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訪問看護を利用者に提供する場合、一番最初に「契約」を結ばなければなりません。
多くの訪問看護ステーションでは、管理者や部門のリーダーが行うかと思いますが、スタッフ数が少ないステーションではスタッフ一人ひとりが契約をすることも少なくありません。
そのため、訪問看護で働くスタッフなら、誰でも契約の内容は把握しておくべきでしょう。
今回の記事では、訪問看護における契約書の内容(ひな形)と、具体的にどのような流れで利用者に説明したら良いのかをお伝えしていきます。
記事の最後には、訪問看護契約時のチェックリストを載せています。
このチェックリストを使用すれば、確認漏れなどのトラブルを格段に減らすことができるでしょう。
無料ダウンロード可ですので、ぜひ皆様の業務にご活用ください。
訪問看護契約書の内容
訪問看護における契約には、「居宅(訪問看護)サービス契約書」と、「重要事項説明書」があります。
「居宅(訪問看護)サービス契約書」には、契約の目的、契約期間、訪問看護の内容、訪問看護の利用料金、利用料金の滞納、契約終了、賠償責任、秘密保持、苦情内容などに関する記載が必要です。
「重要事項説明書」には、事業所の概要、運営方針、職員体制、営業日・時間、事故・災害時の対応などに関する記載が必要となります。
両者を一つにまとめて「契約書」としている訪問看護ステーションが多いかと思います。
各ステーションで契約の様式が異なるかと思いますが、説明しなければならない部分は決められているため、内容に関しては大きな相違はないでしょう。
また、契約書は利用者とステーション両者が署名・捺印されたものを保管しておく必要があります。
そのため、契約時には契約書を2部持参して利用者もしくは家族から署名・捺印をもらいます。
保管期間は、訪問看護が終了してから2年間は原則保管しておかなければならないのですが、都道府県によって5年間のところもあるため、各自治体に確認するようにしましょう。
質問です!
契約は、「介護保険」「医療保険」両方ともするんですか?
介護保険の訪問看護は義務づけられていますが、医療保険での訪問看護においては、契約書の作成の義務づけはありません。
しかし、後々のトラブルに繋がりやすい部分なので、「重要事項説明書」「料金表」「個人情報保護」に関する部分は、説明のうえ、署名・捺印をもらっておいた方が良いでしょう。
訪問看護契約書の説明方法
それでは、契約の説明方法を具体的にお伝えしていきます。
書いてある内容を1から10まで音読するように契約している人もいますが、望ましいものではありません。
なぜなら、契約書は文字数が多く、公文書なのでお堅い言葉も多用されています。
それをダラダラと長時間に渡って話されても、相手は聞いてくれません。
特に、訪問看護で相手をするのは高齢者がほとんどです。
書いてある内容を噛み砕いて、相手が分かりやすいように説明する技術を身につけましょう。
居宅(訪問看護)サービス契約書の説明方法
まずは、居宅(訪問看護)サービス契約書の説明方法をご紹介します。
居宅(訪問看護)サービス契約書のひな形
居宅(訪問看護)サービス契約書の様式です。
このひな形に沿って、説明してまいります。
契約を始める前に
契約を始める前に、「今からどんな契約をするのか」「分からなかったらいつでも質問してほしいこと」を伝えといた方がスムーズに進むでしょう。
〜説明例〜
今から「居宅サービス契約書」という、訪問看護を受けるための契約をさせていただきます。
契約書をすべて読み上げていくとかなり時間を要してしまいますので、重要な点を要約してご説明させていただきます。
途中、分からないことがあったら遠慮なく聞いてください。
契約の目的
それでは、ここから契約書に書かれている各項目の文書を記し、その項目に対する説明方法をお伝えしていきます。
居宅サービス契約書は、「契約の目的」から始まります。
事業所は利用者に対し、介護保険法等関係法のもとに、利用者が居宅においてその能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように適切な訪問看護を提供し、利用者は事業者に対してサービスにかかる利用料を支払うことを契約の目的とします。
この契約は、介護保険を使って訪問看護のサービスを受けるための契約です。
今後も在宅で生活ができるようにサポートをさせていただきます。
契約期間
この契約期間は「 年 月 日〜 年 月 日」までとします。なお、利用者から契約終了の申し出がない場合は、自動的に更新します。
*契約時に期間を書きましょう。始まりは契約日とします。明確に終わりの日が決まってる場合は記載しても良いのですが、なかなか決められるものではありません。そのため、終わりの日は空白でも構いません。
契約期間は本日からとさせていただきます。
終了日は現時点では決めることができないので、空白とさせていただきます。
訪問看護の内容
1 事業者は、利用者の日常生活の状況及びその意思を踏まえて、利用者の居宅サービス計画(ケアプラン)に沿って、訪問看護計画書を作成し、利用者およびその家族に説明します。
2 事業者は、利用者がサービス内容や提供方法等の変更を希望する場合で、その変更が居宅サービス計画(ケアプラン)の範囲内で可能なときは、速やかに訪問看護計画書の変更等の対応を行います。
3 事業者は、利用者が居宅サービス計画(ケアプラン)の変更を希望する場合は、速やかに居宅介護支援事業者への連絡調整等の援助を行います。
私たちは、ケアマネジャーさんが作成するケアプランに沿って、訪問看護計画書を作成して、サービスを提供します。
訪問看護計画書は、毎月書面を用いて説明させていただきます。
その際、署名と捺印をお願いしていますので、ご協力をよろしくお願いいたします。
訪問看護の利用料
1 利用者は介護保険法等関連法に定める料金を支払います。
2 契約有効期間中、介護保険等の関係法令の改正により利用者負担金の改定が必要となった場合には、改定後の金額を適用するものとします。この場合には、事業者は法令改正後速やかに利用者に対し改定の施行時期及び改定以後の金額を通知し、本契約の継続について確認するものとします。
3 利用者は利用料の変更に応じられない場合は、事業者に対し文書で通知し契約を解約することができます。
4 事業者は利用者から料金の支払いを受けた場合はその領収書を発行します。
次に訪問看護の利用料に関してです。
料金の詳細は、後ほど別紙を用いて説明させていただきます(重要事項説明書で説明)。
この料金は介護保険法で定められていますので、契約期間中に介護保険が改定されたら、改定後の料金を適用します。
金額が変わる場合は、事前にお知らせしますのでご安心ください。
また、料金の変更に応じられない場合はこの契約を解約することができます。
その際はご相談ください。
利用料の滞納
1 利用者が正当な理由なく利用料3ヶ月以上滞納した場合は、事業者は1ヶ月以内の期限を定めて催促し、なお払わないときは契約を破棄します。
2 事業者は前項を実施した場合には、利用者担当の介護支援専門員、利用者の居住区である市区町村等に連絡するなど必要な支援を行います。
もし、3ヶ月以上の料金滞納があった場合は、催促の上、この契約を破棄する可能性があります。
契約終了
1 利用者は、少なくとも3日前までに事業者に予告することにより、いつでもこの契約を解約することが出来ます。
2 事業者は、利用者が正当な理由なくまたは故意に指定訪問看護の利用に関する指示に従わず、要介護状態等を悪化させた場合、または常識を逸脱する行為をなし、改善しようとしないなどの理由で、契約の目的が達せられないと判断したときは1ヶ月以内の文書による予告期間をもって契約終了とします。
3 その他次のいずれかの事由に該当する場合は契約を終了します。
・利用者が死亡、入院・入所または転出した場合
・利用者の病状、要介護度等の改善により、訪問看護の必要を認められなくなった場合
・その他解約せざるを得ない状況が生じた場合
この契約は、少なくとも3日前(各事業所により異なる)までにお伝えいただけましたら、いつでも解約をすることができます。
また、訪問看護に対する拒否などがあり継続した介入ができない場合は、事前にお伝えした上で、契約を解約する場合があります。
その他、長期間の入院や入所が決まった場合や、状態の改善などで訪問看護の必要性がなくなった場合は契約を終了いたします。
損害責任
1 事業者は、サービスの提供に際して利用者のけがや体調の急変があった場合には、医師や家族への連絡その他適切な措置を迅速に行います。
2 事業者は、サービス提供にあたって利用者の生命・身体・財産に損害を与えた場合には、その損害を賠償します。
次に損害責任についてです。
もし、サービスをしている際に急変した場合は、ご家族様へのご連絡、医師への連絡など適切な措置を行います。
また、サービスをしているときに怪我をさせてしまった場合や、ものを壊してしまった場合は、その損害を賠償いたします。
秘密保持
1 事業者およびその従業員は、訪問看護を提供するうえで知り得た利用者またはその家族の秘密を守ることを義務とします。
2 事業者は、サービス担当者会議等において利用者またはその家族の個人情報を提供する場合は事前に同意を得ます。
3 事業者およびその従業員は退職後も在職中に知り得た利用者またはその家族の秘密を守ることを義務とします。
次に秘密保持についてです。
私たちは、〇〇様に関して知り得た情報を第3者に漏らすことはありません。
ただ、ケアマネジャーと主治医には、訪問看護の内容を報告する義務があるので、内容を提示させていただきます。
その他、会議などで個人情報を提供する場合は、事前に確認を取らせていただきます。
苦情対応
1 事業者は、利用者またはその家族から苦情の申し出があったあった場合は速やかに対応します。
2 事業者は利用者またはその家族が苦情申立機関に苦情申し立てを行なった場合、これを理由としていかなる不利益、不公平な対応も致しません。
もし、サービスの提供に不満などがありましたら、いつでも言ってください。
速やかに対応をさせていただきます。
対応が不十分な場合は、ケアマネジャーさんや市区町村、または国民健康保険団体連合に対しても苦情を申し立てることができます。
契約外条項
1 利用者および事業者は信義誠実をもってこの契約を履行します。
2 本契約に規程のない事項については、介護保険法等関連法の規程を尊重し、利用者および事業者の協議に基づき定めます。
この契約は、あくまでも介護保険法で定める訪問看護サービスの契約になります。
例えば、掃除や洗濯などは訪問介護の仕事であり、この契約に含まれません。
もし、他のサービスが必要と感じた場合はいつでもご相談ください。
ケアマネジャーにお伝えして、サービスの調整を行います。
居宅サービス契約書の説明が終わったら
以上が、居宅サービス契約書の内容になります。
利用者に署名と捺印をもらう箇所があるかと思いますが、次に説明をする重要事項説明書でも署名・捺印をもらいます。
そのため、一通りすべての説明が終わったら、まとめて署名と捺印をもらう方がスムーズに進むでしょう。
居宅サービス契約書の説明が終わった段階では、「ここまでで不明点はないか」「あとでまとめて署名と捺印をもらう」点を伝えておきましょう。
居宅サービス契約書の説明は以上です。
ここまでで、何か不明点や聞いておきたいことはありますか?
署名と捺印は、あとでまとめていただきたいと思います。
重要事項説明書の説明方法
次に重要事項説明書の説明方法をご紹介いたします。
重要事項説明書の様式
重要事項説明書の様式です。
このひな形に沿って、説明してまいります。
次に重要事項説明書の説明をさせていただきます。
事業所の概要
事業所名 | 〇〇訪問看護ステーション |
所在地 | 〒111-1111 東京都〇〇区〇〇1-1-1-101 |
連絡先 | 03-1111-1111 |
事業所指定番号 | 11111111111号 |
管理者 | 訪問 トコル |
サービス提供地域 | 〇〇区、〇〇区、〇〇区 |
私たちは「〇〇訪問看護ステーション」と申します。
事務所は〇〇区にあって、〇〇様のお宅には自転車でお伺いさせていただきます。
電話番号はこちらに記載していますので、何かありましたらこちらにお願いします。
管理者は、〇〇という者になります。
事業所の職員体制
資格 | 常勤 | 非常勤 | 計 |
---|---|---|---|
管理者(兼務) | 1名 | 0名 | 1名 |
看護師 | 10名 | 2名 | 12名 |
理学療法士 | 2名 | 1名 | 3名 |
作業療法士 | 1名 | 0名 | 1名 |
言語聴覚士 | 1名 | 0名 | 1名 |
職員は、看護師が12名、リハビリスタッフが5名となっています。
営業日および営業時間
営業日 | 営業時間 |
---|---|
月曜日〜金曜日 *休日:土曜日・日曜日・祝日・年末年始 | 午前9時〜午後6時 |
営業日は月曜日〜金曜日です。
基本的に祝日はお休みとなりますが、別日に振り替えて訪問することも可能です。
訪問日が祝日に当たった場合は、またご相談いただけたらと思います。
時間は午前9時から午後6時までとなっておりますので、電話はこの時間内でお願いします。
サービスの内容
・健康状態の観察(体温・血圧・脈拍・簡易酸素飽和度測定など)
・身体の保清(清拭・洗髪・入浴・口腔ケア・足浴手浴など)
・医療的処置(カテーテル類の管理・褥瘡の処置など)
・在宅リハビリテーション(手足の運動・拘縮予防など)
・療養生活や介護方法の指導
・生活用具や在宅サービス利用に関する相談
次にサービスの内容です。
訪問看護でできるサービス内容が書いてあるのですが、〇〇様は〇〇が不安とのことですので、主に〇〇をさせていただきたいと思います。
その他、在宅生活を送る上での相談や介護方法の指導などもできますので、何か不安ごとがありましたら何でも仰っていただけたらと思います。
サービス料金および利用者負担
*重要事項説明書内に料金表を記載してもいいのですが、別紙にて一覧表を作成する方がわかりやすいかと思います。
次にご料金に関する説明です。
〜料金表を用いて該当サービスの料金、加算(ある場合は)を説明〜
ご料金は銀行口座より自動引き落としになりますがよろしいでしょうか?
毎月○日に引き落としをします。
○日が休日の時は、翌営業日になります。
事前に請求書をお持ちしますので、ご確認をお願いいたします。
*もし、キャンセル料金を徴収している場合や自費の料金を設定している場合は、この項目で説明しておきましょう。
相談窓口・苦情対応
窓口 | 連絡先 |
---|---|
〇〇訪問看護ステーション 管理者:訪問 トコル | 電話番号:03-1111-1111 住所:〒111-1111 東京都〇〇区〇〇1-1-1-101 |
東京都国民健康保険団体連合会 | 電話番号:03-2222-2222 住所:〒222-2222 東京都〇〇区〇〇2-2-2 |
〇〇区役所 介護保険課 | 電話番号:03-3333-3333 住所:〒333-3333 東京都〇〇区〇〇3-3-3 |
何か相談・苦情がありましたら、まずは弊社の管理者までご連絡ください。
それでも対応が不十分でしたら、国や市区町村にも窓口がありますので、連絡先を載せておきます。
その他
*その他、事業所として伝えておく事項があったら、こちらに記載と説明を行います。
重要事項説明書の説明が終わったら
重要事項説明書の説明が終わったら、不明点がないかを聞いて、署名・捺印をもらいましょう。
重要事項説明書は以上になります。
不明点や聞いておきたいことはありますか?
なければ、署名と捺印をお願いいたします。
〜署名・捺印がしやすいように該当ページを開く〜
〜契約書2部の署名・捺印が終わったら〜
こちらは控えになりますので、保管をお願いいたします。
以上で、契約は終了になります。
お忙しい中、ありがとうございました。
初回は○日○時にお伺いさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
訪問看護契約時のチェックリスト
このように、契約時にはたくさん確認することがあります。
確認漏れなどを防ぐために、契約時のチェックリストを作成しました。
ぜひ、契約の際に一緒に持っていって、最後にチェックすることをオススメします。
ダウンロードは無料です。
訪問看護における契約方法のまとめ
- 契約には「居宅サービス契約書」と「重要事項説明書」がある。
- 契約書は文字数が多く時間が割かれるため、重要な部分のみ、わかりやすく説明するよう心がける。
- 署名と捺印は最後にまとめてもらう方がスムーズ。