を増やさないよう、記載のルールはしっかり把握しておきましょう。
今回は、①〜⑧のブロックに分けて書き方を解説していきます。
①指示期間
②基本情報
③主たる傷病名・傷病名コード
④現在の状況(病状・薬剤)
⑤現在の状況(ADLの状況・褥瘡・医療機器)
⑥留意事項及び指示事項
⑦緊急時・不在時の連絡先など
⑧医療機関名(医師名)・依頼先
①指示期間
訪問看護指示書の「訪問看護指示期間」についてです。
指示期間を記載すればいいだけなのですが、実は最もトラブルが多い箇所です。
訪問看護指示書の訪問看護指示期間は、最長6ヶ月と決められています。
その間でしたら、医師の判断で設定していただいて構いません。
考え方としては、
「この利用者は状態安定しているから、最長の6ヶ月でいいだろう」
「かなり状態が不安定だから1ヶ月にしよう」
このような形で決めている医師が多いかと思います。
しかし、実際には6ヶ月を超えた期間を設定することが多々あります。
指示の開始日は、訪問看護ステーションから指定(お願い)があった場合は、ぜひそちらに従って欲しいと思います。
なぜなら、「利用者ができるだけ早く介入を望んでいる」、「家族が介護放棄状態」など、実際の現場では早急な介入が必要になっていることがあるからです。
もし、開始日の指定(お願い)がなかった場合は、「医師が記載した日」を開始日に設定することが多いでしょう。
ちなみに、期限の記載がない場合は、指示日より1ヶ月が有効期間となります。
また、指示期間中でも状態などが変わった場合は、再度発行することが可能です。
②基本情報
この項目は「名前」や「住所」などなので、忠実に記載していただければ特にトラブルになることはないでしょう。
③主たる傷病名・傷病名コード
この項目はかなり重要です。
基本的には、利用者の主病名を記載していけばいいのですが、書き方ひとつで訪問看護が医療保険で介入になるのか、介護保険で介入になるのかが変わります。
例えば、日常的に介護が必要なパーキンソン病の利用者がいたとします。
ホーンヤールの重症度分類Ⅲ度・生活機能障害度Ⅱ度で、特定医療費(指定難病)受給者証を持っています。
特定医療費(指定難病)受給者証とは:厚生労働省が定める難病の利用者に発行される受給者証
この受給者証には、医療負担の上限が設定されており、医療依存度が高い利用者でも、ある一定の料金以上は徴収されません。
実は、訪問看護ステーションからの看護業務・リハビリも、この指定医療費(指定難病)受給者証が適応となります。
しかし、適応となるには、訪問看護指示書の主たる傷病名に、「パーキンソン病(ホーンヤールの重症度分類Ⅲ度、生活機能障害度Ⅱ度)」の記載が必要なのです。
「パーキンソン病」だけではダメで、「ホーンヤールの重症度分類がⅢ度以上である旨」と「生活機能障害度がⅡ度以上である旨」が必須となります。
この記載がないだけで、医療負担の上限が適応にならず莫大な料金が自己負担に・・・となってしまう事も考えられます。
以下に、トラブルになりがちな主たる主病名の例をご紹介します。
●悪性腫瘍の場合 「末期」の記載があれば医療保険適応、記載がなければ介護保険適応 例)末期の皮膚癌→医療保険適応 皮膚癌→介護保険適応 |
●パーキンソン病の場合 ホーンヤールの重症度分類がⅢ度以上、生活機能障害度がⅡ度以上→医療保険適応 上記以外の分類、またはホーンヤール・生活機能障害の記載なし→介護保険適応 |
●脊椎・脊髄疾患の場合 頚髄損傷→医療保険適応 頚椎損傷→介護保険適応 |
訪問看護の保険制度をマスター!この利用者は介護保険?医療保険?【Q&A】
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また、2024年のトリプル改定以降、傷病名コードの記載が求められました。
これはオンライン請求に対応するためです。
傷病名コードがわからない場合は、厚生労働省が提供している「診療報酬情報提供サービス」をご活用ください。
④現在の状況(病状・薬剤)
この項目は特別なルールはありません。
病状の経過と服用している薬剤を記載しましょう。
具体的な記載例は、この記事最後に紹介する「訪問看護指示書の疾患別記載例」を参考にしてみてください。
ちなみに、「投与中の薬剤の用量・用法」は、内服が多い人は書ききれない場合があります。
その場合は、「*別紙参照」と記載して、別紙に記載しても構いません。
⑤現在の状況(ADLの状況・褥瘡・医療機器)
この項目は、各分類方法に従って記載する箇所になります。
分類方法を紹介しておきますので、適応する分類を記載しましょう。
日常生活自立度(寝たきり度)
生活自立 | ランクJ | 何らかの障害を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出できる |
準寝たきり | ランクA | 屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出できない A1:介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活している A2:外出の頻度が少なく、日中も寝たりおきたりの生活をしている |
寝たきり | ランクB | 屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つことができる |
ランクC | 日中はベッド上で過ごし、食事・排泄・着替えにおいて介助を要する C1:自力で寝返りがうてる C2:自力で寝返りがうてない |
日常生活自立度(認知症の状況)
ランク | 判断基準 | 症状・行動の例 |
---|---|---|
Ⅰ | 何らかの認知症の症状が見られるが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している | |
Ⅱa | 家庭外において、日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られているも、誰かが注意していれば自立できる。 | 道に迷う、買い物や金銭管理にミスが目立つなど |
Ⅱb | 家庭内において、日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られているも、誰かが注意していれば自立できる。 | 服薬管理のミスが目立つ、電話の応対や訪問者の対応ができないなど |
Ⅲa | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。(日中を中心) | 食事・排泄・着替えなど日常生活動作が上手にできない、時間がかかるなど 徘徊・失禁・奇声・火の不始末・不潔行為など |
Ⅲb | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。(夜間を中心) | *ランクⅢaと同じ |
Ⅳ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 | *ランクⅢaと同じ |
M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 | せん妄・妄想・自傷(他害)行為など精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態 |
*認知症の症状がない場合は、記載しなくてOKです。
要介護認定の状況
介護保険証に記載されている要介護・要支援の区分を記載します。
褥瘡の深さ
「特別管理加算を算定する場合」や、「特別訪問看護指示書を月に2回交付する場合」は、訪問看護指示書に「真皮を超える褥瘡の状態」であることを示さなければなりません。
NPUAP分類にⅢ度またはⅣ度、DESIGH分類にD3、D4またはD5を記載することで「真皮を超える褥瘡の状態」を示すことができます。
NPURP分類 | DESIGH分類 |
---|---|
Ⅲ度:全層組織損傷(脂肪層の露出) | D3:皮下組織までの損傷 |
Ⅳ度:全層組織欠損 | D4:皮下組織を超える損傷 D5:関節腔・体腔に至る損傷 |
装着・使用医療機器等
利用者が装着・使用している医療機器に、○印をつけましょう。
カッコ書きがある項目は、必ず内容を記載します。
⑥留意事項及び指示事項
各項目の記載例は、記事最後に紹介している「疾患別の訪問看護指示書記載例」を参考にしてください。
この項目で、トラブルになりやすいのが「Ⅱ-1 リハビリテーション」です。
このリハビリテーションの項目に○印、指示内容の記載がなければ、理学療法士などリハビリ専門職が訪問することはできません。
「○分のリハビリを週○回」のように頻度を記載する必要がありますが、保険ごとに細かいルールがあるので以下にまとめておきます。
介護保険におけるリハビリテーションの頻度
介護保険におけるリハビリは20分・40分・60分の20分単位で区切られていますので、この中から指示を出しましょう。
また、訪問看護のリハビリは、「週に120分を超えてはならない」というルールがあります。
例えば、週3回60分のリハビリは週180分になり、120分を超えてしまうので不可です。
医療保険におけるリハビリテーションの頻度
医療保険におけるリハビリテーションは、「30分〜90分間」で提供され、介護保険のように途中の区切りはありません。
また、頻度は「1日1回、週3回まで」というルールがあります。
ただし、「特別訪問看護指示書が発行されている場合」「厚生労働省が定める疾病等の場合」「特別管理加算を算定している場合」は、同日複数回・週4回以上の訪問が可能なので、利用者の状況に合わせて臨機応変に指示を出しましょう。
加えて、介護・医療ともに屋外歩行など自宅外での練習を認める場合は、その旨を記載が必須です。
訪問看護指示書は、あくまでも自宅内で看護やリハビリをするための指示なのですが、医師が「屋外での練習もOK」と判断をすれば、屋外に出てリハビリをすることができます。
「家に引きこもりがちだから外に出して欲しい」など考えている場合は、その旨を記載するようにしましょう。
⑦緊急時・不在時の連絡先など
この項目に、特別大きなルールはございません。
項目に沿って記載をしましょう。
一点、注意をするとすれば、「他の訪問看護ステーションへの指示」や、「たんの吸引等実施のための訪問介護事業所への指示」がある場合は、必ず記載してください。
「なんのために必要?」と思われるかもしれませんが、他の事業所へ指示がある場合、事業所間で計画書や報告書を共有する義務が生じます。
円滑なチーム医療のために、忘れずに記載するようにしましょう。
⑧医療機関名(医師名)・依頼先
指示書を記載した日付、医療機関名(住所・TEL・FAX含む)、医師名と医師の捺印を記載します。
最後の捺印が抜けてしまうことが多いので注意をしましょう。
捺印がないと、この訪問看護指示書は使用できません。
後日、訪問看護ステーションから「医師の捺印がなかったので再発行をお願いします」と電話がかかってくることはあるあるです。
最後に依頼先(訪問看護ステーション名)を左下に記載して終了です。
この依頼先を記載すれば、訪問看護ステーションから送られてきた指示書ではなく、各医療機関独自のフォーマットを使用しても構いません。
訪問看護指示書のあるあるトラブルと対処法を完全解説!
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訪問看護指示書の疾患別記載例
それでは、訪問看護指示書の記載例を疾患別にご紹介します。
あくまでも1例なので参考程度にお願いいたします。
*画像クリックで拡大します。
脳血管疾患
主たる傷病名 |
右被殻出血、高血圧症 |
病状・治療状態 |
平成〇〇年〇月〇〇日〜〇月〇〇日まで入院治療。その後リハビリ病院へ。現在、当院通院中。右半身麻痺、関節拘縮を認める |
整形疾患
主たる傷病名 |
右人工関節置換術後、左大腿骨転子下骨折術後、骨粗鬆症 |
病状・治療状態 |
平成〇〇年〇〇月〇〇日、〇〇病院にて右側人工関節置換施行。平成〇〇年より□□病院にて経過観察をしていた。平成〇〇年〇〇月〇〇日、屋外にて転倒して左側大転子下骨折を受傷して□□病院へ救急搬送され入院となる。同年〇〇月〇〇日に左側人工股関節置換術を施行。退院後は通院にて経過観察中である。 |
認知症
主たる傷病名 |
認知症、糖尿病、高血圧症 |
病状・治療状態 |
認知症状の悪化(HDS-R 7点)により日常生活の管理ができない。現在、基礎疾患について内服にてコントロールしている。 |
内部疾患
主たる傷病名 |
尿路感染症、左下肢リンパ浮腫 |
病状・治療状態 |
平成〇〇年〇月〇〇日~〇月〇〇日まで尿路感染症にて入院治療。現在は膀胱留置カテーテルを挿入中だが尿路感染症を起こさず経過している。後遺症として左下肢リンパ浮腫認めるもマッサージ等で悪化なく経過している。 |
皮膚トラブル(褥瘡)
主たる傷病名 |
重度褥瘡(左大転子、仙骨部著明)、腰椎圧迫骨折 |
病状・治療状態 |
腰椎圧迫骨折後に体動困難となり褥瘡発生。大転子部褥瘡は重度化しており、発赤・疼痛を認め感染が疑われる。自宅内でのADL全介助状態。 |
難病疾患
主たる傷病名 |
パーキンソン病(ホーンヤールの重症度分類Ⅳ度、生活機能障害度Ⅱ度)、アルツハイマー型認知症 |
病状・治療状態 |
平成〇〇年にパーキンソン病診断。ホーンヤールの重症度分類Ⅳ度。歩行時のふらつきが強く転倒頻回。薬剤療法中。 |
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