2024年度は「介護報酬」「診療報酬」「障害福祉サービス」の3つが改定され、トリプル改定の年といわれています。
- 介護報酬改定:3年に1度
- 診療報酬改定:2年に1度
- 障害福祉サービス等改定:3年に1度
もちろん、訪問看護業界にとっても他人事ではなく、今回の改定で変更になった部分は押さえておかなければならない内容ばかりです。
この記事では、「診療報酬改定のポイント」、つまり医療保険の枠組みの中で改定になったポイントを解説しております。
また、職場内での共有、勉強会などに使用できるよう、改定のポイントをまとめた資料も用意しているので、ぜひご活用ください。
この記事は、「令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】:厚生労働省」に基づいて作成しております。
【2024年度診療報酬改定】料金関連
訪問看護における診療報酬・医療保険の料金体系は、「訪問看護基本療養費」と「訪問看護管理療養費」が合わさったものとなります(加算等除く)。
訪問看護基本療養費は現行通り
今回の改定で、訪問看護基本療養費に関しては変更がありませんでした(現行通り)。
訪問看護管理療養費の改定ポイント
一方、訪問看護管理療養費は変更点があります。
*訪問看護管理療養費(月の初日の場合)
改定前 | 改定後 | |
機能強化型訪問看護療養費1 | 12,830円 | 13,230円↑ |
機能強化型訪問看護療養費2 | 9,800円 | 10,030円↑ |
機能強化型訪問看護療養費3 | 8,470円 | 8,700円↑ |
1~3以外 | 7,440円 | 7,670円↑ |
全体的に、約200円〜400円の増加となりました(10割の場合)。
*訪問看護管理療養費(2日目以降の場合)
改定前 | 改定後 | |
訪問看護管理療養費 (2回目以降の場合) | 3,000円 | 訪問看護管理療養費1:3,000円→ 訪問看護管理療養費2:2,500円↓ |
2日目以降の訪問看護管理療養費に関しては、1と2に分けられることとなりました。
【訪問看護管理療養費1の算定要件】
訪問看護ステーションの利用者のうち、同一建物居住者の占める割合が7割未満で、次のいずれかに該当する
- 別表第7、第8に該当する者への訪問看護について相当な実績がある
- 精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうち、GAF尺度:40以下の利用者の数が月に5人以上である
上記に当てはまらない場合、訪問看護管理療養費2を算定することとなります。
【2024年度診療報酬改定】加算関連
次に2024年度の診療報酬改定における、加算関連の変更ポイントを見ていきましょう。
変更になった加算関連は以下の通りです。
- 【見直し】24時間対応体制加算
- 【見直し】緊急訪問看護加算
- 【見直し】退院時支援指導加算
- 【見直し】乳幼児加算
- 【新設】訪問看護医療DX情報活用加算
- 【新設】訪問看護ベースアップ評価料
【見直し】24時間対応体制加算
改定前 | 改定後 |
6,400円 | 24時間対応体制加算(イ):6,800円↑ 24時間対応体制加算(ロ):6,520円↑ |
(イ)を算定する場合は下記2項目以上を満たすこと
- 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保
- 夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで
- 夜間対応後の暦日の休日確保
- 夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
- ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減 電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保
【見直し】緊急訪問看護加算
改定前 | 改定後 |
2,650円/日 | 月14日まで:2,650円/日→ 月15日以降:2,000円/日↓ |
- 保険医の指示に基づき、看護師等が緊急に訪問看護を実施した場合に算定
- 利用者またはその家族からの電話等による緊急の求めに応じて、主治医の指示によって訪問看護を実施した場合は、その日時、内容及び、対応状況を訪問看護記録書に記録すること
- 算定理由を訪問看護療養費明細書に記載すること
【見直し】退院時支援指導加算
改定前 | 改定後 |
1回の退院支援指導の時間が90分を超えた場合 | 1回の退院支援指導の時間が90分を超えた場合、または複数回の退院支援指導の合計時間が90分を超えた場合 |
改定前後で、退院時支援指導加算6,000円、退院時支援指導加算(長時間)8,400円と料金に変更はないが、長時間時の算定要件に変更あり。
【見直し】乳幼児加算
改定前 | 改定後 |
1,500円/日 | 厚生労働大臣が定める者に該当する場合:1,800円/日↑ 上記以外:1,300円/日↓ |
訪問看護基本療養費の注11に規定する乳幼児加算に係る厚生労働大臣が定める者
- 超重症児又は準超重症児
- 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者
- 特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者
【新設】訪問看護医療DX情報活用加算
改定前 | 改定後 |
なし | 50円/月 |
【算定要件】
- オンライン資格確認を実施し、利用者の診療情報を取得した上で、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行うこと。
- オンライン請求を行っていること。オンライン資格確認を行える体制を有していること。
- 医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い訪問看護を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して訪問看護を行うことについて、当該訪問看護ステーションの見やすい場所に掲示していること。
- 上記の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載している。
【新設】訪問看護ベースアップ評価料
改定前 | 改定後 |
なし | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ):780円 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ):多岐に渡る |
訪問看護ステーションの処遇改善の目的から、賃金アップ等を実施する事業所に対して新たな評価料が新設された。
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)
主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制にある場合には、「管理療養費」を算定している利用者1人につき、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)として、月1回に限り算定する。
【算定要件】
- 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届出をしていること
- 主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を構築していること
- 訪問看護管理療養費を算定していること
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)
主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制にある場合には、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)を算定している利用者1人につき、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)として、当該基準に係る区分に従い、月1回に限り、それぞれ所定額を算定する。
【算定要件】
- 地方厚生局長等に届け出た訪問看護ステーションが医療従事者の賃金の改善を図る体制にあること
- 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)を算定している利用者1人につき、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の区分に従い、所定額を算定すること
詳細は、「令和6年度診療報酬改定の概要 賃上げ・基本料の引き上げ:厚生労働省」」をご参照ください。
【2024年度診療報酬改定】その他
その他、2024年度の診療報酬改定で変更になった項目を見ていきましょう。
24時間対応のニーズに対する即応体制の確保
以下の全てに該当し、24時間対応体制に係る連絡相談に支障がない体制であれば、24時間対応体制に係る連絡相談の担当者が当該訪問看護ステーションの看護師等以外の職員でも良い。
ア 看護師等以外の職員が、利用者(家族含む)からの電話等による連絡および相談に対応するマニュアルが整備されている。
イ 緊急の訪問看護の必要性の判断を保健師または看護師が速やかに行える連絡体制及び緊急の訪問看護の体制が整っている。
ウ 管理者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制及び状況を明らかにしている。
エ 看護師等以外の職員は、電話等により連絡および相談を受けた際に保健師または看護師に報告すること。報告を受けたら、当該報告内容を訪問看護記録書に記載すること。
オ アからエに対して、利用者に同意を得ること。
カ 事業所は、連絡および相談を受ける看護師等以外の職員に関して都道府県知事に対して届け出ること。
別表第8の見直し
改定前 | 改定後 |
---|---|
① 在宅悪性腫瘍等患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者 または気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者 ② 以下のいずれかを受けている状態にある者 在宅自己注射指導管理 在宅自己腹膜灌流指導管理 在宅中心静脈栄養法指導管理 在宅成分栄養経管栄養指導管理 在宅酸素療法指導管理 在宅血液透析指導管理 在宅人工呼吸療法指導管理 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 在宅自己疼痛管理指導管理 在宅肺高血圧症患者指導管理 ③ 人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者 ④ 真皮を超える褥瘡の状態にあるもの ⑤ 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 | ① 在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理または在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者 または気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者 ② 以下のいずれかを受けている状態にある者 在宅自己注射指導管理 在宅自己腹膜灌流指導管理 在宅中心静脈栄養法指導管理 在宅成分栄養経管栄養指導管理 在宅酸素療法指導管理 在宅血液透析指導管理 在宅人工呼吸療法指導管理 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 在宅自己疼痛管理指導管理 在宅肺高血圧症患者指導管理 ③ 人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者 ④ 真皮を超える褥瘡の状態にあるもの ⑤ 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 |
明細書の無料発行義務化
指定訪問看護事業者による明細書の無料発行が義務化され、これに伴い人員及び運営に関する基準が改正された。
- 利用者から利用料の支払を受けるときは、当該費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付しなければならない
- 公費負担医療を担当した場合、費用の請求に係る計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付しなければならない
(*経過措置:領収証兼明細書に変更するシステム改修に必要な期間を考慮し、2025年(令和7年)年5月31日までの経過措置期間が設けられます)
訪問看護指示書の記載事項及び様式見直し
レセプト情報の活用を推進する観点から、訪問看護指示書及び精神科訪問看護指示書の記載事項及び様式が見直しとなった。
新しい様式では、訪問看護指示書、精神科訪問看護指示書の「主たる傷病名」の箇所に、「傷病名コード」の記載項目が追加。
傷病名コード付きの訪問看護指示書は、こちらの記事(訪問看護指示書の書き方を完全解説!【記載例多数】)でダウンロード可能です!
【2024年改定】訪問看護指示書の書き方を完全解説!【記載例多数】
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重要事項のウェブサイトへの掲示義務
デジタル原則に基づき書面掲示についてインターネットでの閲覧が可能な状態にすることを義務付けするよう求められていることから、指定訪問看護事業者における書面掲示について、原則ウェブサイトへの掲載が必須となった。
- 指定訪問看護ステーションの見やすい場所に、運営規程の概要や看護師等の勤務の体制、その他の利用申込者の指定訪問看護の選択に必要な「重要事項」を掲示しなければならない
- (新設)指定訪問看護事業者は、原則として「重要事項」をウェブサイトに掲載しなければならない
(*経過措置:書面掲示のウェブサイトへの掲載の義務化については、2025年(令和7年)5月31日まで経過措置が設けられます。)
虐待防止措置及び身体拘束等の適正化の推進
身体的拘束等の適正化を推進する観点から、訪問看護の「具体的取扱方針」に身体的拘束等の原則禁止や、やむを得ない場合に身体的拘束等を行う場合の記録義務に関する事項が追加。
- 訪問看護の提供に当たっては、利用者等の生命・身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限することを行ってはならない
- 身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行う場合に、その態様や時間、利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない
管理者の責務の明確化
訪問看護ステーションを効率的に運営する観点から、管理者の責務を明確化し、訪問看護ステーションの管理上支障がない場合には、同時に他の指定訪問看護ステーション等を管理できるよう、人員および運営基準が見直し。
訪問看護ステーションの管理者については、指定訪問看護ステーションの管理上支障がない場合に「同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することが可能」と定められていたが、今回の改定で「同一敷地内」という条件が削除された。
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