理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。
今回は、「高次脳機能障害」です。
高次脳機能障害は、歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります。
今回は、評価ポイントの解説に加えて、「高次脳機能障害」の検査に必須評価シートを多数用意したので、ダウンロードして実習に臨んでください。
もちろん、ダウンロードは無料です。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害は、脳に損傷を負うことにより出現する障害の総称です。
代表的なものに、「失語症」「失行症」「失認症」などがあります。
高次脳機能障害を評価する前に確認しておくこと
高次脳機能障害を評価する前に確認しておくこと
- 利き手
- 読み書きの教育度
- 意識レベル
- 視力・聴力
利き手
高次脳機能障害は、患者の優位半球に寄与します。
例えば、「失語症」は左半球の脳が損傷されたときに出現しやすいですが、これは利き手が右の人に限ります。
利き手が左手の人は、右半球が損傷されたときに見られやすい症状になるので、利き手はしっかりと把握しておくようにしましょう。
読み書きの教育度
高次脳機能障害の検査は、ものを読ませたり書かせたりすることが多いです。
そもそも読み書きの教育を受けていない人は、障害に関係なく検査を実行することができません。
意識レベル
意識レベルが低い患者に対して高次脳機能障害の検査を行っても、本当に高次脳機能が障害されているから検査結果が悪いのかを判断することができません。
ある程度、意識レベルが回復してきた段階で行う検査といえるでしょう。
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視力・聴力
高次脳機能障害の検査が遂行できる視力・聴力を有しているかを把握しておきましょう。
場合によっては、家族にメガネや補聴器を用意してもらう必要があります。
高次脳機能障害の評価方法【症状別】
それでは、症状別の高次脳機能障害の評価方法をご紹介してまいります。
本項では、評価用紙のダウンロードも無料で可能なので、ぜひ参考にしてみてください。
失認症
顔・形だけでは何かわからなくなるなどの症状を、失認症と呼びます。
視覚失認
患者が熟知している種々の日用品を示して、その名称や用途を答えさせる
触覚失認
閉眼状態で、鍵、コイン、ボタンなどの日用品を握らせて、その物品名や用途を答えさせる
聴覚失認
閉眼状態で、目覚まし時計のベルの音などの日常慣れた音を聞かせ、それが何の音か答えさせる。左右の耳を別々に検査する。
手指失認
検者が命じた手指を示すようにさせる
身体部位失認
検者が命じた部位(鼻、眼、口、耳など)を示すようにさせる
左右失認
検者が左(右)上肢をあげるように命ずる
半側空間失認
自分の半身の存在を無視したり、使わなかったりする
体を壁にぶつけたりする様子が確認できる
病態失認
麻痺の存在を否定したり、入院の理由がわからなくなる
詳しくは、こちらの記事(【実習】病態失認の評価ポイント!【評価シートダウンロード可】)で解説しているので参考にしてみてください。評価シートのダウンロードも可能です。
【実習】病態失認の評価ポイント!【評価シートダウンロード可】
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Gerstomann症候群(ゲルストマン症候群)
手指失認、左右失認、失書(自分で書字したり、書き取りができない)、失算(暗算や筆算ができない)の4つの症状を伴う
視覚性空間定位障害
患者に何か物品を示して、その位置を確認させた後、閉眼させその物品があると思われる方向を示させる
半側空間無視
線分2等分試験・線分抹消試験、図形模写などを行わせ、左右の認識を検査する
線分2等分試験・線分抹消試験に使える評価シート
図形模写に使える評価シート
星印抹消テストに使える評価シート
Weintraub testに使える評価シート
地誌的障害
地誌的見当識障害:自分の家などよく知っている場所への道順がわからない
地誌的記銘力障害:地図状で有名な都市の位置がわからない
地誌的障害に使える評価シート
失行症
ハサミや箸の使い方がわからなくなるなどの症状を、失行症と呼びます。
手指失行
指先の巧緻運動が困難になる状態。指を机の上でピアノを叩くように順次屈曲させる運動を模倣。ボタンをはめる動作、鉛筆で字や絵を書く動作をさせる
顔面失行
自分ではすることはできるが、検者の指示に応じて笑ったり、眼を閉じたり、舌を出したりできない
観念運動失行
ジャンケンの手つきをさせたり、下肢で円や四角を描くようにさせたり、手で耳に触れるように指示する
観念失行
ペンを持って何か書いてもらう
構成失行
紙に△、□、○などの簡単な形や家などの絵を描かせる。マッチ棒で△、□などの図形を作らせる
着衣失行
患者の着衣を脱いだり着たりするように指示をする
失語症
こちらの質問が通じないなどの症状を、失語症と呼びます。
自発言語
名前、住所、生年月日を言わせる
自発書字
名前、住所、生年月日などを書かせる。漢字より仮名の障害が目立つ
物品呼称
腕時計、ペン、歯ブラシ、ティッシュなどを見せ、名前を言ってもらう
物品呼称に使える評価シート
復唱
「ア」、「エ」、「やかだにあ」、「16」「バナナ」、「今日は暑い」など、単語、無意味語、数字、簡単な文章を復唱してもらう
指示動作の遂行
「眼を閉じてください」、「口を開けてください」、「左手で右の耳をつかんで下さい」などの指示をする
音読
「山」、「川」、「海」、「はな」、「夏は雪が降る」と書いた紙をみせ、読んでもらう
音読に使える評価シート
注意障害
テレビに気を取られて食事が進まないなど、注意が他に向いてしまう症状を注意障害と呼びます。
持続性の検査
仮名ひろいテストに使える評価シート
「あいうえお」だけに印。2分間の正答数・正答率を評価する
TMT-A検査に使える評価シート
紙にランダムに記載された1〜25の数字を1から順番に線で結び、作業完了までの所要時間を測る
TMT-B検査に使える評価シート
紙に記載された1〜13の数字と「あ」から「し」のひらがなを数字とひらがなを交互に結び、作業完了までの所要時間を測る
(例:1→あ→2→い…)
アメフリ抹消検査に使える評価シート
文の中から「ア」「メ」「フ」「リ」の文字を探す
選択性の検査
ト、ド、ポ、コ、ドの5種類の語音を1音/秒でランダムに提示する。トに対してタッピングなどによる反応を求める
配分性の検査
数唱。順唱は6桁以上が正常、3桁以下が異常。逆唱は順唱より3桁以上少ない場合、異常とする
転導性の検査
末梢課題の変法。16行、36文字のカタカナ・ひらがながランダムに配置された用紙を用いる。ひらがなのみを抹消させる
運動維持困難(Motor Impersistence)
運動維持困難とは、閉眼、開口、挺舌などの動作を指示に従って1つまたは2つ以上同時に維持できない症状をいいます。
運動維持困難(Motor Impersistence)の検査方法と基準値
運動維持困難の検査方法と基準値は以下の通りです。
検査方法 | 基準値 |
1、閉眼維持 | 15秒以上 2回 |
2、舌出し維持(開眼) | 20秒以上 2回 |
3、 (閉眼) | 20秒以上 2回 |
4、開口保持 (開眼) | 20秒以上 2回 |
5、 (閉眼) | 20秒以上 2回 |
6、正中凝視維持(右) | 30秒以上 3回 |
7、 (左) | 30秒以上 3回 |
8、側方凝視維持(右) | 30秒以上 3回 |
9、 (左) | 30秒以上 3回 |
10、発声維持(アー) | 13秒以上 |
11、握力計保持 | 5㎏ 20秒保持 |
運動維持困難(Motor Impersistence)の評価シート
高次脳機能障害の評価方法【検査別】
次に、検査別の高次脳機能障害の評価方法をご紹介します。
図形模写
図形模写の検査方法
ある図形を見せて、同じように書いてもらいます。
図形模写に使える評価シート
図形模写の結果と推察される症状
結果 | 推察される症状 |
図形の左半分に省略・歪み・線の乱れがある | 半側空間無視 |
図形の全体的な歪み・線の混乱・接点の不一致などがある | 構成失行 |
線分2等分試験・線分抹消試験
線分2等分試験・線分抹消試験の方法
1直線の線を見せて、真ん中に割線をつけてもらうよう指示をする。(線分2等分試験)
紙一面に書かれた線のすべてに割線をつけてもらうよう指示をする。(線分抹消試験)
線分2等分試験・線分抹消試験に使える評価シート
線分2等分試験・線分抹消試験の結果と推察される症状
結果 | 推察される症状 |
つけた割線が左右のどちらかに偏る | 半側空間無視 |
塗り絵
塗り絵の方法
患者に塗り絵を指示します。
塗り絵をする前に、「何の絵が書かれているか」を確認しましょう。
塗り絵の結果と推察される症状
結果 | 推察される症状 |
何の絵かがわからない | 物体失認 |
絵の意味がわかるが色の選択を著しく誤り、絵に合わない | 色彩失認 |
左右どちらかの半分を塗り残す | 半側空間失認 |
音読
音読の方法
患者に音読をしてもらいます。
指示文の回答が音読で不可能なときは、書き取りで行ってみます。
音読に使える評価シート
音読の結果と推察される症状
結果 | 推察される症状 |
指示文の音読ができない | 失読 |
判別できない文字・勝手に作った文字などで構成される | 失書 |
文の左半分の読み残し,書字の辺の省略がみられる | 半側空間無視 |
計算
計算の結果と推察される症状
結果 | 推察される症状 |
計算がでたらめになる | 失算 |
記号や数を見落とし,桁や加減を間違える | 半側空間無視 |
見取り図
見取り図の方法
患者に周辺の地理を説明してもらいます。
指示文の回答が音読で不可能なときは、書き取りで行ってみます。
見取り図の結果と推察される症状
結果 | 推察される症状 |
説明ができない | 地誌的記憶障害 |
模倣動作
模倣動作に対する反応と推察される症状
動作 | 反応 | 推測される症状 |
キツネをつくる Luriaの方法 | 模倣ができない 動作の試行錯誤が多くぎこちない | 手指(構成)失行 肢節運動失行 |
積木の構成 | 同じように積めない | 構成失行 |
指示動作
指示動作に対する反応と推察される症状
動作 | 反応 | 推測される症状 |
目を閉じる 舌を出す | 動作が持続しない | 運動維持困難 |
敬礼をする バイバイをする ジャンケンのチョキをする | 身振り動作がうまくできない
| 観念運動失行 |
左手を右目に 右手を左肩に 自分の薬指・検者の薬指 | 左右を間違える 目・肩の場所が違う 指を間違える | 左右弁別障害 身体部位失認 手指失認 |
物品操作
物品操作に対する反応と推察される症状
動作 | 反応 | 推測される症状 |
服を着る くしの使用 紙・はさみの使用 タバコに火をつけ,吸う | 衣服が着られない 道具の使い方が悪い | 着衣失行 観念失行 |
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