自宅で医療を受ける子どもたちは、免疫機能が十分に発達していないことや、自分で感染リスクを避ける行動を取りにくいことなど、さまざまな要因から感染症にかかりやすいと考えられています。
そのため、訪問看護の現場では、日常的な予防策がとりわけ重要になります。
この記事では、訪問看護における小児向けの感染予防マニュアルの作成方法をご紹介します。
利用者やご家族、そしてスタッフの安全を守るためにも、ぜひこの記事を参考にしてマニュアル作成をしてみてください。
記事の最後には、マニュアルの作成例とフォーマットがダウンロードできるページを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください！
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目次[非表示]
小児向け感染予防対策マニュアルに取り込むべき項目
- 標準予防策と感染経路別予防策
- 手指衛生
- 使用済み物品の処理方法
- 在宅廃棄物の処理及び取り扱いの注意点
- 日常ケアにおける感染予防対策（小児特有の注意点）
- 在宅ケアにおける感染症発生時の対応
- 在宅における感染症対策（小児で頻度の高い疾患を含む）
- スタッフの健康管理
①標準予防策と感染経路別予防策
在宅での感染予防では、まず「標準予防策」を徹底することがスタートになります。
標準予防策とは、すべての子どもに対して血液や体液（唾液・鼻水・嘔吐物など）を感染のリスクがあるものとして扱う考え方です。
小児はくしゃみや鼻を触る動作が多いぶん、飛沫や接触を介した感染が起こりやすいとされています。
そのため、標準予防策をしっかり行ったうえで、必要に応じて「接触予防策」「飛沫予防策」「空気予防策」を追加していきましょう。
- 作成するときのポイント
- ・「標準予防策は基本」という点を強調する
・鼻水やよだれ、皮膚が薄いなど小児ならではのリスク事例を挙げて説明する
・接触・飛沫・空気のそれぞれで、どんな対策があるのかを簡潔に区別して紹介する
・マスクやガウンの着用例を写真やイラストで示すと伝わりやすい
②手指衛生
小児のケアでは、おむつ交換や嘔吐物の処理など、手が汚染される機会が多くなります。
手洗いは石けんと流水を使うのが基本ですが、アルコール消毒剤を補助的に使うことも効果的です。
ただし、小さい子どもの中にはアルコールの刺激を嫌がる場合もあるため、状況に応じて方法を使い分けるのがおすすめです。
保護者やケアに関わる家族にもこまめな手洗いを促し、「家族みんなで手洗いの習慣化」を目指すことが大切です。
- 作成するときのポイント
- ・「いつ手洗いをすればいいのか」を具体的にリスト化する（ケア前後、排泄物処理後など）
・石けん＋流水とアルコール消毒剤の違いや使い分けを明記する
・子どもでも取り組みやすい「手洗い歌」やイラスト付きの手順表を用意すると親しみやすい
・訪問看護スタッフだけでなく、保護者も一緒に習慣化する必要性を強調する
③使用済み物品の処理方法
吸引チューブや注射器具などの使用済み物品は汚染度が高いため、処理を誤ると訪問看護スタッフや家族が感染リスクにさらされる恐れがあります。
処置が終わったらすぐにビニール袋やふた付き容器に密封し、再利用する器材はていねいに洗浄・消毒を行いましょう。
また、小児の場合はおもちゃやタオルなど「意外な物」も口に入れたり触ったりしがちなので注意が必要です。
- 作成するときのポイント
- ・「汚染物品はすぐに密封」というわかりやすいフレーズを使う
・スポルディング分類などの専門用語は簡単に触れるか、図表で示す
・小児は「思わぬ物」（おもちゃ・ガーゼ・スポイトなど）を口に入れやすい点をアピール
・使い捨て器材のメリットや洗浄・消毒方法も具体的に書く
④在宅廃棄物の処理及び取り扱いの注意点
在宅での医療廃棄物（使用済み注射針など）は法的には「一般廃棄物」に分類されるケースが多いですが、自治体ごとのルールに従う必要があります。
特に注射針のような鋭利物は、針刺し事故を防ぐためにも安全容器へ入れる・蓋を閉めるなど厳重に管理しましょう。
おむつ交換や汚染物の廃棄も、汚物を取り除いてビニール袋に入れて密封するなど、周囲が汚れないようにする工夫が大切です。
- 作成するときのポイント
- ・地域の廃棄ルールを確認する重要性を示す
・おむつやガーゼなど「燃えるごみ」に出す際の手順を具体的に書く
・針刺し事故を防ぐ容器の使い方を画像や図で紹介
・なるべく写真や手順書をシンプルに示すと実践しやすい
⑤日常ケアにおける感染予防対策（小児特有の注意点）
おむつ交換やシャワー浴、口腔ケアなどの清潔ケアは、小児の健康管理に不可欠な行為です。
しかし、清潔ケアの中にも、感染のリスクは潜んでいるので注意が必要です。
たとえば、おむつ交換の際に排泄物が皮膚に触れると、肌トラブルを起こしやすいだけでなく感染源にもなります。
また、口腔ケアを怠ると、口の中で細菌が増えるだけでなく全身の抵抗力にも影響が出る場合があります。
子どもは動き回ったり、まだうまく意思表示ができないこともあるので、保護者と連携して安全かつ清潔にケアを行いましょう。
- 作成するときのポイント
- ・おむつ交換、口腔ケア、陰部洗浄など、ケア別に説明するとわかりやすい
・小児が動く、泣く、皮膚が薄いなどの具体的状況をイメージできるように記述する
・写真やイラストを取り入れることで、実際の手順を理解しやすくする
・保護者と訪問看護師が連携するメリットを強調する
⑥在宅ケアにおける感染症発生時の対応
子どもの高熱や嘔吐、下痢などが見られた際は、まず管理者や主治医に連絡して指示を仰ぐのが基本です。
小児は体力が少なく、脱水や重症化が進みやすいため、早めの受診が欠かせません。
また、保健所や行政機関との連絡、兄弟や家族内での二次感染予防など、家庭内の動線を工夫して感染が広がらないように配慮しましょう。
- 作成するときのポイント
- ・連絡フロー（管理者→主治医→保健所など）を具体的に示す
・小児が脱水や高熱で危険な状態になりやすいことを実例を交えて説明する
・きょうだいや保育園、学校への二次感染を防ぐ工夫も書いておく
・訪問看護スタッフが体験した事例などを紹介すると説得力が増す
⑦在宅における感染症対策（小児で頻度の高い疾患を含む）
インフルエンザやノロウイルス、RSウイルス、手足口病などは、特に小児がかかりやすい感染症として知られています。
嘔吐や下痢を伴う病気は、家族内であっという間に広がるリスクがあるため、使い捨て手袋やマスク、エプロンを利用して適切に処理しましょう。
予防できる病気についてはワクチン接種を早めに検討し、基礎疾患がある子どもや未就学児が重症化しないように努めることも大切です。
- 作成するときのポイント
- ・代表的な疾患名と症状、予防策を簡単に列挙すると分かりやすい
・ワクチンがある場合は接種時期やメリットをまとめる
・嘔吐物や排泄物の処理の手順（手袋・消毒方法など）を明確に示す
・家族やクラスメイトにうつさないためのマスク着用、手洗い、換気の徹底も呼びかける
⑧スタッフの健康管理
利用者・家族の健康管理はもちろんですが、会社としてはスタッフの健康管理も重要になってきます。
なぜなら、訪問看護スタッフ自身が感染源となってしまうケースがあるからです。
小児は抵抗力が弱い分、職員の体調不良がそのまま感染拡大につながるリスクも高いのです。
日ごろから体調管理に気をつけ、発熱や風邪症状があるときは無理をせず休むなど柔軟に対応しましょう。
インフルエンザや麻しん、風しんなど、予防接種が可能な疾患については早めに接種し、「うつさない・持ち込まない」意識をスタッフ全員で共有することが大切です。
また、針刺し事故などの緊急時のフローを整備しておくと、万が一のときも落ち着いて行動できます。
- 作成するときのポイント
- ・スタッフが媒介者になりうる危険性を具体的に伝える
・ワクチン接種や定期健診の受診をスタッフに促す
・針刺し事故などの対応マニュアルを可視化しておく
・「休むときは休みやすい」職場づくりが重要だと締めくくると良い
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