理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。
今回は、「筋力検査」です。
筋力検査は、歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります。
今回は、評価ポイントの解説に加えて、「筋力検査」の記載に最適な評価シートを用意したので、ダウンロードして実習に臨んでください。
もちろん、ダウンロードは無料です。
筋力検査をするときのオリエンテーションの方法
筋力検査に限らず、患者に対して評価をする時は、初めにオリエンテーションを行います。
「自己紹介」「そのような評価をするのか」などを中心に伝えます。
自己紹介
「初めまして。実習生の〇〇と申します。本日は筋力の検査をさせていただきます。よろしくお願いいたします。」
検査の説明
「検査の際、私から色々な指示を出させていただきます。もし、その指示がわかりにくかったり、こちらから指示する姿勢がとれないようでしたら、言ってください。」
「特に痛みが出る検査ではありませんが、もし痛みが出た場合はすぐにおっしゃってください。」
「検査の際、直接皮膚に触れることがありますが、ご協力をお願いいたします。」
「何か聞いておきたいことなどはありますか?」
「それでは、始めさせていただきます。」
筋力検査をするときの必要物品
実習先で貸してもらえることもありますが、基本的には自分で用意をするようにしましょう。
私がオススメする物品のリンクも貼っておきます。
クリップボード
結果を記載するときに必須です。
タオル(フェイスタオル)
直接肌に触られることを嫌がる人もいます。
筋力検査をする意義
次に、筋力検査をする意義をお伝えします。
バイザーから、「この評価って何のためにしているの?」と聞かれることはあるあるです。
しっかりと抑えて実習対策をしておきましょう。
筋力検査をする意義
- 末梢神経損傷や脊髄損傷の損傷部位の決定(診断の補助)
- 関節、筋、神経系の障害による筋のバランスや関節変形の予想を立てる(運動機能の判定)
- 侵された筋または筋群を知り、筋再教育や整形外科的手術の方法の決定やその効果判定に役立てる(治療方法、効果の決定)
筋力検査は、末梢性の弛緩性麻痺、廃用性委縮による筋力低下や軽度の痙性麻痺などの筋の評価として用いられ、診断や治療プログラムの立案と効果判定に用いられます。
筋力検査のみでは患者の全体像は分かりませんが、動作分析と併せて行うことで評価の統合と解釈が出来ます。
たとえば、大殿筋筋力低下では椅子からの立ち上がりにおいて第二相での股関節伸展に影響を及ぼします。
その時、代償として肘掛に手を突いて立ち上がることが考えられます。
また、回外筋などが働かないと手で水をすくって顔を洗うことができない可能性があります。
このように、動作と筋力検査の結果を統合して解釈をすることが重要です。
覚えておくと良い事あるかも!
1.上肢筋の支配神経髄節をみるためのテスト
A.肘関節:屈曲(C5、6)、伸展(C7、8)
B.肩関節:外転(C5)、内転(C6、7)
C.前腕:回外(C6)、回内(C6)
D.手関節:背屈(C6、7)、掌屈(C6、7)
E.手指:伸展(C7、8)、屈曲(C7、8)、内転(Th1)、外転(Th1)
2.下肢筋の支配神経髄節をみるためのテスト
A.股関節:屈曲(L2、3)、伸展(L4、5)
B.膝関節:屈曲(L5、S1)、伸展(L3、4)
C.足関節:背屈(L4、5)、底屈(S1、2)
D.足部:内がえし(L4)、外がえし(L5、S1)
筋力検査の方法
筋力検査の代表的なものに、「粗大筋力測定(GMT)」と「徒手筋力検査法(MMT)」があります。
粗大筋力測定(GMT)
1.握力(grip strength)
・手指屈筋群による握りの力、握力計を用いて測定(kg)
・測定肢位は自然立位(体側垂下式)、肘・体幹の屈曲などに注意
・握力計の握りは、第1~4指のMP軽度屈曲位・PIP90°屈曲位になる長さにする
2.背筋力(back strength)
・背部・腰部・殿部の筋群の共同作用による総合的な筋力、背筋力計を用いて測定(kg)
・背筋力計の足板上の足型に足部を合わせ、握り棒を両手で持ち、両膝・両肘伸展位、体幹前方屈曲30°位から徐々に上方に引く
3.腹筋力(strength of abdominal muscles)
・腹部の筋群の共同作用による総合的な筋力、背筋力計を用いて測定(kg)
・背筋力計に対して後向きに足板上に足部を位置させ、握り棒を体幹後方に両手で持ち、両膝・両肘伸展位から徐々に上方に引く
4.脚力(leg strength)
・下肢の伸展筋群の共同作用による総合的な筋力、背筋力計を用いて測定(kg)
・背筋力計の足板上に足部を位置させ、両膝屈曲60°位、両肘完全伸展位から徐々に下肢を伸展する
5.ダイナモメーター
・個々の関節運動に関与する筋群の等尺性収縮力を数量的に計測
・ワイヤーの端をしっかりとした場所に固定、もう一端は測定関節の末梢部に垂直に固定
・被検者にワイヤーを徐々に引くように指示、最大値を読む
徒手筋力検査法(MMT)
徒手筋力検査法の判定基準
ランク | 判定結果の表現 | 判定内容 |
5 | N:normal | 強い徒手抵抗を加えても、なお重力に打ち勝って全可動域を完全に動く |
4 | G:good | いくらかの抵抗を加えても、なお重力に打ち勝って全可動域を完全に動く |
3 | F:fair | 抵抗を加えなければ、重力に打ち勝って全可動域を完全に動く |
2 | P:poor | 重力を除けば、全可動域を完全に動く |
1 | T:trace | 関節は動かないが、筋の収縮は軽度に認められる |
0 | Z:zero | 筋の収縮は全く認められない |
*仮に検査の運動範囲の半分以下しか動かせない時には1段階下の表示にプラスをつけ、半分以上動かせる時は1段階上の表示にマイナスをつけるなどの基準を取り決めておくと良い。
徒手筋力検査実施上の諸注意
患者の協力とそのオリエンテーション
・まず他動的に動かして検査の運動パターンを正確に把握させる
・自動運動で出来る場合は1度行わせて、ごまかし運動の出現や疼痛の有無などを観察する
検査肢位の選択
・患者の疲労を考慮してできるだけ同一肢位で実施する
・規定の肢位がとれない場合は可能な肢位で実施し、その肢位を明記する
固定の重要性
・固定が不十分だとごまかし運動が出現する
検査部位の露出
徒手抵抗を加える部位とその与え方
・抵抗を加える部位は検査筋または筋群の働く関節の最遠位部
・抵抗の与え方は関節運動と逆方向で可動部位に対して垂直に、徐々に抵抗量を増す
筋力と異常関節可動因子との関係
・筋力は検査筋群の拮抗筋の緊張・拘縮・疼痛などの因子に影響を受ける
患者の疲労に対する考慮
・何度も同じ検査を行えば患者は疲労して本来より筋力が低下した結果となる
実習に最適!「筋力検査(GMT,MMT)」の記録用紙(評価シート)無料ダウンロード
粗大筋力測定(GMT)の記録用紙(評価シート)
徒手筋力検査法(MMT)の記録用紙(評価シート)
↓画像クリックで拡大↓
MMT評価用紙(上肢)(下肢・体幹)は、各部位ごとで検査結果を記載できます。
一方、MMT評価用紙(姿勢別)は、検査をする姿勢別で検査結果を記載できます。
使いやすい方をダウンロードして使用してください。
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