理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師を目指す学生に向けた、評価ポイント解説シリーズ。
今回は、「バランス」です。
バランスは、転倒の予防に必須で歩行やADLの自立度に直結するため、臨床上とても大事な評価項目になります。
今回は、評価ポイントの解説に加えて、「バランス」の記載に最適な評価シートを用意したので、ダウンロードして実習に臨んでください。
もちろん、ダウンロードは無料です。
実習に最適!「バランス」の記録用紙(評価シート)無料ダウンロード
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バランスを評価する意義
次に、バランスを評価する意義をお伝えします。
バイザーから、「この評価って何のためにしているの?」と聞かれることはあるあるです。
しっかりと抑えて実習対策をしておきましょう。
バランスを評価する意義
- 重力環境下での姿勢戦略、動作戦略をみる
- PTプログラムの立案や治療戦略を立てる
- 立ち直り反応がしっかり出現するかをみる
中枢神経系の損傷では、姿勢反射機構や前庭感覚系、視覚系、体性感覚系などの感覚入力過程に問題が生じたり、筋緊張の低下・亢進や運動麻痺による運動系の表現能力自体に問題が生じることでバランスの障害を呈します。
上下肢や体幹の異常筋緊張、随意性低下、感覚障害、高次脳機能障害など、バランスはさまざまな要素を含んでいることを抑えておきましょう。
注意ポイント
・前後左右のバランスを評価しよう!
・声かけ、オリエンテーションはしっかり行おう!
バランスを評価をするときのオリエンテーションの方法
バランス評価に限らず、患者に対して評価をする時は、初めにオリエンテーションを行います。
「自己紹介」「そのような評価をするのか」などを中心に伝えます。
自己紹介
「初めまして。実習生の〇〇と申します。本日はバランスの検査をさせていただきます。よろしくお願いいたします。」
検査の説明
「検査中、私がいろんな方向から押したりしますが、絶対に倒れないよう配慮にしますのでご安心ください。」
「特に痛いことをする検査ではありません。もし、それでも痛みが出てきたら遠慮せずすぐに言ってください。」
「何か聞いておきたいことなどはありますか?」
「それでは、始めさせていただきます。」
バランス評価をするときの必要物品
実習先で貸してもらえることもありますが、基本的には自分で用意をするようにしましょう。
私がオススメする物品のリンクも貼っておきます。
クリップボード
測定値を記載するときに必須です。
指示棒(伸縮棒)
Functional reach test(FR)の検査で必須です。
バランスの評価方法
一概にバランスの評価といっても、バランスを評価する方法は多岐に渡ります。
一般的に用いられているバランスの評価方法をご紹介しますので、患者に合わせて評価方法を選定してください。
Functional Reach Test (FR)
Duncanによって開発された検査法で、支持基底面内での随意運動を検査課題とする。
支持面を変更しないバランス評価で上肢到達距離が低下すると転倒の危険性が高くなると報告されている。
開脚立位で前方90°の挙上(肩関節屈曲)位を開始姿勢とする。
側方水平に置かれた定規(または壁に貼られたメジャー)に沿って指先(原法では拳)をできるだけ遠くに到達させるように指示する。
最大到達位を数秒間保持できた位置を読み取り、その距離を記録する。
検査を実施する際のコツは、定規や壁に可能な限り触れた状態で到達動作を行ってもらうが、そこに体重をかけないように注意することである。
変法として、前方到達距離に加えて、後方、左右方向への移動距離を記録しても良い。
なお、到達動作の最終域では体幹の回旋を伴うので、課題遂行中の視覚的な観察によって、足関節回り、股関節回り、体幹回旋の3要素の相対的な機能不全を抽出することが可能である。
また、両上肢を同時に検査することで体幹の回旋の出現をなくすことができるので、一側と両側の到達距離を比較することで、上肢の随意運動時における体幹回旋機能を評価することができる。
重心動揺計を利用すれば、足圧中心の移動軌跡と上肢到達距離との比較から、課題遂行中の足関節および股関節周りの方略を定量的に解析することが可能となる。
Functional Reach Test (FR)の実施方法
1) 非麻痺側を壁にできるだけ近づけて立ち、両足の間は10cmあける。
2) 非麻痺側上肢を90度屈曲位にし、手のひらを壁側に向ける。
3) 2)の状態で中指を壁につけ、その先をマークする(Position 1)。
4) 次に足は動かさない状態で、可能なだけ前方にリーチしてもらい、最大限リーチした位置で中指を再び壁につけ、先端をマークする(Position 2)。
5) Position 1からPosition 2の距離を測定し、リーチ距離として記載する。
Functional Reach Test (FR)の基準値
以下が、Functional Reach Test(FR)の基準値です。
年齢 | 男性 | 女性 |
20~40 | 42.4±4.8cm(27.4~47.8) | 37.1±5.6cm(26.2~48.8) |
41~69 | 37.8±5.6cm(23.6~49.0) | 35.1±5.6cm(21.6~44.5) |
70~97 | 33.5±4.1cm(24.9~39.4) | 26.7±8.9cm(4.3~38.9) |
※高齢者では、到達距離が15.3cm未満で転倒の危険性が高くなる(カット・オフ値)とされる。
Functional Balance Scale (FBS)
Bergによって開発された検査法で、日常生活活動に必要となる平衡機能を14項目の動作によって捉えようとするものである。
各項目は0~4点の5段階(1点刻みで判定基準に従って得点を配する)からなり、総得点は56点満点。
転倒の危険性から見た場合には、45点がカットオフ値とされている。
また、総得点が46~54点の場合には、1点減少するにつれて転倒の危険率が6~8%増加すると報告しているものもある。
FBSはPOMAと高い相関が認められ、TUGとも有意な相関が報告されている。
また、得点は補装具の必要性の予測に有用であるとする報告も見られる。
Functional Balance Scale (FBS)の実施内容
Timed Up and Go Test (TUG)
Podsiadloらによって提唱された検査法で、椅子から立ち上がり3mの歩行後に方向転換して再び椅子に座るまでの所要時間を計測する。
この検査は、46cm程度の高さの椅子から立ち上がり、歩行、方向転換後に着座するまでの時間を計測するが、被検者の任意の速さで行った結果を記録するものである。
この場合には20秒が一つのカットオフ値となる。
なお、再現性や機能性の評価の観点から、最小所要時間(被検者には、なるべく速く課題を遂行するように指示する)を記録している報告も多い。
また、歩行機能を同時の評価する視点から、3mを5mに変更して計測している場合もあるため、結果を比較する際には計測条件をよく確認する必要がある。
Timed Up and Go Test (TUG)の実施内容
1) 椅子に腰をかける。
2) 椅子から立ち上がり、3m前進する。
3) Uターンをして椅子まで戻る。
4) 再び椅子に腰をかける。
Performance oriented Mobility Assessment (POMA)
Tinettiらにより開発された検査法で、バランスと歩行に関する16項目を28点満点で判定する。
このうちバランスに関する項目は9項目で16点が配されている。
全得点が19点未満になると転倒の危険が高くなり、19~24点で中等度の危険があるとされている。
また、施設入所高齢者を対象とした別の研究では、カットオフ値を14点とすることでその感度と特異度が高いと報告している。
FR・FBS・TUG・POMAの関連性
重心動揺計
重心動揺計により両足圧中心位置、軌跡を計測し、一定時間の両足圧中心移動距離や、面積、前後・左右の移動距離(振幅)、身体動揺の周期などを求め、身体動揺のパラメーターとする。
被験者を両足内側をつけた足位にて検査台に立たせ、開眼、続いて閉眼にて測定を行う。
両足圧中心移動距離のような定量的データでは、開眼と閉眼の比率(ロンベルグ指数:RQ)を求めることにより、視覚の姿勢制御への関与が分析できる。
両脚直立検査
両足を接したままで正面を向いたRomberg立位を30秒間保つ。
身体動揺の有無、程度、転倒傾向などを開眼・閉眼で調べる。
また、足幅を狭くするか広くするかによって動揺パターンが異なる傾向がある。
一般に足幅を広くするほど前後への揺れが大きくなる。
外乱テスト
座位では肩や胸骨、立位では骨盤を前後・左右に、ゆっくりあるいは急激に刺激を与えその反応を見る。
刺激の強さは定量化できないが、経験と感覚で評価にもバランス練習にも導入できる。
立位では、Nashnerらによって外乱負荷時の姿勢反応を定量的に評価する方法が開発されている。
床面を前後移動または回転させ、その際の姿勢反応を調べるものである。
床面を前後に移動させて外乱を与えたときの姿勢反応には、足関節ストラテジー(ankle strategy)、股関節(hip strategy)、ステッピングストラテジー(stepping strategy)の3つがある。
立位姿勢が崩れると、その度合いが小さいうちは足関節ストラテジーで修正され、さらに平衡が保てなくなると今度は股関節ストラテジーで修正が行われる。
それでも平衡が保てなければ、最終的には踏み出しストラテジーが起こる。
片脚立位検査
姿勢を正しくして一足の足を軽く挙上したまま30秒間保つ。
身体動揺、接床、転倒傾向などを開眼・閉眼で比較する。
閉眼では10秒以上できれば正常、5秒以下から運動失調の疑いを考える。
マン試験(Mann Test)
両足を前後に縦一直に置いて起立させる。
安定して立っていられれば、閉眼させて体の動揺や転倒傾向をみる。
この際、転倒に注意し支えの用意をしながらテストする。
つぎ足歩行(Tandem Gait)
一足の足のかかとを他方の足のつま先につけるようにして、直線上をつぎ足で歩かせる。
身体動揺や姿勢の変化、転倒傾向などを観察する。
その際、転倒に備えて支える用意をしながら歩行させる。
回転
その場での回転動作、左右方向でも比較を行う。
立位からの一歩踏み出し
立位から歩行の一歩を踏み出すためには、支持客への身体重心の側方移動が重要である。
立位で20cm程度両足を離した肢位で、肩または骨盤をランドマークにして、検者の手で移動時の目標を示し、身体重心側方移動を行ってもらうと良い。
10m(最大)歩行 歩行速度(所要時間)
10mの歩行路をできるだけ速く歩かせたときの所要時間を測定する。
その際、3~5mの助走路を10mの歩行路の前後に設ける。
休息を入れて2~3回測定し、その平均値または最小値を採用する。
これは、下肢筋力や重心動揺との相関が高いことが確認されている。
6分間歩行距離
6分間連続して歩行した距離を測定する。
実際の測定では、一定距離の歩行路を繰り返し歩行させることが多い。
座位姿勢における平衡障害の重症度
1点 :自力での座位保持不能
2点 :背もたれと肘掛があれば端座位保持が可能
3点 :背もたれまたは肘掛のどちらかがあれば端座位保持可能
4点 :自力での端座位保持が可能
5点 :自力での足底を浮かせた座位保持(体幹座位)が可能
6点 :閉眼、物理的外力があっても座位保持が可能
7点 :上肢の運動を行っても座位姿勢の保持が可能
8点 :体幹の左右前後への運動が可能
9点 :保持、外乱、随意運動ともに可能であるが、相応の努力を要したり持久性に乏しい
10点 :座位姿勢での平衡障害を認めない
座位でのReach Test
一側の上肢を前方へ挙上し、足底が浮かない最大の範囲で前方、後方、側方へなるべく遠くまで手を伸ばすように指示したときの移動距離を測定する。
体幹協調機能ステージ検査
体幹失調の出現程度を4段階に分けて判定する。
下肢の影響を極力排除する座位姿勢(足を浮かせるなど)で行い、外乱刺激を加えたときの動揺性とバランス保持能力で判断する。
体幹協調機能ステージ検査の判定基準
ステージⅠ:失調症状を認めない
ステージⅡ:試験肢位にて軽度の動揺・失調を認める
ステージⅢ:試験肢位にて中等度の失調を認める。通常の端座位にて軽度の失調を認める
ステージⅣ:通常の端座位にて中等度の失調を認める
Trunk Control Test
片麻痺の体幹機能および基本動作について検査する。
- 自力で困難な場合が0点
- ベッドの端や紐などを用いてならば自力で可能場合(介助なし)の場合を12点
- 完全な場合を25点
として、麻痺側への寝返り、非麻痺側への寝返り、仰臥位から座位への起き上がり、30秒間の端座位保持(足を床から 離して支持なしで)の4項目を100点満点として評価する。
Stroke Impairment Assessment Set (SIAS)の体幹項目
Stroke Impairment Assessment Set (SIAS)の体幹項目では、垂直性テストと腹筋力からなり、能力評価に近い。
Stroke Impairment Assessment Set (SIAS)の体幹項目の実施内容
垂直性
0:座位が取れない
1:静的座位にて側方性の姿勢異常があり、指摘・指示似ても修正されず、介助を要する
2:静的座位にて側方性の姿勢異常があるが、指示にてほぼ垂直位に修正・維持可能
3:静的座位は正常
腹筋
車椅子または椅子に座り、臀部を前にずらし、体幹を45度後方へ傾け、背もたれによりかかる。
大腿部が水平になるように検者が押さえ、体幹を垂直位まで起き上がらせる。
検者が抵抗を加える場合には、胸骨上部を押さえる。
0:垂直位まで起き上がれない
1:抵抗を加えなければ起き上がれる
2:軽度の抵抗に抗して起き上がれる
3:強い抵抗に抗して起き上がれる
Motor Assessment Scale (MAS)
この検査の特徴は、単に当該動作の可否だけでなく、その具体的方法や遂行過程についても評価の対象としている点である。
各項目とも0~6の7段階で評点がつけられる。
パフォーマンステスト
中村によって考案された検査法。
背臥位から起き上がり、立位になるまでの時間を測定すると同時に運動パターンを記録する。
これは、運動パターンの理想型を定めたうえでパフォーマンスの所要時間(performance analysis)と動作の構成要素(process analysis)を記録する。
前者は3~5回測定し平均値を採用する。後者は理想型を線で結んでいき、その特徴は線画の構えを修正する。
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