訪問看護計画書の記載例

訪問看護計画書のルールまとめ【良い例と悪い例】

訪問看護計画書とは、「訪問看護でどのようなことをしていくか」を示した書類です。

基本的には、利用者の問題点やそれに対する解決策などを記載していけばいいのですが、細かいルールがあるのも事実です。

・どのように目標を立てたら良いの?

・「評価」の部分って何を書けば良いの?

・2024年の報酬改定で何が変わった?

など、書き方に関して悩んでいる人も多いのではないかと思います。

今回は、「訪問看護計画書のルール」のすべてを完全解説してまいります。

この記事を読めば、今よりもスムーズに訪問看護計画書を書くことができるでしょう!

訪問看護計画書の様式

まずは、訪問看護計画書の様式を見てみましょう。

厳密にいうと、訪問看護計画書には3つの種類が存在します。

大まかにいうと、各違いは以下の通りです。

  • 介護保険用には作成者の欄がある
  • 医療保険用・精神科用には訪問予定の職種欄がある
  • 医療保険用・精神科用には押印がある
  • 精神科用の目標は「看護の目標」の記載である

若干の違いではありますが、利用者に合った様式を用いるようにしましょう。

今回は、医療保険用を例にして解説してまいります。

訪問看護計画書の内容は、大きく7つに分けることができます。

  • 利用者の基本情報
  • 看護・リハビリテーションの目標
  • 年月日/療養上の課題・支援内容/評価
  • 衛生材料等が必要な処置の有無
  • 訪問予定の職種
  • 備考
  • 事業所名と管理者名

訪問看護計画書のルール

それでは、各項目ごとルールを確認していきましょう。

①利用者の基本情報

「利用者名」「生年月日」「年齢」「要介護度」「住所」を記載しましょう。

電子カルテを使用しているステーションは、利用者名を入れるとその他情報も自動的に入力してくれるかと思います。

②看護・リハビリテーションの目標

看護・リハビリテーションの目標には、訪問看護が介入することによって、どのような状態になることを目標にしているかを記載します。

この時に注意するべき点は、以下の3つです。

・利用者と家族の希望を取り入れているか?

・主治医の指示と相違がないか?

・ケアプランと相違がないか?

例えば、本人と家族が「高齢なので無理はせず家でゆっくり過ごしたい」という目標があるにも関わらず、看護・リハビリテーションの目標が「家族と旅行に行けるように」や、「外出の機会を増やす」といった目標を立ててしまったら、目標に相違が生じてしまいます。

看護・リハビリ視点で、「旅行にでも行けばいいのに〜」と思っていても、本人や家族が望んでいなければただの押し付けになってしまうのです。

あくまでも、利用者と家族がどのような状態になることを望んでいるかを取り入れた目標を立てましょう。

また、訪問看護ステーションは、「主治医からの指示」とケアマネジャーがいる場合は「ケアプラン」がないと業務をすることができません。

そのため、訪問看護の目標も、主治医の指示とケアプランに沿ったものを立てなければなりません。

例えば、主治医から「安静度はベッド上」を指示を受けているにも関わらず、「車椅子に座れるようにする」といった目標は相違があるため、立てるべきではありません。

同じように、ケアプランの目標が「近くのスーパーに買い物に行ける」といったものに対し、訪問看護では「入浴の自立」といった目標を立てるのは、相違があると考えます。

あくまでも、「利用者・家族の思い」「主治医の指示」「ケアプラン」に沿った目標を立てましょう。

もし、ケアプランに現実的ではない目標が立っている場合は、担当者会議を開催してプランの見直しをするよう働きかけましょう。

トコル
トコル

この「看護・リハビリテーションの目標」の記載例は、コチラの記事(訪問看護計画書「看護・リハビリテーションの目標」の記載例・文例集【コピペ可】)でまとめています!

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訪問看護計画書「看護・リハビリテーションの目標」の記載例・文例集【コピペ可】

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③年月日/療養上の課題・支援内容/評価

訪問看護計画書を記載するにあたって、一番苦労と時間を要する部分ではないでしょうか?

「看護・リハビリテーションの目標」を踏まえて、訪問看護を行う上での療養上の課題・支援内容、評価を具体的に記載します

「年月日」「療養上の課題・支援内容」「評価」のそれぞれに若干のルールがありますので、それぞれ見ていきましょう。

2024年の改定により、「問題点・解決策」から「療養上の課題・支援内容」に変更となりました。

年月日

年月日は、訪問看護計画書の作成日、もしくは計画の見直しを行った日付を記載します。

間違えやすいのが、初回介入時の年月日です。

初回介入時に作成する計画書の年月日は、「初回介入日の日付」を記載します。

2月21日に初回介入するのであれば、訪問看護計画書の年月日は2月21日の記載をします。

2月1日になっていた!なんてことはあるあるです。

次月以降、継続して作成する場合は、当該月1日の日付で作成して構いません。

新人看護師
新人看護師

質問です!
訪問看護計画書は毎月作成しなければいけないんでしょうか??

トコル
トコル

訪問看護を毎月行っているのであれば、毎月作成するのが「望ましい」と言われていますね。

ほとんどが毎月提出していると思いますが、中には3ヶ月〜6ヶ月の間隔で作成しているステーションもあります。

「利用者の状態に変化があった時」、「指示書に変更点があった場合」、「ケアプランに変更があった場合」は、必ず作成する必要があると思いますが、変化がなければ絶対に作成しなければならないと言うことではありません。

しかし、訪問看護計画書は利用者や家族の同意を得て立案するものなので、毎月の月初に「今月はこのように介入しますね」と言う説明は必要かと思います。

療養上の課題・支援内容

訪問看護計画書を記載する上で、1番の肝と言えるでしょう。

療養上の課題・支援内容は、目標を達成するにあたって何が問題で、そのために訪問看護としてどのような解決策を立案するのかを具体的に記載します。

ただし、イメージしにくい部分だと思うので、この記事最後の記載例を参考にしてもらえたらと思います。

一つ抑えておきたいルールとしては、「#○で立てた療養上の課題に対して、その#○に対する支援内容を書く」ということです。

例えば、「#1疾患に伴う右膝の痛みがあり転倒の恐れがある」と療養上の課題を立てたら、その#1に対して「①関節可動域練習②筋力トレーニング・・・」と支援内容を立案します。

療養上の課題・支援内容の良い記載例

療養上の課題支援内容
#1疾患に伴う右膝の痛みがあり転倒の恐れがある

①関節可動域練習
②筋力トレーニング
③バランス練習

この点、リハビリ職は、ICFやICIDHで習ってきたので、療養上の課題に「#左膝痛#バランス能力低下#関節可動域制限・・・」と問題点を羅列してしまいがちですが、訪問看護における立案の観点から言えば望ましくはありません。

療養上の課題・支援内容の悪い記載例

療養上の課題支援内容
#左膝痛
#バランス能力低下
#関節可動域制限
#筋力低下
①関節可動域練習
②筋力トレーニング
③バランス練習

この書き方だと、どの療養上の課題に対して支援内容を立案しているのかが分かりません。

「どの療養上の課題に対する支援内容か」を明確にするようにしましょう。

おそらく、2024年の改定で「問題点・解決策」から「療養上の課題・支援内容」に変更されたのも、この点が関わってきているかと思います。

単なる問題点を列挙するのではなく、その利用者が療養する上で課題に挙がっている部分をピックアップして記載するようにしましょう。

評価

この評価欄には、1ヶ月の訪問看護を振り返り、「立案した計画を継続するべきか、変更するべきか」を記載します。

計画に変更がなければ「プラン継続」と記載します。

変更があった場合は、なぜ変更が必要になったのかを利用者の状態を踏まえて記載します。

ちなみに、初回の場合は、空白で構いません

具体的な書き方は、疾患別の訪問看護計画書の記載例を参考にしてみてください。

この評価においても、特にリハビリ職に誤った書き方をしている人がいます。

というのも、リハビリ職にとって評価とは、「麻痺の程度、ADLの自立度、筋緊張など・・・」を書くように習ってきました。

しかし、訪問看護計画書における評価は、その計画を継続するか否かを記載する部分なので記載方法を注意しましょう。

評価の良い記載例

問題点解決策評価
#1疾患に伴う右膝の痛みがあり転倒の恐れがある

①関節可動域練習
②筋力トレーニング
③バランス練

痛みは残存しているが、徐々に筋力向上している。プラン継続。

評価の悪い記載例

問題点解決策評価
#左膝痛
#バランス能力低下
#関節可動域制限
#筋力低下
①関節可動域練習
②筋力トレーニング
③バランス練習

ROM:右背屈-5°、右股関節屈曲40°、左膝関節屈曲45°
MMT:左膝伸展2~3、右股関節屈曲3
片足立ち(右/左):1/3秒

どの問題点に対して解決策を立てているのかが不明なことに加え、計画を継続するのか変更した方がいいのかが評価に書かれていないので、望ましい書き方ではありません。

新人看護師
新人看護師

質問です!看護師と理学療法士が同じ利用者に介入しています。

計画書は別々の書式でも問題ありませんか?

トコル
トコル

様式に準じていれば、別々の書式で作成しても構いません

しかし、訪問看護における計画書は、「看護師と理学療法士が一体となって作成する」ように明示されています。

そのため、看護師と理学療法士が利用者の状況や実施内容を共有して一体的な計画書を作成しなければなりません。

例えば、方向性が全然違うケアをしていたり、別々の目標に向かって計画を立てているのはダメということです。

この点をクリアできていれば別々に書いても問題ないでしょう。

④衛生材料等が必要な処置の有無

この項目には、衛生材料等が必要な処置があった場合、「処置の内容」「衛生材料(種類・サイズ)」「必要量」を記載します。

衛生材料等が必要な処置の有無の記載例

処置の内容衛生材料(種類・サイズ)必要量
胃ろうからの注入

①栄養チューブ
②カテーテルチップ

①4本/月
②4個/月

⑤訪問予定の職種

訪問予定の職種には、定期の訪問日時を記載すれば問題ないでしょう。

訪問予定の職種の記載例

看護師:木曜日14:00〜14:30
理学療法士:月曜日14:00〜15:00 金曜日13:00〜14:00

⑥備考

備考には、上記の項目では書けなかった内容を記載します。

特別な管理を要する内容や、その他留意するべき事項を記載しておくと良いでしょう。

⑦事業所名と管理者名

事業所名と管理者の名前をフルネームで記載します。

トコル
トコル

医療保険用と精神科用には管理者の押印欄がありますが、「必要がない」という見解を出しているところもあります。詳しくは関係各所に問い合わせしてください。

訪問看護計画書を利用者に説明・交付をした際、サインは必要なのか?

訪問看護計画書を利用者に説明・交付した際、サインはもらうべきなのかという質問をよくいただきます。

結論、厚生労働省が通知している訪問看護計画書の雛形に利用者の署名欄はないため、不要とする見解もあるそうです。

一方、同意を得たという根拠は必要なため、根拠を残す意味で署名はもらうべきという見解もあります。

事業所やお住いの地域によっても解釈が異なる部分だと思うので、関係各所に確認することを推奨します。

個人的には、後のトラブルに発展させないため、署名はもらうべきと解釈しております。

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