理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、レポート・レジュメの作成例シリーズ。
今回は、「頸椎症性脊髄症+頚椎前方固定術」の患者のレポート・レジュメです。
実習生にとって、レポート・レジュメの作成は必須です。
しかし、書き方が分からずに寝る時間がほとんどない…という人も少なくありません。
当サイトでは、数多くの作成例を紹介しています。
紹介している作成例は、すべて実際に「優」の評価をもらったレポート・レジュメを参考にしています(実在する患者のレポート・レジュメではありません)。
作成例を参考にして、ぜひ「より楽に」実習生活を乗り切ってください!
レポート・レジュメの書き方!完全まとめ【記載例70以上】
本サイトは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価シートの無料ダウンロード、レポート・レジュメの書き方や作成例を中心にご紹介しています。 今回は、「レポート・レジュメ ...
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今回ご紹介するレポートの患者想定
今回ご紹介する患者想定
- 病院に入院中
頸椎症性脊髄症を呈する患者
- 頚椎前方固定術を施行
【実習】整形疾患の評価ポイント!【無料評価シート多数】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「整形疾患」の評価です。 今回は、評価ポイントの解説に加えて、「整形疾患」の評価に最適な評価シートを ...
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【実習】疼痛(痛み)の評価ポイント!【図付き評価シートダウンロード可】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「疼痛の評価」です。 疼痛は、歩行・ADLの自立に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります ...
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「頸椎症性脊髄症+頚椎前方固定術」の患者のレポート・レジュメ作成例
一般情報
氏名:
年齢:
職業:無職
身長:
体重:
BMI:
診断名:頸椎症性脊髄症
合併症:高血圧
主訴:右半身の違和感をとりたい
ニード:健康になって世界の歴史を勉強するためにヨーロッパ旅行へ行きたい
現病歴:〇〇年〇〇月より右背部、右下肢・右上肢に違和感あり
既往歴:20年ほど前から両耳に難聴
趣味:読書、家庭菜園
術前ADL:自立
家族構成:配偶者(キーパーソン)、子どもとの三人暮らし
投薬状況:メイラックス→抗不安剤、デパス→安定剤、ナトリックス、レンバルミン
CT・MRI・X線所見:C5/6、C6/7、C3/4で椎間板の変性により前方の脊髄の圧迫がみられ、とくにC5/6での圧迫が強い。またC4/5、C5/6レベルで脊髄後方からも圧迫をうけている。
術式:頚椎前方固定術(全身麻酔)、骨移植
【実習】「一般情報」のポイントを解説!【書式無料ダウンロード】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「一般情報」です。 一般情報とは、「患者名」「疾患名」など、患者の基本的な情報を指します。 レジュメ ...
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理学療法評価
全体像
明るい表情をよくされ、御自分のことをよく話してくださり、話し方は礼儀正しい。こちらからの指示はよく通り、質問に対してもきちんと答えられる。術後翌日から端坐位、四日後にはウォーカー歩行を開始。固定のため頸椎装具を装着している。
【実習】患者への「問診」の方法を解説!【書式無料ダウンロード】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「問診」です。 問診は、患者に対して「どのようになりたいと思っているか」「いまの病気をどのように思っ ...
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HDS-R
27/30 (減点項目は記憶に関するところだけであり、対象者からの発言や答えに関して信頼性は高い)
【実習】認知機能の評価ポイント!HDS-R/MMSE【評価用紙】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「認知機能」の評価です。 認知機能は、今後の自立度に直結するため、臨床上欠かせない評価になります。 ...
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ROM-t
部位 | 運動 | 左(°) | 右(°) | 備考 |
肘 | 屈曲 | 145 | 130 | |
伸展 | 5 | 5 | ||
前腕 | 回内 | 80 | 75 | |
回外 | 90 | 105 | ||
手 | 掌屈 | 90 | 90 | |
背屈 | 75 | 70 | ||
撓屈 | 15 | 10 | ||
尺屈 | 50 | 45 | ||
股 | 屈曲(膝屈曲位) | 100 P | 115 | 骨移植によるP |
伸展※1 | - | - | 測定不能 | |
外転 | 55 P | 60 | 骨移植によるP | |
内転 | 20 | 35 | ||
外旋 | 65 | 75 | ||
内旋 | 25 P | 45 | 骨移植によるP | |
膝 | 屈曲(股屈曲位) | 145 | 140 | |
伸展 | -5 | -10 | ||
足 | 底屈 | 65 | 50 | |
背屈(膝屈曲位) | 10 | 15 | ||
背屈(膝伸展位) | 5 | 5 |
※1・・・腹臥位、側臥位がとれないため測定不能
※ 頸椎装具にて頭頚部から上位胸椎までは可動制限がかかっており、頭部、頚部、体幹、肩関節に関わる可動域は測定不能。
【実習】関節可動域検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「関節可動域検査(ROM-Test)」です。 関節可動域検査(ROM-Test)は、筋肉の柔軟性を確 ...
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MMT
部位 | 運動 | 左 | 右 | 備考 |
肘 | 屈曲 | 5 | 5 | 背臥位にて |
伸展 | 5 | 5 | ||
前腕 | 回外 | 5 | 5 | |
回内 | 5 | 5 | ||
手 | 掌屈 | 5 | 5 | |
背屈 | 5 | 5 | ||
股 | 屈曲 | 5 | 5 | |
屈曲,外転,外旋 | 5 | 5 | ||
外転 | 5 | 5 | 背臥位にて | |
内転 | 5 | 5 | ||
外旋 | 5 | 5 | ||
内旋 | 4 | 5 | ||
膝 | 屈曲 | 5 | 5 | |
屈曲(下腿外旋) | 4 | 5 | ||
屈曲(下腿内旋) | 4 | 5 | ||
伸展 | 5 | 5 | ||
足 ・ 足部 | 底屈 | 2+ | 2+ | 背臥位にて※2 |
底屈(膝屈曲位) | 2+ | 2+ | 坐位にて※2 | |
背屈,内がえし | 5 | 5 | 臥位にて | |
内がえし | 5 | 5 | ||
底屈,外がえし | 5 | 5 | ||
背屈,内がえし | 5 | 5 |
1・・・肩甲帯より高位の運動制限と、腹臥位・側臥位はとれないので、MMTにおいて定められた姿位は必要に応じて無視し、背臥位・端坐位で可能な限り筋力を評価する。
2・・・立位はとれるが負担が大きいので記載した姿勢で測定
【実習】筋力検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「筋力検査」です。 筋力検査は、歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になり ...
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握力
(端坐位・肘伸展位で)
右→44kg (術前44kg)
左→35kg (術前35kg)
左右で9kgの差があり、左側に低下がみられる
感覚テスト
表在感覚
分類 | 検査部位 | 得点※ | 判定 |
触覚 | 右上腕外側 | 10/10 | 正常(右=左) |
右拇指 | 12/10 | 過敏(右>左) | |
右手背部 | 10/10 | 正常(右=左) | |
右中指 | 11/10 | 過敏(右>左) | |
右小指 | 11/10 | 過敏(右>左) | |
右大腿外側 | 10/10 | 正常(右=左) | |
右大腿内側 | 10/10 | 正常(右=左) | |
右下腿外側 | 10/10 | 正常(右=左) | |
右下腿内側 | 10/10 | 正常(右=左) | |
右足背 | 12/10 | 過敏(右>左) | |
右足底 | 13/10 | 過敏(右>左) |
※1・・・障害レベルの上位である顔面(頬)の左右差はなく、顔面と同側の手部・足部で比べて差のなかった左側を基準としている。
※ 表在感覚の触覚に関しては中等度以上の過敏や鈍麻、脱失は起こっていないが、全体的にみて右側に軽度の過敏が見られる。
深部感覚
分類 | 検査部位 | 左右差 | 判定 |
運動覚 | 肩関節 | なし | 正常 |
肘関節 | なし | 正常 | |
手関節 | なし | 正常 | |
股関節 | なし | 正常 | |
膝関節 | なし | 正常 | |
足関節 | なし | 正常 |
※右上・下肢を被動的に動かし、模倣法により判定
分類 | 検査部位 | 得点 | 判定 |
位置覚 | 右手第1~5MP関節 | それぞれ5/5 | 正常 |
左手第1~5MP関節 | それぞれ5/5 | 正常 | |
右足第1~5MP関節 | それぞれ5/5 | 正常 | |
左第1~5MP関節 | それぞれ5/5 | 正常 |
※手指、足指を被動的に動かし、口頭法により判定
【実習】感覚検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シートあり】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「感覚検査」です。 感覚検査は、中枢神経系の障害程度を把握、患者が生活する上でのリスク管理など、臨床 ...
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深部腱反射
反射 | 右側 | 左側 |
上腕二頭筋反射 | ++ | + |
上腕三頭筋反射 | ± | + |
膝蓋腱反射 | ± | ++ |
アキレス腱反射 | ± | ± |
病的反射
反射 | 右側 | 左側 |
バビンスキー反射 | - | + |
ホフマン反射 | - | - |
トレムナー反射 | - | - |
ワルテンベルク反射 | - | - |
【実習】反射検査の評価ポイント!【カンペ付き評価シートあり】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「反射検査」です。 反射検査は、錐体路障害・錐体外路障害を見分けるなど、臨床上とても大事な評価項目に ...
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協調運動検査
手回内・回外試験 | 速さを増していくことができず、左が特にぎこちない |
膝打ち試験 | 左右の動きに差は見られないが、速くすることはできない |
手指屈曲・伸展動作 | 左右の動きに差は見られないが、速くすることはできない |
母指から順に屈曲し、小指から伸展する動作 | 屈曲に比べて伸展がうまくできず、特に左がぎこちない 速さを増していくことはできない |
坐位で両足交互に前後する動作 | 速さを増していくことができず、左足が特に遅い |
【実習】協調性検査の評価ポイント!【評価用紙ダウンロード】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「協調性検査」です。 協調性検査は、転倒リスクを知るなど、臨床上欠かせない評価になります。 今回は、 ...
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動作分析
寝返り
頚椎装具着用で側臥位が取れないので寝返りは行わない。
起き上がり
体幹を起こす際は頭頚部・肩甲帯は伸展してしまうので、そうしないように背部を抱えてもらって一部解除で起き上がるか、病室のベッドではギャッジアップして起き上がる。
立ち上がり
下部体幹の屈曲により重心の前方移動が可能であるので、ベッド柵や手すりなどがあれば安全のために使用して立ち上がるが、ない場合でも介助なしで立ち上がることは可能。
【実習】動作分析のポイント!【無料評価シートダウンロード可】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「動作分析」です。 動作分析は、患者の自立を目指すため、問題点を把握するためなど、臨床上とても大事な ...
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歩行
歩行器を使用して歩行を行う。安全第一と考えられているため、歩行速度はゆっくりとしている。歩行器に過度の体重をかけている様子はなく、歩行時の矢状面・前額面でのアライメントは整っている。左右のぶれも少なく、立脚期・遊脚期のバランスは取れている。
【実習】歩行分析のポイント!【図付き評価シートダウンロード可】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「歩行分析」です。 歩行分析は、歩行自立を目指すためなど、特に理学療法の業界ではとても大事な評価項目 ...
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疼痛
朝、起床時に装具の圧迫により背部に張りのような痛みがある。
動き始めると30分ほどで痛みは取れる。
【実習】疼痛(痛み)の評価ポイント!【図付き評価シートダウンロード可】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「疼痛の評価」です。 疼痛は、歩行・ADLの自立に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります ...
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ADL評価
FIM 99/126
減点項目:セルフケアの入浴 ※1
入浴時の移乗 ※2
階段移動 ※3
1,2・・・入浴は行っていない
3・・・歩行器歩行のため階段昇降はしない
【実習】ADL評価ポイント!【カンペ付き評価シート有】
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。 今回は、「ADL評価」です。 ADL評価は、在宅復帰を目指す患者に対してなど、臨床上とても大事な評価項目にな ...
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問題点
Impairment level
#1 筋力低下(装具固定による不動のため頚部・背部・肩におこる)
#2 協調運動能力低下(四肢の動きを速くすることができず、特に左側が困難)
#3 可動域制限(装具固定により頭頚部・体幹・肩に運動制限があり、二次的にもおこる)
#4 感覚障害(右の手部・足部軽度過敏)
#5 疼痛(起床時の装具による圧痛)
Disability level
#6 起き上がり動作困難(#1、2、3)
#7 清拭動作困難(#1,2,3)
#8 立ち上がり動作困難(#1、2、3)
Handicap level
#9 海外旅行困難(起居動作、ADL動作困難)
#10 家庭菜園作業困難(体幹・上肢の大きな運動)
ゴール設定
短期目標:ギャッジアップを使わず自力での起き上がり自立
長期目標:院内独歩自立
治療プログラム
長期目標に挙げた院内独歩自立のためには、6の問題点に挙げたものに対してアプローチをする必要があると考え、以下に治療プログラムを立案する。
・動かせる関節、範囲での筋力維持・増強訓練を最大筋力の80%で8~10回反復して行う
背臥位→肘関節の屈曲・伸展運動、手関節の掌屈・背屈運動、手指の屈曲・伸展運動、SLR運動、足関節の底屈・背屈運動
端坐位→股関節の屈曲運動、膝関節の屈曲・伸展運動
・ひもを足元のベッド柵にくくり付け、上肢でたぐり寄せるようにして起き上がる動作訓練を行う(上肢でひもをつかむ→体幹を屈曲しながらひもを引き、体幹を起こしていく→重心が殿部に落ちるまで体幹を起こし坐位となる)
特に、体幹を屈曲しながらひもを引き、体幹を起こしていく動作を中心に訓練する
・自転車エルゴメータを運動強度は最大酸素摂取量・目標心拍数の40~60%とし、目標の運動強度で15分行なう
・自主訓練として、筋力維持・増強のため重錘で負荷をかけ、背臥位でのSLR訓練、端坐位での股関節の屈曲運動、膝関節の伸展運動を行い、持久力の増強のため、病棟内を15分以上歩行を行う
考察
今回は〇〇年〇〇月から右半身の違和感を訴え、頸椎症性脊髄症と診断を受け、〇〇年〇〇月〇〇日に頚椎前方固定術を施行された。本症例は非常に勉強家であり、何事も徹底的に行われる方で、治療・訓練に対しても積極的である。しかしその性格ゆえ、なんでも自分でしてしまうことや、無理をしてしまうことに関して注意が必要であると考えられる。
配偶者と子どもとの3人暮らしで、家屋の状況は、トイレ・浴室・階段には手すりが取り付けられていて安全面に配慮されているが、廊下と部屋との間の段差や、玄関出口の階段などがあり改善すべき点はまだある。家族との相談でバリアフリー化が考えられている。入院中の状況として抗不安剤や、安定剤を服用している。
起き上がりはベッドのギャッジアップで、移動は歩行器を使用している。術後の固定のため頸椎装具を着用している。
評価を行う際、全体像として受傷されたことに対してのショックや不安は感じられず、明るい表情をされ、話もよくされる。両耳の難聴で補聴器を付けられているが右側からゆっくり話すことで会話は十分に行える。可能な姿勢としては背臥位・坐位である。評価項目として、HDS‐R、ROM-t、MMT、握力測定、感覚テスト、深部腱反射、病的反射、協調運動検査、動作分析、疼痛評価、ADL評価を行った。
HDS‐Rでは30点中27点で、減点項目に関しては記憶の部分だけであり、会話の中での対象者からの発現や回答の信頼性は高く、以降の検査や問診にもそのまま反映することができる。ROM-tでは、装具固定されている頭頚部、体幹、肩甲帯の可動域を計測することはできない。
よって、肘、前腕、手、股、膝、足関節の可動域を計測したところ、全体的に参考可動域を満たしていたり、近い値であり動作を制限するような可動域障害はなかった。腹臥位・側臥位がとれないため股関節の伸展が計測できないが、歩行器歩行中に不具合を生じていないため特に問題はないと思われる。左股関節の屈曲・外転・内旋時に生じた痛みは手術の骨移植のものと思われるので、時間とともに軽快し可動域制限を残さないと考える。
MMTでも装具固定されている頭頚部、体幹、肩甲帯の筋力を検査することはできない。腹臥位・側臥位で行うべき検査に関しては、背臥位・坐位にて可能な限り行う。検査を行った筋では、術後早期であるために筋力低下がほとんどみられない。下腿三頭筋の検査に関しては立位で行うとされているが、負担が大きいので背臥位で行った。結果、左右で若干の差が見られたとしても抵抗に対して十分に抗する筋力があった。
握力測定は、端坐位・肘伸展位で行った。右44kgに対して左35kgで9kgの差が見られた。術前の値と一致しているため、術後の筋力低下は生じていないと考えられ、左右差は利き手と非利き手の関係により生じたと推測される。
感覚テストにおいては触覚、運動覚、位置覚を検査した。触覚では、障害レベルよりも高位の顔面(頬)をまず検査し、左右差は見られなかったので左右でそれぞれの顔面と上・下肢と比較して差の見られなかった左側を基準として検査を行った。結果、上・下肢ともに軽度ではあるが末梢にいくほど過敏になっていた。画像所見により見られた圧迫部位のレベルに異常があった。運動覚・位置覚に関しては前者は模倣法、後者は口頭法により評価したが、左右差は見られず得点にも異常はなく、神経伝達路に異常がないものと思われる。
深部腱反射・病的反射では、右上腕二頭筋・左膝蓋腱反射が軽度亢進していた。その他、上腕三頭筋・アキレス腱反射も検査したが、たたき方が悪いのか特徴的な結果が出なかった。頸椎症性脊髄症では上肢に腱反射の亢進がみられると錐体路の障害が推察されるため病的反射を検査した。すると、左側のバビンスキー反射が陽性であった。右側では陰性であったため錐体路の障害は部分的であると考えられる。
協調運動検査では上・下肢で行ったが、速さを増していくことに関してはどの動作に関しても苦手であるといえる。左右差を見ると、右に比べて左の動作にぎこちなさをみることができ、筋出力がうまくいっていないと考える。
動作分析に関しては、寝返りは側臥位がとれないため行わない。起き上がりはギャッジアップまたは介助によって行うが、術後で頚部に対して不安が強いため信用できる医師など専門家でないと介助を行わせない。立ち上がりではベッドの高さによって困難さが変わるであろうが、膝の高さ以上であれば自力で立ち上がることは可能。歩行では、歩行器を使用して行っている。安全面に関して非常に注意されていて、歩幅は小さくゆっくりとした速さで歩き、出入り口などの凸凹したところでは一度立ち止まって身長に進む。歩行時の姿勢としては、前額面・矢状面のアライメントは整っており、左右のぶれはなく、立脚期と遊脚期のバランスもとれて見える。
疼痛に関しては、運動時の痛みなどということではなく、睡眠中に装具が背部に当たり、起床時に張りのような痛みがあると訴える。起床後、動き始めて30分ほどすると軽快する。よって、装具の圧迫を緩和するように布を当てるなどの工夫が必要であると考える。
ADL評価として、FIMを用いて検査した。126点中99点でほとんど自立している。減点項目としては、入浴を行っていないため、入浴に関しての項目と、歩行器歩行であるための階段昇降に関しての項目である。そのほかでは、動作が慎重であるため時間がかかるということで減点されるが動作としては自立している。
これらの評価結果から、傷害を列挙し、問題点として、現在の筋力維持・向上、起き上がり動作の介助なしでの自立、自力歩行のための持久力の獲得が抽出された。この問題点に対して立案した治療プログラムは上記の通りであり、筋力に関しては、一般的に、廃用性の筋力低下を生じる限界強度は最大筋力の20%と言われ、それ以下であると筋力低下をきたす。最大筋力の20~30%の強度で筋力は維持され、筋力増強を目的とした場合は最大筋力の60%以上の強度が求められるので、最大筋力の80%の強度で10回の運動を繰り返す訓練が筋力の維持・向上のために有効であると考える。自力での起き上がり動作自立のためには、まず、術部への不安を軽減する必要がある。そして、ひもなどをベッドにくくり付けてたぐり寄せるようにして起き上がる動作を繰り返し訓練し、獲得を図る。最後に持久力の獲得であるが、全身持久力のことで、自転車エルゴメータを用いる。対象者は坐位は取れるので下肢はペダルに乗せ、上肢はハンドルを握れば、安全性には問題ないと思われる。エルゴメータは複数の関節と筋に作用し、かつ膝蓋大腿関節・脛骨大腿関節への負担も少ないとされるので骨格系への負担は少ないと思われる。運動強度としては最大酸素摂取量・目標心拍数の40~60%とし、目標の運動強度で15分行なう。また、自主訓練として、重錘により負荷をかけて筋力トレーニングを行い、病棟内を持続的に歩行して持久力の向上を図る。
<参考文献>
- PTジャーナル・第38巻第5号・2004年5月 P395~400
- PTジャーナル・第38巻第9号・2004年9月 P709~715
レポート・レジュメの作成例をもっと教えて欲しい!
今回は、「頸椎症性脊髄症+頚椎前方固定術」の患者のレポート・レジュメの作成例を紹介しました。
当サイトでは、数多くのレポート・レジュメの作成例を紹介しています。
おそらく、あなたが実習で担当するであろう疾患のほとんどを網羅しているので、ぜひ参考にして実習に望んでください。