理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。
今回は、「脳神経検査」です。
脳神経検査は、脳神経障害の程度を知るなど、臨床上とても大事な評価項目になります。
今回は、評価ポイントの解説に加えて、「脳神経検査」の記載に最適な評価シートを用意したので、ダウンロードして実習に臨んでください。
もちろん、ダウンロードは無料です。
実習に最適!「脳神経検査」の記録用紙(評価シート)無料ダウンロード
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脳神経検査用紙(詳細版)は、検査の方法が記載されているのが特徴です(カンペ付)。
一方、脳神経検査用紙(簡易版)は、シンプルに検査結果を書き込むだけの仕様になっています。
使いやすい方をダウンロードして使用してください。
また、word形式でもダウンロード可能なので、修正をしてあなた専用の評価用紙を作成するのも良いでしょう。
脳神経検査をするときのオリエンテーションの方法
脳神経検査に限らず、患者に対して評価をする時は、初めにオリエンテーションを行います。
「自己紹介」「そのような評価をするのか」などを中心に伝えます。
自己紹介
「初めまして。実習生の〇〇と申します。本日は脳神経検査という検査をさせていただきます。よろしくお願いいたします。」
検査の説明
「脳神経検査とは、脳の機能を調べる検査です。」
「特に痛みが出る検査ではありませんが、もし痛みが出た場合はすぐにおっしゃってください。」
「検査の際、私から色々な指示を出させていただきます。もし、その指示がわかりにくかったら遠慮せずに言ってください。」
「何か聞いておきたいことなどはありますか?」
「それでは、始めさせていただきます。」
脳神経検査をするときの必要物品
実習先で貸してもらえることもありますが、基本的には自分で用意をするようにしましょう。
私がオススメする物品のリンクも貼っておきます。
クリップボード
結果を記載するときに必須です。
ハッカ
嗅神経の検査に必要。
音叉
内耳神経の検査に必要。
脳神経検査をする意義
次に、脳神経検査をする意義をお伝えします。
バイザーから、「この評価って何のためにしているの?」と聞かれることはあるあるです。
しっかりと抑えて実習対策をしておきましょう。
脳神経検査をする意義
- 脳の障害、特に脳幹障害の部位診断に極めて有用
- 評価結果から治療プログラム立案に対する資料となる
脳神経は、それぞれの役割が比較的明確なので検査の目的は示しやすいと思われます。
頭に入れておきたいこととしては、脳神経の伝導路である皮質延髄路は皮質脊髄路に比べて両側支配されている部分が多く、一側の核上性の障害では必ずしも異常が出ないことに注意しましょう。
皮質脊髄路も非交叉線維があるものの、約10%程度に過ぎないので一側の核上性の障害を受けやすいのも特徴です。
この伝導路の両側性支配は、両側同時に働く前頭筋や皺眉筋、咀嚼筋、舌骨筋、咽頭筋、喉頭筋に対して最も顕著です。
ただし、口と頬の表情に対応する顔面神経核の下部と舌下神経核は例外で、それぞれ対側の皮質から支配されるにとどまります。
これらを踏まえて、損傷部位をCTなどで確認すればある程度現れる障害についての予測が出来るはずです。
そして、なぜその障害が出るのか神経学的な面から追求することより、その障害があることによって阻害される動作やADLを把握してアプローチすることが重要です。
脳神経検査の結果の解釈
脳神経検査の結果は、以下のように解釈をしていきましょう。
脳神経検査の結果の解釈
- 視野狭窄や眼球運動障害は、複視やバランス機能にも影響を及ぼすのでPTプログラムでは考慮する
- 顔面筋の麻痺、特に口角周囲の麻痺は、表情の変化を及ぼし、心理的な問題に結び付きやすい
- 嚥下障害は、誤嚥性肺炎になりやすいので注意を要し、呼吸リハを導入する
- 舌下神経麻痺は姿勢全体に影響を及ぼす可能性があるので、体幹部の対称性を意識した練習を盛り込む
脳神経検査の方法
それでは、脳神経検査の方法を神経別にご紹介してまいります。
最後には、pdfでまとめたものをダウンロードできるようにしてあるので、ぜひあわせてご活用ください。
嗅(Ⅰ)神経の検査方法
①一側の鼻口を圧迫してふさぎ、弱い香りのものを鼻口に近付け、左右別々に確認する。
②アンモニア、酢酸などは刺激が強く、三叉神経を刺激してしまうので注意が必要。
③匂いの有無と、それが何の匂いなのかを聞く。
視(Ⅱ)神経の検査方法
①大脳障害の局在診断に重要である。
②視力(文字を読ませる)、視野、瞳孔(大きさと対光反射)を確認する。
視野障害と病巣は以下の通りです。
動眼(Ⅲ)、滑車(Ⅳ)、外転(Ⅵ)神経
①外眼筋、内眼筋の機能を司る。
②眼瞼下垂の有無を見る。
③眼球の状態を観察する。斜視(内・外)・共同偏倚(両側眼球が一方を見つめている)・突出・陥没を見る。
④輻輳反射をみる。→遠くのものを見ているときに、急に近くのものを見させるときに出現する縮瞳現象。内直筋の収縮による刺激と、眼前の指標を鮮明に網膜に結像させようとする眼の調節機能が結びついたもの。
⑤眼球運動を見る。
⑥眼振を見る。眼球運動を見ているときに、同時に評価すると良い。
三叉(Ⅴ)神経
①顔面の感覚(左右)、角膜反射、咀嚼に関与する咬筋、側頭筋、外側・内側翼突筋などの運動を検査する。
②感覚は前頭部(①眼神経)・上顎部(②上顎神経)・下顎部(③下顎神経)の3か所を見る。
③感覚は各部位5回実施し、何回正解したかを記載する。
顔面(Ⅶ)神経
①顔面の表情(眉を上げる、目をきつく閉じる、歯を剥きださせる、口をすぼめる、口をへの字にする)を見る。
②前頭筋の収縮は保たれている(両側支配)が、口角が下垂している場合は中枢性顔面神経麻痺を疑う。
③前頭筋の収縮が一側で消失していれば末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)を疑う。
④前頭筋は両側性支配のため、一側性の核上性障害(中枢性)では麻痺を生じない。
⑤著明な麻痺があれば兎眼、まつげ徴候が現れる。
⑥眼輪筋麻痺でベル現象(閉眼を指示すると眼球は上転し、白目の部分が見える)が見られる。
内耳(Ⅷ)神経
①聴力(アナログの音)検査、Rinne試験(乳様突起)、Weber試験(前頭部)を行う。
②Rinneは振動した音叉を乳様突起にあて、振動が聞こえなくなったら、音叉を外耳孔にあて、さらに音が聞こえるか検査する。
③中耳障害および外耳道の閉塞があると音が聞こえなくなるので、Rinne(-)となる。
④Weberは振動した音叉を前頭部(正中位)に当て、左右の耳どちらに強く響くかを聞く。
⑤中耳・外耳道の障害があると障害側に強く響く。
⑥迷路および求心性の神経系に障害があると健側に強く響く。
舌咽(Ⅸ)迷走(Ⅹ)舌下(Ⅻ)神経
①舌咽神経麻痺→咽頭反射の消失。
②一側の迷走神経麻痺で「あー」と言わせると、カーテン徴候(口蓋垂と口蓋帆が非麻痺側に引かれる)が現れる。
③舌を前方へ突出させ、偏位の有無を確認する(一側(Ⅻ)麻痺で麻痺側に偏位する)。
④3つの脳神経(主として両側性)が障害されると、嚥下障害や構音障害が現れる(球麻痺)。
副(Ⅺ)神経
①胸鎖乳突筋、僧帽筋(上部)の筋力(MMT)を見る。
②麻痺があると肩が下がり、肩甲骨は外下方に偏位してくる。
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各神経の脳神経核と分布
各神経の脳神経核と分布をまとめた表はこちらです。
神経 | 脳神経核(部位) | 分布 |
嗅神経 | 知覚核:嗅球(前頭葉下面) | 知覚枝:嗅上皮の嗅細胞 |
視神経 | 知覚核:視覚野(後頭葉) | 知覚枝:網膜の視細胞 |
動眼神経 | 運動核:動眼神経主核(中脳) 自律性核:動眼神経副核(中脳) | 運動枝:上眼瞼挙筋・外眼筋(上斜筋と外側直筋を除くすべて) 副交感神経枝:虹彩と瞳孔括約筋 |
滑車神経 | 運動核:滑車神経核(中脳) | 運動枝:外眼筋(上斜筋) |
三叉神経 | 運動核:三叉神経運動核(橋) 知覚核:三叉神経核(中脳・橋・延髄) | 運動枝:咀嚼筋 知覚枝:頭皮・顔面の皮膚・眼窩・鼻腔粘膜・歯・歯肉・口腔粘膜の一部 |
外転神経 | 運動核:外転神経核(橋) | 運動枝:外眼筋(外側直筋) |
顔面神経 | 運動核:顔面神経核(橋) 知覚核:孤束核(延髄) 自律性核:上唾液核(橋) | 運動枝:顔面筋 知覚枝:舌の前2/3 副交感神経枝:涙腺・顎下腺・舌下腺 |
内耳神経 | 知覚核:前庭神経核(橋) 蝸牛神経核(橋) | 知覚枝:蝸牛神経(蝸牛のらせん器)、前庭神経(内耳の前庭と半規管) |
舌咽神経 | 運動核:疑核上端部(延髄) 知覚核:舌咽神経背側核(延髄) 自律性核:上唾液核(橋) | 運動枝:茎突咽頭筋 知覚枝:舌の後1/3・咽頭の一部・頚動脈洞・頚動脈小体 副交感神経枝:耳下腺 |
迷走神経 | 運動核:疑核中央部(延髄) 知覚核:迷走神経背側核(延髄) 自律性核:迷走神経自律神経性運動核(延髄) | 運動枝:嚥下運動筋(軟口蓋・咽頭の筋)、発声筋(喉頭の筋) 知覚枝:耳介後面・外耳道後下壁・舌根部・咽頭粘膜・喉頭粘膜 副交感神経枝:頸・胸・腰部の内臓 |
副神経 | 運動核:疑核下端部(延髄) | 運動枝:胸鎖乳突筋・僧帽筋・軟口蓋・咽頭の筋 |
舌下神経 | 運動核:舌下神経核(延髄) | 運動枝:舌筋 |
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