理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。
今回は、「疼痛の評価」です。
疼痛は、歩行・ADLの自立に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります。
今回は、評価ポイントの解説に加えて、「疼痛」の記載に最適な評価シートを用意したので、ダウンロードして実習に臨んでください。
もちろん、ダウンロードは無料です。
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疼痛を評価する意義
次に、疼痛評価をする意義をお伝えします。
バイザーから、「この評価って何のためにしているの?」と聞かれることはあるあるです。
しっかりと抑えて実習対策をしておきましょう。
疼痛評価をする意義
- 痛みの部位、程度、質、どの様な時に痛いか?を知ることで患者のリスクを把握する
- 動作によって痛みが出る場合はあらかじめどこに痛みが出るか知っておくことでその動作の改善を促すことが出来る
- 治療の効果判定の資料になる
痛みは、患者の一番の主訴になることが多いので特に注意が必要です。
患者とよい関係を築いていくためにも、どこに痛みが出るかを知っておき、極力痛みのないような介入をしていくことが重要です。
また、ROM-TやMMTで阻害因子にもなりうるので、それらに異常値が出た時の解釈をすることも出来ます。
疼痛評価の手順
疼痛評価は、以下の手順で行うことが推奨されます。
疼痛評価の手順
問診・観察→触診検査→運動検査→記録の順で行う
問診では「どこが、いつから、どんなとき、どのように」痛いのかを聞く
観察では、痛みによる姿勢・動作の異常をみて、痛みの部位と病態を予測する
運動検査中に痛みが生じたら、NRS・VASにて痛みの程度を聞く
疼痛の原因
①骨内:骨端の静脈うっ血
②滑膜・関節包:関節包付着部の炎症、その部位の異常緊張・刺激
③靭帯・腱:関節不適合、アライメント不良による異常緊張
④筋:痛みによる反射性緊張
疼痛の表現と推察される原因
締め付ける、鈍い、うずく→筋
鋭い、ずきずきして弾かれるように走る→神経根
鋭い、光が走るような、火がつくような→神経
焼ける、圧迫されるような、ずきずきする、疼く→交感神経
深い、しつこく苦しい、鈍い→骨
鋭い、激しい、耐えられない→骨折
脈打つ、広がる→血管
疼痛評価をするときの注意点
①まずは問診をして、それから触診(視診)を行う。
②骨膜性、関節包性、靭帯性、筋性などの疼痛を誘発する因子を特定していく。
③「どこが」「どんなふうに」「どれくらい痛いのか」を聞く。
④圧痛テストは広い面からゆっくりとピンポイントに特定していく。
疼痛評価をするときのオリエンテーションの方法
疼痛評価に限らず、患者に対して評価をする時は、初めにオリエンテーションを行います。
「自己紹介」「そのような評価をするのか」などを中心に伝えます。
自己紹介
「初めまして。実習生の〇〇と申します。本日は痛みの検査をさせていただきます。よろしくお願いいたします。」
検査の説明
「○○さんのお話を聞いて、痛い部分を実際に触れたり軽く動かしたりしますが、痛すぎたらすぐにやめますので、そのような場合はすぐに申し出てください。」
「私が○○さんの体を動かす際には、楽にしていてください。」
「何か聞いておきたいことなどはありますか?」
「それでは、始めさせていただきます。」
疼痛評価の問診の内容
どこが痛いですか?その部分を指で指せますか?
特定の部位(一次痛)・広範な部位(二次痛)
どんな痛みですか?
鈍痛、鋭痛、放散痛、しびれ
深い部分が痛みますか?
表在性、深部性
いつ頃から痛みますか?
外傷によるものか・潜在性か
外傷の場合、大きな怪我をしたのか、繰り返し小さな怪我をしてきたのか
外傷を受けたときの状況
どのようにして起こったのか
どのような組織が損傷されているかを考える
発症がゆっくりか急激か
最初は軽い痛みで徐々(日々に)に強くなったか
突然強い痛みがでたのか
急激に痛みが発症した場合には、外傷か、関節がロックしたのか聞く
このような情報は、どの組織の損傷かを鑑別するのに役立つ。
動かさなくても痛いですか?
安静でどうなるか
運動するとどうなるか
運動の方向と症状が変化する部位
姿勢の影響
筋骨格系組織への機械的ストレスで疼痛が生じている場合、安静で改善し、運動で悪化する。
疼痛が心理的な要因により影響を受けている場合は姿勢の変化、安静や運動によって痛みの変化に一定のパターンを示さない。
一日の中で特に痛い時間帯などありますか?
痛みの日内変動
持続する痛みか
一日中続くがその強さは変化するのか
あるいは間歇的な痛みなのか
24時間の中で痛みのある時間帯とない時間帯があるか否か
例①)骨関節炎は通常は夕方に症状が悪化し、炎症を起こしている関節は朝が最も症状が悪い。
例②)筋骨格系組織由来の疼痛は、症状が重度の場合、夜間の痛みが強くなり、しばしば睡眠も妨げられる。
どのように動かすと痛いですか?
手を上にあげるとき、足首を動かすときなど
どういうときに痛みが強くなりますか?
雨の日、寒い日など
どういうときに痛みが楽になりますか?
温める、薬を飲むなど
疼痛の評価方法
自動運動検査
もし患者に器質的な損傷があれば、いくつかの運動において痛みや異常な所見が現れるが、他の運動においては異常所見はでないかもしれない。
指示された運動を患者が抗重力位で行うことができれば、筋力検査における少なくとも三段階以上の筋力がある。
他動運動検査
他動運動では主に非収縮性組織と拮抗筋へストレスが加わる。
関節可動域制限および制限がある時の最終域感、過剰な関節可動域、痛みとその出現の仕方、痛みの質、痛みと関節可動域の関連などを評価することが重要である。
抵抗感と痛みの関連
・抵抗が生じる前に痛みが生じる→炎症過程の初期
・抵抗と同時に痛みが起こる→炎症過程の中期
・抵抗の後に痛みが起こる→炎症過程の末期、または回復期
異常な最終域感
①筋スパズム:しばしば痛みを伴って急激に、硬い感じで運動が止まる。筋スパズムは損傷を起こした関節や組織を体が無意識のうちに守ろうとする結果生じる。
②関節包:組織の伸長に非常に似ているが、可動域が正常なときに起こらない、関節法制の最終域感が生じる時には通常筋スパズムはおこらない
③骨と骨:正常可動域前に生じた場合
④空の感じ:運動によって痛みが生じるために起こる。構造な抵抗感が無く、痛みのために運動ができなくなる。患者は最終域感を表現するのは難しく、筋スパズムは伴わない。
⑤弾力性遮断:組織の伸長に似ているが、可動域が制限されている所で起こる。半月板のある関節で生じる傾向がある。跳ね返りが見られ、関節内障の所見を示している。(例:関節遊離帯や半月板損傷など)
等尺性抵抗運動検査と障害の可能性のある組織
障害の可能性のある組織 | ||
神経系 | 筋系 | |
筋力強・無痛 | 問題なし | 問題なし |
筋力強・有痛 | 問題なし | 収縮組織の病変 |
筋力弱・無痛 | 神経圧迫・神経病 | 断裂陳旧性・腱断裂 |
筋力弱・有痛 | 重篤な病変 | 重篤な病変 |
常時痛みあり | 急性症状または心理的要因 |
触診
熱感
関節を触診して熱感があれば、その部分の炎症が考えられる。
腫張
触診により得られた場合、やわらかいものと硬いものがある。
やわらかい場合は、関節内の原因としては関節液が貯留していたり滑膜が肥厚していると考えられる。
関節外の原因としては浮腫、血腫、脂肪瘤、滑液の滑液包内への貯留、腱鞘の腫張などがある。
硬く触れる場合は、骨の肥厚や変形、亜脱臼、骨腫瘍などが原因と考えられる。
異音
運動時に軋癧音(あつれきおん)が生じる場合、関節軟骨の変性が考えられる。
正常の関節で関節内が真空になることによって生じるクリックは半月の損傷で生じる。
弾発音がしたり触れたりするのは、関節周囲の腱や靱帯が骨の突出部でスリップした時である。
過敏性
炎症を起こしていたり損傷している組織は過敏になっている。
主観なので誤った評価になることもあるので注意。
疼痛評価に用いられるスケール
VAS(Visual Analogue Scale):視覚的アナログスケール
10㎝の直線を引き、0㎝が全く痛みがない場合、10㎝が今まで経験した中で最も激しい痛みとして、現在の痛みを直線上にプロットさせる方法。
痛みの強さは0からの距離を測って評価する。
急性期の評価方法としては信頼性が認められているが、慢性痛に対する評価方法としては信頼性が低いといわれている。
Graphic Rating Scale
VASにmild(軽い痛み)、moderate(まあまあの痛み)、severe(激しい痛み)という標を付したもの。
10段階ペインスケール
VASと共に使用が簡便で、痛みの程度が患者の記憶に残り易い。
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